この素晴らしい世界に雷帝を   作:レイファルクス

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原作前・爆焔編
第1話


 

 

佐藤和真(サトウカズマ)さん、はじめまして」

 

 

「あ…はい。はじめまして」

 

 

佐藤和真は白い空間で目の前にいる天使と挨拶を交わした。

 

 

「佐藤和真さん、この度は御愁傷様でございました」

 

 

「……やっぱり知ってるんですね、俺の"死因"を」

 

 

そう、和真は死んでいるのだ。何故彼が死んでしまったのか?その理由は単純明快。

 

 

「はい、貴方はトラックに轢かれそうになった少年を助ける為に突き飛ばし、少年の代わりにトラックに轢かれました」

 

 

和真は赤信号で進入してきたトラックに轢かれてしまったのだった。

 

 

「佐藤和真さん、貴方は今まで幾つもの善行をしてくださいました。ある時は老人ホームでヘルパーのお手伝い、ある時は街の美化活動、キリが無い程あります。そんな貴方に神々は『このまま天国に行ったり、記憶を消して生まれ変わらせるのはもったいない』と言って異世界への転生が決まっております」

 

 

「異世界への転生…ですか」

 

 

「はい。それに伴って特典を授ける事になっています。それと通常でしたら特典は一つだけなのですが、佐藤和真さんには特別に二つ特典が授けられます」

 

 

「二つも…ですか」

 

 

和真は特典が二つももらえる事に唖然とした。

 

 

「特典はこちらの『特典本』から選ぶ事になっています。もし本に載っていない特典がございましたら何なりとお申し付け下さい」

 

 

天使は和真に電話帳と同じ厚みがあるであろう本を渡した。そして和真はその本一(ページ)一頁じっくりと読んだ。

 

 

「……決まりました。まず1つ目は『金色のガッシュ!!』に登場する"ガッシュ・ベル"とその兄の"ゼオン"が使う術全て。2つ目は本の中にある"紅魔族への生まれ変わり"でお願いします」

 

 

「『金色のガッシュ!!』と言うのは、あの"優しい王様"を目指す魔物の…?」

 

 

「はい、それで間違いありません」

 

 

「……わかりました。貴方の特典は無事に受理されました。…ではそのまま動かないで下さい」

 

 

天使はなにやら呪文を唱えると、和真の足元に魔方陣が描かれた。

 

 

「では佐藤和真さん、貴方を異世界の紅魔族に転生させます。これからの人生、多くの実りがあらんことを…」

 

 

こうして、佐藤和真は紅魔族として2度目の人生を送る事になった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「生まれた…」

 

 

「生まれたわね…」

 

 

ここは紅魔族が住む町"紅魔の里"。その家では新たな命が生まれた。

 

 

「見てあなた…、この子髪が"金と銀"の二色よ」

 

 

「本当だ…。…よし、この子の名前は今日から『ガッシュ』だ」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

数年後…

 

 

《ガッシュside》

 

 

「はああぁぁぁ……、フンッ!"ティンダー"!」

 

 

俺はサトウカズマ!十二才!今は生まれ変わってガッシュと言う名前になっている。そして今は山にある特訓場で魔法の練習中だ。

 

 

ポスッ…

 

 

「だはぁ~、また失敗だ~」

 

 

また失敗した。…俺は生まれつき魔力と知力が大人よりもずば抜けて高かったみたいで、特例で魔法を習得させてもらったんだけど、ちっともできる気がしないや。

 

 

「相変わらず失敗ばかりですね、流石は"紅魔族随一の落ちこぼれ"と言われるだけはあります」

 

 

この子は"めぐみん"、俺の幼なじみでしょっちゅう俺をからかってくる二才年下の女の子だ。

 

 

「それは皆が言ってるだけで、俺は落ちこぼれじゃねえ!」

 

 

「おおガッシュ、今日もここで魔法の練習か?」

 

 

「父ちゃん。…うん、今火の初級魔法の"ティンダー"を練習していたんだけど、ちっともできなくて…。これなら簡単なんだけどね。…"ライトニング"」

 

 

俺は的に向けて魔法を唱えると、手のひらから雷撃が走って的を射抜いた。

 

 

「まったく…、中級魔法の"ライトニング"ならともかく、他の魔法が使えないなんて、なんでなんだろうな?」

 

 

「俺が知りたいよ…」

 

 

父ちゃんの疑問に俺は知らない"フリ"をした。…まあ、特典の影響かもしれないけどね。

 

 

「ほら、今日はもう遅いから早く帰りなさい。めぐみんちゃんは私が家まで送っていくから」

 

 

「分かった。めぐみん、またな」

 

 

俺は父ちゃんに促されて山を下山する…と見せかけて、こっそりと茂みに隠れた。そして二人が見えなくなったのを合図に、俺は特訓場に戻った。

 

 

「…今日こそ上手くいってくれよ」

 

 

俺は特訓場にある大きな切り株の上で座禅を組んで、迷走…じゃなくて瞑想をした。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

《また貴様か》

 

 

やあ"バオウ"、また来たよ。

 

 

《何度来ても同じだ。我は貴様の力になぞならん》

 

 

……やっぱり。そう言うと思っていたよ。

 

 

《なら何故何度も我に会いに来る?》

 

 

なんでって…、そりゃ"友達"になりたいから…かな?

 

 

《…は?》

 

 

だって、バオウと"ジガディラス"は術の中じゃ唯一『自我』を持っているじゃない?だからただの術としてじゃなくて、一緒に戦う"仲間"とか"友達"になりたいなって…。

 

 

《クッ…、ハハハハハッッ!何度も我に会いに来る理由が"友達"になりたいからとは…。傑作だ!》

 

 

なんだよ…、笑う事無いじゃないか…。

 

 

《いやすまぬ。…そうか、"友達"か、我を生み出した者や宿した者はなんとしてでも我を制御しようと躍起になっていたものだが…、まさか貴様のような者が現れるとはな》

 

 

もしかして呆れた…か?

 

 

《いや、寧ろ逆だ。貴様は我を"術の1つ"としてでは無く、"我"として見てくれているのだな。…うむ、決めたぞ。我は貴様の力となろう》

 

 

本当か!?

 

 

《ああ。…さあ、そろそろ目覚める時間だ。目覚めれば貴様は我等の力を使う事ができよう》

 

 

…ありがとう、バオウ。

 

 

《……行ったか》

 

 

《良かったのか?》

 

 

《…ジガディラスか》

 

 

《奴はまだ(ウヌ)等の力を制御するには未熟、それなのに我等の力を授けるとは…》

 

 

《……見てみたくなったのだ、(われ)等を宿す者がどんな未来を見せるのかを》

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

俺は瞑想を終えて立ち上がろうとした時に、両手に違和感を感じたから見てみると、両手の甲には"金色と銀色の雷のマーク"があった。

 

 

「…ありがとう、バオウ。ジガディラス」

 

 

俺は自分の胸に手を当てて、改めて自分に宿る"自我"にお礼を言った。

 

 

《ガッシュside end》

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

3年後…

 

 

「ではこれより体育改め戦闘訓練を始める!」

 

 

ここは紅魔の里にある魔法学校『レッドプリズン』。その校庭で授業が行われていた。だがこの日は何やら雲行きが怪しく、今にも雨が降りだしそうな天気だった。

 

 

「我々紅魔族において戦闘の上で最も大切なものは何か。……"ゆんゆん"!」

 

 

「えっ!?れ、冷静さ!何事にも動じない冷静さが大切だと思います」

 

 

教師が一人の女子生徒の名を呼び、呼ばれた生徒は質問に答える。

 

 

「五点!次、めぐみん!」

 

 

「破壊力です、全てを蹂躙する力!力こそ最も大切だと思うのです!」

 

 

教師は生徒の回答に点数を付け、次にめぐみんに質問をし、めぐみんは質問に答える。

 

 

「五十点!これが本当にクラスの上位者なのか……」

 

 

教師はめぐみんの回答に点数を付け、めぐみんは納得がいかず、教師は地面に唾を吐いた。

 

 

「"あるえ"!お前ならわかるだろう!その左目を覆いし眼帯が似合うお前ならば」

 

 

「格好良さです」

 

 

あるえと呼ばれた生徒は眼帯を外し、決めポーズをしながら答えた。

 

 

「百点だ!"スキルアップポーション"をやろう」

 

 

教師はあるえの回答に満点を出した。

 

 

「そう格好良さ!我ら紅魔族の戦闘は華がなくては始まらない!では、今からそれがどういうことかを実演する」

 

 

教師は持っている杖を頭上に掲げると

 

 

『コール・オブ・サンダーストーム』

 

 

杖に向かって雷が落ちた。

 

 

「我が名はぷっちん!アークウィザードにして上級魔法を操る者!紅魔族随一の担任教師にしてやがて校長の椅子に座る者!」

 

 

教師(ぷっちん)は内心『決まった』と思った。

 

 

「よーし!それでは好きな者同士でペアを作れ!そしてお互いに格好良い名乗りを上げてポーズの研究に励むのだ!」

 

 

ぷっちんの掛け声で生徒達は次々とペアを決めていった。…が、めぐみんとゆんゆん、あるえの三人はまだペアを決めていなかった。

 

 

「めぐみん、組む人はいる?いないなら私と組むかい?」

 

 

あるえはめぐみんに声を掛け、ペアを組んだ。

 

 

「………」

 

 

そしてゆんゆん一人がペアを組めずにいた。

 

 

「ゆんゆん、良かったら俺とペアを組むか?」

 

 

「…えっ?」

 

 

そこにガッシュが荷物を持って現れた。

 

 

「ガッシュ!貴様今まで登校せずに何をしておった!?」

 

 

「先生、俺は半月ほど前に『親の仕事の手伝いでしばらくお休みします』って連絡を校長と貴方にしましたが?」

 

 

ガッシュの説明にぷっちんは思い出したかのような顔をした。

 

 

「どうやら思い出されたようですね、その様子だと。ではこれから校長に挨拶をしてから授業に参加させていただきますね」

 

 

「…ガッシュ、ちょっと待ってくれませんか?」

 

 

ガッシュが校舎に入ろうとした所をめぐみんが止めた。

 

 

「なんだめぐみん?」

 

 

「私が案内しますよ、迷子になったら大変ですからね」

 

 

「迷子って…、子供じゃあるまいし」

 

 

めぐみんが校長室への案内を申し出たその時。

 

 

ポツッ

 

 

「んっ?」

 

 

「おや?」

 

 

「あ…雨だ」

 

 

とうとう雨が降り始めた。そして雨量は徐々に多くなり、どしゃ降りになった。

 

 

「そう言えば、今日は魔力の源たる月が最も高く昇る日……!抑えられていた俺の魔力が溢れだしてしまったのか……!」

 

 

「いや単なる"雨乞いの護符"を使いすぎただけだろう…。しゃあねえなあ…」

 

 

ガッシュはおもむろに右手を雨雲に向けた。

 

 

「(魔力が滞留している箇所は…あそこか)穿て、『ザケルガ』」

 

 

ガッシュは貫通力が高い術を雨雲に向けて撃った。すると撃たれた雷は雨雲を貫通し、雨雲が晴れ、陽光が地面を照らした。

 

 

「…我が名はガッシュ!紅魔族随一の行商の息子にして、雷帝をその身に宿す者!」

 

 

ガッシュは陽光を浴びながら名乗りを挙げる。その姿を見た生徒達は『格好良い…』と思った。

 

 

「幾ら格好良くても、冷静さを欠いていればその隙を突かれ負けてしまう。そして冷静であっても破壊力がなければ意味が無い。先生の代わりに俺がゆんゆんとめぐみんに百点をあげよう」

 

 

ガッシュはめぐみんとゆんゆんに向かって微笑んだ。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ねえねえ、さっきの雨雲を貫いた魔法はなに!?」

 

 

放課後、ガッシュはクラスメートに囲まれていた。

 

 

「あれは厳密に言うと魔法じゃないんだ」

 

 

「魔法では無いのなら、何なのですか?」

 

 

「俺は"術"と呼んでいる。……まあ、分かりやすく言えば、『俺にしか扱えない魔法』ってところかな?」

 

 

ガッシュが説明をすると、クラスメート達は目を輝かせた。

 

 

「自分にしか扱えない魔法って…、何か響きが格好良い!」

 

 

「憧れるねー」

 

 

ガッシュがクラスメートにちやほやされている中、めぐみんはその光景をずっと見つめていた。

 

 

「…っとそうだ、皆にお土産があるんだった」

 

 

『お土産!?』

 

 

「ああ。今回は王都まで行ったんだが、荷物が多くてな。帰って来るのに半月も掛かっちまったんだ。…まあ、父さん達はそれを見越していたのか、俺に休学手続きをするように進言していたからな。ほら、配るから並べ並べ!」

 

 

ガッシュの前にクラスメート達が並び、ガッシュは一人一人渡していった。

 

 

「次は…あるえか。なら"コレ"だな」

 

 

ガッシュはあるえに王都で人気の筆記具を渡した。

 

 

「後は…あれ?あるえで最後か?」

 

 

ガッシュの持っている袋の中にはまだお土産が残っていたが、ガッシュが周りを見渡すと、めぐみんとゆんゆんがまだお土産を受け取っていない事が判明した。

 

 

「ゆんゆん、めぐみん」

 

 

「ガッシュではありませんか。どうしたのですか?」

 

 

「いやどうしたも何も、お前らはお土産いらないのか?」

 

 

ガッシュは二人の側まで行くと、めぐみんが声を掛け、ガッシュはめぐみんの質問に答えた。

 

 

「私は欲しいけど…」

 

 

ゆんゆんはお土産を欲しそうにしていたが、めぐみんを何度もチラ見する。どうやらめぐみんに遠慮してお土産をもらいにいかなかったようだ。

 

 

「別に遠慮する事無いのに…、ほら」

 

 

ガッシュは袋から人形を出し、ゆんゆんに渡した。

 

 

「これは木彫りの人形なんだが、細工が面白くてな。ちょっと貸してみ?これをこうする…と」

 

 

ガッシュはゆんゆんから人形を受け取ると、真っ二つに開けた。すると人形の中に同じ模様の小さい人形が入っていた。

 

 

「あ…、人形が」

 

 

「そう、これは人形を開けると中に小さい人形が幾つも入っているんだ」

 

 

「面白いですね、これはなんと言う人形なのですか?」

 

 

「確か…『マトリョーシカ』だったかな?それと…、はい。これはめぐみんへのお土産」

 

 

ガッシュは袋からお菓子の詰め合わせをめぐみんに渡した。

 

 

「今王都で人気のお菓子の詰め合わせだ。妹ちゃんと一緒に食ってくれ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

めぐみんは受け取ったお菓子を鞄にしまった。

 

 

 

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