短時間で書いたので短くなってしまいましたが、ご了承ください。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
2022.03.19 07:14 東京都 中野区 トキワヒルズA 601号室
「え? パパの退院祝いをしたい?」
「うん。流石にこないだの出前だけっていうのもアレだしね」
昨日、春樹が約3ヶ月ぶりに自宅に帰って来た。
零号によって身体を貫かれて昏睡状態になり、目覚めたと思ったら暴走して襲い掛かって来たが、何とか碧の手によって自我を取り戻し、事無きを得たのである。
そして先日遂に自宅に帰って来たのだ。実に3ヶ月ぶりのことであった。
「良いね。じゃあ、買い物行かないと」
「あー、それなんだけどさ……」
何やら碧が申し訳無さそうな顔をする。
「材料は揃ってるんだけど、予約していたケーキを取りに行かないといけないの」
「うん」
「ただ、春樹が昼間は私とデートしたいって言うからさ……」
「うん」
「お兄ちゃんと一緒に行って来てくれない?」
「……え?」
その言葉であまねは何処となく嫌な予感がしてきた。
八雲がこのマンションに越して来て、もう2ヶ月となるのだが、未だに彼がどんな人間なのかが分からない。
「超」が付くくらいのナルシストであるし、何を考えているか判らない。
もし買い物に行ったとして、道中で何が起こるのかまるで見当がつかないのである。
「ね? お願い」
とびきりの笑顔で碧がねだる。
これをされては断ることが出来ない。
一つ溜息を吐いて、あまねは頷いたのだ。
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一方、歩道をあまねと並んで歩いている八雲も迷っていた。
何故なら……。
──思春期の女子と何話したら良いんだよ……っ!
妹である碧が今のあまねと同じくらいの頃、八雲はずっと勉強に明け暮れていたため、あまり構ってやれなかったのだ。
それがまさかここに来て仇になるとは思ってもいなく、ケーキを取りに行くだけなのにどうしてこんなに緊張しなくてはならないのかと、異様なまでに混乱をしているのである。
だが10分以上沈黙を貫きながら足を進めているため、流石にどうにかしないとと思って八雲が先手を打った。
「今、学校で何が流行ってるんだ?」
「え、あ、えぇっと……。『とうふっち』?」
「と、とうふっち!?」
とうふっちとは、八雲が中学生の頃に流行った携帯用ゲーム機だ。何故か今になってその熱が再燃しているのであるから、女子高生というものは全く何が何だか分からない。
「碧が遊んでたな、そういえば……」
「やっぱりママも遊んでたの!?」
「ああ。結構ハマってたな」
ふとあまねの方を見ると、彼女の目がキラキラと光っていた。
「それで? 何を育ててたの?」
「あの、え?」
「だってママの子供の頃何も知らないんだもん。何だったら経歴抹消されてるパパより謎なんだもん!」
そうか。
これでようやく分かった。
この年代の人と話す方法はただ一つ。
同じ好きなものを語り合うしかないのだと……!
「えっと……。朧豆腐みたいなやつ育ててたな」
「え!? 私も今それ育ててる! やっぱ親子の血ってあるんだね!」
血は繋がってねぇだろ、と不躾なツッコミをしようとした自分をどうにか戒める。
というか、先程までとテンションがまるで違うのだが……。
「やっぱおじさんって頼りになるねぇ〜」
これだけで頼りになると言われるのは自分の沽券が低いのではないかと思うし、チョロい姪のことが心配になってしまう。
けれどもこれはこれでありか、と自分を納得させて、八雲は会話を弾ませるのだった。
────────────
「ねぇ、あまねちゃん、お兄ちゃんにすごく懐いてない?」
「あぁ。この短時間で一体何があったんだ……?」
デートを終えてケーキを堪能する春樹と碧はそこそこ戸惑っていた。
何故なら、先日まで気まずそうにしていた八雲とあまねがすっかり意気投合していたのだから。
「今度、理系科目教えてよ。そういうの得意でしょ?」
「ああ。この超ナチュラルスーパー天才に任せておけ!」
一体彼等がどうしてここまでになったのかは分からないし、別に追求しようとも思わない。
ただ春樹と碧は、身内の仲が深まったことに安堵をし、二人が買ってきてくれたケーキを無言で食べ進めるだけであった。
もし他の方の作品とのコラボを書くことになった際、another fileの枠で投稿しても宜しいでしょうか?
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問題無い。
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別枠を作れ。