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05:00
春樹と碧のトランスフォンから静かで優しい音が流れ始める。
その音で起きた二人はモゾモゾと布団の中から動き始め、アラームを切った。
春樹と碧の朝は早い。
すぐにパジャマからいつもの格好に着替えると、すぐに部屋のドアの前で向かい合った。
そして──
「最初はグー! じゃんけんぽん!」
ものすごい勢いでじゃんけんを始めた。
春樹はパー、碧はグーを出し、結果として春樹の勝ちとなった。
悔しがる碧に春樹が笑みを浮かべて挑発をする。そんな春樹のことを碧が軽く叩くと、二人はえへへと笑い合う。
ただのシャワーを浴びる順番を決めるだけのじゃんけんなのに、彼ら二人はこれだけ盛り上がることが出来るのだ。
05:41
シャワーを浴びた春樹と碧はリビングに直行した。
椎名家の家事は当番制である。毎週、掃除担当と料理担当を交代することになっている。
今週は春樹が掃除、碧が料理を担当することになった。
春樹が掃除機で床のゴミを取り始める。
今の時間に掃除を始めるのは、単純に帰ってから掃除をする時間が無いからだ。だからあまねを起こさないように、掃除機は稼働音の小さな細い白色のものを使っている。
掃除機をかけた後は、ドライシートを設置したフローリングワイパーで拭き、床が輝くというのは誇張した表現かもしれないが、それくらいになるようになったところで掃除が終わった。
一方の碧は深緑のエプロンを見に纏い、手際良く料理をし始めた。
溶いた卵を専用の銅製のフライパンで卵焼きを作り、黒い土鍋でじっくりと米を炊く。さらには別のフライパンで生姜を纏った豚肉を焼き、電子レンジで温めて潰したジャガイモに人参や胡瓜、塩に故障を入れてポテトサラダを作った。
それらを3人分の皿に盛り付けた後は、あまねが使っているピンク色の弁当箱に残りを詰め込んだ。
そうこうしていると、
「おはよ〜」
「「おはよう」」
パジャマ姿のあまねが眠い目を擦りながら起きてきた。
丁度食卓に碧の作った料理が並び始めたところなので、三人揃って食卓を囲む。
「「「いただきます」」」
湯気を立たせる料理に箸をつけて口に運ぶ三人。春樹とあまねは碧の作った料理のあまりの美味しさに笑みが溢れてしまう。
人は蟹を食べると無口になる、と人は昔から言う。理由は、あまりの美味しさに食べることに集中してしまうから、らしい。
この家族の中で一番会話が無くなる瞬間は、碧の作った料理を食べた時だ。理由は、上記の通りである。
「「「ご馳走様でした」」」
そしてすぐに食べ終わった彼らは次の行動を始めた。
06:10
ジャージに着替えたあまねは家の外に出ると、近所を走り始めた。
朝に吸う外の空気は非常に気持ちが良く、吸う度に肺が綺麗になっていくような気がした。
まだ開店をしていないいつも通っているカフェや、もうシャッターを開けて店内で鍋をかき混ぜている豆腐屋等、中々見ることの出来ない光景を見ることを楽しみながら、彼女は毎日走るのである。
07:03
30分程のランニングを終わらせ、シャワーから出てきたあまねは自室で制服に着替えると、勉強机に座り数学の参考書を開いた。
この時間は30分間数学を勉強することにしている。
早朝に理系科目を勉強することが効果的だというのもそうだが、一番は数学を勉強するのが面倒なために早めにやっておこうという寸法だ。
ペンを進めて次々と文字を書き込んでいく。それを一つ一つ赤色のペンで丸付けをしながら頭に叩き込んでいく。
物凄い量の数字が目の前で流れていくような感覚に見舞われるわけだが、結局使う技法は数十としかない。それを一つ一つ確認することこそが、この30分の使い道なのだ。
07:34
そしてその30分が終わると、あまねはパソコンを立ち上げた。
オンライン授業の準備をするのもそうだが、一番はネットサーフィンをして最近の流行を知るためである。
年頃の女子なので、と言う理由ではなく、入試で何かしらの形で出る可能性が高いために確認しているのだ。
流行っている飲み物や曲、フレーズを一通り確認したその時、
「「いってきまーす」」
春樹と碧の声が玄関から聞こえたので、急いで部屋を飛び出して其方の方に向かう。
支度を終えた春樹と碧がドアを開けて外に出ようとしていたので、あまねは笑顔で手を振って彼らを見送った。
「いってらっしゃーい」
12:39
なんとか4時間目までを終わらせたあまねはキッチンへ行き、冷蔵庫の中にあるタッパーを取り出した。
それを電子レンジの中に入れて2分。出来上がったようなので中身を見てみると、中には碧が作り置きをしていた焼きそばであった。
食欲を唆るソースの香りを一心に受けたあまねは箸を手に取り、勢いよく啜り始めた。
あまりにも香ばしい味を堪能したあまねはすぐに完食し、タッパーや箸を洗って午後の授業を受け始めた。
15:05
「うーーん……」
ようやく全ての授業が終わった。
椅子の背もたれに背中を預けて背伸びをしたあまねは、立ち上がってジャージを脱ぎ捨てた。
薄いピンク色の下着だけになると風呂場に向かい、身につけている下着すらも脱ぎ捨ててシャワーを浴び始めた。
あまねは碧と同じくらいに肉付きの良いため、様々な部分に汗が溜まりやすい。念入りに谷間に泡を付けて身体中を洗い、そして泡を流した。
「ふぅ……」
自身を洗い終わったあまねは中にあるモップで浴槽を拭く。隅々まで掃除してシャワーで汚れを払ったあまねは引き戸を引いて風呂場から出、バスタオルで濡れた身体を拭いた。
次に手を伸ばしたのは黒いナイトブラとショーツであった。
「形が崩れるのが怖いから、今のうちから対策しておいた方が良い」と碧とお揃いのものを買っておいたのだ。お陰で二人とも全く形が崩れていないらしい。
さらにその上から薄ピンクのラインが入った白いパジャマを身に付け、リビングへと向かって行った。
春樹と碧が帰って来るまで2時間弱。
残りの時間、あまねは生物の参考書を開いて中身を暗記し始めた。
17:40
「「ただいまー」」
「おかえりー」
春樹と碧が帰ってきた。
勉強をしている彼女の邪魔にならないように風呂場に向かう。
そこではあまねが沸かしてくれた風呂が湯気を浮かべながら彼らを待っていた。
春樹が「朝先入ったからどうぞ」と碧に順番を譲る。
「有り難う」と碧は笑顔に返して一番風呂を堪能した。
その後、あまねと同じナイトブラとショーツの上に青色のパジャマを着た碧はキッチンに向かうと、夕飯を作り始めた。
とはいえ至って簡単なものである。夜は軽いものにしたいという三人全員の考えを基に、茹で鶏にブロッコリー、近所の商店街のパン屋で購入をした米粉パンというかなりシンプルなメニューであることから、用意をするのには10分も掛からなかった。
丁度良いタイミングで緑色のパジャマを身に纏った春樹が浴室から帰って来た。
三人揃って食卓を囲み、手を合わせる。
「「「いただきます」」」
ただ茹でただけのものであるが、それでも碧の作ったものであれば何であっても美味しいことに変わりは無い。
美味しさを噛み締めながら三人は会話を始める。
今日の授業のこと。春樹と碧の仕事先での面白い出来事。近所に出来た新しい店のこと。
他愛の無い話をしているうちに完食した三人は、再び手を合わせた。
「「「ごちそうさまでした」」」
食器を片付けようと春樹が立ち上がったその時、
「ねぇ春樹」
碧が声をかけた。
そしてあまねにも聞こえるような声で、春樹の耳元で言葉を発した。
「今日、
その言葉を聞いた春樹は碧の顔を見て微笑み、あまねは「じゃあ、今日は早く寝ようかな……」と言って食器をキッチンに持って行った。
「で、どうやって頂けば良いんだ?」
「……お刺身が、おすすめ」
耳を赤くした碧は春樹が持って行こうとした食器を手に取り、そのままキッチンの方へと消えて行った。
19:00
食後の彼らは就寝までかなりまったりと過ごす。
春樹はずっと積読をしていた本を読み漁り、碧はソファで寝転がりながらテレビ番組を観る。少し離れた食卓であまねは、テレビから流れる音を聞きながら英単語をひたすら覚えていた。
いつも戦いだらけで殺伐とした日々の中で、家族でゆっくりと過ごすこの時間が唯一と言って良い程の安らぎであった。
たまに会話こそするが殆ど言葉は発さない。
言葉など無くても、彼らは繋がっているのだから。
22:00
一通りの勉強を終えたところで、そろそろあまねに眠気が襲いかかってきた。
目元が下がり始め、口から無意識のうちに欠伸が出始める。
もうやることを全て終えた彼らは、健康のためにそろそろ寝ようと考えて洗面台に向かい、歯ブラシを使って自身の歯を磨いた。
「おやすみ」
あまねが自室に向かうのを春樹と碧が手を振って見送る。
絶対に今日は早く寝よう……!
あまねは両親の顔を見て固く決意をし、自室の中で一気に眠りについた。
一方の春樹と碧である。
寝室のベッドの上に辿り着いた彼らは互いの顔を見合った。
先程の発言のせいで碧の頬は赤く熱っており、心臓の鼓動が速くなっていく。
「いただいても良いですか……?」
春樹が恐る恐る訊く。
すると碧は覚悟を決めたのか、彼の目を見て微笑みながら言った。
「……美味しく召し上がれ」
さて、また最初に戻る。
彼らの日常は、こうして続いていく。
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問題無い。
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別枠を作れ。