転生者の教え子兵藤一誠 A new HERO new LEGEND 作:影後
変身を解いても人を殴った感触は消えなかった。
あの時、自身は敵を全て殺すつもりだった。
「……ただいま」
「心配……したんだから」
「ごめんなさい、姉さん」
だが、彼の心が最後まで闇に堕ちはしない。
拠り所があり続ける限り。
「…今日も一誠は休みですか」
「えぇ、お姉さんから電話が来ました。お父様とお母様が動いたという事で、2人でお見舞いに行っています」
「良い事じゃないですか!兵藤先輩、きっと」
「あぁ、でもな瑠々子。俺達はもう一人の4号、『B』にやられた。奴は恐らくは」
「…試験、ええ……忌々しいですが立ち上がる力、意志を見せつけて来たのだと思います。重症もなく、ダメージはありましたが、傷は最小限、匙は認められているでしょうね」
「…親友なら、助けたいと思うのが普通です。それに、」
その言葉の続きにソーナは驚いた。
駒王学園旧校舎、そこは悪魔リアス・グレモリーの居城である。
そして、その場にライザー、ソーナ、匙の姿があった。
「話して貰うわよ」
「やだね、オニーサン。君に挨拶する義務があっても、会話する義務はない」
「そう、でもソーナ。貴女は違うわよね」
「未確認生命体4号に対してリアス、貴女に話す内容はありません」
「巫山戯ないで!私の眷属が襲われたのよ!」
ソーナもそう言われればどうしようもない。
襲われた理由も想像がつくが、今ここで話す訳にはいかない。
悩んでいたさい、思わぬ援護が来た。
いや、むしろ当たり前というべきか。
「いえ、元はと言えば部長が攻撃命令を出したからでは?」
「塔城さん、今その話は」
「何故です?4号は人類、人間の味方であり話が出来る存在です。此方が攻撃したから、防衛するために戦闘行動に入ったと思うのが自然だと思います」
「なら、俺はどうなるんだよ小猫ちゃ」
「部長の命令を受けて開幕で殴り掛かりましたよね?それで首掴まれて……はっきり言います。敵じゃないのに敵対したのは私達ですよ?」
塔城小猫はリアス・グレモリーの眷属だが、一誠を。
家族の為なら自分の主にも牙を剥いた。
手は挙げない、言葉という武器で戦う。
「…私達いえ、私は日本警察の未確認生命体対策班と共同戦線を結んでいます。それは私が未確認4号の正体を知っているからです」
「へぇ、誰なのかしら」
「黙秘します、ソレを伝える理由は何処にもありません」
「ここは私の領地なのよ!」
「未確認生命体は人間の敵です、警察の仕事であり私達悪魔の出る幕はない」
「でも、立場が」
「民間人が貴女の立場を理解するとでも?いい加減になさい、リアス。貴女は堕天使と逸れ悪魔に尽力すれば良い。未確認生命体の事案に口を出してほしくありませんね」
ソーナは普段の温厚さすら消え失せ、オリビエも、付添人の匙すらも冷や汗をかいている。
「…良いわよ、今は見逃してあげる。でも、次4号が私の眷属に牙を剥いたら」
「知りません、4号と戦う事になるならリアスが敵対した時です。彼は、無闇矢鱈に人を害する存在ではない」
「……会長、そろそろ」
「えぇ、匙。リアス、今回の件をサーゼクス様に伝えても構いません。その時、私はシトリーとして対応させていただきます」
それは一つの決意、リアスは何故ソーナがそうまでして未確認4号を守るのか理解できなかった。
そして、旧校舎を立ち去りソーナ、匙、オリビエは生徒会室にいた。生徒会メンバーがそれぞれ座りソーナが会長席から話し始める。
「匙、例の件を」
「はい」
それは旧校舎に向かう前に匙が告げた言葉。
「俺の神器、黒い龍脈(アブソーブション・ライン)ですが、元はヴリトラの力です。もしかしたら使えるかもしれません。五大龍の力なら、その別の龍の力も感じ取れるかも…しれなくて」
「賭けですか、やってみましょう」
その会話の結果が今、伝えられる。
「……奴の、荒島賢人の神器。その力は俺のヴリトラを遥かに超えています」
「間違いではありませんか?」
「親友…一誠に、死んだ両親、俺の妹達に誓って」
「……赤龍帝、まさか……奴が」
「一誠を恨む理由、奴等ならいくらでもあるはずだ」
その場に重い空気が立ち込める。
そして、ソレを肯ける言葉を持つ少女が現れた。
「にゃ〜」
「っと!シロちゃんか」
オリビエは廊下で鳴いていたシロを招き入れる。
扉を閉めた所でシロは肉体を人間態へと変えた。
目元は赤く染まり、鳴いていたと誰もがわかる。
「塔城さん」
「……話しは聞きました。荒島賢人の神器は赤龍帝です。あと、大変な事があります。一誠先輩のご両親が………」
「……聞きたくありません」
「一誠先輩のご両親が……殺害されました」
ソーナとオリビエはその場に立ち尽くした。
それは悪夢だった。
「母さんも、父さんも、きっと元気になるね!」
「うん、絶対よ。でも、どうせならシロも連れてきたかったわね」
「姉さん、病院だよ」
そんな軽口を述べながら一誠と黒歌は自宅へと帰るところだった。本来なら午前中だけで終わるつもりだったが、一誠の、クウガの知人である警察官達もお見舞いに来てくれたのだ。
一誠という少年の創り出した縁が、ベット脇を花束やお見舞いの品で埋め尽くす。
「杉田さん、ありがとう御座います!」
「なに、我々はこれぐらいはしかできない。君に…アレ程救ってもらったのにな」
杉田はまだ学生の一誠が戦うのは本当は反対するべき立場だった。しかし、未確認という存在に対抗する手段がまだ人間には無かった。だから受け入れた。しかし、ソレでも杉田だけではない。未確認生命体対策班のメンバー全員、一誠が普通の学生として生活する事を望んでいた。
「大丈夫ですよ、俺クウガだから!」
青空のような笑顔とサムズアップを返す一誠に杉田も何処かぎこちない笑顔を向けながらサムズアップを返す。
「なんというか、済まないね。こう、笑顔は」
「大丈夫です、杉田さんが優しい人なの皆知ってくれますよ」
友人や協力者との会話を追え帰路につく道すがら買物等を行う予定である。二人はまるで恋人の様にも見えるが、姉弟として純粋な気持ちを向け合っている。
「姉さん、そういえば嫌いな物あるっけ?」
「もう、納豆以外なら何でも大丈夫よ」
「ならシュールストレ」
「ソレ出したら家出するわよ!」
一誠も冗談のつもりの会話だが、黒歌はシュールストレミングの恐ろしさを知っていた。というのも、一誠の知り合いオリビエからまるで悪戯の様に贈られていたからだ。
一誠が世界を旅するのが夢と聞いたオリビエは世界各地の品を定期的に贈ってくる近くのお兄さんの様になっていた。
その中にあったのがシュールストレミングだ。
黒歌とシロはその匂いにダウンし、風に乗った匂いで警察沙汰にも発展仕掛けた。一誠が片付けなければ兵藤家は前回とは違った意味でイエローテープが貼られるところだったのだ。
「…邪魔なんだよ、お前が」
「やめろ!!」
「一誠?!」
一誠は何を感じたのか急に駆け出した。
一誠の目には黒のローブを身にまとった何者かが映っている。
「変身!」
人がいない非常階段で変身し、ローブの男をおう。
途中、病院の中に男が入り込む。
「4号?!まさか!」
「未確認だ!未確認だぁぁぁ!!!」
4号が現れた!ソレだけで病院はパニックに陥った。
4号、クウガも此処が何処なのか理解している。
だからこそ、追うことに努めている。そして、病院の屋上に追い詰めた。
「お前は誰だ!」
「お前が邪魔なんだ、未確認4号。仮面ライダークウガ!」
(仮面ライダー?)
仮面ライダーという聞き慣れない単語に疑問を浮かべるまもなく、ローブの男は言葉を続ける。
「兵藤一誠」
「なっ!」
驚いた、驚いてしまった。ローブの男は赤い篭手の様な物を出すと屋上から飛び降りた。
「まて!超変身!」
青のクウガとなり追いかける。しかし、ローブの男の目的は違った。
「なぁ、兵藤一誠。お前の両親の病室。何処だったかな?」
「そんな」
一誠は空中で理解した。理解してしまった。
赤い篭手から火炎弾の様な何かが病室に放たれた。
嘘だと、認めたくなかった。信じたく無かった。
「あっ…」
時が止まった様にゆっくりと見えた。
火炎弾の着弾が、病室の爆発が、燃え盛る火炎の中に消えた両親の姿が。、
「うあぁぁぁぁ」