このすば勢 IN オーバーロード!   作:ナミカゼ鼠

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17.石橋を叩き壊す

 

SIDEアインズ

 

『……それではアインズ様どうか御身の安全の為、相手の正体を把握出来るまでは絶対に近づかないようにお願いします。』

 

「あぁ、分かった……では頼むぞ」

 

『はっ!』

 

というアルベドの念を押すような言葉を最後にやや疲れながら伝言《メッセージ》を切る。

アルベドから俺以上の魔力量を持つ存在することを聞いた俺は引き続きその者たちの監視を続け、警戒を強めるように指示をした………のだが。

 

その後が大変だった。

俺が墓地におり、近くに例の奴らが居ることを知るとアルベドが急いでナザリックへの帰還を勧めてきたのだ。

元々俺自身が街に行くことすらあまり納得していない様子だったのだが。

俺に危害を加える奴が居るかもしれないと知ると伝言《メッセージ》越しに何度も何度も俺の身に及ぶ危険を訴えてきた。

何なら、今から危険を防ぐ為にそのパーティーを直ちに抹殺してきますと、言ってナザリックから飛び出して来そうだったので慌てて止めたのだ。

 

最終的にはモモン英雄化計画の最終段階の凱旋をこれから行うから駄目だとか適当な事を言って誤魔化した。

すると何を思ったのかアルベドが「なるほど……アインズ様の計画の内と言うことですね?」とデミウルゴスと同じ様な事を言った時はなんのこっちゃと思ったが。

 

そんなこんなで伝言《メッセージ》を切った俺はとりあえず早急に街へ帰ることを決めた。

具体的には街の人に気づかれないように、と空を飛んで帰ろうとしたのだが。

 

魔法使う為、完璧なる戦士《パーフェクト・ウォーリア》を解除し、上位道具創造《クリエイト・グレーター・アイテム》で作った装備を消した後でハムすけをどうするかと言うことに気がついた。

俺だけならばアンデッドの大軍を無視して空を飛べばいいのだがハムすけはそうは行かない。

 

そもそもアンデッドは相手の”生命”に対する感知が強く同族である俺には敵対を示さない。

だが俺が跨っている森の賢王という”生命”を感じ取ったアンデッドはその存在を無視するはずもなく。

また、このアンデッドの量が街へ向かったらそれこそ壊滅し今回の名声を上げるという目的自体意味がなくなってしまう。

なので道行くアンデッドを全て掃討していったのだが、アルベドの話を聞いてこれ以上時間をかける訳にはいかなくなった。

 

…………まあ、ぶっちゃけて言えばハムすけを置いて行けば良いのだが………。

 

チラリと跨っているハムすけを見る。

すると俺の考えを何か読み取ったのか。

置いていかないで欲しいでござる!とつぶらな瞳をこちらへ向け、怯えた表情でこちらをじっと見つめていた。

 

………まあ、ハムすけはこの地で名声上げるためにわざわざ捕まえたからな。

凱旋した後も役に立って貰う訳だし、今更こんな所でポイッと捨てる訳にもいかない。

 

そんなハムスケを拾った事に若干の後悔をしつつも、安心してほっ、と息を吐いたハムすけを尻目に見る。

 

仕方がない、と一気にアンデッドの大軍を殲滅する為に、アンデッド作成の能力を解放しようとしたその時だった。

考えに集中して気付かなかったが、どうやらいつの間にか結構街に近づいてきていたらしい。

先程まで不安そうにチラチラとこちらを確認していたハムすけが安心して前を向きながら、

 

「街の方がキラキラ光ってるでござる?」

 

と、首を傾げながら訝しげに言って────、

 

「いや、街が光るってなんだ?」

 

はっ、とハムすけが言ったことの途中で疑問を感じて、つい口から漏れ出る。

そのまま思考を中断して。

顔をあげて前を自分の目で直接確認してみると。

 

ハムすけの言ったまま文字通り街が光ってた。

 

…………本当になんだあれ!?

 

これまで考えていた事が全部吹っ飛び、目の前の異常な事態に思考が一瞬止まる。

しかし一瞬でも考えを休めることすら許さないというように。

同時に今度は自分達が向かっている街の方向から膨大な神聖な魔力が波の様に溢れ出るのを感じた。

 

「っ!?」

「キレーでござるな〜」

 

街の城壁近くから渦巻く波のように溢れる魔力。

だがハムすけは光ってると思うだけで何も感じないらしく呑気に構えている。

 

俺は今までゲームの時と同じ様な感じで魔法を使い、何となくフワッとしか魔力について何となくしか読み取れなかったのだが。

この世界へ来て初めてしっかりとその神聖な魔力について理解し、そしてアンデッドの身となった俺は本能的に感じ取った。

 

あれを食らうと不味い、と

 

「あれ?どうしたでござるか殿………って居なくなったでござる!?」

 

瞬時に思考を切り替え頭に張り巡らさせる。

そしてハムすけから降りて姿だけでなく音、気配までも全て消すことができる魔法、完全不可知化《パーフェクト・アンノウアブル》を急いでその身にかける。

その他にも相手に見つからないように様々な隠蔽魔法を自分自身にかけて対策を施し。

それと併用して遠隔視《リモート・ビューイング》を使い視認用の目玉に隠蔽を重ね、例の神聖魔法の原因を探ろうと飛ばしたのだが…………、

 

(…………使用できない!?)

 

否、使用することは出来る。

ただある一定の範囲に入るとまるで電波が切れたかのようにブツっと途切れるのだ。

よく見ると下には巨大な光で出来た魔法陣が見えており、どうやら元の形よりも数倍に広がったそれが境目のようで。

近くにいた全てのアンデッド達が俺たちを無視してフラフラと誘蛾灯に誘われる様を観察すると。

その境目を越えた途端に入った全てのアンデッドが浄化する様に消滅したのが見えた。

 

あれでもし自分があの中に居たら…………。

 

流石にオーバーロードの姿なら一瞬で消滅するとは思わないが、それでもいったいどれだけのダメージを受けることか。

アンデッドの体では出無いはずの冷や汗がつーっと顔を伝っていくのを感じた。

 

しかし、収穫はあった。

映像が途切れる前にチラッとしか確認できなかったが、魔法陣の中心に三人程の男女の姿を確認することが出来た。

その中の一人はポーション屋で見た変な格好をした青い髪の女であった。

遠目からだったが流石にアレと同じ格好で青い髪の女が他にこの街に居るとは思えない。

さらに、その少し離れた上空から我々が監視役に付けた隻眼の黒屍鳥(アイボール・ブラックコープス)が効果の範囲外に居たのか。

未だ消滅する事の無く監視役として上空を旋回している事も。

 

どうやらこの神聖な魔力の持ち主は先程までアルベドと話していた者たちで間違い無いだろう。

確かに今回の騒動にも関わっていると言っていたがまさかここで出会す事になるとは。

 

もちろんいつか接触はしようとしていたがそれはもっと相手の情報を手に入れてからの予定だった。

まだ相手が現地人かプレイヤーかですら把握出来ていないこの状況。

この地に元からいた現地人なら何とか交渉してこちらの陣営に引き込む事も無理では無いだろう。

だが、相手が我々と同じようにギルドと共にこの地に訪れ手いた場合どれほどの戦力を抱えているか。

現にたった一人の魔法使いがここまでの大魔法を使っているのだ。

アンデッドに対して大ダメージを与える事が出来る超級魔法を相手が使えると考えるだけで此方に対して明確な脅威になり得る。

もしワールドアイテムなんかを相手が所持していた場合は最悪だ。

 

その為にはこちらから友好的に近づいて敵意が無いことを知らせるべきか………?

 

そんな石橋を叩き壊して新しく魔法で橋を作った後、飛行《フライ》で川を渡るような慎重すぎる思考。

前にゲームの中でも確かギルメンの一人に言われた気がするが一体誰だったか。

もしこの場に居たらきっともう一度そう評しただろうな。

 

その事に自分で苦笑いし、俺は取り敢えずどうやって穏便に相手と接触するか考ようとして。

一先ずアルベドにあの鳥を帰還させるようにと伝言《メッセージ》を入れようとした所で遠くから見て何か動きがおかしい事に気がついた。

旋空する様に回ったかと思うとフラフラと上下に移動したり、監視対象に今すぐにバレても仕方がないような挙動だった。

 

すると今まさに連絡しようとしていたアルベドから緊急の伝言《メッセージ》が入って、

 

『大丈夫ですかアインズ様!先程の監視対象が何か魔法を使うのを確認すると同時に召喚したモンスターからの繋がりが強制的に途絶えて………!』

 

「あぁ、私の方は大丈夫だ………って」

 

今なんて言った?

 

アルベドの言った台詞に疑問を抱いて。

アインズ様!?と呼ぶアルベドとの通信を後で掛け直すと言いながら切り。

慌ててもう一度遠隔視《リモート・ビューイング》を今度は消滅しないよう結界に入らないギリギリまで近づき、ナザリックの方から召喚したモンスターをもう一度よく観察すると。

先程は気付かなかったが、その瞳からは召喚されたもの特有の知性ある瞳は見えず。

まるで通常の野生のモンスターの様にアンデッドそのものの濁りきった瞳を輝かせ、下に居るもの達───例の神聖魔法の使い手であるパーティーを狙っているのが分かった。

 

「……………っ不味い!」

 

先程、交渉してこちらの陣営に引き込むと言ったがそれは相手との関係が敵対していない場合だ。

 

我々が隻眼の黒屍鳥(アイボール・ブラックコープス)で観察し、さらに意図的ではないとは言え暴走させ攻撃した場合。相手に気付かれバレた時、こちらの存在が露顕し多くのリスクが生じる。

それにその状況だったら完全に悪いのはこちらだしゲームなら普通に敵対関係にまで陥る。

誰だって勝手に見られて嬉しい訳が無い。ましてや攻撃なんてされたらキレてPKされても文句言えない。

誰だってそうするし、何なら俺だってゲームの時ならPKした後に相手の拠点を潰しに行くレベルだ。

そんな相手がまだ何者か分からないこの状況でわざわざ敵を増やす訳にもいかない。

 

一体どうすれば…………!

 

と、頭を抱え逡巡していると不意に脳内に天啓が浮かびポツリと口から漏れ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───いや、バレなければ大丈夫か………?」

 

 

そう。相手に隻眼の黒屍鳥(アイボール・ブラックコープス)が観察していた事を悟らせず、さらに暴走して攻撃しようとしている所を助けに来たていで処分する。

あの鳥さえ殺してこちらで処分してしまえば先程ポーション屋でクレマンティーヌを追跡したようには出来まい。

今なら漆黒の英雄モモンとしての面で相手に接触することで一時的でもナザリックの存在を逸らすことも可能だ。

 

…………それに今なら自分で倒す事で相手に恩を与える事が出来るかもしれない。

あの程度のモンスターがあんな大魔法を使う相手に致命傷を与える事が出来るとは思わないが助けて貰ったという気持ちは植え付ける事が出来るだろう。

 

段々と光を失っていく魔法陣を見て頭の中でそう結論に達した俺は。

墓地の全てのアンデッドを浄化し役目を終えたとばかりに光を失った魔法陣に右手を入れ、効果が無いことを確認する。

 

良かった。もしこれで効果が残って居れば右手がどうなった事か想像したくもない。

焦りすぎて少々迂闊だったか、と舌打ちをする。

その後、また遠隔視《リモート・ビューイング》を使用すると、魔法陣の効果が消えた為か。先程の様に途切れる事の無く相手へ近づき相手の姿を観察することが出来た。

 

そこに居たのは、魔法陣の中心で祈るように手を合わせ青い髪をしたまるで精巧な人形の様な美しい少女、そしてその少女を護衛するかのように守る一人の凛とした女騎士。

まるで絵画の様に美しい光景だが、その少し離れた所にもう一人居ることに気がついた。

そこにはボロボロの格好で何故かぼーっと突っ立ている少年が何故かいた。

 

何処かで見たような顔だが………思い出せないな。

と言うよりもそんな少女二人に対してかの少年はあまりにも場違い気がしなくもないが………もしかして貴族の荷物持ちとか護衛とかそんなもんだろうか?

 

それほどまでに二人の少女の姿は美しくまた非常に目に付いた。

魔法で何度か結界に当たったのだが隠蔽魔法のお陰か。どうやら相手はまだこちらの存在に気づいてはいないようだった。

 

すると魔法陣の力が弱まるのを待っていたのか。

旋空していたモンスターが上空から急降下していくのが見えて。

すぐさま次元の移動《ディメンジョナル・ムーブ》を使用して彼らの前へ移動する。

完全不可知化《パーフェクト・アンノウアブル》がまだきいているお陰か近くにいるのに未だ気づかれていない。

 

今まさに警戒すべき相手(神聖魔法の使い手)へ向かって攻撃ようとしている隻眼の黒屍鳥(アイボール・ブラックコープス)を上に見て。

完璧なる戦士《パーフェクト・ウォリアー》と上位道具創造《クリエイト・グレーター・アイテム》を使用し戦士へと変身して。

ちょうど魔法が切れてその場に突然現れたのを驚く例のパーティーを尻目に見ると

背中に背負っている大剣で混乱している隻眼の黒屍鳥を一刀両断にした。

 

なんでこんな事になったんだと、あるはずの無い胃の痛みをシクシクと感じながら内心で溜息を付き、

 

「やれやれ、ようやく終わったと思いリイジー・バレアレ氏の元へ向かおうとしていたんだがな…………これは一体どういう状況だ?」

 

それが相手に悟られぬ様に漆黒の英雄モモンを演じる事にした。

 

そんないきなり現れた俺に存在を間の抜けた顔をして見つめる三人の冒険者。

警戒すべき相手だがそれを見ているとふと昔の記憶にくすぐられるものがあった。

なんだろう?と自分で訝しむと共にすぐさま理解した。

 

(……ああ、そうだ俺がたっちさん達に助けられた時と似てるんだ)

 

状況は全く違うがその助けられた時の自分の間抜けた顔を仲間のバードマンから撮られたスクショを見せてもらった時の(なおゲームなので表情は無かったが)雰囲気にそっくりなのである。

その事にこんな状況なのに変に懐かしく、またその後のたっちさんのセリフを思い出して。

 

「────まあ、『誰かが困っていたら 助けるのは当たり前!』………ですよね、たっち・みーさん」

 

と、俺は何処か遠くを見つめ呟く様に放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────なお、紛うことなきマッチポンプである。

 

 

 

 

 

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