どんなに優秀でも男は女の尻に敷かれる運命なんだと思う。   作:ゆず1252

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第11話

B級昇格祝いをしてもらって数週間経った。

 

「はぁ〜〜…歌歩ちゃん成分が足りねぇ。」

 

薫はイラついていた。想い人に会えない日々が続きストレスが溜まっているのだ。そしてB級に上がったが故に防衛任務に就き始め、他の部隊とも少なからず合流があるのだが、上手くいっていないのが現状。

 

「あ?明日もシフト入ってんのかよ…。てか、任務出たら金貰えるって嘘じゃねぇか。ネイバー潰さんと貰えねぇってどういう事よ。」

 

実際嘘では無い。B級の間は歩合制と言うだけである。昇格通知書にもそう記載されていたが、ストレス値が上昇している今、そんな細かい所に気配りが出来るわけがない。

 

「あ〜もう全部がだりぃ…。」

 

三上歌歩という薫のストッパー兼精神安定剤が居ないため、とてつもなく荒れていた。その為他の部隊の人間とも上手くコミニュケーションが取れず、本部や玉狛の人達からも注意が入っている。

 

その苛立ちを消すために咥えた煙草に火をつけ、裏路地で一服をしている所に突然男が現れた。

 

「た、助けてくれ!」

 

「あ?誰だテメェ。」

 

「頼む!何でもするから手を貸してくれ!」

 

見てくれは不良。だがこの怯え様から見てただ事ではないと分かる。ネイバーかと一瞬考えがよぎったが、警報が鳴っていない以上それは無いと判断。では何だ?と考えていると、裏路地の奥から誰かが歩いてくる。

 

「やっぱり骨が折れたって嘘じゃん。」

 

そこに居たのは小学生くらいの背丈をした少年だった。

 

「ヒィィ!!もう勘弁してくれぇ!!」

 

少年の姿を見た矢先、そう叫びながら走って逃げてしまう不良。

 

「ありゃ、逃げちった。」

 

それを横目に我関せずと言わんばかりに、再度煙草を吸い始める薫。

 

「アンタもさっきの人達のお仲間?」

 

「おいクソガキ。俺は今すこぶる機嫌が悪いんだ。つまらねぇジョーク吐くってんなら潰すぞ?」

 

薫がこの少年へ向けた感情は殺意…よりも気味が悪いだった。理由は簡単、先程の不良と少年との体格差を考えれば、返り討ちに会う可能性はかなり低い。それにああいう手合いは群れるのが基本。集団で囲んで物事を進めるものだ。それを視野に入れるとこの少年は複数人の自身より大きい男を相手に無傷で勝利したと言うことになる。

 

「ふぅ〜ん…本気でおれを潰す気?」

 

「ガキでも言ってる意味くらい分かんだろ。」

 

裏路地に静寂が訪れたのも束の間、少年が先に動く。

 

(はやっ!?)

 

警戒はしていた。ただ予想外の速度に反応が遅れてしまい、懐への侵入を許してしまった。小さな体躯を利用した低い位置からのボディブロー、薫は反応し防御の姿勢に入る。

 

ゴッッ!!!!!

 

「ぐっ!?」

 

およそ人の拳から放たれるようなものでは無い音がなり、薫の体が吹き飛ばされる。

裏路地の近くにあった公園まで吹き飛ばされたが、どうにか受け身は間に合い、次手に備える。

 

「へぇ…今の防ぐんだ。やるじゃん。」

 

しかし攻めてくることは無く、ゆっくり歩いてくる少年。

 

「ははは、ウケる。お前本当に人間かよ?」

 

それを見た薫は思わず笑ってしまった。しかしコレは負の感情では無く、手放しの賞賛であった。

 

「こっちのセリフだよ。普通今ので気絶するんだけどな〜。」

 

何を隠そう杠薫は戦闘狂な一面がある。本人は否定するが半分は不良に染まっているため、真っ直ぐな勝負事であれば好んで首を突っ込む節がある。

 

「ほら、来いよ。」

 

それ故に万遍の笑みを浮かべ指を動かし挑発をする。

 

「おまえ…面白いね。」

 

その言葉を皮切りに再度懐に踏み込む少年。先程と同じようにボディブローの体勢になる。

 

「!?」

 

少年は驚愕した。先程よりも速度を上げた打撃、それを左の手でいとも簡単に捌いたのだから。

 

「1発は1発だぜ!!」

 

咄嗟の事で少年は反応出来ず、モロに顔面にヒットする。

 

(モロ鼻っ柱!!怯んで下がった所で決める!)

 

薫の考えは正しい。鼻は陸上生物共通の弱点とも言える。ここを強く叩かれれば必ず怯んでしまう。

それを先読みし追撃の姿勢に移行する。

 

「ガッ!?」

 

が、突如顎に衝撃。意識外からの攻撃の為、サイドエフェクトが発動せず直撃。足がもつれて尻もちを着いてしまう。

 

「まさか攻撃をもらうとは思わなかった。やっぱりやるね。」

 

「痛ってぇなぁ。」

 

「まだ立てるんだ。」

 

口の中が切れて出血するが、地面に血を吐き出す薫。そのままファイティングポーズを取る。

 

「空閑!!何やってるんだ!!」

 

が、そこに間違いなく不釣り合いなThe真面目といった男が現れた。

 

「オサム。何してるんだこんな時間に。」

 

「おいクソガキ。このメガネは知り合いか?」

 

「え!?杠さん!?」

 

「え、お兄さんオサムの知り合い?」

 

「いや知らん。」

 

俺を見たオサムという男は少年と小さな声で話を始める。

 

(はぁ…しらけちまったな。)

 

「なぁ、メガネくん。なんで俺の名前知ってるの?」

 

「あ、えっと僕もボーダーの人間で、杠さん結構有名だったので…。」

 

「そうなんだ。え、じゃあそっちも?」

 

先程までの威圧感が嘘のように会話を始める薫。この温度差に流石の空閑という少年も困惑する。

 

「おれは違うよ。ただの通りすがりの一般市民デス。」

 

「へぇ、普通に強すぎてボーダーの人かと思ったよ。トリオン体と戦ってるかと思うくらいバケモンだったしね…。」

 

その言葉を聞いてオサムが少し反応をする。

 

(当たりだな。)

 

「はぁ…オサムはちょっと顔に出しすぎだな。」

 

「え?」

 

「素直な子でいいんじゃないか?」

 

「ちょ、ちょっとどういうことですか?」

 

「メガネくん…こいつネイバーでしょ?んで、お前はそれを匿う違反者って訳だ。」

 

「な、何で…。」

 

特にヒントというヒントは無かったはず。当てられてもボーダーの人間が勝手にトリオン体へ換装していると勘違いする程度だと考えていた。

 

「それは企業秘密。お前はもうちょっと緊張感持てよ?違反者は違反者でもかなり重罪だぜ?なんせ一般市民に手を出してるんだから。」

 

「なるほどな。じゃあオマエはおれを捕まえるわけだ。」

 

再度一触即発という空気になる。

 

「いや、今は非番だし…金の出ない仕事はしないよ。」

 

2人は予想外という反応をする。

 

「それに…お前はそんな悪いヤツじゃ無いだろ。だから本当に捕まえなきゃいけないと思ったら捕まえるよ。だからメガネくんはちゃんと気をつけろよ?お前がボロを出したから俺が気づいたってことを忘れんな。」

 

「は、はい。」

 

「んじゃ、蹴られた所が痛いから俺は帰るぜ。」

 

そう言いながらその場を立ち去る薫。

 

「なぁオサム。あいつはどんなヤツなんだ?」

 

「ボーダーの問題児って言われてる。かなり手練だって噂だ。」

 

「だろうね…もしアイツが本気でおれを捕まえに来たらちょっとしんどいかも。」

 

「いや…でも結構圧倒してただろ。空閑だってトリガー使って無かったし、何とかなるんじゃ?」

 

「ま、とにかくおれも帰る。また明日。」

 

「あ、おい!」

 

そう言って1人で帰ってしまう空閑。

 

 

 

 

「なぁ、レプリカ」

 

『どうした?ユーマ。』

 

「俺とあの人がマジで戦ったらどっちが勝つと思う?」

 

『情報が少なすぎる。的確な答えは出せないが、先程の戦いを参考にするならば、70%の確率でユーマが負けるだろうな。』

 

「だよね。はぁ…生身であれだけ強いって反則でしょ。」

 

『そうだな。敵対しないのが1番だと私も思う。』

 

そう言いながらも楽しそうな表情をする空閑であった。

 

 

 

 

Prrrrrr……

 

「珍しいな薫が俺に電話なんて。どうかしたか?」

 

「白々しいなぁ。この未来も見えてたんだろ?」

 

薫は迅に電話を架けていた。

 

「会ったのか。人型ネイバーに。」

 

「ああ、会ったし喧嘩もした。強かったよアイツ。」

 

「お前マジか…。それで?仲良くなれそうなヤツだったか?」

 

「あぁ、割と気が合いそうなヤツだったよ。」

 

「そうか。それじゃあそろそろ本腰を入れて動かないとだな。頼むぜあいぼ…」

 

最後まで言葉を聞かずに電話を切ってしまう薫。

 

「相棒は止めてくれ…寒気がする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり次の日

 

「特に指示は無し…か。ま、別にやる事も無いし気ままに防衛任務に参りますかね〜。」

 

「お!杠くん!」

 

「あれ?嵐山さん。こんにちは。お一人ですか?」

 

「他の皆は先に行っててな。そう言えばB級昇格おめでとう!伝えるのが遅くなってしまって済まない。」

 

厄介事に巻き込んでしまったというのに、悪意なく祝いの言葉を伝えられるのはこの人の魅力なんだろう。

 

「ありがとうございます。まあコネ昇格みたいなもんですけどね。」

 

「いや、君の実力なら遅かれ早かれB級にはなっていただろう。」

 

「ど、どうもです。」

 

手放しで褒められるため少々こそばゆくなる薫。

 

「ただ最近荒れているって話をよく聞くが…上手くやっていけそうか?」

 

「あぁ…いやすいません。歌歩ちゃんと会えてなくてストレス溜まってました。でももう大丈夫です。」

 

「そういう事か。確かにそろそろ遠征から帰ってくる頃合いだからな、他の皆とも仲良くしてやってくれ。」

 

「了解です。」

 

「それじゃあまた今度!」

 

あまりの善性に眩しくなってしまう薫。きっと自分がイラついて気分を悪くした隊員のフォローとかしてくれてたんだろうと思うと、嵐山には頭が上がらなくなりそうだなぁ…と思うのであった。

 

「さて…俺もそろそろ行くか。っ!?」

 

突如警報が鳴る。

 

「ネイバーか?ったく、もう少しゆっくり出来ると思ったんだがな。」

 

薫は本部に通信を繋げる。

 

『こちら玉狛支部の杠。今動けるんで情報をください。』

 

「こちら忍田。協力感謝する。出現場所の情報を送った。急ぎ向かってくれ!」

 

「杠了解。さて行きますか!」

 




ようやっと原作介入…。
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