Q.オバロ要素は?
A.(まだ)ないです。
受付嬢の質問では、俺達の年齢や持っている武器、特技などの主に冒険者として必要な事項を聞いてきた。
そしてその質問を全て答えて、インクが乾くのを待っていると受付嬢はふと何かを思い出したのか顔を上げ、俺達に話しかけてきた。
「そういえば講習はこれからでいいんですか?」
「講習?」
俺がそう不思議そうに鸚鵡返しをすると、受付嬢は何故かまたかという顔をした後、直ぐに営業スマイルに戻り、
「はい、講習です。一応、冒険は危険な仕事なんです。だからきちんと説明をして、命を失っても文句をどこからも言われない形にしなくてはならないわけなんです」
と言った。……なるほど、そう言っておけばギルドの責任ではなく自己責任ってことになるのか……。
「そういうもんか」
「そういうものなんです」
「……それで結局講習って何をするんだ?剣の腕でも見せればいいのか?」
講習と言うぐらいなのだからこれから指定のモンスターを倒してくださいとでも言うのだろうか?
因みに長い事このちゅんちゅん丸を握っているが俺自身の剣の腕はからっきしである。
俺はそう考えていきなりモンスターと闘う事になっても大丈夫なように構えていると、受付嬢はこちらを不思議そうに見て、
「いいえ、主に基本的な冒険者としての知識ですね」
………………。
「………え?それだけ?」
「?、はいそうですけど……」
「……いきなりモンスターの前に連れて行って、はいこれを倒してくださいとかそういうのじゃ……」
そう俺が聞くと受付嬢は呆れた顔をして、
「何ですかそれ、そんな事をしてもし怪我でもされたらそれこそギルドの責任問題になってしまいますよ……それにそもそもそんな事をするお金も人材もありませんし……」
と、受付嬢は至極もっともなことを言い、講習について説明を言った。
「いいですか、講習と言うのは簡単なギルドの知識です。例えば依頼に関するものだったり、報酬の事だったりです……後はプレートの等級についてですかね」
ふむふむ、つまり初心者用のチュートリアルか……まあ、これは問題ないだろう。
これでも俺らは上級冒険者程ではないにしても、中級冒険者ぐらいではある筈だ。
ただプレートの等級とは何だろうか?
「すいません、他のものは分かるんですが、プレートの等級とは何ですか?」
すると、めぐみんも気になったのか受付嬢に質問していた。すると受付嬢は聞かれる事に慣れているのかすらすら答えていく。
「はい、冒険者は実績によってランク分けされていて、冒険者はその実績を積むことにより、下から順に銅級、鉄級、銀級、金級、白金級、ミスリル級、オリハルコン級、アダマンタイト級とランクが上がっていくようになっています……有名な所で言うと青の薔薇がこのアダマンタイト級になりますね」
なるほど…………青の薔薇というのは知らんが、よく異世界転生的なやつであるチートな主人公がいきなり飛び級になるやつか。
まあ、俺のチートは女神(笑)だからそんな事はないだろうけどな!
「えっと、それでは他になにか質問はありますか?」
そんな事を考えていると受付嬢がそう聞いていきたので俺はずっと気になっていた質問を聞くことにした。
「えーとそれじゃあ、ここら辺の地理が分かる地図的なものってありますかね?」
「?えっと、地図はありますけど……何故そんなものを?」
そう質問すると受付嬢は予想外の質問だったのか、不思議そうな顔で聞いてきた。
「いやあ、ちょっと複雑な事情があって、ある魔道具を調べてたらいきなりここに転移されてしまって……元の場所がどこだか調べたいんですよ」
まあ実際は複雑な事情など無くそのまま魔道具で転移させられただけだが。
「なるほど、そういう事ですか……分かりました。ちょっと待ってて下さい、今この辺の地図を持ってきます」
そういうと受付嬢は何か納得した様に頷き、仲間達を一回り見て、最後にこちらに同情するような顔をしてから席を立って奥の方に地図を取りに行った。
何だろう、何か盛大に勘違いされた様な気がする。
そんな事を考えながら俺達は受付嬢が戻ってくるのを待つことにした…………。
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「はーい、それでは次でお待ちの方はこちらのカウンターへどうぞー!」
夕方の時間帯になり簡単な依頼を終えたであろう冒険者達が列をなして並んでいる。
それを捌く為に職員がさっき暇そうにしていた時とは違く一生懸命に働いていて、活気が溢れてる。
そんな中、冒険者ギルドの隅っこのテーブルを占領して座っている俺と仲間達の間には反対にどんよりとした空気が漂っていた。
……原因は分かっている。いや、分かりたくはないが状況がそれを許さない。
俺はテーブルの上に置いてある、この状況を作った原因の魔道具と受付嬢から貰った地図を見て深く息を吐き、さっきの会話を思い出した。
受付嬢が奥から地図を持って出てきた後、俺達はその地図を見せてもらい違和感を感じた。
その地図はかなり広い範囲を写しているのにも関わらずアクセルの街や王都、アルカンレティアといった代表的な地名が書いておらず、更には前にアクセルで見た地図とは全く違っていたのだ。
それらを疑問に思い、俺達は受付嬢にアクセルの街の事、エリスやアクアといった女神の事、魔王の事等、誰もが知っているであろう質問を次々としていった。しかし返ってきたのは予想外の答えだった。
『アクセルの街ですか……一応地理については詳しいつもりなんですけどちょっと聞いた事無いですね……』
『女神ですか?……すいません宗教についてはあまり詳しくなくて……四大神とか、法国の六大神とか以外は知らないです』
『……魔王って八欲王の事ですか?……え、違う?……いやそもそもおとぎ話以外に魔王って聞いた事無いんですけど』
『………空を飛ぶキャベツ………あのふざけているならいい加減にして下さい。というかふざけるならもっとマシな嘘をついてください』
と、最後の方にはからかっていると思われ、更には後ろの方に列ができてきたので退くことになってしまった。
ただこれらの情報からわかった事がある………いやこれまでも違和感は色々あった。
エリス硬貨が別の硬貨になっていたり、冒険者カードが使えなかったりだ。
俺はそれらはとんでもなく遠くに転移してしまったからだと思っていたがそうではなかった………いやある意味とんでもなく遠くに来たことは間違いないだろう。
簡単に結論を言おう。
どうやら俺達は────元の世界とは別の異世界へと来てしまったらしい。
……………どうしてこうなった!!
■◇◆□■◇◆□■
そして俺達はあの後ギルドのテーブルを借り、これからの事を話し合うことにした。
なにせ異世界だ。俺とアクアは一度転生を経験したおかげで何となくわかるがめぐみんとダクネスはなんの事か分からないだろう。
…………いや、実際には転移しただけだから異世界転移だろうか?
「あの、ちょっといいですか」
そんなバカな事を考えて現実逃避をしているとそんな声が上がった。
見るとめぐみんが小さく手をあげて俺達を見回しており、全員が自分を見るのを確認すると静かに話し始める。
「あの、まだイセカイと言うものが何なのか分かりませんが、とりあえず先に明日の宿や食事の事を考えませんか?」
「……そうだな、いつあっちに帰れるか分からないのだから宿を取っておく方が良いだろう………幸い、まだ換金していないエリス硬貨も有る事だしな」
「……そうね!確かにお腹も空いてきたし何か食べないとね! すいませーん!カエル定食とクリムゾンビア一つおねが、痛い!」
そう言って食事を頼もうとするアクアの頭をひっぱたく。
「何するのよ!いきなり叩いてきて!」
「やかましい!お前今の話し聞いてたのか!? 金がねーんだよ!なのに何で食事なんか頼んでんだよ!というかどう見てもここに酒場なんてないだろ!」
「……はっ!そうだったわ。ついつい、いつもの癖で頼んでたけれどもうここはアクセルの街じゃ無いのね、うっかりしてたわ!」
大丈夫だろうかこいつ………いやもう手遅れだな
そんな事を考え俺はまた深くため息をつき、アクアに簡単に説明した
「いいかアクア、今は前みたいに異世界に転移させられた状況と同じだ……幸いあの時とは違って金は多少あるし、仲間もいるがそれでも不安なのは間違いない……。分かったならその残念な頭で少しでもいい案を出せ!」
「あー!今、残念な頭って言った! 何よ!残念なヒキニートの癖して!」
「おい、誰が残念なヒキニートだ!」
そう言って俺はこれ以上の会話は不毛になるだけだと確信し、アクアとの口論を切り上げ真剣に今後について考える事にした。
「いいか、まず今俺達が最優先すべき事は金を得ることだ………これはさっきダクネスも言った通り、まだ換金していないエリス硬貨が有るからまずはそれを換金する。そして明日には冒険者プレートが発行される筈だから、明日から依頼を受けて金を稼いでいくようにするぞ、分かったな?……………よし、それじゃあ今日の宿を探しに行くぞ!」
俺がそう言い全員が頷いたのを確認し、宿を探しにいくため席を立つと同時に俺の腹からぐぅ〜と切ない音がなった。
「「「「………………」」」」
■◇◆□■◇◆□■
あの後結局、朝から何も食べておらず、歩き詰めだったためお腹が空いていたので、全員で食事を取った後、職員の人からオススメの宿を教えて貰い、その場所へ向かった。
途中、換金出来る場所があったのでとりあえずエリス硬貨をこっちの硬貨に替え、換金屋のおじさんに感謝した。
ただ、どうやらこの世界では馬小屋で寝る習慣が無いらしく一応聞いてみた所、換金屋のおじさんに変な目で見られてしまったが。
そんなこんなありながらも、俺達は無事宿へ着いた。
宿は職員の人から教えて貰ったが、どうやら冒険者御用達の安宿らしい。
見た目は結構ボロっちかったが中はそこそこ綺麗だった。
また中に入った時冒険者ギルドと同じく値踏みする様に見られたが、無視して真っ直ぐ主人の所へ行きさっさと四人部屋を取った。
四人部屋を取った時アクアが、ブーブー文句を言ったが、現在空いてる部屋がそれだけだったので仕方ない。
………というかお前はあっちの世界に来たばっかりの時、馬小屋で一緒に寝てただろうが。
そんな事を考えても口には出さず、部屋に向かいそこで何か間違いが起こるわけも無く、これまでの疲れもあったのか全員直ぐに深い眠りに入った。
これから先どうなるか心配だが、まあその事は明日考える事にしよう。
そうして俺は問題の先送りをして皆と同じく意識を沈めていった
ちなみに受付嬢の人はWeb版オバロからの登場です。