このすば勢 IN オーバーロード!   作:ナミカゼ鼠

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14.まだ終わらない

 

強敵である骨の竜を倒し、何となく終わった雰囲気が出ていた空気。

だがその空気を引き裂くような悲痛な叫び声が墓地の方からきこえてくる。

するとお祝いムードの冒険者たちがピタッと止まって。

俺を含めて全員が顔から汗をダラダラと流しながら、ギギギとゆっくり顔を動かし声がした方を見ると………!

 

「うあああああん!!何で私ばっかりがこんな目にいいいいい!!!!」

 

アクアが泣き喚きながら大量のアンデッド達を引き連れてこちら側へと走って来ていた。

 

ちょっ……!

 

「このバカッ!おい止めろ、こっちに来んな!向こうに行ったら今日の晩メシ奢ってやるから!っていうかお前ならターンアンデッドであいつら倒せるだろうが!」

「そう言ってまた囮にするつもりでしょおおお!そもそもアンデッド達の数が多すぎて、ターンアンデッドで消してる間に他のアンデッドにやられちゃいそうなんですけどおおおおっ!!」

 

畜生、さすがにアクアでもあの量のアンデッド達を消し去ることは出来ないか……っ!

 

アクアが墓地のあちこちを走り回ってアンデッド達を引き連れて来たせいか。

さっきまで数十体程度だったアンデッド達の数は、ここからじゃ分からないぐらいとんでもない数に増えていた。

アクアはアンデッドに対してのスペシャリストだが、あんな大量のアンデッドが相手では歯が立たない。

大規模な魔法を唱えればワンチャンあるかもしれないが、唱えてる間にボコボコにされてしまうだろう。

 

俺は泣きじゃくりながらこちらへと走るアクアを見て何とかなる方法を考える。

しかし、扉からガチャンッと何かが作動する音が聞こえたと思うと。

先程まで開いていた門がだんだん少しずつ閉まってきて………?

 

「………って不味い!おいアクア急げっ!早くこっちに来い、門が閉じるぞ!!」

 

誰かがあのアンデッド達を街に入れるのは不味いと思い門のレバーを操作したのか。

段々と閉まっていく門を見てアクアに慌ててそう叫ぶ………!

 

「来んなとか来いとか言ったり一体どっちなのよおおおおお!!!!……………ぷぎゃっ!」

 

アクアの顔面を思いっきり地面を当たると同時に完全に門が閉まる。

向こう側ではアンデッド達が思いっきり門の扉にぶつかったのか、衝突した音が勢いよく聞こえてきた。

 

ギ、ギリギリセーフ……!

 

危なかった。門が閉まる直前にアクアが勢いよく飛び込んで来たお陰で何とか間に合った。

あともう少し飛び込むのが遅かったら門に激突していた事は間違いない。

 

すると飛び込んできたアクアは、そのまま勢い良くゴロゴロと俺の近くに転がってきて。

 

「口の中が……、口の中がジャリジャリする……!」

 

そう言って半泣きのままぺっぺっと口の中の砂を吐きながら俺の手を借りて立つ。

 

「だ、大丈夫かアクア………いや、本当にすまん。だけどこっちもなんか骨の竜みたいなのが出て大変だったんだぞ。あの量のアンデッド達を相手してる暇は無かったんだ。……お礼に帰ったら美味しいご飯なんでも奢ってやるから………」

「………ぐすんっ………一番美味しいやつ?」

「ああ。いくらでも頼んで食べていいし、なんならここで一番高い酒も一緒に奢ってやる」

「…………分かった」

 

俺がそう言うと気分が良くなったのか。半泣きでいながらも嬉しそうに帰ったら何を頼もうか考えていた。

 

ちょろい………!

自分で言っといて心配になるくらいチョロい。

骨の竜を倒した後思いっきり忘れたことを上手く誤魔化せて良かった。

動けない後ろのめぐみんが、何やら言いたそうな顔で俺の顔をムニムニしてたが。

 

すると突然閉じた門からバンッと激しく叩く音が聞こえてきた。

そうだった、今はこんな悠長な事をしている場合ではない。

アンデッド達に囮にされていたアクア。

そのアクアがここに居るということはアンデッド達を引き連れていたものがいなくなるという事であり。

げんに先程から無視していたドンドンと門を叩く音が段々と強くなっていって………!

 

その光景が上からが見えたのだろう。

先程まで骨の竜を倒して喜んでいた事が嘘のように冒険者たちが絶望的な表情で口々に。

 

「…………もうおしまいだ……こんな状況であいつらに勝てるわけが無い………」

「そうだ、結局無理だったんだ……。さっきは黒い鎧の奴が来て何とかなったけど……」

「勝てるわけが無い………逃げるんだぁ………」

 

と、冒険者たちが悲壮感たっぷりな声を出していった。

するとその中のひとりが突然門の上からばっ、と走ってきて。

 

「クソっ!こんな所に居られるか!冒険者ギルドに俺はさっさと逃げるぞ!」

 

とかなんか死亡フラグっぽい事を言う。

するとそれを見て慌てて我が先にと門の上から降りて逃げていく冒険者たち。

既に何人かは先程の闘いで負傷した仲間を背負って避難しており、その中には先程階段の裏へと隠したニニャの姿もあった。

その仲間が慌ててその中の一人に声を掛けていたが、

 

「おい待て!お前たちも冒険者なら街の人たちを守って………」

「うるせぇ!そんな事言ってる場合じゃねえんだよ!自分の命が一番だ!」

 

と、まるで取り合わず逃げていく。

その中でダクネスや何人かの冒険者は頑張って弓矢で応戦しようとしていたようだが。

いかんせん数が多すぎるせいで焼け石に水のようでまるで相手になっていなかった。

気づけばほとんどの冒険者や兵士達が逃げ出しており俺の近くには誰もいなかった。

そこで俺ははたと気づく。

 

あれっ、この状況結構不味くないか?

 

ちょっと待て、冷静に今の状況を整理してみよう。

そう。あの軍勢を爆裂魔法で纏めて倒すことの出来そうなめぐみんは先程撃ったせいで動けないし。

ほとんどの冒険者は逃げていき、ダクネスやまだ戦おうとしている数少ない冒険者は骨の竜を足止めをしていたので満身創痍。

当然、俺も先程から走ったり逃げたりめぐみんに魔力を限界まで与えてるので体がフラフラだ。

この状況で戦えと言われても多分絶対無理だ。

ほんの一撃貰うだけでノックアウトされる自信がある。

 

やばい。

 

やばいやばいやばい!

今の状況を考えれば考える程どうしようもない事が分かってくるんだが。

こんな絶望的な状況どうすればいいってんだよ!

 

……………もういっその事逃げてしまった方のが良いのではないだろうか?

 

ふと自分の中にそんな考えが浮かんできた。

そうだよ!わざわざ俺達が戦わなくてももっと強い奴らが倒してくれるかもしれないじゃないか!

なんなら墓地の奥へ行ったであろうハムスターを連れた黒鎧の男と魔法使いの女がこっちの異変に気づいてあいつらを倒してくれるかもしれない。

 

俺たちだって充分に戦ったじゃないか。

それにこの街にはつい最近来たばかりでなんの思い入れも無いんだ。

もうそろそろ素直に逃げたしてもいいんじゃないか。

 

そう思った俺はよし、逃げようと足を踏み出し―――、

 

『ここは私の生まれ故郷で、なんとしても守り抜かなければいけないんです!私の事はいいから墓地の方へ向かって下さい!』

『………彼らは自分たちでこの街を守ろうとしているんですね………』

 

その足を止めた。

ふと思い出したのは先程会った受付嬢と門の前にいた市民達を見て言っためぐみんの言葉。

受付嬢は自分の故郷を倒れそうな程頑張っていて、門の前にいた市民達は武器を持って自ら戦おうとしていた。

二つとも共通していたのは自らを顧みず街を守るために行動してたという事だ。

 

………自分はこんなにもバカだったろうか。

 

だがその受付嬢が目の端に浮かべていた涙や、市民たちの奮起の様子。

その事を思い出した俺は先のアンデッドの軍勢を目に振り返り。

 

そして、はああああと大きく息を吐き出すと───、

 

「しょおおがねえええなあああああ!!!!!」

「!?」

 

と、いきなり叫び出した俺にアクアとめぐみんが驚くのが見えるが……、今はそんなのどうでもいい!

どうすればこの絶望的な状況から逆転できるか考えろ!

 

俺にはめぐみんの様な凄い魔法は使えないし。

ダクネスのアホみたいな頑丈さも無ければ。

アクアの様なアンデッドに効く攻撃も持ってない。

 

あるのは人より運が良い事と、あいつらが言うには危機的な状況での機転の良さらしい。

 

その機転の良さを生かすには………。

なんでもいい思い出せ!この墓地に使えるものはないか!?

 

俺はここまでに見たもの、聞いた事、あったもの、大きな事から小さい事まで何か使えるものがないか出来るだけ多くのものを思い出す。

 

異世界、転移の魔道具、門、スケルトン、ゾンビ、骨の竜、黒い鎧、デカいハムスター、魔法使い、墓標、冒険者、周囲の建物、銅貨、地図、爆裂魔法、煤けた大地、描かれた線、魔法陣───────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────魔法陣?

 

「おいアクア!」

 

俺がそう声を上げるとアクアがとぼけた声で。

 

「はい?どうしたのよカズマさっきからじっとして黙ったりいきなり叫んだりして。骨の竜と戦った時に頭でも打っちゃったの?ほら、ヒールかけてあげるからちょっと見せてみなさい」

「そうじゃない!お前確か墓地の地面にでっかい魔法陣描いてたよな?あれってあんなにアンデッド達に踏まれてるのに何で形が崩れてないんだ?」

「なーにそんな事?それは当然女神である私が描いたものなんだから他の人達の魔法陣とは比べものにならないわよ。ドラゴンに踏まれたとしても大丈夫よ!……だけど惜しかったわね、全部描き終わって後は魔力を流すだけだったのに」

「そういえばアクア、結局あの魔法陣ってなんの効果があるんですか?複雑すぎて私でも把握しきれてないんですが」

「あれはね、この地に縛られていて成仏出来ない魂を天国に送って上げる為の魔法よ。今はまたアンデッドの中に入っているから女神としては安らかに浄化しなきゃいけないし」

「……という事はつまりだ、あれを使ってアンデッド達を浄化させることもできるって訳か?」

「?多分出来ると思うわよ。アンデッド達の中の魂を浄化させるんだから。中身が無くなっちゃたら外側はただの骨でしょ?」

 

 

…………なるほど。

 

 

「それが聞ければ充分だ」

 

 

 

 

 

 

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