決まった!とばかりにドヤ顔をするめぐみん。
だが確かこいつは門の上の一方通行の道で俺たちとは反対方向に逃げたはずだ。
いったいどうやってあの
「何、簡単な事ですよ。一旦私達が昇って来た街の方の階段を降りて、今度はこっちの方にある階段を使って登って来ただけです。」
そう言うめぐみんをよく見ると確かに息が上がっており、階段を全力で走ってきたためか足がプルプルと震えている。
後ろには確かに俺たちが昇って来たのと同じような建物がよく見ると等間隔に配置してある事が分かった。
………って、そんな事よりもっと重大なことがあった。
「確かお前今日のクエストで爆裂魔法使ってたじゃないか、魔力は大丈夫なのかよ。というか本当にあいつに爆裂魔法が効くのか?どうやらあいつ魔法を無効化するみたいだけど………」
「私の魔力の回復速度で考えればカズマの《ドレインタッチ》で魔力を分けてくれればギリギリ足りるはずです。それにカズマ忘れたんですか?爆裂魔法は実体のない相手や高位の悪魔、果ては神にまでダメージを与えるのですよ。それに相手は魔法への絶対的な耐性らしいので無効化ではないようです。つまり相手の耐性を上回るダメージを与えれば必ず倒す事が出来る筈です!………きっと、多分!」
本当に大丈夫なのだろうか。
なんか一気に不安になって来たのだが。
「それに、もし魔力が足りないようでしたらそこに倒れている魔法使いの魔力を頂きますかね。どうやら彼も魔法使いのようですし………何、気絶しているようですから少しぐらい大丈夫ですバレませんよ」
そう言ってめぐみんは悪い顔をして俺が背負っている美少年──ニニャを指さす。
死に直面したショックからか、未だに起きる気配は無いがそれは止めといた方いいと思う。
なんというかロリが美少年に向かって何かしようとするのは絵面的にマズイ気がする。
俺は背負っていた彼を階段の裏へと隠しながらめぐみんを説得する。
「そうですか、まあ仕方がないですね………っと、それよりもダクネスがそろそろ不味そうです。カズマの魔力をさっさと分けてください」
そう言うが早いか手を首の後ろに持っていくめぐみん。
《ドレインタッチ》は相手の心臓に近い程効果が高くなるので合法的に心臓に近い胸へ触れるとほんの少し期待したのだが。
……………ほんの少しだけだぞ
そんな言い訳を自分で誰に言ってるのか分からないが、取り敢えず諦めて自分が気絶しないような量の魔力をめぐみんに注ぐ。
そしてその間未だヤツの攻撃を耐え忍んでいるダクネスに向かって。
「ダクネス!スマンが後もう少しだけ耐えてくれ!おれの魔力を注ぎ終えたらめぐみんが爆裂魔法を撃つ準備をするからその時は俺の合図に従って下がってくれ!」
「分かった!こっちは大丈夫だ!幸いなことに他の冒険者たちがヤツの邪魔をしてくれているお陰でもう少し余裕が有りそうだ!そこのお前たち頼むぞ!」
「任せてくれよ金髪の美人さん!それともしこれが終わったら一緒にディナーどうです、っか!」
「おいルクルット!お前ナーベさんはどうしたんだ、よっと!」
「美人を見つけたらディナーに誘うのは当然の事だろっ、後ナーベさんは別!それにもう死んだと思ったのに生き返ったんだから俺は悔いのないように生きるぜってうおっ!」
そんな緊張感のない会話が繰り広げられる。
そこの美少年、ニニャのパーティメンバーだろう。
余裕が有るのか無いのか、ダクネスに対しておちゃらけた態度で誘っている男。
そしてそんな軽口に付き合う真面目そうな男と注意するなんか野蛮人っぽい見た目のやつ。
「二人とも無駄話はそこら辺にするのである!それとそこの御仁、ニニャの事は任せたのである!」
だがよく見ると三人ともキチンと警戒しているのか、目は鋭く相手を見つめている。
するとその中の一人からニニャの事を任されてしまった。
後でキチンと建物の裏へでも避難させよう。
取り敢えず今はめぐみんに魔力を注ぎ込むに集中する。
デストロイヤー戦の時のアクアと比べるとほんのちょぴっとだけだけだが、それでギリギリ撃てるらしい。
しかし撃てなかったら元の子もないので俺は自分が倒れる少し手前ぐらいまでめぐみんに分け与える。
魔力を根こそぎ持ってかれたので若干フラフラするが、逆にめぐみんはやる気倍増らしい。
俺が後は頼んだ、と言うとめぐみんが頷き、顔を上げて
あちらでは一人 、また一人と冒険者たちが
やはり圧倒的なレベル差があるのか攻撃でダメージを与えられた様子は見えない。
しかし、めぐみんの爆裂魔法の為の足止めとしてダクネスが前線で戦い、自らを高め鼓舞する。
そんなダクネスの事を見て冒険者たちも負けられないと思ったのか。
雄叫びを上げながら
その様子を見てめぐみんはさらに覚悟を決めたのか。
ふーっ、と息を大きく吐き出して帽子を深く被り直し。
顔を上げ、紅い目を爛々とさせて
杖を高らかに天へと掲げて静かに詠唱を始める。
「紅と黒の奔流が永遠なる環の中で力を満たし」
───そうして呪文を紡ぐと共に。
「紅は深き真紅の理(ことわり)へと歪み」
───魔力がめぐみんを中心に渦巻き。
「黒は漆黒の虚無へと覚醒せし得るだろう」
───そのあまりの魔力の奔流によって周りの景色が歪んでいく。
「来たれ」
───その様子に気がついたのか
「来たれ!」
───その隙をついたダクネスの攻撃がまともに当たり、ダメージを与えて。
「来たれ!!」
───
「理と虚無から出でし混沌に!」
───今度は他の冒険者たちが一斉に攻撃を仕掛けた。
「我が全ての力を解放させよう!」
───しかしまるで効いていない様子で冒険者たちを蹴散らすと。
「我が名はめぐみん!!」
───めぐみんのその様子を見てようやくただ事じゃないと気づいたのか。
「紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!!!」
───空に飛んで逃げようとする骨の竜に俺は。
「ダクネス今だ!《バインド》!!」
「良し!おい皆早く下がれ!でかい魔法が来るぞ!」
「グガアァァァァァァ!!!?」
───泣け無しの魔力を振り絞ってバインドを放つ。
既に他の冒険者たちはめぐみんの渦巻く魔力で強大な魔法を本能的に察知したのか。
慌てて蜘蛛の子を散らすように離れていく。
骨の竜は縄を解こうと一生懸命体を動かしていたが。
間に合わないと悟ると口を大きくあけてめぐみんに向けて走り出し─────―
「感謝しますよカズマ!一日に二度も爆裂魔法が撃てるなんて今日は最高です!」
そう言ってめぐみんは怯む事無く
限界まで練り上げた爆裂魔法を彼の敵に狙いをつけて放った!
「エクスプロージョンッッ!!!!!!!」
やっちゃえ