ちゅーちゅータコかいな?   作:烏の烏帽子

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 呪術師は、2級以上の等級になると単独任務に駆り出される。

 

「――――雷虐水平千代舞(らいぎゃくすいへいチョップ)ッ!!!」

 

「はびっ!?」

 

 横一閃の手刀が、呪霊の首を刎ね飛ばす。

 瞬く間に靄となって崩れていく様子を確認し、彪雅は振り切った左手刀をもう一振り。

 

「良し、形にはなったかな」

 

『本当なら雷遁チャクラでやるのが正しいんだけどな。呪力は性質変化がやりにくい』

 

「何というか、呪力の質そのものがそのまま影響してくる感じだよね」

 

『ああ。幸い、突破口は見つけてある。これをどうにかモノにすれば、疑似的な雷遁チャクラモードが出来るようになるだろう』

 

「あの、筋肉のおっちゃんがやってたって話の?……タコ墨分身でもめっちゃ速かったんだけど」

 

『そりゃ、オレの記憶を再現しているからな。何より、四代目よりも三代目の方が技の多彩さは無くとも強かったぞ』

 

「地獄突きは、中々出来ねぇんですよねぇ」

 

 牛鬼と軽く会話を交わしながら、彪雅は帰りに車が待っている合流地点へと足を進める。

 話題とすれば、専ら戦力強化に関して。

 既に結構な腕前となっている彪雅ではあるが、向上心が消える事はないし。そもそも牛鬼がせっつく事になる。

 何より、呪術師は強くなって損をしない。寧ろ、弱ければアッサリと死に絶えてしまうようなそんな世界だ。強くなることに躊躇いは要らない。

 

「まあ、俺としては尾獣化の練習したいんだけど」

 

『そいつは難しいな。人型でも、山一つ消し飛ばすなんざ訳がねぇ。完全尾獣化なんぞしちまえば、どうなるか分かるだろ?』

 

「だよねぇ」

 

 人柱力にとっての最大戦力は、尾獣の力を最大限発揮する尾獣化にある。

 だが、人の密集したこの現代日本ではぶっちゃけ発動するスペースが無い。そして仮に発動できたとすれば、まず間違いなく周辺一帯が更地になる。

 程なくして、黒塗りの車とその傍らに佇む金髪の女性が視界に入った。

 

「新田さーん!」

 

「おっ、戻ってきたっすね蜂谷君。お疲れ様っす」

 

 彼女、新田明は補助監督という役職についている。

 補助監督とは、呪術師のサポートが主な任務であり、任務地への送迎、情報収集・整理、“帳”の展開などなど。

 その扱いは決して良いモノとは言えず。場合によっては呪術師の肉壁にされたりもする中々にクソッタレな職だった。

 

「今日の任務は、これで終わりっすね。このまま、高専に車回します?」

 

「うーん……新田さんも仕事終わり?」

 

「後は報告書纏めるだけっすね」

 

「それって、結構時間が掛かる奴ですかね?」

 

「いえ、定型文みたいなもんなんでそこまでは……」

 

「んじゃ、飯行きましょうよ!飯!伏黒もセンパイたちも都合つかねぇんで行けてない店があるんすよねぇ」

 

 東京へと出て暫く。彪雅の趣味は食べ歩きとなっていた。

 呪術高専の生徒は、生徒であると同時に呪術師でもある。任務を熟せば金銭が手に入り、その所得は不安定ながらも場合によってはそこら辺のサラリーマンよりも稼げる。

 彪雅は今の所2級術師だが、場合によっては準1級以上の仕事も時折舞い込んでくる為、懐はホッカホカ。

 

「えー?奢りっすか?」

 

「勿論。俺から誘ってるんすから当然」

 

「あ、冗談冗談。だからそう本気にしないでほしいっす。弟と同い年の子におごってもらうとか、大人の矜持が死ぬっす」

 

「俺は気にしないけど……で、どうします?因みに、長崎名物の皿うどんの店ですよ」

 

「行きます」

 

 即答だった。

 実の所、新田含めて補助監督の中では彪雅の付き添いに行くと旨い飯が食えると噂になっているのだ。

 勿論絶対ではないし、そこは彪雅の気分次第だが、補助監督の方から話を振っても旨い店を教えてくれると結構な人気。

 オマケに、彼女の好物は五目あんかけ焼きそば。皿うどんはまた別物なのだが、系統的には似ている。

 

 因みに、彪雅の恩恵を一番に受けているのが新田で。五条の付き添いが多い伊地知潔高がその後に続く形。

 

 とある六月上旬の出来事。そして、物語は加速する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「両面宿儺、ねぇ」

 

オレ達(尾獣)みたいな奴がこの世界にも居るって訳だな』

 

「……ちょっと違う気がする」

 

 寮の屋根の上に腰掛けて、彪雅は頬杖をついて眼下を見る。

 彼の視線の先に居るのは赤いパーカーのカスタマイズが施された高専の制服に身を包んだ少年。

 

「……まあ、いっか」

 

 屋根の上に立ち、彪雅は大きく伸びをする。

 懸念事項はあれども、現状何かが出来る訳では無い。仮に、戦う事になれば全力を尽くす、ただそれだけなのだから。

 屋根から飛び降りた彪雅の足は、寮の入り口辺りに居る件の彼と、それから眉間に皺を寄せた伏黒の元へ。

 

「やあやあ、新人君。俺は、蜂谷彪雅。よろぴく」

 

「うお!?ど、どっから来たんだ!?」

 

「……蜂谷。お前どこに居たんだ?」

 

「屋根の上。ほれほれ新人君。お名前聞かせてちょ?」

 

「お、おう、俺は虎杖悠仁。蜂谷、で良いのか?」

 

「オケ。所で、二人揃ってどこか行くの?」

 

「……お前、任務じゃないのか?」

 

「今日の分は終わっちまってねぇ。暇してた所」

 

「――――んじゃ、彪雅も一緒に行こうか」

 

 そう声を掛けたのは、いつの間にか彪雅の後ろに居た五条だった。

 

「おお、先生じゃん」

 

「はいはい、五条先生ですよーっと。今から、入学が遅れてたもう一人を迎えに行くからさ。彪雅も暇ならおいでよ」

 

「おお、成程。随分かかったっすね」

 

「まあね」

 

 今は六月。始業式よりも、二ヶ月は経ってしまった。

 

 そんなこんなでやって来た原宿。

 

「相変わらず、人が多い。人がゴミのようだごっこでもしてこようかな」

 

「大人しくしてろ」

 

 伏黒は頭痛が抑えられないかのように眉間を揉んだ。

 この場に居るのは、三人。伏黒、虎杖、そして彪雅だ。

 五条は何やら用事があるという事で一旦別行動。集合場所を原宿に指定して、どこかに行ってしまった。

 

「お待たせー☆んじゃまあ、行こうか」

 

「おおー…………お?」

 

 合流した五条に合わせて右拳を突き上げた彪雅だが、不意に彼のポケットの携帯が振動する。

 取り出して耳に押し当てて暫く、

 

「……仕事か」

 

「だねぇ……先生行ってきまーす」

 

「ありゃりゃ、ソレは残念。任務終わりに連絡しておいてよ。ご飯に行こうか」

 

「りょ~か~い」

 

 ひらりと手を振って人ごみに紛れていく背中。

 その背を見送る虎杖は首を傾げた。

 

「さっき休みって言ってなかったっけ?」

 

「呪術師は人数が少ないからな。どうしても、他の仕事が回ってくる事がある」

 

「彪雅は実力的に見て特級でも通じるからね。まあ、あんまり振り回すようなら僕の方から横槍を入れるよ」

 

 突発的な任務は、まあ珍しくないのが呪術師の業界だ。

 

 この後、呪霊をボコった。

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