TS転生者は「自分だけが良さを知ってる」系冒険者になりたい   作:ソナラ

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十四 クラスで三番目くらいの美少女

 めっっっちゃくちゃ唐突だけど、私はTS転生者なので顔がいい。

 ただ、一般的にTS転生者というのは何もしなくても凄まじい美少女であることがほとんどだ。

 というか、そうでないとあの顔の良さには納得がいかない。

 

 いや、具体的に誰っていう訳じゃないんだけど。

 TSモノの小説の表紙に映っているあの美少女たちは、大抵の場合何もしなくてもあんな感じの顔の良さなんだろうなぁー、と私は思うわけだ。

 

 なんでって、私の顔の良さはある程度ちゃんと整えた結果だからよ。

 身だしなみっていうのは、常日頃から手入れをしていないとよくならない。

 毎日顔洗って、髪の毛に櫛入れて絶世の美女になれたら誰も苦労しないんだって!

 

 特に何もせず、ただそのままにしていると私の顔立ちはそこそこモデリングのいいJRPGのモブ娘くらいにしかならない。

 そして、この世界では基本的に顔のいい女性が多い。

 田舎の村娘にすら、明らかにそこらのラノベでヒロイン張れるくらいの美少女が数人いたんだ。

 というか、私だって磨けばそのくらいの美少女にはなれるのだ。

 

 なので、私の顔の良さはTS転生者だからというより、この世界の容姿の平均値が高かった恩恵という感は否めない。

 もちろんそれが悪いことではないし、TSしたからにはそれなりに美少女でいたいとは思うのだけど。

 

 それはそれとして、私には譲れない一線がある。

 私の今の容姿は、美少女ではあるのだが、地味だ。

 これは私自身自覚しているし、華はないよなー、と思う。

 ラブコメのメインヒロインというタイプではないし、強いて言うなら幼馴染ポジションの負けヒロインみたいな見た目だ。

 無難で、大人しく、そして何度もいうが地味。

 

 一言で言えば、クラスで三番目くらいの美少女。

 私は、敢えてそういう容姿になるよう、自分を磨いているのだ。

 そんな私の美容の秘訣って?

 ふふん、これでも結構美容にはお金をかけているんですのよ。

 

 

 **

 

 

「び、美肌ポーションが……売り切れ……!?」

 

 とある日の昼下がり。

 今日は休日! と心に決めて訪れた行きつけの商店。

 様々な雑貨や食料品が並ぶその店で、今日のお目当てであったとある商品を買い求めようとして――在庫がないという事実を私は叩きつけられていた。

 

「ごめんなさいねぇ、昨日いきなり、やたら装備がいい女性の冒険者がおしかけてきて、在庫の美肌ポーションも含めて全部買ってっちゃったのよぉ」

 

 そう言ってくれたのは、この店の主人のおばちゃん。

 おしゃべりなおばちゃんというイメージそのままの、おしゃべりなおばちゃんだ。

 結構私にも親しくしてくれるいい人なのだけど。

 

「ぬぐぐ、美肌ポーション……美肌ポーション……別の店にあるかなぁ……」

「クロナちゃん……」

「なんだい、おばちゃん」

「――いくら美肌ポーションが便利だからって、美容の全部を美肌ポーションに頼っちゃだめよ?」

 

 …………ぐふっ。

 痛いところを突かれて、私は崩れ落ちてしまった。

 そうですよ、私は容姿を美肌ポーションに頼っている美容下手くそですよ、ぐすん。

 

 ここまでの前フリみたいな流れからお察しの通り、私の美容レベルはゴミカス以下だ。

 はっきり言って、化粧とか何もわからん。

 おしゃれだってさっぱりだ。

 私が地味な装備で身を固めているのは、敢えて地味にしたいという思惑もあるけれど。

 同時に、これなら何着ても一緒だと理解しているからでもある。

 

 あ、容姿を地味めにしているのはわざとだよ!

 クラスで三番目くらいの美少女、もしくはソシャゲの女主人公。

 あの何とも言えない、ソシャゲの高レアになるような派手な感じの美少女ではなく、あくまで地に足ついた、けれども主人公だけあってそれなりに力の入ったデザイン。

 私はそういうソシャゲの女主人公を好きになることが多い。

 

 それはそれとして、美肌ポーションとは。

 使うと美肌になれるポーションだ、名前の通りである。

 これの何がすごいって、これさえあれば化粧とかそういうの無しで、汎用型ヒロインレベルの美肌を手に入れることができる点。

 

 いくら素材が良くても、磨かなければそれは宝の持ち腐れ。

 でも、美肌ポーションさえあれば磨く必要すらない。

 私は一本を使い切るのにだいたい一月かかる使い方をしているけれど、それでも今くらい見てくれがよくなるんだから、使い勝手は最高だ。

 

 それにしても、偶に思うけどこの世界では使えば何かしらの効果がある液体は全部ポーションとして扱うのはどうかと思う。

 洗剤用ポーションとかその極みだ。

 なんでそんなコトになったかといえば、ポーションは最初ダンジョンの宝箱から見つかるものだった。

 それが段々と研究によって再現が可能になり、今に至るまで研究は続けられている。

 そしてそんな経緯だから、この世界ではまず最初にポーションという単語があり、後からこれに様々な意味が付与されていったのだ。

 

「ま、これもいい経験さ。ウチでは衣料品も扱ってるからねえ、いいのがあったら試着してってもいいからねぇ」

「く……せっしょうな!」

「それと」

「それと?」

「――次おばちゃんって言ったら、きせかえ人形にしてやるよ」

 

 ひっ。

 こわいこわい、こわいよおば……!

 やめておこう、心の声を読まれているかもしれないからね。

 

 それにしてもおしゃれ、おしゃれか……うううむ。

 わからない、何もわからない。

 

「私はどうすればいいんだー!」

 

 そう、頭を抱えるしかない。

 ――そんな時だった。

 

 

「君は何をしているんだい? ――クロナ」

 

 

 ふいに、聞き慣れた声がした。

 カランカランと、ドアが開くときに鳴る鈴の音。

 入り口に、金髪ロリが立っている。

 言うまでもなく、アスノ師匠がそこにいた。

 

 

 **

 

 

 やたら装備のいい女冒険者と聞いて、一瞬師匠の顔が脳裏をよぎったけど、こうして師匠とこの店で出会うということは何の関係もなかったらしい。

 じゃあ一体何なんだよやたら装備のいい冒険者!

 

「美容ねぇ、たしかに君は昔からそういうのに無頓着だったね」

「師匠も昔はヒゲを生やしてましたけどね……」

「だが、今は違うよ」

 

 どうやら、師匠はまだ目的のアイテムを見つけていないらしい。

 今はグラールの市場をめぐりつつ、ダンジョンに潜って探索をしているとか。

 今日この商店にやってきたのも、足りない日用品を揃えつつ、一応アイテムがないか見て回るためだとか。

 まぁ、当然ながら目的のアイテムはなかったが。

 この店、本当にごくごく一般的な商店だからね。

 結構広くて、雑貨や食料品だけじゃなく、衣料品まで扱っているみたいだから規模はでかいけど。

 

 そういえば、師匠は昔はヒゲを生やしていたけれど、今はそうではない。

 ドワーフ女性のヒゲは職人の証、なんて言うけれど。

 ヒゲをそって、高級そうな装備に身を包み、当時とは打って変わって美麗なロリと化している。

 師匠に欲情するのは特殊性癖だけど、そうなってしまっても仕方がないくらい今の師匠は可愛かった。

 

「これでも私だって、昔と違って美容には気を使っているんだ」

「おお……! であれば美容の美の字も知らぬ(わたくし)めに、天啓を授けてくだされー!」

「よかろう。この私が見出した美容の秘訣を授けてしんぜようじゃないか」

 

 す、すごい……! 師匠が神々しく見えてきた!

 私の故郷にいた時は、下手するとヒゲから日向に干した布団の香りがしていた師匠が……!(※)

 あの師匠がこんなにも神々しく……!

 

 ※ドワーフのヒゲというのは、大地の化身、自然の象徴とも呼ばれ、無意識に体内の魔力が集まる場所だ。その魔力にいろんな生物が引き寄せられたりする。……ダニとか。

 

「……ところで、クロナ君」

 

 そんな師匠は、キョロキョロと店内に視線を向ける。

 どうしたんだろう? 何を探しているんだろう。

 

 

「この店に、美肌ポーションってあるかな?」

 

 

 ――――師匠もかぁ。

 

「ってなんだい、そんな凸の字みたいに店の床に倒れ込んで! ばっちいぞ!」

「師匠……! 師匠! それ私と同レベルですよ……! どうせ師匠も化粧とかは全部美肌ポーション頼りなんですよね……!」

「…………そ、そんなことないぞ!?」

「ちなみに、美肌ポーションは売り切れだそうです……!」

「!!!!!」

 

 地面に倒れ込む変な人が二人に増えた。

 遠くから、ニコニコ圧をかけてくるおば……店主の姿が見える。

 い、いいじゃないですかこの時間は店に客いないんだから。

 ……ごめんなさい。

 

 ――閑話休題。

 

「それにしても、おしゃれねぇ……ごめん、正直に言うと私もよくわからないんだ」

「ですよね……師匠のその服、前に見たときと同じやつみたいですし」

「バカにするな! 同じやつを複数着もっているんだ。そもそもそれ言ったら、君だって似たようなものだろう!」

「結構違いますよ! ほら、ここの柄とか!」

「裏地じゃないか!!」

 

 それから私達は商店の衣料品コーナーに移動して、他の客の迷惑にならない声量でやり取りをしている。

 まぁ、相変わらずお客さんは私達しかいないけど。

 

「うーん、たとえばこういう服とか、私に似合うのか?」

「師匠はちっちゃいですから、師匠が着れる服ならだいたい何でも可愛いとおもいますけど」

 

 いいながら、師匠が手に取ったのはピンクの花がらのワンピースだった。

 小さい女の子が着る服だから、当然のように可愛らしい。

 金髪の師匠に似合うかは不明だが、まぁ着ればだいたいなんとかなるだろう。

 師匠の顔の良さでゴリ押しできる。

 

「各地を旅してると、冒険譚を聞かせてほしいと偉い人に頼まれることがあるんだ。そういう時は、結構高価なドレスを着せてもらう時があるよ」

「ほうほう、どんな感じですか?」

「確か……これかな」

 

 いいながら、師匠は懐から一枚のガラス板を取り出した。

 そこに魔力を通すと、ちょっと映像は鮮明ではないけれど、一つの写真が浮かび上がってくる。

 いわゆるデジカメの機能を持っているマジックアイテムだ。

 確か「クリスタルキャプチャー」とかいう名前の、結構高価なアイテムだったはずだ。

 師匠が旅をする理由の一つに、各地の絶景とかを見て回るというのもあったと思うけど、それを記録するために入手したんだろうな。

 

 で、見せてくれたのは黒いドレスに身を包んだ、化粧ばっちりの師匠の姿だった。

 

「この背丈で、人ってここまでセクシーになれるんですね」

「どういう感想だい、それは!」

 

 手元の黒いローブと、ところどころが透けていてタイツになっていて、その上にレースが散りばめられている衣装。

 首元のネックレスと耳元のイヤリング。

 目立たないけれど、唇の厚みをもたせるリップ。

 どれ一つとっても、美しい大人の女性という感じだ。

 

 ドワーフというのは全員背が低いものだけど。

 師匠はその中では結構背が高い。

 人族基準で言えば、かなりの高身長で体型も豊満な大人の女性という感じだ。

 それがこの写真の雰囲気にも如実に出ている。

 

 ううん、私みたいな地味系美少女に、こんなセクシーさは無理だ。

 大人の色気ぇ……

 

「敗北感に打ちひしがれそうです」

「君は、君に合ったおしゃれがあるだろう。君だって、結構フォーマルな場に出たりすることはあるんじゃないか?」

「ギルドの会合とかには顔を出したりはしますね……」

「君、冒険者としては本当に特殊な立ち位置だね?」

 

 しょうがないじゃないですか。

 ギルドの重要な会議に、私は結構呼ばれることがある。

 まぁ、そういう時には今みたいな地味系冒険者スタイルではなく、それなりにちゃんとした装備で臨むけど。

 

「アレは……でもミアさんに仕立てて貰ったものだしな……」

「それ言ったら、さっきの私のドレスも私はきせかえ人形にされただけだよ」

「…………」

 

 そういわれて、私はのんびりと店番をしている店主さんの方を見る。

 ……アリなんじゃないか? きせかえ人形。

 

「――よせ、やめるんだ」

「師匠?」

「君が今何を考えているのかは解る。たしかにそれは楽な道に見えるかもしれない」

「……師匠?」

「だが、絶対にやめるんだ、それだけは……それだけは……! うう、私はお姫様じゃない……!」

「師匠ーーーー!」

 

 やっぱりきせかえ人形はなしだ、師匠のトラウマを刺激してしまった。

 なんとなく何が起きたのか想像できてしまったしね。

 ううむ、何にせよ手詰まりだ。

 私も師匠も、ただおしゃれが出来ず、美容もろくに気にかけていない事がバレてしまっただけだった……

 

 そんな時だった。

 からんからん、と扉が開いて。

 新たに、私の知り合いがやってきた。

 

 

「あ、クロナ先輩、こんにちは」

 

 

 ――白ローブに豊満ボディ、黒髪少女のコノハがそこにいた。

 ……………………

 …………

 ……うん。

 

 なんとなく、彼女と出会った時点でオチはよめたけど。

 一応聞いてみることにした。

 

「び、美容……ですか? すいません、わ、私そういうのあんまりわからなくて。あ、でも、最近すっごく使いやすいアイテムを見つけたんですよ」

 

 それって?

 濁った瞳で私は、コノハの言葉の続きを待った。

 

 

「――美肌ポーションっていうんですけど」

 

 

 今日はそれを買いに来たんですよ、とコノハ。

 そんなコノハに、美肌ポーションの在庫がないことを告げると――

 

 地面に崩れ落ちる顔はいいのにおしゃれのできない底辺女子力が、三人になった。

 

 人、これを天丼という……




異世界なんだしTS転生者に優しい化粧品もあってほしいという願望がつまっています
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