「のどかだね…」
「だな…」
ガッシュ達は休憩を取っていた。
「このまま何もなければ明日の昼頃には街に着きそうですね」
「ちょっとめぐみん!そんなフラグ立てないでよ!」
「大丈夫ですよ!これだけの人数がいるんです、モンスターから襲われるのは0,1%以下…」
「モンスターが出たぞーっ!」
見張りをしていた護衛の冒険者がモンスター襲撃を伝え、護衛の冒険者達は慌てて装備を整える中、めぐみんはフラグを立ててしまった事に冷や汗を流していた。
そして地面から巨大な"ミミズ"が姿を現した。
「…って"ジャイアントアースウォーム"かよ!?『ソルド・ザケルガ』!」
ガッシュは雷の剣を作り、ミミズを一刀両断した。
「『ファイアーボール』!」
ゆんゆんも中級魔法で援護するが、中々数が減らなかった。
「こうなったら…。おい!今から広範囲の魔法を使うから戦っている者は下がれ!」
ガッシュが大声で冒険者達に牽制を促し、冒険者達は馬車がある所まで下がった。
「…よし!『ジャウロ・ザケルガ』!!」
ガッシュが手を前方に掲げると、そこから雷で出来た輪が出現し、その円周からザケルガと同等の電撃は発射された。そして電撃は全てのミミズに当たり、ミミズ達はなす術無く葬られた。
…
……
………
「いや~助かりました、なんとお礼を申し上げれば良いのやら…」
「気にしないでください。俺は"同業者"を助けただけですから」
「"同業者"…と言いますと…?」
「紹介が遅れました、俺は『びりけん行商団』のガッシュと申します」
「おぉ…!あの『欲しいものは奴隷以外何でも揃う!』と有名なびりけん行商団でしたか!…しかしあなた方ならご自分の馬車をお持ちのはず…?何故この商隊に相乗りを?」
夜、商隊長がガッシュ達にお礼を言う為に現れ、ガッシュが自己紹介をすると、その行商は有名であったが、商隊長は相乗りしていた事を疑問に思った。
「あいにく、馬車が全て出払っていましてね…」
「そうでしたか…。でしたらこの商隊を自分の商隊と思って、お寛ぎください」
商隊長は頭を下げてその場を去った。だが『ジャイアントバット』の群れがちょむすけを攫い、一悶着あったのは言うまでもない。
…
……
………
翌朝、ゴブリンによる三度目の襲撃を受け、めぐみんを除く護衛団全員が疲弊していた。
『カースド・ライトニング!』
そこに漆黒の雷が荷台に直撃した。
「フフッ、お前達の力は見切ったよ。こんな場所に助けは来ない。紅魔の里やアルカンレティアの時のように、なんとかなるとは思うなよ?ガッシュとやら」
魔法を撃ったのはアーネスで、空からガッシュ達を見下ろしていた。
「あんたもしつこいな…、そんなにしつこいと嫌われるぜ?」
「黙らっしゃい、こっちは既に謝礼金を払っているんだ。ウォルバク様を渡せないと言うのなら、払ったお金を今すぐ返してもらおうか」
「そのような脅しには屈しませんよ、悪魔との取引は契約を破棄して踏み倒しても罰は当たらないのです」
「……これだから人間って奴は信用できないんだよ!あたし達悪魔による魂と引き換えに願いを叶えるサービスが廃止になったのは!お前らが無茶な願いが多すぎたり、何かと屁理屈をつけて支払いに応じなかったのが理由なのさ!お前ら人間はもっと誠実に生きろ!!」
アーネスは溜まっていた鬱憤を晴らすかのように大声を張り上げた。
「ハァ…、ハァ…。どのみち金を返した所で、ウォルバク様は連れて帰らせてもらうがね!さあ、ガッシュとか言う男とそこのお嬢ちゃん!この中の最大戦力であるあんた達の魔力は既に使い果たしていることは分かって「ザケルガ!」…は?」
「悪いな、確かに魔力は心許ないが…俺にとって魔力は"心の力の代用品"なんだよ」
ガッシュはザケルガを"わざと外し"、アーネスを牽制した。
「お前に一つ聞きたい。ここ3日間のモンスターの襲撃…、お前の仕業か?」
「…ええそうよ。あたしくらいの上位悪魔になれば、ちょっと魔力を込めて殺気を振りまいてやるだけで弱いモンスター程度なら追い立てたりできるのさ」
「悪魔め…、これでも喰らえ!」
護衛の冒険者がアーネスに向かって走り、アーネスの後ろから剣を振りかぶった。
「邪魔よ!」
しかしアーネスは冒険者にカウンターの裏拳を喰らわせ、冒険者は血を吐きながら地面を滑り、動かなくなった。
「この…っ!お前ら取り囲め!!」
「そんなんであたしを止められると思うのかい!?」
冒険者達はアーネスを取り囲んで倒そうとするが、アーネスは上手く立ち回り冒険者達を倒していった。
「アーネス、やめてください!あなたの目的はこの子でしょう!?場所を変えて私と勝負です!」
「フンッ…、のらりくらりと戦闘を回避していたクセに、今更決着だって?笑わせるじゃない、口だけ達者な紅魔族が!あんたの魂胆は見え見えよ?ウォルバク様を盾に逃げるつもりでしょう?逃げても良いけど、コイツらがどうなるか…わかるわよね?」
「させると思うか!?」
「邪魔だって言ってるでしょ?『ライトニング』!」
冒険者がアーネスに挑むが、あっさりとやられてしまった。
「く…っ」スチャッ
「(ゴブリンとの戦闘でゆんゆんの魔力は限界に等しい。ガッシュは心の力とやらで魔法は使えるみたいですが、それも何時まで持つか…)」
「安心しなよ、めぐみん」
ゆんゆんは腰に装着していた短剣を抜き、めぐみんはどうすれば切り抜けられるかを思考していた。するとガッシュが二人の前に立った。
「俺がコイツを倒す。そして冒険者達も、馬車にいる乗客も、お前達も。全員俺が守る!『ソルド・ザケルガ』!」
ガッシュは雷の剣を握り、アーネスに向かって走り出した。
「ガッシュ…。(私が…、私がちょむすけを使い魔にしたせいで、ガッシュが…、ゆんゆんが…、冒険者の皆が…!…守りたい。助けたい!私が…皆を!!)」
「っ!!めぐみん、ポーチから光が…!」
ゆんゆんがポーチから光が漏れているのを聞いためぐみんがポーチをまさぐると、冒険者カードが光っている事に気づいた。
「一体何が…?これは…私のスキル欄に文字…?『サイフォ…ジオ』…?」
めぐみんはカードに書かれた文字を読む。
「何かは分かりませんが、今はこれに賭けるしかありません!『サイフォジオ』!」
めぐみんが杖を頭上に掲げ、カードに書かれた文字を唱える。すると杖の先端に魔方陣が描かれ、そこから"ピンクの剣"が現れた。
ピンクの剣の柄に当たる天使の羽根のような飾りが回り出すと、そこから金色の粉が周囲に降り注ぎ、粉を浴びた冒険者達の傷が塞ぎ始めた。
「暖かい…。これは…、何…?」
「っ!?心の力が…回復している?今なら!」
ガッシュは自分の心の力が回復している事を知り、剣を消した。
「我が
『バオウ・ザケルガ!!』
『バオオオオオオオオオオオオオ』
「そ…そんな……」
ガッシュは最大最強の術の一つである『バオウ・ザケルガ』を繰り出し、アーネスはバオウの姿に身動き一つ取れなかった。
そしてバオウはアーネスを喰い、アーネスは何もできないまま消滅した。
…
……
………
「いや~、お見それしました。まさかあんな切り札を持っていたとは…」
「いえいえ…」
商隊長はガッシュをべた褒めしていたが、ガッシュは謙遜していた。…ゆんゆんに膝枕してもらった状態で。
と言うのも、ガッシュは放つ『バオウ・ザケルガ』と『ジガディラス・ウル・ザケルガ』は爆裂魔法同様、心の力を大量に消耗する為、身動きが取れない状態になるのだ。
「それにそちらの紅魔族のお嬢さんにも感謝です。なにせ皆さんの怪我を癒してくれたのですから。…しかし、確か紅魔族は皆さんアークウィザードのはず…?」
「確かに私は紅魔族でアークウィザードです。…ですが、何故私がプリーストのような回復魔法が使えたのかは分かりません。それに私は回復魔法を教わった記憶がありませんし、そもそもウィザードやアークウィザードは回復魔法を覚えられないはずです」
めぐみんはアークウィザードなのに回復魔法が使えた事が不思議でならなかった。
「めぐみんが使った『サイフォジオ』は俺が使う"術"と呼ばれるものさ。…けど、何故めぐみんが術を使えるようになったのかは俺も分からない。(それに、『サイフォジオ』はティオが使う術のはず。俺が特典に選んだのはガッシュとゼオンの術だけのはず。何故めぐみんが『サイフォジオ』を?)」
ガッシュはめぐみんが何故『サイフォジオ』を使えるようになったのか考えていた。
「(…考えても分からねえや)」
…が、ガッシュは考える事を放棄した。
…
……
………
そして夕方、ガッシュ達を乗せた馬車がいる商隊は目的地であるアクセルに到着したのだった。