どんなに優秀でも男は女の尻に敷かれる運命なんだと思う。 作:ゆず1252
一波乱あったが、無事?入隊式と講習が終了した。
「B級に上がるには、ランクポイントが必要なのか。訓練で貯めるか個人戦で貯めるか…。」
薫的には個人戦で経験を積みたいが、先程やらかしてしまった為、受けてくれるか不安なところでもある。
「そもそもランク戦やる前に相手の名前とか分かるのか?分からんことが多すぎる…。まあそこら辺は歌歩ちゃん頼ろ。」
とりあえず講習が終わった旨を伝えるべく、携帯を取り出そうとする。
「ねぇ、何処に行く気?」
「…どちら様?」
茶髪のやる気無さそうな顔をした人に話しかけられた。
「風間隊の菊地原だけど。話聞いてない?」
「あぁ、迎えに来てくれたんすね〜。どもです。」
不躾な態度なため、薫も崩した敬語になる。
こっちと言われそのまま後ろを着いて行く。
「というか自己紹介とかも無いわけ?」
「え?話聞いてないんすか?」
失礼にも程がある態度を見て、眉にシワを寄せる菊地原。
「普通するでしょ。そんなのも知らないわけ?」
「何でお前如きにそんな事しないといけないわけ?」
お互いにヒートアップする中、それを制止する声がかかる。
「お前ら止めろ。子供か。」
「風間さん、コレ本当に風間隊の人何ですか?」
モノ扱いされてイラッとする菊地原だが、隊長の手前何とか堪える。
「俺の隊員をモノ扱いするな。口は悪いが列記とした風間隊だ。」
え、マジで?といった顔をしながら菊地原を見ていると、ほら見ろといった顔をするのでため息で返す。
「会話が要らないほど仲良くなったようで何よりだ。」
そんな様子を見て風間は諦めたように伝える。
「「仲良くなってないですよ。」」
息ぴったりな2人を見て、本当に仲良いのでは?と怪しむ。
「あ、帰ってきた!菊地原くんが行くって言った時は不安だったけど、無事に着いたみたいでよかった〜。」
ちなみに風間は薫の性格を何となく理解しているため、菊地原と揉めないかと思い、カメレオンで様子を見ていたというのは内緒である。
「それで…なんか話があるって聞きましたけどなんでしょうか?」
特に悪いことをした思い出が無いため、改めて聞くことにした薫。それに対して返答する風間。
「それに関してだが、杠を俺の隊に勧誘しようと考えていた。」
その言葉を聞き菊地原が異を唱えようとしたが、風間はそのまま続ける。
「しかし、三上から聞くに玉狛支部に入るそうだな。」
「らしいっすね。」
「その反応からして自ら決めた、という訳では無いのか?」
「迅が勝手に決めたんですよ。というか俺を風間隊に勧誘ってどういう事ですか?」
知り合って間もないというのにどういう事だろうかと思考を巡らせるが答えが出てこない。
「単純に相性が良いと思ったからだ。お前自身もそうだが、サイドエフェクトも含めてな。」
「コイツサイドエフェクト持ちなんですか?」
風間の答えに菊地原が質問をする。
「ああ。三上からお前の事はあらかた聞いた。8割は惚気だったが…。」
「なるほど。風間さんの所にもサイドエフェクト持ちが居るんですね。多分情報を仕入れることに関するタイプとかですか?」
薫の言葉に驚く風間と菊地原。
「やはり惜しいな。今からでも…いや、お前がA級に上がってからでも良い。俺の隊に入らないか?」
普段の風間を知っている2人は素直に驚く。風間蒼也という人間は、優れているからと言ってここまで熱心に勧誘するようなタイプでは無いからだ。
「多分凄いありがたいお話だと思うんですけど、迅の話もありますし、一旦保留とかでも良いですか?」
「ああ、問題ない。何時でも歓迎する。」
ここに居る風間以外は考えもしないだろう。風間がここまで薫に執着する理由が、三上による惚気が原因だと。あの日薫に出会った日から事ある毎に「薫くんがですね〜」と言われるのだ…。本人に悪気もなく嬉々として話すものだから風間も止められずにいる。
「そうだ!今日の入隊式はどうだったの?」
そんな風間の心境など知ることも無く、三上は話を続ける。
「え?あ〜普通だったよ。あ、嵐山さんはめっちゃ良い人だった!」
「いやいや、あれ普通じゃないでしょ。C級全員に喧嘩売ってたじゃん。」
「…どういう事かな?」
三上の声色と表情を見てやっべぇ…と薫は心の底から思う。
「な、何なかった…よ?」
「菊地原くん…何があったのか教えてくれる?」
「え…なんで「いいから。」あ、はい。」
事の経緯を事細かく伝えた所、思わず溜息を吐く三上。
「どうしてそういう事ばっかり言うのかなぁ…。嫌でも新隊員達の態度も…というかそれ見てた菊地原くんも…。」
とブツブツ言っていて、薫は今まさに断頭台で刃が下ろされるか下ろされないかの瀬戸際の気分だった。その隣の菊地原は何故自分まで言われているのか理解出来ていないが、三上は怒ると怖いとは分かっているため黙っている。
2人はお互いの様子を見て、もしや?と思い話しかける。
(おい、お前がなんも言わなきゃ良かったんだから、お前が何とかしろよ)
(いや、君が普通にしてれば良かった話でしょ。さっさと謝ってこの空気をどうにかして)
(考えてみろ。俺が普通に謝ったとする。先輩のお前が謝らないでどうする?って空気になるに決まってるだろ考えろよアホが)
(君が僕の無罪を証明すればいい話じゃんそれ。というか隊長が遠い目してるんだけど…)
(それは知らん。てかマジでどうにかしてくれ)
(無理)
「2人とも?」
その声にビクッと反応する。表情は笑っているが、あれば多分怒っている。それを理解した2人の行動は早かった。
「い、嫌だなぁ〜士郎君。仲良くなったからって冗談キツいよ〜。」
「確かにいきなりこの冗談はアレだったね。」
「という訳だから、歌歩ちゃん。さっきのはあんまり気にしないでね?」
(アレってなんだよアホ。日本語習ってねぇのか?)
(君こそ気持ち悪いから士郎君とか二度と呼ばないでくれる?)
「…そうなんだ。2人共仲良くなったみたいで安心したよ。確か今日は嵐山隊の人が担当だよね?後で今日のこと聞いてみるから。」
その言葉を聞いて安心した。嵐山さんならきっといい感じに伝えてくれるだろうなと。
「杠。この後時間空いてるか?入隊祝いで夕飯なんてどうかと思ってな。」
「あ、ごめんなさい。この後は歌歩ちゃんに時間使いたいんで…また後日でもいいですか?」
その言葉を聞いて三上も三上だが、コイツもコイツでアレなのか…と落胆する。
「一応連絡先渡しときますね。あ、今度訓練とか付き合ってくださいよ!うちの師匠だと心が疲れるんで、たまにで良いんでお願いします。」
「ああ、時間が空いてる時にな。」
そう言って薫は三上の横に行き、仕事が終わるのを待っている。その姿はまさに犬をイーメジさせるようだった。
「三上さんの彼氏って本当だったんですね。」
「俺も最初は驚いた。まあお互いに好いている様だし問題は無いだろう。」
「いや、大アリでしょ。明らかに問題児ですよアレ。」
「ああ、それは間違いない。この先が思いやられる…。隊員同士で問題を起こさなければいいんだが。」
「…まあ、大丈夫じゃないですか?流石に暴力沙汰とかにはならないでしょ。」
「そうか。俺が初めて会った時には、不良達がボロボロになって横たわってる状況だったんだが…。」
「えーっと…。」
「それで終われば良かったが、そこから追撃しようとした所を俺が止めて事なきを経たが…そうか、大丈夫か。」
「そんなドラマみたいなことあります?」
話を聞くに、三上が関わっている事だった為、徹底的に潰す選択肢を薫は取ったのだという。それを聞いた菊地原は恋人と言うより番犬じゃん。と思ったのだとか。
「すいません。薫くん待ちきれないみたいなんで、お先に上がりますね!」
そう話していると、仕事を終えたであろう三上が挨拶をしてくる。
「あ、ああお疲れ。」
「お疲れ様です。」
行こっか?と手を繋いで出ていく2人を見て、微笑ましい気持ちになる。
「菊地原もそんな顔するんだな?」
「そりゃ三上さんがあんだけ幸せそうな顔してたらなりますよ。お世話になってますし。」
「そうだな。俺らが出来ることと言えば、見守ってやる事と惚気を聞いてやることだけだ。」
「そうで…え、なんて言いました?」
不穏な言葉を聞いて初めて自分のサイドエフェクトを疑った菊地原。後日三上の惚気を聞いて風間と一緒にブラックコーヒーを飲む姿を目撃されるのはまた別の話。