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ショッピングモールが一番混むのは、日曜日の昼間だ。カップルに家族連れなどが、デートや買い出しといった様々な理由で訪れるためである。
その中にはあまねと日菜太も含まれている。付き合い始めて1週間。もう既に男女の営みは済ませてしまったのだが、まだデートをしたことは無かったため、今日は初めてとなる。
「今日どうしたい?」
「ん〜。色々買い物したい」
彼女の願いに応えようと、二人は様々な場所を回り始めた。
洋服店では試着室にて簡単なファッションショーのようなものが行われていた。
それまで制服くらいしか着るものの無かった日菜太が何となく選んだ紺色のシャツを、あまねは大袈裟なくらいに褒めてくれた。それが嬉しくて、日菜太は頭を掻きながら笑顔を浮かべる。
あまねが選んだのは丈の短い白いシャツだった。だが腹や胸の谷間が丸見えであったため、褒めはしたのだがやんわりと却下されてしまう。そのことで彼が自分を大事にしてくれているのだと実感し、あまねも笑みを浮かべた。
次に立ち寄ったのは、1階にあるフードコートだ。
各々が売店で料理を買って持ち寄り、これから歩くために必要な力を蓄える。
そこであまねが自分の食べていた餃子を箸で持ち、「あーん」と日菜太の方に向ける。漫画でしか読んだことの無いカップル特有のイベントに、日菜太はドギマギしながらも応えた。
咀嚼をして飲み込んだところで二人は顔を赤らめ、周りの客も若い二人のやり取りに尊さを感じ、和やかな雰囲気が漂った。
それからゲームセンターで遊んだり、近くにある広場ではしゃいだりして、楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
陽も暮れ始めてきたため、そろそろこの場から去ることになる。
その途中、あまねはとある店の前にあるショーウィンドウに釘付けになっていた。
一体何を見ているのかと日菜太も同じ方に目線を向けると、そこには様々な種類の指輪が並んでいた。光を浴びて輝いている指輪の下には『¥50000』と書かれた表札が置かれている。どうやら格安の値段で販売してくれる店らしい。
「……こういうので、良いの……?」
「え、えぇっ!?」
日菜太の突然の発言に、あまねは慌てふためく。
ただ良いなと思ってみていただけなのに、まさかこんなことが飛び出すとは思ってもいなかった。
何とか平静を保とうと努力しながらも、両手で顔を覆い隠しながら答える。
「……日菜太君が渡してくれるものなら、何でも嬉しいよ……」
その一言があまりにも嬉しく、日菜太はあまねを優しく抱き締めた。
更に顔を赤くしたあまねは買い物を持った両腕でお返しをする。
遠くの方から少しだけ冷たい風が吹いたのだが、今の二人はその冷たさを感じない。その冷たさを凌駕する暖かさを感じるからだ。
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それから1年以上が経った。
桜が舞い散る3月にあまねと日菜太は高校の卒業式を迎えた。
新井夫妻に春樹と碧、そして二人の間に生まれた弟も来てくれた。卒業証書の入った筒を持ちながら微笑む二人の姿を見て、彼等が感銘を受けていたのは言うまでもない。
この後は
道中であまねは様々なことを思い出していた。
両親がしていた戦いの中で日菜太は自分を取り戻し、そして結ばれた。その後も両親が無事に帰って来、受験の最中に弟が生まれててんやわんやだった。何とか無事に受験に合格して志望校に通うことが決定したのが先月のこと。
全てがあっという間に過ぎた。充実した時間であった。
──じゃあこれからは……?
日菜太が進む大学は自分のとは別のところだ。なので会える時間は限られてくる。
もし自分に飽きてしまったらと思うと、何だか胸が締め付けられるような感覚に襲われるのだ。
不安があまねの心を覆う中でぎゅうに着き、宴会が始まった。
椎名家にぎゅうのメンバーの計7人で盛り上がった宴は非常に楽しかったのだが、あまねの表情は晴れないまま。何とか笑顔を取り繕ってやり過ごす。
そして数時間過ぎてそろそろお開きになろうとしたその時、
「あまねちゃん。ちょっと良いかな……?」
突然日菜太が話しかけてきた。
彼に手招かれてあまねは共に厨房の方へと向かう。
まだ盛り上がっている中でここに連れて来たということは、誰にも聞かれたくない話なのだろうか。
「何……? どうしたの?」
「話があってさ。……僕さ、凄い不安なんだ。大学は別々だから、何となく離れ離れになっちゃうような気がして……」
「うん」
「それで、何か君と繋がっている証みたいなものが欲しいなって思ったんだ。男避けにもなるし……」
「うん」
「だから……これ受け取ってくれない……?」
すると日菜太は跪いてポケットから黒い小さな箱を取り出した。
それが何なのか瞬時に見抜いたあまねは、意図せずとも涙が溢し始める。
そして日菜太は箱を開けて中身を見せ、一つ彼女に頼み事をした。
「まだ学生の身だから今じゃなくても良い。いつでも良いから……僕と結婚してください……!」
暫く間が生まれる。
あまねが啜り泣く声だけが聞こえた後、彼女は涙を止めて笑顔で答えた。
「はい……! 宜しくお願いします!」
成功した喜びに緊張を一気に解いた日菜太に、あまねは「嵌めて」と左手を差し出す。
そこに指輪がゆっくりと嵌められたのでよく見ると、そのデザインに見覚えがあった。
「この指輪って……!」
「うん。あまねちゃんが欲しがってたやつ。バイトのお金貯めて買った」
それは初めてデートをした時、あまねがショッピングモールで眺めていたものであった。
覚えていてくれたことが喜びを倍増させ、また涙が溢れ出てしまう。
止めようとするために日菜太は彼女を抱き締める。二人が帰って来ないことに興味を持ったその他全員がやって来て祝ってくれるまで、時間を忘れて彼等は身体を寄せ合ったのだった。
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「──これが、お姉ちゃんが日菜太お兄ちゃんと結婚した時の話」
「へぇ〜」
それから暫くの月日が経った。
あまねは春樹と碧の息子、つまり自身の甥に話をしていた。
久々に実家に遊びに来たと思ったら惚気話を始めたので、甥は微妙な反応を示していた。
「じゃあ
幼稚園児の純粋な質問が飛んで来る。
彼の目線が自分の腹に向けられているため、あまねはその部分を摩りながら微笑むのだ。
ついこの間まで高校生だった自分が社会人になって、いよいよ母親になる。信じられないことだが、変わってほしくない事実だ。
「うーん……。ここまでロマンチックなのは珍しいからあれだけど……素敵な人に出会って欲しいな」
「……じゃあ僕もそんな人を見つける!」
「うん。因みにどんな人が良いの?」
「ママみたいな人!」
「それは……パパに怒られるかもねぇ……」
笑い合う二人。
そこには歳が離れてもある姉弟の絆のようなものがあって、二人以外には分からない。
そして二人の会話は、家族全員が帰って来るまで続き、楽しい時間はその後も暫く続いた。
もし他の方の作品とのコラボを書くことになった際、another fileの枠で投稿しても宜しいでしょうか?
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問題無い。
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別枠を作れ。