転生者の教え子兵藤一誠 A new HERO new LEGEND 作:影後
『アーシア、ついたよ』
『風が気持ち良かったです』
一誠はヘルメットを外し、かつての面影を残した教会の前にビートチェイサーを止めた。思い出されるのは未確認第三号との戦い。
「あら、迷える子羊さんかしら?」
「あっ、シスターさん。こんにちは。実は、この教会に行くように言われたって、この子が」
『あの、アーシア・アルジェントです!よろしくお願いします』
『アーシアね、よろしく』
一誠は何処か妖艶で怪しげな雰囲気を感じるシスターにアーシアを預けた。
何故、自分がそのように感じるのか理解できなかった。眼の前の女性はスタイルは良いだろう、しかし修道服におかしなところは無い。
見た目は神の信徒だろう、だが戦いの経験が何処か眼の前のシスターに違和感を覚えたのだ。
『じゃあ…自分はこれで』
『あの!また、乗せて下さいね!』
『うん、必ず』
一誠はビートチェイサーに跨り、教会を後にした。
と言っても、目的地は自宅である。 夕暮れ時を過ぎ、ほのかな夕食の香りがあたりから漂い始める。
車庫へビートチェイサーを停め、家に入る。
「ただいま……っと、お客さん?」
靴は1足分しかないが、人の気配がした。
一誠は音を立てない様に静かにリビングの扉に手を掛ける。
「……で……るの……」
「………い………まは………」
「誰だ!」
「一誠?!」
「マジか?!」
「……何者だ!」
「こいつの友人だよ!同じ大学の!」
「靴が無かった!本当は泥棒何じゃないのか?それとも……お前が父さんと母さんを襲ったのか!」
「知らねぇよ!靴ならここに!ほら!あるだろ、俺は玄関の占領しないように靴袋持ってるだけだよ」
何処か爽やか系のイケメンだが、一誠は警戒を解くことはしない。
「一誠、落ち着いて。美猴は私の友達なの」
「……それは………失礼しました」
「あっあぁ………」
一誠は逃げるように自室へと走り、鍵を締めた。
「……一誠」
「なぁ、アレがお前の戻らない理由?」
「……黙って、ヴァーリも、わかってる」
「……ちょっかいかけようとしてるけどな、それどころか何時か闘いたいとか言ってたぜ?未確認4号、クウガとな」
「……その時はその時、私は一誠に付く」
「そうかい……後だ、ヴァーリの奴。ここの夫婦を襲った奴を赤龍帝とか言ってたぜ。信じるかは……」
「………わかった、今日は帰って。一誠を慰めるから」
「はいはい」
美猴と呼ばれた男ははじめから居なかったかのように部屋から消えた。
だが、ソファかモゾモゾと動いた。ソファに置いてあるブランケットの中から白猫がゆっくりと顔を出し、人へと変わる、
「……黒歌姉様、私に聞かせた理由はなんですか!」
「……白音、リアス・グレモリーの眷属の貴女だから聞かせたの。あと、一誠の部屋に行ってあげて。流石にキャットドアは塞いでないと思うから」
一誠は自室でじっとベッドに蹲っていた。
「にゃぁ」
キャットドアから白が入ってくれば、近くに寄ってきたタイミングで優しく撫でる。
「…白、俺………許せないかもしれない。リアス・グレモリー。学校の先輩何だよ。でも……正直、悪魔の存在を知ってからだとね、きっとグレモリー先輩も悪魔だって感じる。予想がついたんだ、蒼那先輩の本名はソーナ・シトリー。ソロモン72の悪魔の一つ。グレモリー先輩もきっとそうだ。そして、その配下にいる何者か………殺してやる」
「?!」
白音が見たのは普段の優しさではなく、激しい憎悪に燃えている復讐の瞳だった。全てを破壊するかのように力強く、全てを浄化する様に気高い。
しかし、その瞳にあるのは復讐の憎悪。チグハグであり、詳しく理解できない。殺意が無い、殺意が感じられない。猫は人の感情の変化に敏感だ、それは猫又である白音も同じである。だが、感じられない。
「……殺してやる」
「一誠、ご飯できたわよ?」
「うん、先に行ってるね」
部屋から出れば愛する家族である黒歌が一誠を迎えた。
黒歌は階段を降りて行った一誠を見送ると、結界を張った。
「白音、一誠は」
「……初めて見ました。殺すとか、逸れによく言われてました。でも……一誠先輩のは違う、まるで……まるで真っ黒に沈む自分を無理矢理善意で塗り固めているみたいで………黒歌姉様!私達が離れなければ!私達がずっと一緒にいたらこんな事にはならなかったのでは」
「白音、もう遅いのよ。一誠の心は私達が癒やすの。良い?私は、私は血の繋がらない彼を本当の弟だと思ってる。怪我していた私達を救った彼を」
白音も思い出す、悪魔達に騙されていた事を。
悪魔達に追われていたことを、姉と離れ離れにされた日々を。
そんな時に出会えた一筋の光明だったこの家族を。
ボロボロの体を幼い腕で抱き抱えてくれたあの腕を。
「この身体を使ってでもどうにかしてみせる、一誠が壊れる前に」
食事等を終えた一誠は黒歌に一言告げるとビートチェイサーにまたがる。
不安な気配、嫌な予感という上手く話せない内容だがどうしてもあの教会が気になった。
「……アーシア」
教会はまだ夜には早いというのに人の気配がない。
そして、嗅ぎ馴れた嫌な匂いが漂っていた。すぐさま離れ、人混みに隠れる。一誠は携帯電話を取り出すと、恩人であり戦友たる警察に電話をかけた。
「杉田さん」
「一誠君、いったい」
「……教会、覚えてますか?」
「あぁ、未確認第三号の事件の事だろう?」
「血の匂いがしました、これから調査してみます」
「まて!」
一誠の行いは不法侵入に等しい。しかし、未確認4号。
クウガであれば、日本の法律で律する事は基本的にできない。
「超変身」
青のクウガへと変身し、教会の屋根に登る。そして、緑のクウガへと再び変身した。中から聞こえてくるのは吐息と何かを話し合っている数名の声。
「…儀式の開始日は何時に」
「明日よ、明日。あの娘には死んでもらう」
「しかし、あの化け物共は」
「未確認?そんなの、私達の力なら簡単に殺せるでしょ」
「……後は邪魔なグレモリー共の眷属を」
話を聞いているとパトカーが近づいてくるのが見えた。
サイレンは鳴らしていないが、パトランプは光っている。
「……4号」
警察官達は屋根の上にいるクウガを目にした。
クウガはそのまま地面に着地し、警察の前に来る。
「儀式、死んでもらうなど……恐らくは」
「……4号、我々が突入する前に入れるか?」
「やってみます」
赤のクウガに戻り、教会の戸をゆっくりと開ける。
クウガの感覚に頼りながら、一誠は進んでいく。
「駄目だろぉ?教会は神の信徒のものだぜ?」
「!」
それは光の剣だった。クウガの装甲を傷つけるには足りないが、教会の壁に簡単に切れ込みが出来ている。
「あん?悪魔じゃねぇ、お前何もんだ」
そう、男が話しているときに警官隊が突入してきた。
玩具の様な物を振り回しながら、クウガに迫っている神父。
恐ろしいのはその玩具が机や椅子を簡単に切り裂いている事だ。
「貴様!その武器を置け!」
「あ?うるせぇよ!」
「危ない!」
クウガは杉田を庇うように退けた。
光の光線が扉を貫き、さらに先まで貫通している。
「レーザー?何処の兵器だ!!」
「なんだよ……なんなんだよ、お前らは!」
「見られたからには……殺すほか無し」
ツインテールの金髪に青い瞳のツリ目、ゴスロリの衣装を纒った少女。
とかなり大柄で、胸元が大きく開いた黒のボディコンスーツの女性。
紺色のコートを着ている筋肉質な男性。
そして、漆黒のスカプラリオを身に纏い、妖艶にして危険な香りを纏わせた女性が、アーシアを人質の様に抱えている。
「あり得ない…存在していたのか」
それは黒鳥の様に輝く両翼を持ったもの。その姿は神秘すら感じてしまう。
「忌々しい……お前に殴られた傷が今でも痛む」
『レイナーレ様、一体…ひっ』
「敵は未確認生命体だ!撃て!」
杉田の発した命令が直ちに遂行されようとした、しかし誰もが撃てない。
「……人質が居ます、撃てません!」
違った、今までの未確認生命体は人型であったが、醜悪かつ人とかけ離れた容姿をしていた。だから撃てた、しかし彼等は人間と同じ容姿をしている。
警察は人質という免罪符を得て、自身が人を撃つという恐怖に負けた。
「日本はやっぱり平和ボケしてるな」
「…………お前達、その子をどうするつもりだ」
『クウガ…何故』
「お前に関係することではない、ミッテルト、ドーナシーク、カラワーナ」
「わかったっす」「死ね、人間ども」「殺す」
「ひー、俺はさっさと退散かな」
クウガは逃げた男を追うことはできなかった。
明確な殺気、ここで自分が消えたら警官隊が殺される。
殴るのは怖い、だがやるしかない。一誠はこの時、再び覚悟を決めた。
「くらえ!」
少女の様な堕天使が光の槍をクウガに投げた。しかし、それではクウガの肉体は傷つかない。
「へ?」
「……」
クウガは飛び上がると、その拳で男性の堕天使を殴り付ける。
それだけでない、光の槍が効かないとフリーズした二人の堕天使さえ、地面に叩きつけた。
「貴様ぁ」
殴り飛ばされた男性堕天使か起き上がるとその瞳に一発の弾丸が撃ち込まれた。
「がっ……あぁ……目がぁぁ……目がぁぁ……」
神経斬裂弾、対未確認生命体用の兵装である。
「お前達!ここで俺達が死んだら誰がコイツラの情報を持ち帰るんだ!」
「そうだ、俺は……俺達は警察官だ!」
「未確認生命体なんかに……なめんなぁ!」
杉田の一言で警察官達に闘志が蘇る。
未確認生命体の出現により、日本の警察は射撃の腕も求められる。
そして、杉田が指揮する実働部隊はトップクラスではなくとも、セカンドレベルの射撃の名手が揃っている。
「あの男を狙え!良いな、確実に仕留めるんだ!」
その時だ、教会が炎に包まれ警官隊の動きが止まる。
「私の領地で色々としてくれている様ね」
聞き慣れない声と共に警官隊の姿が消えて行く。
そして、武器を構えた上級生、同級生、下級生が入ってきた。
「……未確認4号、何をしているのかしら?」
真紅の髪、それこそ学園で知らない者は居ない。リアス・グレモリーだった。思い出されるのはあの言葉。
「リアス・グレモリーの眷属に気を付けろ。お前の両親をやったのは、あの女の眷属だ」
その言葉を鵜呑みにする訳では無い、しかしあの時の青年が嘘をついているとは感覚では感じなかった。
「……」
逃げようにも追跡される恐れがある、もしそうなら家族が狙われる。
「…まったく……お前という奴は」
優しく自分を導いてくれた声が響いた。
当たりが霧に包まれると、クウガはビートチェイサーと共にあの墓地に居た。
「一誠、お前は戦うな」
「先生、俺…戦います。だって、誰かの涙なんてもう見たくないから」
「お前自身の涙は……誰が拭うんだ」
先生と呼ばれた男はまるではじめから居なかったかのように消えた。
あったのは墓石のみ。
兵頭一誠は『覚悟』を決めた。