アインズ様のターン!
side アインズ
『アインズ様どうか御身の安全の為、相手の正体を把握出来るまでは近づかないようにお願いします。』
と、先程までのアルベドとの会話を思い出し、アインズは相手に警戒している事が気づかれ無いようにじっ、と目の前の例のパーティーを観察していた。
目の前にいるのはまるで貴族かのような金髪の女騎士とアルベドから報告にあった例の青い髪の(ユグドラシルではよく見る)奇抜な格好をした女。
確か四人組のパーティーと聞いていたので一人はこの場にいないようだが、それ以上に最も気になるのが…………
(やっぱりどっかで見かけた気がするんだけどなあ………?)
そう思いながら心の中で首を傾げる。
日本でよく見る普通な……悪く言えば平凡な顔をした茶髪の少年。
自分でカズマと名乗っていたがやはり何処と無く日本人に近い気がする。
先程の会話の中でパーティーのリーダーである事を聞いた時は素直に驚いた。てっきり荷物持ちか何かだと思っていたのだが。
ただ欧米系の顔つきが多いこの世界で和風の顔つきは多少の違和感があり、何となく自分にとっては懐かしい感じはする。
(やっぱり日本人なのか……?でも、わざわざユグドラシルでこんなパッとしないアバターを作るってのも違和感あるしな……、……そもそも俺だって幻術で顔を見せた時リアルの顔を参考にしたけど、異国からの人間って事であんまり深く突っ込まれなかったし。………この世界の東にも島国とかあるのだろうか……)
現実の100年前程昔に流行ったラノベという小説の中にはよく異世界にはジャポンとか言う国がちょくちょく出てくる事があったらしい。
ギルメンの一人にそっち方面に詳しい人が何人もいて、そんな知識だけ偏って伝わってしまったのだが。
そんな本当に異世界に転移してしまった身としてはもっとちゃんと聞いておけば良かったと後悔するが、既に後の祭りである。
(………とりあえず英雄モモンとしてだけど友好的な関係になる事は出来た。相手の力量も見た感じはこちらより全然レベルは低いみたいだし、話を信じて聞く限りどうやら骨の竜にも苦戦するくらいだから大丈夫だろうけど…………問題は)
そう思いながらチラリと青い髪の少女の姿を確認する。
確か名前はアクアと言ったか。
先程まで自分の銅のプレートを見てカズマ少年とダクネスと言っていた貴族のような少女と共に騒いでいたのだが。
今はもう飽きたのか。見ていると冒険者ギルドを目指す我々の後ろを着いてきながらで。
あっちこっちにフラフラと手慰みとして残った骨を簡単に浄化で消し去っていた。
────そう。問題はこの能天気そうな少女が仮にも魔法職特化である自分のMP───魔力と同程度かそれ以上で。
さらにカルマ極悪のナザリックの面々殆どに大ダメージとなる神聖、浄化魔法を得意としている事だ。
(───やはりここで消しておくべきか?)
そう思考をモモンガからアインズ・ウール・ゴウンへと切り替え、肩に掛けている大剣に手を添える───が、思い直してその手を下ろして構えを解く。
確かに脅威ではある………が、とりあえず今は様子見だ。折角友好的に対話出来るのだから、わざわざ情報も聞かずに殺すのは勿体ない。
現地人かプレイヤーかどうかすら分かっていないんだ。
現地人だった場合はこの地にも相応の実力者がいるとナザリックに警戒を強めるべきだし、もしプレイヤーだった場合でも───服従か敵対かでそれ相応の対応をしようではないか。
とりあえず今できる事として相手の力量を明確に把握する為にこちらから話題を振る。もしもあれ以上の事が出来るのならばさらにナザリックへと早急に警戒と監視を強めるように言わないといけないだろう。
「それにしても本当に素晴らしい腕前だな、あの若さでああも連続して神聖魔法を使う事が出来るとは。余程の才能があるようだな」
「……まあ、確かに正直今回はアクアのお陰で助かったとは思うんですけど………ぜったい調子に乗るからあまり褒めたくないんだよなぁ」
そう言うとカズマ少年は微妙そうな顔でアクアへと顔を向ける。なぜそこで微妙な顔ををするのか………と、そこまで考えて先程のファーストコンタクトから今までの流れを思い「あぁ……」と残念そうに察する。
つまるところ彼女は冗長するタイプなのだろう。褒めれば褒めるほど鼻が天狗のように伸びて調子に乗る。ギルメンにもそういうタイプが何人かいたが、大抵調子に乗った後に上手くいった記憶はほとんど無い。
……まあ彼女のようなタイプの人間と上手く付き合える辺りカズマ少年も中々一筋縄ではないみたいだが………。
「ちなみにカズマ少年や他の仲間も彼女のように神聖魔法は使えるのか?」
「いや流石にあんな感じの強力な魔法は使えないんすけど……簡単なヒールぐらいだったら俺でも使えますよ?」
「ふむ?ということは実は信仰系のような職業を取得していたりするのか?格好からはそてもそうとは思えないが……」
「いや、一応職業は冒険者なんですけど」
「?それは見れば分かるが……」
そう言いながらどこか噛み合わない会話に二人して首を傾げたがふとカズマがポンっと何か気づいたように手を叩き、
「あっ!……ま、まあ別に俺の事なんてどうでもいいじゃないっすか!……そ、そんなことよりモモンさんの活躍もっと聞きたいなー!」
明らかに怪しい。
確実に何かを隠して慌てているカズマ少年のその言動にフルフェイスの下に隠されている髑髏の眼光が思わず強くなる。
そのままじっと見ていると、カズマ少年の目がキョロキョロと泳いで段々と挙動不審になっていく。
これは直接聞いた方が早いか………?
そう考えに至ると同時に歩んでいた足を止める。すると立ち止まったことに不思議そうな顔でこちらへと振り返るカズマ少年と真正面から向かい合う形になった。
そしてどんな些細な変化も見落とさぬように相手を見ながら慎重に口を開く。
「………すまない最後にもうひとつだけ聞きたいことがあるんだが」
「あっ、はいなんですかね?」
「ユグドラシルという場所に聞き覚えはあるか?」
………もしもこれで反応すればプレイヤーという事が確定だが………
「ユグドラシル?……いやちょっと分からないですね」
しかし 、そんな思いとは裏腹にカズマ少年は何も気づいていない様子で。
こちらがじっと見ている事に気が付くと頭に?マークを付けて首を傾げていた。
その表情や様子からは知らないフリをしているとかではなく、本当に身に覚えがないようだった。
………どうやらシロらしい。
「………そうか」
「なんかすいません……?」
「いや大丈夫だ……ちなみにヘルフレイムやアースガルズといった名前にも?」
何か縋るように元々ナザリックが存在していた場所などを問いかけるがカズマ少年は申し訳なさそうに首を横に振るだけであった。
………何となくそんな気はしていたのだが。
いざ知らないとなると少しだけ思うところもある。
あの世界を知るのはこっちの世界では俺とNPCだけ何だって。
「……なんかモモンさんの思い入れのある場所ですか?」
「あぁ……」
「そうっすか……あっ、もしかしたら他のやつに聞いてみたら分かるんかも!ちょっとあいつらにも聞いてみますね!」
そんな重い空気に耐えられなかったのかカズマ少年が少し離れていた仲間二人に近寄っていく。
その事をちょっぴり申し訳なく思いながらも、あの逃げ足の速さはどうかと思うが。
そう考えながら他の二人の様子も見てみると。
件のアクアという少女は話に食いつくどころかまるで聞いていない様子で鼻歌を歌って。
どこで拾ったのか、猫じゃらしを持ってもう一人の少女──ダクネスにこちょこちょとちょっかいをかけていた。
「そーれ、ダクネスってここが弱いんでしょ、カズマからこの前聞いたのよね!………あれっ、そう言えばなんでカズマがダクネスの弱いところを知ってるのかしら?」
「……ふぅっ……!、ア、アクア今は真面目な雰囲気だから……んっ!………こ、これはこれで……っ!」
(…………は?)
ダクネスが頬を上気させて体を揺すり艶めかしくそう言う謎の光景。
予想外の光景が広がっていて一瞬思考がフリーズする。
さっきの様子から退屈そうなのは感じていたがなんでこの状況でちょっかいをかけているのか。
さっきまでアンデッドの大軍を相手に浄化していたとは思えない状況。
もしかして何らかの意図が隠されているのかとも思ったが二人の表情を見る限りただただ戯れているだけだろう。
見るとダクネスもアクアに向かって小さく抵抗していたが何故か途中からされるがままになっているようだった。
………見なかったことにしよう。
見てはいけないものを見た気がして気まづそうにそっ、と目を逸らす。
途中で気づいたのかカズマ少年が二人の頭を叩いて止めさせていたが。
涙目でぶーたれているアクアと何故か頬を上気させて元気になっているダクネスを見て俺は。
(うん。アンデッドの体になっといて良かった)
と、今はもう下半身には無い息子を見て悲しく呟くのだった。