ちゅーちゅータコかいな?   作:烏の烏帽子

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 雷遁チャクラモード、というものがある。

 要は、雷遁チャクラを全身に纏い身体能力及び神経の伝達スピードを高めて全体的な速度の上乗せ、更に高密度に纏った雷遁チャクラが鎧と化す攻防一帯の技だ。

 これは、チャクラの性質変化を利用した術だった。

 

「一応、形になった?」

 

『ゴリ押しだけどな』

 

 バチバチと全身に紫電を走らせて、彪雅は拳を握った。

 呪力の性質変化は、結論から言って失敗に終わった。何か違うな?程度の変化はあれどもそれだけだ。

 

 しかし、彪雅の習った体術を十全に扱うならば、やはり尾獣化だけでは足りなかったのだ。雷遁チャクラモードは、尾獣化よりも速いのだから。

 壁にぶち当たり、彪雅と牛鬼は考えた。その折に、天啓を得る。

 

 手本としたのは、とある格闘ゲームのキャラクター。

 

 彼は自分の中に二種類の力を有し、この力をぶつけて摩擦を起こす事で相手を痺れさせるほどの電気を発生させていた。

 これを応用した。

 要は、彪雅の呪力と牛鬼の呪力をすり合わせたのだ。宛ら、髪に擦り付ける下敷きの様に。

 そして、この方法で発生した電気は呪力の特性を持っていた。つまり、彪雅や牛鬼には効果はないものの、身に纏えば身体を強化し、敵にあたれば感電させる。

 

 何故急にこの技の習得を急いだかといえば、先の少年院の一件が尾を引いていた。

 呪力強化<尾獣化<雷遁チャクラモード。速度の比較をすればこんな感じなのだが、あの時もっと早く辿り着いていれば虎杖は死ななかったのではないか。

 IF(もしも)を語る事は好きではない彪雅だが、それでも実際にその瞬間へと立ち会った手前ふとした拍子にその考えは頭を過る。

 

「後悔は、後味が悪いねぇ」

 

『それに関しちゃ、どうにもならねぇだろ。二度目を無くす位か?とにかく、雷遁チャクラ……違うな、まあ雷遁モードで良いか。雷遁モードが形になった。慣らしは必要だろ』

 

「慣らしかあ……地獄突き?」

 

『出来るに越した事はねぇだろ?』

 

 ゲンナリと舌を出す彪雅。

 地獄突きとは、貫手の一種。主に四本貫手を指し、プロレスラーのイメージが強いのはヒールレスラーの得意技であったから。

 因みに、喉を突くという特性上実際に行うと大怪我に繋がりかねない行為だったりする。

 

 彪雅と牛鬼の言う地獄突きは、その更に強化版。雷速で接近し、岩盤だろうが削岩機の様に貫き粉砕する破壊力を有し、四から数が減るごとにその鋭さを増していく。

 強力な体術であるにも関わらず彪雅がやりたがらないのは、その昔突き指した事があるから。それも盛大に、骨折したのではないかと思えるような勢いで。

 今ならばそんな事は無いのかもしれないが、幼少期の手痛い記憶(トラウマ)というのはそう簡単には消えてくれない。

 

「……突き指しない?」

 

『鍛えてきただろ?呪力の強化もある……まあ、最悪こっちで治してやるよ』

 

「嫌だなァ」

 

 言いながら取り出したスマホを確認して、任務へ。

 

 余談ではあるが、雷遁モードを体得した彪雅は五条を除けば最速の呪術師という事になるのだがソレが後々禍根を残したり、残さなかったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 釘崎野薔薇から見て、蜂谷彪雅という男は変人という印象しかない。

 だがその一方で、実力は認めていた。

 

「釘崎ー、そっち終わった?」

 

「おう。余裕よ、余裕」

 

「そか。んじゃ帰ろー」

 

 ひらひらと手を振って近寄ってくる彪雅。

 今回の任務で彼は釘崎よりも多くの呪霊を相手取っていた。

 これは別にマウント的な理由からによるものではない。そもそも、彪雅は今回相手取った呪霊の数など欠片も気にしてはいないのだから。

 純粋に、術式の違いが大きい。

 

 釘崎の術式である“芻霊呪法”は、主に釘や藁人形を利用したもの。残弾回収が可能とはいえ、攻撃方法には限りがあり、どちらかというとサポート向きの術式だろう。

 体術に関しても、まだまだ発展途上。そうなれば、対応できる呪霊の数には限りがあった。

 

 その点、彪雅は体術、呪術戦それぞれ苦手が無い。2級以下の呪霊がどれだけ束になろうとも鎧袖一触だ。

 

「……おい」

 

「んー?」

 

「アンタは何で呪術師やってる訳?」

 

「急だなあ……スカウトされたから?まあ、元々呪霊を知る前から狩ってはいたんだけどさ。スカウトされて、そのまま高専に通ってるだけ」

 

「……面白みないわね」

 

「誰だって波乱万丈な人生を送ってる訳じゃないでしょ。まあ、五条先生とか伏黒とか虎杖は、結構高低差の激しい人生っぽいけど。というか、そう言う釘崎はどうなのさ」

 

「私は……単に、田舎で腐るのが嫌だっただけよ」

 

「へぇ?」

 

「気色悪い村なの。人は居ないし、他人になる方が難しい過疎地。そんな村で腐っていくのが嫌だった」

 

 人付き合いの希薄になる都会とは逆で、田舎は人との関りが密となる。

 良い事ではないかと言われそうだが、そうでもない。

 

 村八分、という言葉もある様に密接な人間関係の中で生まれたコミュニティというのは排他的だ。

 新参者に求められるのは、そのコミュニティへの参加と迎合。適応できなければ、排斥されるだけだ。

 

 釘崎は、そんな村が嫌いだった。

 そして、彪雅はそんな彼女の横顔を眺めていた。

 

「……んだよ」

 

「いや?」

 

「その意味深みたいな面止めなさいよ!てか、アンタこそどうな訳?」

 

「ん?さっき言った通りだけど?」

 

 肩を竦めれば、釘崎からのジトリとした視線。

 煙に巻く事も出来るだろうが、少しだけ彪雅も考えてみたりする。

 

(ヒーローになりたい?誰かを助けたい?感謝されたい?…………どれもこれも、しっくりこないね)

 

 内心で首を傾げる彪雅。

 強いて言えば、

 

「…………俺の心の安寧の為?」

 

「はあ?」

 

「いやだってさ、気分悪いだろ?自分が対処すればどうにかなったかもしれない呪霊が誰かを襲って怪我するとか、死ぬとか。そういう気分の悪さを抱えてるとさ、飯も不味いやる気も削がれる意欲も失せる。良い事なんてまるでない」

 

 そう始まりは、そんな自分本位なそして些細な事。

 気分が悪い。喉に魚の小骨が刺さっているよう違和感を抱えて日常を生きていたくない。

 幸いと言うべきか、彪雅には力があった。並大抵の惨事ならば、事が起きる前に潰す事が出来る様な強大な力が。

 

「その目的を果たす点で、呪術師は都合が良い。お金にもなるしね☆」

 

 てへぺろ、と舌を出してマネーポーズをする彪雅。

 真面目な話かと思えば、コレだ。

 ポカンとする釘崎だったが、直ぐに気を取り直してふざけたアホの肩を軽くたたく。

 

「あいたっ」

 

「最後までキッチリ締めなさいよね。別に、悪い理由じゃないでしょ」

 

「え~?だって、なんか真面目な表情でキリッとしてるのは性に合わないしさぁ」

 

「ったく」

 

 先を行く釘崎の背中。その背を追いながら、彪雅は頭を掻く。

 

 呪術師に成る理由に大層なものなど必要ない。

 彼らは英雄(ヒーロー)でもなければ、正義の味方でもないのだから。

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