このすば勢 IN オーバーロード!   作:ナミカゼ鼠

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15.囮作戦

 

誰かがアンデッド達の注意を引き付けている間にアクアが魔法陣に魔力を篭める。それが俺の考えた作戦である。

作戦とも言えない考えだがやってみる価値はあるはずだ。

 

なんせあれだけの魔法陣だ、アクアが頑張って描いた魔法陣の範囲はかなり広い。

それに都合がいい事に門の前にいるアンデッド達も魔法陣の中にちょうど入っている。

後は誰がアンデッド達の注意を引き付ける囮役になるかなのだが………。

 

「ねえ、ホントに大丈夫なんでしょうね?流石に私でも死体が目も当てられない程ぐちゃぐちゃにされたら蘇生できないわよ?」

 

そんな事を考えてドレインタッチを使い、嫌がるアクアから無理やり魔力を吸い取っているとアクアがそんな質問をしてくる。

 

────そう。アンデッド達の囮役は俺が引き受ける事となった。

 

何故俺がそんな危険な事をするのか疑問に思っているだろうが、それは俺がこの中で一番長い時間逃げ切る可能性が高いからだ。

先程も言った通り殆どの冒険者は逃げ帰って居らず、僅かに残った冒険者も満身創痍であり。

アクアは魔法陣に魔力を注ぐという大役があるので囮にはなれないし。

ダクネスはそのアクアの護衛に務めることになったが、そもそもこいつは足が余り速くないので直ぐアンデッド達に追いつかれてしまうだろう。

めぐみんは魔力切れで動けないので言わずもがなである。

ちなみに今はちゃんと安全な場所へと移動してあり、ニニャのパーティーが守ってくれている。

 

結果として、作戦を立て『逃げ足スキル』を持っている俺が囮役を引き受けた。

なので、めぐみんに渡して足りなくなった魔力をアクアから(無理やり)貰って居たところなんだが………。

改めてそう言われると囮役を引き受けた事を後悔してくる。

俺はその心情を吐き出すようにアクアに、

 

「大丈夫じゃない、ぜんっぜん大丈夫じゃないが………けど、今んところ他に手もないだろ。それにもし死にそうになったら今度こそ面倒くさい事なんて考えずに逃げるから安心しろ」

「何一つ安心できる要素が無いんですけど。もしもカズマが囮役をやめたら私の方に来ちゃうから絶対に頑張りなさいよ!………最悪カズマがやられちゃっても死体が無事なら蘇生出来るんだから大丈夫よね?」

 

おい。

 

「お前さっき死体がぐちゃぐちゃになったら蘇生できないって自分で言ってただろうが!もし追いつかれそうになったら絶対にアンデッド達をお前に擦り付けて一緒に巻き込んでやるからな!」

「何よ!」

「何だよ!」

 

「お、おい二人ともその辺にしとかないか、言い争いなんてしている場合じゃないだろう。それにどっちにしろ失敗すればどっちもやられてしまうんだからもっと緊張感を持ってだな………」

 

グギギギと睨み合っていると先程まで空気になっていたダクネスが慌てて俺とアクアを諌める。

するとドレインタッチで魔力が回復した俺がアクアに、

 

「よーし、分かったそれじゃあ勝負しようぜ。もしアンデッド達に追いつかれずアクアが魔法陣に魔力を込めることが出来たら、俺がアクアに飯奢って貰うからな!逆にもし俺がアンデッド達に追いつかれたらアクアが責任持ってターンアンデッドで浄化するって事で。」

「分かったわ!それで…………ねえ、ちょっと待って?今何かおかしく無かった?」

「何もおかしい所なんか無いよ。……そんな事よりさっさとバフを俺に掛けてくれよ。流石に生身のままじゃ厳しいからな」

 

「お、お前ってやつは…………」

 

アクアが俺の吹っ掛けた勝負に首を傾げていたが、俺はそれを誤魔化しつつ身体向上のバフを掛けるようお願いする。

ダクネスが何か気づいて言いかけたが、アクアがやる気満々にシュッシュっとシャドーボクシングするのを見て口を閉じた。

理由がどうあれ、やる気があるのはいい事だしな。

 

そう思っていると早くも俺に大量のバフをかけ終えたアクアが準備万端といった感じでこちらを見て。

ダクネスもアクアの護衛をする為にか今一度気を引き締めて。

 

「よし、それじゃあ─────」

 

そこまで言ってふと、ひとつ思いついた俺は。

少しでも幸運を上げるため友人の盗賊兼女神様の言葉を借りることにした。

 

 

「─────いってみよう!!」

 

 

どうか幸運がありますように!

 

 

 

 

 

◇◆□■○●◇◆□■○●◇◆□■○●

 

 

 

 

 

 

 

「だあああああ!!やっぱもう無理だああああっ!!!」

 

カッコつけてさっきはあんな事言ったがもうダメかもしれない。

そんな情けない言葉を吐きながら全力で走る俺。

 

アクセルの街でデュラハンのベルディアが連れていたアンデッドに追いかけられたことがあるが、その時とは比べ物にならないぐらい数が多い。

あの時はせいぜい数十から百程度だったが………それども充分多いが………それでも全体像は逃げながらも見えた。

しかし俺がちらっと後ろを振り返ると。

全体像どころか百や千は居そうなアンデッド達の大軍が俺目掛けて襲ってきておた。

追いかけられるというのは非常に恐ろしい。

例え『逃げ足スキル』やアクアのバフで逃げきれているとしてもだ。

 

……っていうかアクアはさっきこんな事されてずっと逃げ回っていたのか。

俺がその事に気づくとアクアに対し申し訳なさが込み上げてくる。

 

うん。帰ったら絶対に優しくしてあげよう。さっきはあんな事言ったが飯も奢ってやる。何なら高級酒をいくらでも買って、飲み比べとかさせてあげよう。だから、だから…………、

 

「だからアクアー!はやくっ、早く魔法陣に魔力を込めてくれええええ!」

「今やってるわよ!もう少しだからもうちょっと待ってなさ………って、ダクネスー!ダクネスー!こっちにも何体か来たんですけどおおおお!助けてええええ!」

「流石にこう数が多いと………っ!」

 

アクアの方を見ると何体か漏れてしまったのかアクアの方へと向かうアンデッド達。

ダクネスも何とか応戦していたが骨の竜との戦いの疲れがあったのか苦戦していた。

それを見た俺は走りながら弓を構えダクネスの背後に忍び寄るアンデッドに、

 

「狙撃!狙撃っ!!」

 

と、『狙撃スキル』で援護する。だがそうするとスピードが落ち、後ろにアンデッド達が迫ってくるので………。

 

「『クリエイトウォーター』!……からの、もういっちょ『フリーズ!』っよし!そっちは大丈夫かダクネス!」

「ああ、お陰で助かった!………ってカズマ危ない!」

 

先程地面を凍らせた事が裏目に出たのか。

滑って転び吹っ飛んで来たアンデッドにぶつかり倒れると。

吹っ飛んで来たアンデッドにそのまま上に乗られ剣を向けられる。

 

あっ、やばい死んだ。

 

本日2回目の死の予感。しかし今度は遺言を考える時間すらない。

アンデッドが剣を振り下ろそうと手を上げると同時にこれから起こることを想像し咄嗟に目を瞑る。

 

「よしっ!ギリギリ間に合ったわ!」

 

そう声が聞こえたと思い恐る恐る目を開けると、地面に幾何学模様が白く光り輝いており、同時に俺の上にいたアンデッドの動きも止まっていた。

いや、それだけではなくよくよく見ると周りのアンデッド全てが止まっているようだった。

するとアクアが静かでありながら墓地全体によく響く声で。

 

「迷える魂達よ、例え異世界だとしても水の女神アクアの名のもとにおいてあの世へと導いてあげるわ。いくわよっ!『ハイネス・セイクリッド・ターンアンデッド』ッ!!!」

 

そうアクアが呪文を唱えると共に地面に描いてあった魔法陣がアクアを中心に広がり、遠くにいたアンデッドまでも全て包みこんだ。

そして普通のスケルトンやゾンビからワイトっぽい奴や百足のようなアンデッド達全てが光を残して消えていく。

傍から見ると魔法陣とアンデッド達の浄化の光によってアクアの姿がとても幻想的に見えた。

そしてアンデッド達が消え、魔法陣の光が落ち着くとそこには祈りを捧げる姿勢で立っているアクアが残っていた。

 

長かった墓地での戦いもようやくこれで終わったのだ。

 

少し長い時間、俺はその場で噛み締める様に突っ立っていた。

そして周りのアンデッド達が居なくなり、やがて魔法陣の光が徐々に消えていく。

 

その事に安心し俺はアクアに声を掛けようとして────、

 

 

 

 

 

 

 

 

────上空からアクアへと襲いかかろうとしている謎の黒い鳥の姿を見た。

 

「ッアクア!」

 

なっ、アンデッドは全て消えたはずじゃ!?とそう口に出す暇すらなく。

ただアクアの呼びかける事しか出来ず、アクアが俯いていた顔を上げ何事かとこちらを不思議そうに見つめる。

そんな未だ気づかないアクアに慌てて走ろうとするが………距離が遠すぎる!

 

不味い、間に合わない!

 

ようやく気づいたのか慌てるアクアとダクネスに遠くから届かないと思いながらも手を伸ばして───、いきなり黒い鳥が真っ二つになった。

 

「!?」

 

驚いた顔で二つになった黒い鳥を見つめる俺たち。

その視線を向こう側へと向けると、いつの間に居たのか。

全身黒い鎧の男が二つの大剣を振り上げたままの姿勢でそこに立っていて…………。

 

「やれやれ、ようやく終わったと思いリイジー・バレアレ氏の元へ向かおうとしていたんだがな…………これは一体どういう状況だ?」

 

黒い鎧の男がそう言うと、未だ驚いた顔をしている俺達の視線を受けて大剣を地面へ突き刺すと。

 

「────まあ、『誰かが困っていたら 助けるのは当たり前!』………ですよね、たっち・みーさん」

 

と、鎧の下で何処か遠くを見つめる様に小さく呟いた。

 

 

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