どんなに優秀でも男は女の尻に敷かれる運命なんだと思う。   作:ゆず1252

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第14話

ラッド掃討作戦から数日後。ついに遠征部隊が帰還した。

 

「歌歩ちゃん!!」

 

「うわっ!びっくりした…。」

 

薫は我慢出来ず嵐山隊の作戦ブースに突撃した。

 

「ちょっと…こっちは遠征帰りで疲れてるんだよ。もう少しボリュームとか考えないわけ?」

 

それを見た菊地原はネチネチと文句を言い始めるが、正にその通りの正論な為責められる事は無いだろう。

 

「おい!歌歩ちゃんはどこだ!?」

 

「えぇ〜…何このテンション。」

 

愛しの歌歩の姿が見えず、菊地原の胸ぐらを掴み問いただす薫。

 

「君の彼女は遠征の報告書届けに言ってるよ。だから離して。」

 

胸ぐらを掴まれながらそう答える菊地原。

 

「ぐぬぬ…入れ違いになったか。」

 

それを聞いて菊地原を解放する。そのままブースを出ようとするが、もう1人に待ったをかけられる。

 

「た、多分すぐ帰ってくるんで、入れ違いになってもアレだし待ってた方が良いんじゃ?」

 

「ふむ、それもそうか。えっと…歌川さん、で合ってます?」

 

名前だけは聞いたことがあるが、初対面な為一応確認する薫。

 

「あ、はい。初めまして。風間さんからよくお話聞いてます。」

 

「どうも初めまして。玉狛支部の杠薫です。」

 

お互い挨拶をして歌歩を待つ間、雑談を始める。

 

「ていうか、B級に上がってたんだ。」

 

「ん?あぁ、最近な。」

 

「それで結局玉狛に入る事にしたんだ。」

 

「まあな。一応迅に誘われて入ったわけだし…ここで別の部隊に行ったら筋が通らないでしょ。」

 

「へぇ…一応キミもそういうの気にするんだ。」

 

「どういう意味だコラ。」

 

そのやり取りを聞いて歌川は意外だと感じた。菊地原は他人に対して冷たい方だ。今の場面だって自分から会話を広げるだなんて普通じゃ有り得ない。

 

「それで?ウチに誘われてた件は考えてるの?」

 

「あー、A級上がったらってやつ?実際悪くない話だと思ってるよ。でも、ボーダーの内情を知って城戸さんとは合わないだろうなぁって感じてる。」

 

風間隊は城戸派に属しているという事が一番の懸念点になっているのだ。

 

「別にそこは気にしなくても良いと思うけど?」

 

「なんだお前。そんなに俺に入って欲しいの?」

 

「正直入って欲しいね。」

 

それを聞いて2人は驚く。あの菊地原が素直に人を勧誘するだなんて天変地異でも起きてもありえないと考えていたから。だが菊地原の考えは違った。事ある毎に惚気話をしてくる歌歩が、少しでも自分と風間が楽をしたいという思いで勧誘してる。

 

「ま、A級上がったらちゃんと考えるさ。風間さんにも恩があるし。」

 

そう話しているとブースの扉が開く。

 

「あれ?薫くん?」

 

「歌歩ちゃん!!」

 

主人に会った犬の如く歌歩抱きつく薫。

 

「わっ、危ないよ。」

 

「久しぶり!怪我とかしてない?」

 

「うん。大丈夫だよ。それとただいま。」

 

「良かった〜。おかえり。寂しくて死ぬ所だった。」

 

その2人のやり取りを見ている歌川と菊地原は暖かい目で見守る。

 

「今日は疲れてるだろうから今度遊びに行く予定立てよ

?」

 

「ありがと。行きたい場所考えとくね。」

 

「俺も考えとく。あ、そうだ。1つ報告というか、聞きたいことというか、話したいことがあるんだ。」

 

「ん、何かな?」

 

「友達が…出来るかもしれない。」

 

「ウソ!?ホントに!?」

 

いやいやそんな驚く事かと…歌川が思うが、菊地原も目を見開いている所から、杠という人間はヤバいのかもしれないという印象を抱く。

 

「結構年は離れてるんだけどさ…良いヤツらなんだよ。迅とも関わりもあるし、1人はボーダーの人間だから、もしかしたら玉狛に入るかも。」

 

「そうなんだ〜。良かったよ…。」

 

そう涙ぐみながら言う歌歩。

 

「嵐山隊の人達とも仲良さげだったけど、アレは友達じゃないの?」

 

単純に疑問に思ったことを菊地原が投げかける。

 

「んー、友達というかボーダーの仲間?クラスメイト的な立ち位置なんだよなぁ…。お前だって同じ部隊の人間と他の部隊の人間じゃ感じるものは違うだろ?」

 

その言葉にあぁ、確かにと反応する。

 

「それで聞きたいことって何かな?」

 

「あぁ、それなんだけど…」

 

そう言葉を紡ごうとした時、再度ブースの扉が開く。

 

「お前ら帰ってきていきなりで悪いが…杠?」

 

「あ、風間さん。お邪魔してます。あと遠征お疲れ様です。」

 

「ああ。来てもらったのに悪いな杠。俺達は急遽任務が入った。三上の帰りも少し遅くなるが、しっかり送るから安心しろ。」

 

「えぇ、マジですか?遠征から帰ってきたばかりなのに…。」

 

「駄々をこねるな。という訳だ、悪いがまた今度にしてくれ。」

 

風間がそう伝えると同時に、薫の携帯に通知音が入る。その内容を確認するが、何故か固まってしまう。

 

「杠?」

 

「薫くん?」

 

きっと歌歩久しぶりに会えたのに、すぐ別れるという事実を受け止めきれないのだと風間は考えていた。

 

「あ、いえ。すいません。ちなみに出水とかにも挨拶行こうと思ってたんですけど、何処にいるかご存知ですかね?」

 

「そういえば一悶着あったらしいな。だが、出水というより、太刀川隊にも任務が来ている筈だ。恐らく行ったところでタイミングが合わないと思うが?」

 

「そうっすか…。」

 

その言葉を聞いて薫は諦めた表情になる。

 

「じゃあこれ以上お邪魔してもアレなんで…失礼しますね。歌歩ちゃん、また今度ゆっくり話そう。」

 

「あ、薫くん…?」

 

そう言って足早に出ていってしまう薫。それを見て任務内容を皆に告げる風間。

 

「お前ら、今夜玉狛支部にある黒トリガーを確保するぞ。」

 

「「!?」」

 

驚くのも無理は無い。先程までいた薫が在籍している支部に攻撃を仕掛けるのだから。

 

「あの様子から見るに、杠は今回の件を知らないのだろう。だが、介入してくる可能性は少なからずある。が、そこは三上の話術でどうにかなるだろうし、アイツも俺達と戦うのは避けたいはずだ。」

 

「それは…」

 

その内容に待ったをかける歌歩

 

「安心しろ。その可能性は極めて低いだろう。短い仲だがアイツの事は大分理解出来たつもりだ。もし戦うことになっても俺が三上の情報をチラチラと出せば、動揺して満足に戦えないだろう。」

 

少なくとも歌歩に汚れ役をしてもらう事は無いと伝える風間。あっけらかんと言うが、風間自身も薫には出てきて欲しくないと心から思っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?」

 

『よっ、相棒。』

 

「アイツら…玉狛に入るんだってな。」

 

『あぁ、メガネくんに遊真、薫は知らないだろうけど千佳ちゃんって子が入った。』

 

「そっか。お前狙ってたな?」

 

『悪いな。そういうつもりは無かったんだ。お、お前らちょうどいい所に!先輩に挨拶しとけ〜!』

 

「は?おい!」

 

『あの!三雲です!』

 

突然三雲の声が聞こえ、驚く薫。

 

「お、おぉ。」

 

『今日からお世話になります!よろしくお願いします!』

 

後ろの方から堅いな〜と茶化す声が聞こえる。

 

『えっと…初めまして。雨取千佳と言います。狙撃手で頑張るので、よろしくお願いします!』

 

「…うん。よろしくね。」

 

何を言ってもこの流れは止められないだろうから、受け入れることにした薫。

 

『もしもし?カオル?』

 

「よ、空閑…いやもうチームメイトだから遊真って呼んだ方が良いか?」

 

『ふむ、どちらでもいいぞ。おれもオサム達と一緒に遠征部隊?とやらを目指す事にしたから、よろしくな。』

 

「あぁ、よろしくね。」

 

『カオルも一緒のチームだからな。これから大変だぞ?』

 

それを聞いてハッとする薫。

 

「えっ?何それ聞いてないんだけど?」

 

『そりゃ今おれが決めたから。なんだかんだ言ってお前とは仲良く楽しくやれるって思ってたんだが…カオルは違ったか?』

 

また電話の後ろの方からガヤガヤと聞こえるが、一旦無視をする。

 

「ははっ、そうだな。俺も遊真とは仲良く出来そうだって思ってた。お前らとチームか…良いね、面白そうだ。」

 

『だろ?じゃあ決まりだな。今度この間の決着つけるか。』

 

「言ってろ。ボコしてやっから。」

 

それじゃまた今度と言って迅に改めて代わる。

 

『良かったな?チームが組めて。』

 

「風間さん達に任務が来たらしい。」

 

『知ってる。遊真の黒トリガーを狙って来るらしいな。』

 

「それを渡せば穏便に済むのか?」

 

薫は黒トリガーと言われるものがどういう物だか理解はしていないが、本部の人間にとっては重要なモノなのだろう。

 

『恐らく穏便に終わる。けど、間違いなく遊真は死ぬよ。』

 

「…そう、か。」

 

その言葉を噛み締める。

 

『俺の予知では風間隊、太刀川隊、冬島隊、三輪隊で攻めてくる。』

 

「分かった…。すぐ合流するよ。」

 

そう言って通話を切る。終話後に映るメッセージで送られた遊真達の写真を見て覚悟を決める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は黒トリガーに対抗できるた判断された部隊だ。お前一人で勝てるつもりか?」

 

そこには迅の予知通りの4部隊が揃って玉狛支部へ歩を進めていた。

 

「そこまで自惚れちゃいないさ。俺が黒トリガーを使っても良いとこ五分だろ。でもそれは…俺『1人だったら』の話だけど?」

 

「なに!?」

 

そう言って現れたのは…

 

「嵐山隊現着した。忍田本部長の命により玉狛支部に加勢する!!」

 

「良いタイミングだ嵐山。助かるぜ。」

 

「三雲の隊のためと聞いたからな。彼には大きな恩がある。」

 

そう言ってお互いに戦闘態勢に入るが、そこにもう1人近づく人物がいた。

 

「お、ようやく来たな…相棒。」

 

「何をチンタラやってんだ?サッサと終わらせるぞ。」

 

「杠君も加勢してくれるとは…心強い!」

 

城戸派の隊達も流石に驚いた様子だった。

 

「マジか…アイツまで居んのかよ。」

 

「風間さん、予想外れましたね。しかもアレ…マジですよ。」

 

「杠…俺達と敵対するという事で良いんだな?」

 

風間の言葉を聞き、目を合わせる薫。

 

「もしかして…歌歩ちゃんの事を言ってます?」

 

「そうだ。言いたくは無いが…俺達と敵対する以上お前の恋人とも…「関係ねぇよ」っ?」

 

「アンタの事は尊敬してる。風間隊の人達だって嫌いじゃない。歌歩ちゃんの事だって大好きだ。でも…それとコレは関係ねぇだろ。」

 

その言葉を聞いた風間隊は絶句し、通信越しで聞いている歌歩は後悔した。何故あの時風間の作戦を止めなかったのだろうと。

 

「俺の初めて出来た友達の命がかかってる。だから俺はココに立ってる。それで歌歩ちゃんを天秤にかけて動揺を誘ってくるとか…俺の事、舐めてんのか?」

 

その表情はそう正しく激怒である。あの太刀川や味方の迅でさえ怯んでしまう。

 

「軽蔑するよ…お前ら。」

 

その言葉はこの場にいる全員に告げられたモノだと理解した。

 

「俺が悩んでる事を知っておきながら勝手に進めるゴミも、きっとそうだろうと思いながらも心強いとか言うクソも、それを種に揺さぶってこようとするカスも!!」

 

ここまで激情する薫を見るのは歌歩ですら初めてだ。その威圧感に押され誰も動けずに居た。

 

「聞こえてるんだろ…歌歩ちゃん。」

 

その言葉を聞いて心臓が痛い程に鼓動する歌歩。

 

「それを"お前が"許可したのか?」

 

違う!!声は届かずともそう叫んだ。叫ばずには居られなかった。

 

「安心しろ、俺の独断だ。三上は関係ない。」

 

咄嗟にそう答える風間。

 

「そっか…安心したよ。」

 

薫と歌歩の関係は、傍から見れば薫が歌歩にベッタリ依存している様に見えるだろう。だがそれは間違いだ。正しくは薫と歌歩がお互いに依存しているのだ。今回の件で薫は歌歩見限ったりは絶対にしない。が、歌歩本人からしたらどうだろうか…。薫からその言葉を聞かない限り絶対に安心はしないだろう。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。』

 

その結果がコレだ。通信越しに聞こえる聞いたことも無い悲痛な声。今後の風間隊同士の関係にも支障きたす可能性もある。

 

「えっ?」

 

「今回限りはこの場で殺すだけで勘弁してやる。」

 

菊地原の額に弧月が刺さり、ベイルアウトする。

 

「何ボサっとしてんだクソチビ。お前のせいで1人死んだぞ?敵の目の前でボサッとする隊長が何処にいる?」

 

その言葉を聞いて即座に指示を出す風間

 

「歌川!!」

 

だがタイミングが悪かった。風間の言葉に意識を向けた瞬間に両手足を撃ち抜かれる。

 

「アステロイド。」

 

普段であれば充分に対応出来る距離と速度。だが薫が放つ殺気に気圧され、対応が出来なかった。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。』

 

悲痛な通信と共に黒トリガー争奪戦の火蓋が切って落とされた。




一旦キリいいところまで!
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