この素晴らしい世界に雷帝を   作:レイファルクス

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第4話

 

 

ガッシュ、めぐみん、ゆんゆんの三人が卒業してから数日後、めぐみんは職を探していた。

 

 

と言うのも、めぐみんは『駆け出し冒険者の街』と呼ばれるアクセルに行きたかったのだが、里の周辺には強いモンスターが多数生息しており、爆裂魔法しかないめぐみんが撃てば、モンスターを倒しても動けなくなるのは必須で、更には他のモンスターをも呼び寄せてしまう。

 

 

そこでめぐみんは『転送屋』と呼ばれる『テレポート』を使って物や人を送る店を頼ったのだが、生憎転送屋はアクセルを登録をしていなかった。

 

 

なので、まずは最寄りである『水と温泉の都』アルカンレティアまでテレポートしてもらい、そこからアクセル行きの馬車に乗せてもらう"つもり"だった。

 

 

「アルカンレティアへの片道切符が三十万エリス…、今日こそは雇ってくれる工房があると良いのですが…」

 

 

「やあめぐみん、今日も仕事探しか?」

 

 

めぐみんが自分を雇ってくれる工房を探していると、めぐみんに声を掛ける者がいた。

 

 

「もう諦めて里の対魔王軍遊撃部隊に入らないか?」

 

 

めぐみんに声を掛けたのはぶっころりーだった。

 

 

「い、嫌ですよ!ゆんゆんから聞きましたよ、給料も出ない名前だけのなんちゃって自警団じゃないですか!」

 

 

そう、ぶっころりーは里のニート達を集めて勝手に自警団を設立してしまったのだ。と言うのも、ここ最近魔王軍による襲撃が起こっており、ぶっころりーはチャンスとばかりに自警団を設立したのだった。

 

 

「自警団はやめてくれ、ちゃんと"レッドアイ・デッドスレイヤー"って言う立派な名前があるんだ」

 

 

「俺から言わせてみれば、自警団を口実に仕事をせずに毎日堕落しているアホニート集団だがな」

 

 

「「えっ?」」

 

 

そこにガッシュが紙の束を抱えた状態で現れた。

 

 

「ガッシュではありませんか。…その紙の束は何ですか?」

 

 

「これは"仕入れ表"さ、どの店でどんな品物が欲しいのか、どれだけ欲しいのかを記入してもらっているのさ。それでウチの在庫と照らし合わせて納品したり、品物を手に入れる為に出たりしているんだ」

 

 

ガッシュはめぐみんに紙の束を見せながら説明をした。

 

 

「ひょいざぶろーさんから聞いたぜ?アクセルに行きたいんだって?」

 

 

「……はい。それで路銀を稼ぐ為に工房を色々廻っているのですが…」

 

 

「…もし良かったらウチで働くか?」

 

 

ガッシュはめぐみんに仕事を紹介した。

 

 

「良いのですか!?」

 

 

「仕事内容はめぐみんがしたがっているのとは違うけど…、それでも良いなら…な」

 

 

「こちらとしては願ったり叶ったりですよ!」

 

 

めぐみんは仕事を紹介してくれたガッシュに詰め寄った。

 

 

「なら早速、ウチに戻って手伝ってもらおうかな?…っつーわけで、じゃーなアホニート。お前もいい加減家の手伝いしろよ?」

 

 

ガッシュはめぐみんを連れてぶっころりーの側を離れたのだった。

 

 

「……俺も家の手伝い、真面目にするかな…?」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ただいま」

 

 

「お邪魔します」

 

 

ガッシュはめぐみんを連れて自宅兼事務所の扉を開けた。

 

 

「おおガッシュ、帰ったか!おや?めぐみんちゃん久しぶりだね!」

 

 

「お帰りなさいガッシュ、久しぶりねめぐみんちゃん」

 

 

「"びりびり"さん、"えんげる"さん、お久しぶりです」

 

 

「父さん、母さん。めぐみんについてなんだけど…」

 

 

めぐみんはガッシュの父びりびりと母えんげるに会釈をし、ガッシュは両親にめぐみんが家に来た事情を話した。

 

 

「なるほど…、事情は分かった。…だが、いくら知り合いとは言え力量が分からないのでは話にならん。そこで、今から妻の仕事を手伝ってもらう。そして一人でこなせるようになれば従業員として採用しよう」

 

 

「分かりました。お手柔らかにお願いします」

 

 

「うむ。…妻よ、頼むぞ?」

 

 

「任されたわ。それじゃめぐみんちゃん、こっちに来て」

 

 

えんげるがめぐみんを手招きして呼び寄せ、めぐみんはえんげるの隣に立った。

 

 

「まずこの書類を種類別に分けるの。この書類は武具の素材だからこっち、この書類は被服関係だからここ」

 

 

えんげるはめぐみんの目の前で実際に一枚一枚分けていった。

 

 

「…こんな感じでやってほしいの、お願いね?」

 

 

「はい!」

 

 

めぐみんは与えられた机の上にある書類を素早く目を通し、種類別に分けていった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「お…終わりました~っ!」

 

 

「お疲れ様めぐみんちゃん」

 

 

時間は夜、めぐみんは仕事が終わると同時に机に突っ伏した。

 

 

「お疲れめぐみん、はいジュース」

 

 

「ありがとうございます…」

 

 

ジュースが入ったマグカップをガッシュがめぐみんに手渡すと、めぐみんは机に突っ伏したまま飲もうとしていた。

 

 

「そのままじゃ溢すぞ?ほらストロー」

 

 

ガッシュはマグカップにストローを刺すと、めぐみんはストローを口に咥え、ゴクゴクとジュースを飲み干した。

 

 

「御馳走さまでした」

 

 

「はいお粗末さん。今日1日仕事して、どうだった?」

 

 

「ガッシュやご両親の忙しさが身に沁みて伝わりました」

 

 

めぐみんは書類の種類分けの他に、分けた書類の納品期日が早い順に並べ替える作業や、ガッシュと一緒に倉庫に行って在庫の種類や数を調べたりと、中々ハードな仕事をこなしていた。

 

 

「めぐみんちゃん、もう外が暗くなっているから、ご飯はウチで食べて行きなさい」

 

 

「そうね、そうした方がいいわ」

 

 

「お気遣いありがとうございます。…ですが、両親や妹が家で待っていますので」

 

 

びりびりとえんげるはめぐみんを食事に誘うが、めぐみんは丁重に断った。

 

 

「そうか…、ならガッシュ。めぐみんちゃんを家まで送ってあげなさい」

 

 

「そうね。女の子が一人、夜道を歩くのは危ないわね」

 

 

「別に構わねぇけど、ちょっと準備してからでいいかな?」

 

 

びりびりとえんげるはガッシュにめぐみんを家まで送り届けるよう言うと、ガッシュは準備をしてからと言った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「すみませんガッシュ。わざわざ送ってくださって……」

 

 

「別に気にする必要はねえよ。どのみち送るつもりだったし」

 

 

準備を整えたガッシュは、めぐみんと一緒に夜道を歩いていた。

 

 

「ところで…、そね包みは何ですか?」

 

 

「んっ?めぐみんの夕食。元々ひょいざぶろーさん達の分も持っていくつもりだったしな、めぐみんの分もあるぜ」

 

 

めぐみんはガッシュが持っている包みが気になり質問すると、ガッシュは隠す事無く答えた。

 

 

「そうですか…、わざわざ作ってくれてありがとうございます」

 

 

「お礼を言われる程じゃ無いさ。それにこれは仕事を手伝ってくれたご褒美のつもりだし…」

 

 

「それでも、ありがとうございます」

 

 

めぐみんは何度もお礼を言い、ガッシュは照れくさそうに視線をめぐみんから反らした。

 

 

「…っと、もう着いたか」

 

 

「…ですね」

 

 

夜道を歩き出してから十数分後、ガッシュはめぐみんの家の前まで着いた。

 

 

「んじゃあこれ、渡しとくな。それと、明日9時頃に迎えに来るから」

 

 

「……えっ?」

 

 

弁当を受け取っためぐみんはガッシュが言った言葉の理解が出来ずにいた。

 

 

「父さんがめぐみんにさせた仕事は云わば"試験"だったんだよ。めぐみんは採用、明日から正式にウチで働いてくれって」

 

 

「……貴方はどれだけ私に感謝させるつもりですか」

 

 

めぐみんは涙目になりながらもガッシュに深く感謝した。その後めぐみんは家族と一緒にガッシュが作ってくれた弁当を完食したのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

数日後…

 

 

「めぐみん!」

 

 

「おや、ゆんゆんではありませんか。どうかしましたか?」

 

 

ガッシュがめぐみんを迎えに来て、ガッシュの家に向かっている最中、ゆんゆんと出会した。

 

 

「どうしたもこうしたも、ここ最近の爆発騒ぎ、めぐみんの仕業でしょう!?」

 

 

「…確かに数日前なら私のせいですが、ここ2~3日は撃っていませんよ?」

 

 

「と言うか、俺が止めさせたけどな」

 

 

「あっ、ガッシュ君!おはよう!」

 

 

ゆんゆんはガッシュに今気づいたようで、ガッシュに挨拶をした。

 

 

「はいおはよう。ところでめぐみん、昨日は撃っていないよな?」

 

 

「もちろんです!今までは仕事が見つからない腹いせに撃って憂さ晴らししていましたが、ここ最近は仕事が充実しているおかげで、爆裂魔法を撃っていませんよ」

 

 

めぐみんはここ数日、爆裂魔法を撃っていないと言った。

 

 

「ならいいけど…」

 

 

「ガッシュが仕事を紹介してくれなかったら、最後の手段として、"体を売っていた"でしょうね」

 

 

「「えっ?」」

 

 

めぐみんの言葉に二人は目を点にした。そしてゆんゆんはネグリジェ一枚の姿をしているめぐみんが見知らぬ男性とベッドで一緒にいる光景を想像してしまったのか、顔を赤くした。

 

 

「……ちなみにめぐみん、その方法は?」

 

 

「ポーション屋の店主が、新薬の試飲のバイトを勧めてくれていたので」

 

 

めぐみんの説明にゆんゆんは胸を撫で下ろした。

 

 

「その様子…、いかがわしい事を思い浮かべていましたね?」

 

 

「想像力逞し過ぎだろ……」

 

 

二人の冷めた視線にゆんゆんは踞ってしまった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ふぅ…、仕事に慣れたとは言え、やっぱり疲れますね」

 

 

夜、めぐみんは最早恒例となったガッシュの手作り弁当を携え、帰宅していた。

 

 

「こめっこー!姉が帰りましたよー!お風呂沸かしてきてはもらえませんか?」

 

 

「姉ちゃんおかえりー、わかったー!」

 

 

めぐみんはこめっこに風呂を沸かすよう頼み、靴を脱いでいた。すると

 

 

コンコンッ「夜分失礼致します。どなたかいらっしゃいませんか?」

 

 

「(こんな時間に客人とは珍しいですね…?)開いてますので、どうぞ?」

 

 

誰かが扉をノックした。めぐみんが扉を開けるのを促すと、ローブを被った女性が扉を開けた。その姿は際どい格好をしており、ローブを着用していても分かる程の巨乳だった。

 

 

そして女性はめぐみんの膝の上に乗っているちょむすけを見ると

 

 

「長い旅を経てようやく探し出しました!偉大なる我が主」

 

 

玄関で膝を折り、頭を下げた。

 

 

「貴方様の封印が解かれたと知り、はるばるこの地へやって参りました。忠臣"アーネス"、ここに参上致しました。これからは貴方様の手となり足となり、この命を賭してお守りする所存でございます」

 

 

「……私が、封印されていたあなたの主…ですか」

 

 

「ち、違いますよ!あなたの膝の上で寝ておられる緒方です!さあウォルバク様、参りましょうか」

 

 

アーネスと名乗った女性はちょむすけに向けて手を差し出す。…が、ちょむすけはアーネスの手を一瞥した後、まるで興味無しと言わんばかりにそっぽを向いた。

 

 

「…行きたくないみたいですね。そもそも、この子はウォルバクとか言うあなたの主ではなくうちの大事な…「もちろん、ただでとは申しません」」

 

 

アーネスは腰に着けている袋をめぐみんに見せた。どうやらその袋にお金が入っているようだ。

 

 

「(随分とバカにされたものだ、ちょむすけはもはや大事な家族。それをお金で引き渡すなど…)」

 

 

「そうですね、今の手持ちは三十万エリスしかないのですが…」

 

 

「いえいえいえそんな、十分ですよ」

 

 

めぐみんは金額を知った途端、手のひらを返すようにちょむすけをアーネスに差し出した。

 

 

だがちょむすけはめぐみんの側を離れたくは無いようで、頑なにアーネスを拒んだ。

 

 

「ウォルバク様がかなら嫌がっておられますし、お別れなどもあるでしょう。また、明日の朝迎えに来ますので…」

 

 

アーネスはお金が入った袋を置いて家から出ていった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

コンコンッ「めぐみん、ガッシュだ。起きてるか?」

 

 

翌日、ガッシュはめぐみんを迎える為に扉をノックした。

 

 

ガチャ「ガッシュですか、毎朝ありがとうございます」

 

 

「別に気にする必要は無いけど…、どうかしたのか?」

 

 

ガッシュはめぐみんの様子が昨日とは違う事に気づき、質問をする。

 

 

「実は…」

 

 

めぐみんは昨夜起きた事をガッシュに話した。

 

 

「ちょむすけを迎えに…か。しかも三十万エリスを置いて」

 

 

「こうするのが一番なのですよ。冒険者稼業をやりながらこの子を連れて行くのもどうかと思いますし、大事にしてくれそうな人ならその方が…」

 

 

「我が主を迎えに参りました。そちらの方は?」

 

 

ちょうどそこにアーネスがちょむすけを迎えにやって来た。

 

 

「この子と共にコイツを保護した者の一人だ。…なあアンタ、一体何の目的でコイツを欲しがるんだ?主って何なんだ?」

 

 

「…ウォルバク様を保護してくださった事は感謝します。ですが、あまりこれ以上詮索しない方がよろしいですよ?さあ、こちらに渡してください」

 

 

めぐみんは震える手でちょむすけをアーネスに渡した。

 

 

「ありがとうございます。ウォルバク様はこの私が大切に保護いたしますので、ご安心を…ウォ、ウォルバク様!?どうかお止めください、お戯れを!」

 

 

アーネスはちょむすけを受け取るが、ちょむすけが暴れだし、アーネスの手から抜け出し、めぐみんの元へ帰った。

 

 

「ウォルバクさまあああ!!」

 

 

アーネスがちょむすけの名前を叫んだ瞬間風が吹き、アーネスのフードを剥ぎ取った。

 

 

「お前…、その"角"…悪魔か。しかも知性が高い上位悪魔…」

 

 

ガッシュはアーネスの頭に生えている角を見て、アーネスが何者なのかを悟った。

 

 

「あーあ…、バレたら仕方ないわね。さあ、死にたくなかったらウォルバク様を引き渡しなさい」

 

 

「……俺の答えは"コレ"だ、『ザケル』!」

 

 

ガッシュはアーネスに向けて雷を発射した。が、雷はアーネスの顔すれすれを通りすぎ、アーネスの後ろの地面に当たった。

 

 

「…何のつもり?」

 

 

「今のは脅しだ。…ちょむすけから手を引け、さもないと…地獄すら生温い苦痛を味わう事になるぞ?」

 

 

ガッシュはアーネスと対峙する。

 

 

「めぐみん!」

 

 

「ゆんゆん!それにぶっころりー達も!」

 

 

そこにゆんゆんがぶっころりー達を引き連れてめぐみんの前に現れた。

 

 

「ちっ…、多勢に無勢ね。そこのあなた、今日の所は引いてあげる。…けど、何時かはウォルバク様を絶対に引き渡してもらうから」

 

 

アーネスは翼を広げ、空へ退避した。

 

 

「その時は俺も実力行使をさせてもらう」

 

 

ガッシュもアーネスを一瞥しながらアーネスに拳を向けた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ゆんゆん、助かりました。ガッシュ一人ではどうなっていたか…。それより、どうしてここに?」

 

 

「めぐみんの様子を見に来たんだけど…、まさかあんな事になっていたなんて思わなかったわよ」

 

 

めぐみんはゆんゆんに何故ここに来たのかを質問すると、ゆんゆんはただ単にめぐみんの様子を伺いに来ただけだった。

 

 

「そうでしたか」

 

 

「なあめぐみん、その金どうするんだ?」

 

 

「そうですね…、取り返しに来る気配もありませんし、このまま有効活用させてもらいましょう」

 

 

ガッシュの質問にめぐみんが答えると、事情を知らないゆんゆんは首を傾げた。その様子を見たガッシュとめぐみんは、昨夜とゆんゆん達が来る前に起きた事を話した。

 

 

「そんな事が…。じゃあ、めぐみんは近い内に里を離れるの?」

 

 

「明日の朝には出立しようと思っています」

 

 

「…じゃあめぐみん、少しの間家で待ってて?直ぐ呼びに来るから」

 

 

ゆんゆんは少し考えると、めぐみん達を残して去っていった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その後ゆんゆんはふにふら、どどんこ、あるえを含む五人でめぐみんの送別会を開いた。そこでめぐみんはふにふらとどどんこからマナタイトの杖を、あるえからはアクセサリーとして眼帯を、ゆんゆんからはローブ等の服を貰ったのだった。

 

 

因みに以前めぐみんがふにふらに渡した薬が効果抜群で、弟の病気が治った事にふにふらは深く感謝していた。

 

 

そしてめぐみんはこめっこと風呂に入り、一緒に寝たのだった。

 

 

 

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