シン・仮面絶唱シンフォギア   作:あーくこさいん

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更新が一年以上遅れてしまい申し訳ございません…!


5.覚醒!ガングニールヒューマン

響 side

 

私の名前は立花響(たちばなひびき)

9月13日生まれの15歳。

血液型はO型、身長は157cm。

スリーサイズは秘密、体重も同じく秘密。

私立リディアン音楽院に通う高校一年生。

趣味は人助けで好きな食べ物はごはん&ごはん。

ちなみに彼氏いない歴は年齢と同じ…

 

私は、はっきり言って“呪われて”いる。

これは比喩表現では無い。

 

私はお父さん、お母さん、お婆ちゃんと一緒に暮らしていた。

だけどお父さんは私が小学生の頃、海外に出張した時に事故で亡くなった。

遺体さえ残らなかった。

 

お父さんの死に私達は悲しんだ。

幼馴染にして親友の未来に励まされながら、少しずつ立ち直った。

 

中学二年生の頃、ツインボーカルユニット『ツヴァイウィング』のコンサートに行った際、ノイズが現れ瀕死の重傷を負った。

 

幸いにも一命を取り留め、リハビリを重ねながら退院することができた。

けど、ここからが地獄の始まりだった。

 

退院した私を待っていたのはあの惨劇から生き残った人達を『人殺し』と決めつけ、『正義』の名の元に迫害する…所謂『生存者バッシング』だった。

学校のクラスメイトは勿論のこと、近所に住んでいた人達、さらに遠くから来たであろう人達から攻撃を受けた。

学校では無視されたり机に落書きされる、私物を捨てられる事が相次ぎ、家に至っては落書きや石を投げられ窓が割れた。

 

迫害が私だけでなくお母さんやお婆ちゃんにまで飛び火し、幼馴染で親友の未来が転校してしまう。

心無い迫害に私達は疲弊していった。

 

だけど、奏さんの『生きるのを諦めるなッ‼︎』の言葉を胸に、『へいき、へっちゃら』と自分に言い聞かせて耐えた。

勿論辛いのは変わらない。

けど、その言葉が心の支えになった。

 

そんな中、あの惨劇から活動を停止していたツヴァイウィングが活動再開するとして会見を開いた際に、『生存者バッシング』の実態や惨状が彼女達から語られ、それを批判すると同時にやめるよう訴えた。

その会見がきっかけとなり、過激化された『生存者バッシング』が世間に晒され、それに対する制裁が起きた。

 

私の通っていた学校でもバッシングに加担したクラスメイトの不登校や転校、同じくバッシングに加担したり傍観したりした先生の多くが懲戒免職等で居なくなった。

また、家に落書きや投石をした人達も逮捕されたりした。

 

これで元の日常に戻れる…そう思っていた。

思っていたのに……!

 

バッシングが収まってからしばらく経ったある日、学校から帰ってくると家の方角から黒煙が見えた。

嫌な予感がして家へと急いだ。

家に着いた私が見たのは…私の家が燃えている光景だった。

私が着いた頃には既に大部分が燃えていて、助けようにも助けに行く事が出来ず、燃える光景をただ見ている事しか出来なかった。

 

突然起きた悲劇に私は気が動転して、その場から逃げ出した。

どのくらい走ったか分からない。

行く宛もなく放浪し、遂にお腹が空いて動けなくなってしまう。

 

どうしてこんな事になったのだろう……

 

あのライブに生き残ったから?

 

あの惨劇から生き残って…迫害されて…迫害から解放されたと思ったら今度は家族を失って………

 

私はあの時死ぬべきだったの……?

 

もう、疲れたよ………

 

(未来、ごめんね…このまま再会する事なく別れて……お父さん、お母さん、お婆ちゃん、私もそっちに行くよ………)

 

私は意識を手放した。

だが、目が覚めるとそこはテントの中で、しばらくするとパンとスープを持って男性が入ってきた。

突然の事に戸惑うもお腹が空いたので、出されたパンとスープを完食する。

 

完食し終わると、彼は落ち着いてからでいいから何があったのか聞かせてほしいと言われた。

 

お腹が満たされて落ち着いた私は彼に今までの経緯を話した。

あのライブで生と死の狭間を彷徨って…生還したら迫害されて…迫害から解放されたと思ったら家族を失って………

話していくうちに段々悲しくなって………

 

『私は…あの時死ぬべきだったんですか……?』

 

最後にそう吐露した。

そんな中彼はしばらく考え、こう言った。

 

『そんなことはない。君は奏さんからの言葉を胸にリハビリを重ねたり、迫害されてもここまで耐えてきた。そんな強い子が死ぬべきだなんて間違ってる。』

 

『確かに心無い人達からの迫害や逆恨みで君の家族は亡くなった。だが後を追っては駄目だ。まだ君には君の身を案じている親友がいる。その子の為にも、亡くなった家族の為にも死んではならない。』

 

『だから…もう一人で抱え込まなくてもいい。今だけでいいから辛かった事、苦しかった事、悲しかった事を全て吐き出すといい。』

 

その言葉を聞いた私は彼の胸に飛び掛かりわんわん泣いた。

わんわん泣くうちに泣き疲れたのか、緊張の糸が切れたのかそのまま寝てしまった。

翌朝、朝ごはんを食べ終わった後彼からこれからどうするかを聞かれた際、身寄りの無い私は遠くに引っ越した未来のところへ向かうことにした。

 

こうして私と彼とのツーリングが始まった。

その最中、私は彼について尋ねた。

 

彼の名前は本郷猛(ほんごうたけし)であり、城南大学出身で頭脳明晰・スポーツ万能、私と正反対だがコミュ症のせいで今は無職で、趣味のバイクでツーリングしながら自分探しの旅に出ているという。

 

彼の家族は警察官のお父さんと専業主婦のお母さんの三人家族だったが、お父さんは人質を取った犯人を説得する際に犯人に刺されて死亡、その時彼も現場に居合わせた為、お父さんが死ぬ瞬間を間近で見たという。

お母さんもお父さんの死がきっかけで心労が祟り、後を追うように亡くなった。

 

私と猛さんはツーリングを通して親睦を深めた。

二人とも既に家族を亡くしている為、傷の舐め合いかもしれないけど私達は仲良くなったし、何より猛さんの背中は頼もしかった。

 

 

そんなある日のこと。

未来の元へ行く最中、突如として銃声が鳴り響いたと思ったらバイクが横転してしまう。

幸い私に怪我は無かった。

けど、猛さんは頭から血が出る程の大怪我を負った。

急いで救急車を呼ばなくてはならない…

 

その時、突如として眠くなってしまう。

どうして…早く助けを呼ばなきゃいけないのに……

私はそこで意識を失った。

 

 

目が覚めると知らない天井だった。

状況が掴めない私に部屋にいたおじさんから説明された。

 

なんでも事故が起きてから昏睡状態だったらしく、この病院に運ばれて一年間ずっと眠っていた。

混乱しつつも猛さんの事が気になり尋ねた。

 

なんと失踪宣告を出されて捜索を打ち切られたのだ。

その事に私は出された病院食を食べれない程ショックを受けた。

 

こうも立て続けに大切な人達を失うなんて…

 

(やっぱり私、呪われているんだ……)

 

けど、悪い事ばかりではなかった。

ある日、お見舞いに来ていたおじさんから合わせたい人がいると告げられた。

 

誰だろうと思い、扉が開かれて姿が露わになる。

そこにいたのは黒髪に白いリボンの女の子…

 

「未来…?」

 

転校し離れ離れになった親友、小日向未来(こひなたみく)だ。

未来は私の姿を見るや否や、大号泣しながら胸に飛び込んだ。

謝り続ける未来の頭を撫でながら、私も親友との再会に涙した。

 

やがて泣き止んだ未来から色々話を聞いた。

引っ越してからしばらくしてツヴァイウィングの活動再開の会見で『生存者バッシング』の実態が語られた事がきっかけでバッシングが下火になったこと…

 

その事に複雑な思いを抱きつつも私に会えると安堵した矢先、私の家が放火されてお母さんとお婆ちゃんが死に私が行方不明になった事をニュースで知ったこと…

 

警察の捜査も進展はなく、駅前や人通りの多い場所でチラシ配りをしたものの見つからず一年経過したこと…

 

いくら探しても手掛かりの一つも見つからず最悪の事態も覚悟した矢先、先程のおじさんが現れて未来をここに案内したこと…

 

私達は再会を喜び合った。

未来はリディアン音楽院に進学しようとしていたので、未来と一緒にいたいと思った私もそこに進学した。

 

しかし無事入学したのも束の間、ツヴァイウィングの新作CDを買いに来た矢先、ノイズの襲撃に遭い逃げ遅れた女の子を助けた上で逃げた。

工業地帯まで逃げたものの、ノイズの群れに取り囲まれた上に背後は絶壁、絶体絶命どころか死んだも同然の状態だった。

 

けど、私は諦めなかった。

二年前に奏さんに『生きるのを諦めるな‼︎』と言われ、それを胸に生きてきた。

一度生きるのを諦めかけた時に、彼に助けられ未来と再会する事が出来た。

だから諦めない、諦めてたまるものか!

 

そして何より…

 

(彼に…猛さんに会えないまま、お礼も言えないまま死んでたまるか‼︎)

 

「生きるのを、諦めないでッ‼︎」

 

女の子に対しそう言った次の瞬間…

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

私の胸に歌が浮かび上がり、自然とその歌を口ずさんでいた。

その瞬間、身体が光に包まれ変身していた。

 

訳がわからず困惑したけど、とりあえず女の子を抱きかかえてノイズから逃げる。

さらにこのスーツはノイズを打ち砕く力があり、ますます困惑しているとツヴァイウィングの二人が二年前と同じ姿でノイズを倒した。

 

ノイズの襲撃が収まり、私は手錠を掛けられて連行された。

場所はリディアン音楽院の地下で、なんと『特異災害対策機動部二課』の秘密基地だった。

 

二課の技術者である櫻井了子さんから私が纏ったスーツ…シンフォギアについて説明があり、どうやら二年前に奏さんのガングニールの欠片が心臓に刺さり、手術の際に摘出できなかった一部の欠片から融合したことでシンフォギアを獲得した【融合症例】だと言う。

 

その事に奏さんは気を病み何度も謝罪したけど、二年前に私を助けてくれた事に加え、融合症例としてシンフォギアを纏ったことで結果的に私とあの女の子が助かったことに感謝した。

 

そして戦うか否かを二課の司令官である風鳴弦十郎さんから問われた際、二年前の惨劇からノイズに対する恐怖はあるものの、私の力が『誰かの助けになる』というのならばと、戦いに身を投じた。

 

それから一ヶ月が過ぎ、私は学業の合間奏さんと翼さんと一緒にノイズと戦う日々の中、メキメキと力をつけた…不自然な程に。

 

というもの私は今まで格闘技とかを学んだ事がない。

にも関わらず、シンフォギアを纏った時の動きにムダがなく、アームドギアが無い状態でも徒手空拳でノイズを倒してきた。

 

というか私自身、シンフォギアやそれに関する戦い方を身体が覚えているような感じである。

 

その為、一ヶ月程で奏さんと翼さんとの連携が出来るようになったものの、奏さんと翼さんの表情は明るいとは言えない。

 

そして極め付けは先のサラセニアオーグ戦である。

二人が絶体絶命のピンチになった際に、【絶唱】を使った。

 

もちろん、絶唱について奏さんと翼さんは私に教えていない。

けど私の頭の中で、この方法が思い浮かんだことは覚えている。

 

しかも絶唱を使ったのにも関わらず私の身体にこれといったダメージは無く、腹に空いた穴も再生したかのように塞がっていた。

 

サラセニアオーグが自滅した後、私は絶唱を使ったことについて二人に怒られた。

絶唱は装者の命と引き換えに放つもので、二年前に絶唱を放とうとした奏さんも死を覚悟した為、窮地を脱するとはいえ怒られるのは当然だ。

 

その後、私の身体の精密な検査の為、当分の間戦闘と訓練を禁止された。

こうして暇になって数日、未来から流れ星を見るのに誘われ、自然公園にて未来と二人っきりで流れ星を待っていた。

 

私が装者になってから訓練とノイズ退治ばっかりで未来に構ってやれなかった為、未来と二人っきりになれるこの時間は良かった。

 

けど、心残りがある。

 

(猛さん……)

 

失踪宣告を出されて捜索を打ち切られた本郷猛さん。

二課の手を借りても見つからず、未来のように最悪の事態も覚悟している。

 

(猛さん、どこにいるの…?)

 

「……き。」

 

(お礼も言えないまま、もう会えないの…?)

 

「ひ…き。」

 

(猛さん、会いたいよぉ……!)

 

「響!」

 

未来の言葉にハッとする。

 

「響、どうしたの?さっきからボーっとして、もうすぐ流れ星だよ?」

 

「あっ…ごめん、ちょっと考え事を……」

 

私はそう誤魔化すが、ちょうどそのタイミングで未来が指差した。

 

「あっ、ほら始まったよ!」

 

「えっ⁉︎」

 

未来が指差す先の夜空へと視線を移すと、そこには幾つもの流れ星が煌めいていた。

 

「「わぁ……‼︎」」

 

幻想的な光景を私達は無言で眺める。

こういう流れ星には願い事と相場が決まっている。

 

未来と一緒にいられますように……

そして…

 

(猛さんと再会出来ますように……)

 

そう願いながら未来の方を向き、何か言葉をかけようとしたその時。

 

「……あれ?」

 

「何、あの光?」

 

何か、緑色の光が放物線を描くようにこっちに向かってきている。

その光は私達の目の前に着弾する。

すると…

 

「ッ⁉︎」

 

「ノイズ⁉︎」

 

なんと光の中からノイズが現れた。

咄嗟に未来を後ろに庇うと…

 

「こんなところでのんびりお星見たぁ、いいご身分だな融合症例‼︎」

 

そのノイズを掻き分けるようにして、白い鎧を身に纏った少女が現れた。

白い鎧は所々トゲトゲしており、顔はバイザーで隠れている。

 

「あなたは誰⁉︎それにこのノイズ達はあなたが操ってるの⁉︎」

 

「そんなこと今からあたしに攫われるお前に知る必要があるのかよ、【融合症例】

 

「【融合症例】⁉︎どうしてそのことを……⁉︎」

 

融合症例……聖遺物と人が何らかの方法で融合した症例、つまり私のこと。

けど、私が融合症例なのは二課の中でも一部の人達しか知らず、表向きには『新たに発見された適合者』とされている。

それなのにこの少女は私が融合症例なのを知っている。

 

「おしゃべりはここまでだ、さっさと捕まりな‼︎」

 

「何がどうなってるの、響?」

 

「未来………」

 

未来は何が起こってるのか分からず、困惑している。

まずは未来をここから逃さなければならない!

 

「未来はここから逃げて‼︎」

 

「でもッ‼︎」

 

「何が何だか分からないと思うけど、お願い!私は、未来が通る道を切り開く‼︎」

 

もちろん戦闘は禁止されているし、何よりシンフォギアに関しては秘密にしなければならない。

けど、今は未来をここから逃すために私は‼︎

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

聖詠を口ずさみ、私はシンフォギアを纏う。

 

「響、その姿⁉︎」

 

「あたしとヤル気か、融合症例?」

 

未来の驚く反応に目も暮れず、私は構えを取る。

 

「ハァッ‼︎」

 

私が地面を踏み抜かんばかりの勢いで蹴り、そのまま拳をノイズに叩きつける。

その拳はノイズを砕くだけで無く後ろに控えたノイズも吹き飛ばし、一本の道が出来る。

 

「未来、説明は後でするから今は走って‼︎」

 

「でも、響を置いては……!」

 

「お願い!行って、未来ッ‼︎」

 

未来は躊躇していたけど、私の必死の叫びに唇をギュッと噛み締め、出来た道を走り出す。

 

「自分が囮になってお友達を逃がすたぁ、泣かせるじゃねぇか融合症例!」

 

「未来に何かしようとしたら……絶対許さない‼︎」

 

白い鎧の少女に対し、私は自分でもビックリする程の低い声で言う。

 

「…安心しな、関係ない奴を巻き込むような真似はしねぇよ。」

 

「えっ……?」

 

予想外の返答に、私は思わず声を出す。

彼女の言う通り、ノイズは待機しており未来を追い掛ける様子もない。

ノイズを操るくらいだからどんな危険な人かと思ったけど、この様子なら対話が可能かも…!

 

「ねぇ、こんなことなんてやめて話し合おうよ。私達ノイズじゃ無くて同じ人間なんだよ。あなたに何か事情があるなら話し合えばきっと……」

 

「はンッ!戦場(いくさば)で何をバカなことを‼︎」

 

彼女は私の提案を一蹴すると、纏っている鎧からピンク色のトゲトゲの鞭をしならせて叩き付けるように振るう。

紙一重で鞭を躱すも追撃として2本目の鞭が襲い掛かる。

私は後ろへ大きく跳んで躱すと同時に距離を取ろうとするも…

 

「お前の相手はあたしだけじゃねぇぞ‼︎」

 

彼女はノイズの群れを操り、私にけしかける。

殺到してくるノイズの群れに対し、徒手空拳で応戦する。

戦い方を身体が覚えている為、順調にノイズを倒していくが、その最中嫌な気配を感じとり身体を一歩引かせた。

すると目の前をピンクの鞭が通り過ぎた。

さらに時間差でもう一本の鞭が襲い掛かる。

 

(ノイズの群れに紛れての鞭攻撃が厄介…なら!)

 

私はノイズを一気に蹴散らし、彼女の間合いの内側に入り込む為に駆け寄る。

 

「読めてるんだよ、バーカ‼︎」

 

けど、彼女の両脇には見たことのないノイズが現れ、嘴から白い液体が噴射される。

すかさず横に跳んで避けた為命中こそしなかったが、白い液体は地面に当たるとネバネバしながら広がる。

間髪入れずにノイズが襲い掛かり、私は応戦し続ける。

 

「お前、ギア纏ってたった一ヶ月の割にはかなり強いんだってな。でもな……ノイズ相手じゃ無双できても狡すっからい人間の相手はどうかな⁉︎」

 

「ッ⁉︎またッ‼︎」

 

ノイズの攻撃に隠れるように襲い掛かる鞭を躱し、もう一本の鞭を警戒する。

しかし、もう一本の鞭の攻撃の気配が無い。

チラリとノイズの隙間から鎧の少女の姿が見える。

もう一本の鞭は……地面に突き刺さっている。

 

(…まさか‼︎)

 

次の瞬間、地面から鞭が飛び出し私の足に絡みつく。

やられた……!

鞭の連続攻撃と見せかけて片方の鞭を地中に進ませて私の足元に絡ませるなんて……!

 

「そ〜ら…よッ‼︎」

 

「ぐっ⁉︎」

 

足を取られて空中に大きく振り上げられ、そのまま地面に叩きつけられてしまう。

受け身を取ったことでダメージを最小限にし、立ちあがろうとするも……

 

「う、動けない……これは⁉︎」

 

手が地面から離れないことに気付き、手に視線を移すと白いネバネバしたものが手に地面ごと付いていた。

脱出しようと力を込めても、ビクともしない。

そのまま先程のノイズからネバネバした液体が連続で放たれ、指一本動かせない程固められてしまう。

 

「一丁上がり、これがゴキブリホイホイならぬ【融合症例ホイホイ】ってな!」

 

「くっ…!」

 

「それにしても、なんだってこんなやつが必要だって言うんだよ。あたし一人でやれるっていうのに………」

 

この子、仲間がいるんだ。

私を誘拐しろと言ったのはその仲間であって彼女の意思じゃない。

 

「…じゃあさっさと行くぞ、融合症例。空の旅にご招待だ!」

 

彼女が変わった形の杖を掲げると、杖から緑の光が放たれてそこから飛行型ノイズが現れる。

このままでは誘拐される、何か…何か手は?

 

 

「おっと、ソイツは俺の獲物だぜ?」

 

 

すると突如として声が響く。

少女の仲間かと思ったけど、彼女の警戒ぶりから違うと思う。

 

「ッ⁉︎誰だ‼︎」

 

彼女が吼えた次の瞬間、空から何かが降り注ぎ周りのノイズを一掃する。

突然のことに私達が驚いていると、何かが降り立つ。

 

それは黒を基調とするスーツにつま先が上にとんがった形の靴、脇から手首にかけて鳥の羽根が生えており、頭に鳥の仮面を付けた男だった。

 

それはノイズというより“怪人”……まさか!

 

「サラセニアオーグと同じ…」

 

「ほぅ、サラセニアオーグを知ってるのか。なら話は早い。俺の名はSHOCKERが誇るオーグメント…【コンドルオーグ】様さ!」

 

男はそう名乗る。

すると鎧の少女が噛み付いてくる。

 

「邪魔すんじゃねえ、鳥野郎!すっこんでな‼︎」

 

「コンドルオーグだ。それにテメェみてぇなクソガキに用はねぇ。そこの()()()に用があるんだ。」

 

人…殺し……⁉︎

その言葉を聞いた私は過去のトラウマを思い出す。

 

『何で生きてるの!この人殺し‼︎』

 

惨劇から生き残った矢先に起きた迫害…

見知らぬ誰かから、そんな言葉を掛けられたのは一度や二度ではない。

 

その迫害によって親友の未来と離れ離れになり、ツヴァイウィングのお陰で迫害から解放されたと思ったら、今度は迫害に加担した元加害者からの逆恨みでお母さんとお婆ちゃんが………!

 

「人殺し…だぁ?」

 

「そうさ、二年前の惨劇で人を殺してでも助かろうとした生き汚いクズ……!俺は今ものうのうと生きている人殺し共に()()()()()を下す為にここに来たってわけだ。」

 

男はここぞとばかりに畳み込む。

“人殺し”………違う!

 

「………違う。」

 

「あ?」

 

「違う!私は人殺しなんかじゃない!」

 

そうだ…!

猛さんが言ってくれた!

こんな私でも生きていいって!

 

「…確かにノイズから逃げるのに必死で見殺しにしたり、意図しない形で死なせてしまった人もいます……けど、だからといって迫害していい理由にはならない!その人達だってあの惨劇で苦しんでいる被害者なの!これ以上悪く言わないで!苦しめないで!」

 

私はコンドルオーグに精一杯の抗議をする。

すると、ネバネバする液体に何かが突き刺さる。

これは…羽?

 

「…テメェの見苦しい言い訳なんて聞きたくねぇんだよ、人殺しが!」

 

ドガァァァァァン‼︎

 

次の瞬間、羽が爆発し私だけでなく鎧の少女までも吹っ飛ばされる。

爆発によってネバネバした液体が蒸発して、動けるようになった…!

どうにかして奏さんと翼さんに合流しないと…!

 

ブスッ‼︎

 

………え?

なんとか起き上がった矢先、首筋に何かが突き刺さる。

よく見るとコンドルオーグの右手の鉤爪がしっかりと突き刺さっていた。

 

突然の事に混乱する私を他所に、コンドルオーグは言い放つ。

 

「のうのうと生きている人殺しに()()()()()だ。たっぷり苦しんで死ね‼︎」

 

コンドルオーグが勝ち誇った表情で言って……っ‼︎

 

「がっ…ああ……⁉︎ガアアアアアッ‼︎」

 

あ、熱い…!痛い!苦しい!

 

「がぁあ‼︎ああッ‼︎ぐぁああ‼︎」

 

「お、おい!しっかりしろ!」

 

あまりの激痛に私は倒れ、地面をのたうち回る。

鎧の少女も駆け寄ってくるが、痛いし苦しい事に変わりはない。

 

「テメェ…コイツに何しやがった⁉︎」

 

「…お前らにクイズだ。人間の歴史上、一番人を殺した道具とは何だ?」

 

いきなり…クイズ?

 

「はぁ⁉︎何言って…」

 

「爆弾?ミサイル?銃?…否、答えは……【毒】だ!俺の爪には掠っただけでも致命傷になる特注の猛毒が仕込んであってよぉ……こいつはアフリカゾウすら死に至らしめる代物だ……人間に打ち込んだら30分間全身が焼き尽くされるような激痛に苦しみながら死んでいくのさ!」

 

そ…んな……!

 

「…何でこんな事すんだ!これが人のすることかよ!」

 

「…ハッ!コイツを誘拐しようとした奴が何を言ってんのか……どうせアンタの上司…フィーネから誘拐してくるよう命令されてんだろ?」

 

フィーネ…?

その人が私を誘拐してくるようこの子に指示したんだ…

 

「何で知って…⁉︎」

 

「おいおい、SHOCKERの情報収集能力を舐めないでもらおうか。まぁフィーネのことだ、融合症例であるコイツを誘拐したらモルモットとして使い潰す魂胆だろう……なら、あの時焼き殺した家族の元に逝かせてもバチは当たらんだろうな!」

 

………は?

今、何て……?

 

「あの時…()()()()()……⁉︎」

 

「…まぁいい、冥土の土産として教えてやるよ。ライブの惨劇で発生した犠牲者の内、逃走の際に起きた将棋倒しや暴行によって死んだ奴がノイズによって灰にされた奴より多い為、世間やメディアが生存者を人殺しと糾弾する流れが加速したあの時……俺は丁度この頃仕事のストレスでイライラしてたんでな、憂さ晴らしがてらバッシングに加担してたのさ。どうせ人殺しだから罪悪感など湧かなかった。だが、ツヴァイウィングの活動再開の会見から全てが狂った…!今度はバッシング自体が非難され、加担した奴らに法の裁きが下った!俺も法の裁きを受けて仕事をクビになり両親に縁を切られた…!アイツらのせいで俺の人生が狂ったんだ!あのまま世間のサンドバッグになってくれりゃいいのによ……!そん時からだ、のうのうと生きている人殺し共に激しい憎しみを抱くようになったのは…!」

 

まさか…!

 

「だから近所に住んでたテメェを焼き殺そうと放火したのさ!生憎貴様は学校に行ってていなかったが家の中にいたクソアマとババアはおっ死んじまったがな!」

 

私は突然告げられた事実に衝撃を通り越して放心している。

そんな私を尻目にコンドルオーグは得意げに言い放つ。

 

「まっ、俺様は人殺しに正義の裁きを下すと同時にせめてもの情けとしてモルモットとして使い潰されるところを、先に逝ったクソアマとババアの元に逝かせてあげてんだ。感謝しな、人殺し!」

 

…こんな奴のせいでお母さんとお婆ちゃんは……!

どうして…?どうしてなの…?

 

…許さない。

 

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…!

 

「テメェ…どんだけ腐ってやがるんだ⁉︎」

 

「ハッ!テメェには関係な…ん?」

 

…不思議と痛みが引き、私は立ち上がることが出来た。

私が立ち上がったことに驚いている二人だったが、コンドルオーグが敵意を向ける。

 

「…ほぉ、まだ立てる気力があるんだな。なら、今すぐ引導を渡してやるか。」

 

そう言うと右手の鉤爪を構えながら猛スピードで迫る中、不思議と周囲の動きがスローモーションに見える。

 

コイツのせいでお母さんとお婆ちゃんが………!

許さない…!

 

殺してやる………!

 

 

 

 

 

三人称 side

 

コンドルオーグが響に襲い掛かり、猛毒を仕込んだ鉤爪を刺そうとしたその時……

 

ザシュッ‼︎

 

右手が斬り飛ばされた。

 

「「……は?」」

 

右手を斬り飛ばされたコンドルオーグは勿論の事、ネフシュタンの鎧の少女も呆気に取られる。

斬り飛ばされた右手は血を出しながら宙を舞い、そして地に落ちる。

 

「う、うわぁぁぁッ‼︎手が!俺の手がぁ‼︎」

 

断面から血が吹き出し、悲鳴を上げながらコンドルオーグは断面を左手で押さえる。

響はそんな事などお構い無しに右手に生成したアームドギア…チェーンソーをコンドルオーグの顔目掛けて横に薙ぎ払うように切る。

 

突然の事で回避が遅れたコンドルオーグはモロにくらい、横一閃に斬られ仮面が破損した。

コンドルオーグが頭部を抑えていると、響は彼の腹目掛けてチェーンソーを突き刺した。

 

キュイイイイイイイッ‼︎

 

「ギャアアアアアッ‼︎」

 

彼の断末魔が鳴り響き、チェーンソーを腹から引き抜くと血が思いっきり吹き出し倒れた。

先程まで得意げに響を殺そうとしたコンドルオーグだったが、その響の手によって瀕死の重症を負い、仮面が割れた彼の素顔は痛みと恐怖によってぐちゃぐちゃになっていた。

 

そんなコンドルオーグを前に響はゆっくりと近づく。

 

 

 

 

 

響 side

 

私の攻撃によってコンドルオーグが倒れ、悲鳴を上げながらのたうち回る。

 

……いい気味だ。

そう思いつつ、私はコンドルオーグに近づく。

 

「や、やめ…!」

 

コイツが何か言ってる……命乞いか。

散々人を殺しておいて、自分の番になったら命乞い…?

 

「…巫山戯ないで‼︎」

 

コイツのせいでお母さんとお婆ちゃんが…!

罰を与えてやる!

 

そう思い、私は左手を出しアームドギアを生成し、それをコンドルオーグの上半身目掛けて構える。

 

「…ま、待て……!」

 

「…うるさい、死ね‼︎」

 

ガガガガガガガッ‼︎

 

その瞬間、アームドギアから放たれた弾丸の雨霰がコンドルオーグの上半身に降り注ぐ。

弾丸の雨霰にコンドルオーグは悲鳴を上げる暇もない。

 

…ハハハハッ‼︎いい気味だ‼︎

今まで散々人を殺して、挙句にはお母さんとお婆ちゃんも苦しめて殺したんだ!

だったらお前も死ななきゃ不公平だよな⁉︎

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねし…‼︎

 

 

 

 

 

「やめてくれ、響‼︎」

 

…あれっ、奏さん……?

 

「もう充分だ!やめてくれ!」

 

「立花!これ以上は元に戻れなくなるぞ!」

 

それに翼さんも…

私は一体、何をしてたの…?

 

そう思いながら私は下を見る。

そこには………

 

右手が切り落とされて…お腹が血だらけになって…顔や胸が原型を留めない程ぐちゃぐちゃになったコンドルオーグが……‼︎

 

次の瞬間、コンドルオーグの全身が泡となり消滅した……

 

私が…殺した?

 

 

 

 

 

パチ………パチ………パチ………

 

すると突然、何処からか拍手が聞こえる。

 

「流石ね、コンドルオーグをこうも簡単に倒すなんて。」

 

音のする方を向くと、そこにいたのは黒いレオタードに編タイツ、そしてマントを羽織った女性…

その女性を中心に変な仮面を付けた女性達が守るように立って…⁉︎

 

「ひ…びき……?」

 

な、なんで……⁉︎

未来がそこに…⁉︎

変な仮面を付けた女性二人に取り押さえられ、信じられない表情でこっちを見ている……⁉︎

 

私は歯をガチガチさせながら自分の両手に目を向けると………

 

右手がチェーンソー、左手がガトリングガンになってる……⁉︎

しかも、チェーンソーには血が、付いて…!

 

これが…私のアームドギア……⁉︎

 

「いや…いや…違う……!こんなの…私のアームドギアじゃない!」

 

私は否定するように叫ぶ。

だが、その女性はそれを嘲笑うように言う。

 

「いいえ、それが貴女のアームドギア。何せ()()()()()()調()()()()()()()()()()()なのよ。」

 

何を、言って…?

 

「テメェ!」

 

「貴女という人は!」

 

奏さんや翼さんの非難も何処吹く風のように聞き流している。

そもそも…

 

(この人…どっかで見覚えがある……?)

 

私がそう思うのも束の間、彼女は言う。

 

「さて、立花響…いや、()()()()()()()()()()()……貴女を本来あるべき姿に戻してア・ゲ・ル♪」

 

その女性は一息置いて、次のような言葉を発した。

 

 

IF YOU WANT TO BE HAPPY,BE.(もし幸せになりたいなら、なりなさい)

 

 

その言葉を聞いた瞬間、私は頭を抱える。

 

「がっ…あっ……⁉︎」

 

「響⁉︎」

 

「立花⁉︎」

 

私の頭の中がぐちゃぐちゃになる…!

まるで頭の中が書き換えられていくように…!

私が…消えてなくなる……!

 

「おね…が……や…めて……!」

 

助けて……!

お父さん…お母さん…お婆ちゃん…奏さん…翼さん…未来…!

 

「たけ…し……さん………!」

 

 

 

 

 

三人称 side

 

彼女が何かの単語を発してからしばらくした後、響は糸が切れたかのように動かなくなった。

 

「響…?」

 

未来が呼び掛けるが、次の瞬間…響の姿が変化する。

 

響のギアが白から黒に変色し…

 

頭部のヘッドホン型のギアから黒色のバイザーが生成され、響の目元を隠すように装着する…

 

そして、目元を隠したバイザーから片目だけ赤く光った…

 

その表情はいつもの明るいものではない、無機質な機械のようだ。

 

「おい、響⁉︎」

 

「立花⁉︎」

 

二人が呼び掛けるが反応がない。

するとネフシュタンの鎧の少女が何かを感じ取り、二人の身体を鞭で巻き付けて引き寄せる。

 

「ぐっ⁉︎」

 

「おい!どういうつもり…!」

 

奏が鎧の少女に文句を言おうとした矢先、言葉を失う。

なんと右手のチェーンソーを横に薙ぎ払うように振っていた。

 

二人に危害を加えようとしているのは明白だった。

呆然とする二人を他所に彼女…綾小路律子が言い放つ。

 

「立花響?違うわね。彼女は今この瞬間から聖遺物融合型オーグメント第0号【ガングニールヒューマン】になったのよ!」

 

彼女の言う通り、今の響はいつもの心優しい少女ではない……

SHOCKERの手によって血も涙もないオーグメントへとなってしまった………




SHOCKER最上級構成員(インペリアル・メンバーズ)の一人、綾小路律子の手によってガングニールヒューマンとなってしまった立花響。
洗脳されてしまった響にツヴァイウィングの装者は苦戦するが、響の危機を察した仮面ライダーが駆け付ける。
果たして彼は彼女の心を救うことが出来るのか…?
次回、シン・仮面絶唱シンフォギア
『彼女の心を救え!仮面ライダー』にご期待ください。
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