転生者の教え子兵藤一誠 A new HERO new LEGEND 作:影後
「…その一誠」
「………」
「一誠、お友達に声かけられてるわよ」
「あっあぁ、匙か。なんだ?」
「いや、悪い」
遺体のない葬儀、親戚等は無く兵藤黒歌が代表となり兵藤夫婦の葬儀が行われていた。
見知った顔、未確認対策班の刑事や警官。
友人、生徒会メンバー、駒王学園教師、お隣さんなどたくさんの人が兵藤家に出入りしていた。
お寺や葬儀場等を借りる事はできず、遺体も残っていない。
ただ、両親の写真に数多の人が線香を上げに来てくれていた。
「………」
「よぉ、黒歌。犯人は」
「わかりきった事を聞かないでくれる?オリビエさん」
「近々、うちの愚弟がリアスに近づくらしい。婚姻の為だな」
「あら、女癖が悪いで有名なフェニックスの四男?三男は神童なのに」
「黙れよ、ライザー・フェニックスは失踪中。此処にいるのはオリビエ•マーキスだっての」
軽口を言い合う二人の視線の先にいるのは誰に声をかけられても上の空の一誠だ。大人である二人にはそれが酷いものだとわかる。
「一時的だ、ライザーに戻るのもありかも」
「何を」
「弟をぶちのめし、リアスも潰…しはしないが、灸はすえる。そして、赤龍帝を処刑する」
「できるの?」
「さぁな、だが…一誠君は犯人が何者かも知らずに終わる事になる」
それは苦痛であろう、とオリビエは続けた。
「そうね」
黒歌も頷き、一誠をせめて慰めようとした時だ。
金髪の少女が一誠の前に現れた。
「一誠さん!」
「あれ?あぁ、君は……アーシア。アーシア•アルジェント」
「あの、ご愁傷さまでした!」
大きな声でそう言ってしまったアーシアに視線が刺さる。
アーシアの付き添いだろうか、リアスはあちゃーと言った風に頭に手を当てている。
「ふっ…あは…あははっ」
だが、一誠は葬儀に相応しくないまるで心からの笑いを浮かべた。
「無理に日本に合わせる必要なんてないよ。アーシアはシスターだろ?教会でやってた風に言ってくくれば良い」
「あの、違うのですか?」
「アーシア、そこはご冥福を御祈りしますよ」
「むぅ……同じ日本人の方に教えて頂いたのに間違いだなんて。すみません、イッセーさん」
しょんぼりとした顔のアーシアの頭をイッセーはポンポンと優しく叩く。
「気にしないで、アーシアは日本に来たばかりなんだから。グレモリー先輩も、アーシアを連れてきてくださりありがとう御座います。彼女の友人として感謝の意を」
「へぇ、流石生徒会の有名人ね。お線香は」
「この先に、失礼します」
一誠は歩いているアーシアを見て、涙が出そうになる。
「よっ、一誠君」
「マスター」
「アーシアちゃん、生きてるだろ?」
「……良かったです。俺が…俺が……」
「あぁ、でもな。悪魔になるって事は寿命で死ねないって事だ」
オリビエは何処か悲しそうな顔をする。
しかし、それは一誠も同じ事だった。
「…マスター、俺の腰にアマダムっていう霊石があるんです。
それが、クウガの力の源なんですけど」
知っているとは言えなかった。オリビエは転生者だが、悪人ではない。むしろ、このように悪を行える存在を否定する悪魔だ。
「俺の身体は既に人間じゃありません。定期検診で警察病院に行きました。そこで、脳に至るまでの神経全てがアマダムと繋がって、筋繊維も人間じゃない。未確認と同じになっていた」
オリビエは驚愕を隠せなかった。
原作で言われていた、体が自分じゃなくなる恐怖。
ソレを1年以上感じながら戦い続けた戦士が隣にいる。
「でも、警察の方や、先輩、姉さんが居たから俺は戦えたんです。俺はもう、人間じゃない。でも、心はまだ人間なんです」
「……君はもし、両親の仇が取れるとしたら」
「戦います。俺は……聖人じゃない。目の前で殺されて、落ち着いていられるわけがない」
それは未確認生命体24号と戦った時と同じ怒りだった。
許せない、その心は変わらない。あれはもう未確認と同じ。
「……今度こそ倒します、俺が」
「…究極の闇に堕ちても?」
「堕ちません、倒して……終わります。ケジメの為なんです、俺が、父さんと母さんを引き摺らない為の。どうすればなんて、わからない。でも、戦います。俺は、クウガだから」
サムズアップはしない、しかし鋭く燃え上がる焔を宿した瞳がオリビエの目を見つめる。
「協力するよ、俺はライザー。ライザー・フェニックス。宜しくね」
一誠はライザーから差し伸べられた手を取ると、静かに立ち上がった。
「もう一人、協力者が必要だ。わかるね、一誠君」
「…会長に頼みます」
ソーナは匙の隣に座っていた。犯人は既に理解している、だがリアスに直接話した所で聞きはしないだろう事が、長年の付き合いから判る。
「…ライザー様」
「……今の俺はオリビエ……って言えたら良かったのにな。ソーナ嬢」
ライザーは頭に手を乗せながら、不満げな顔を隠そうとはしていない。だが、目付きは普段の優しげな喫茶店のマスターではなく、貴族として政界の闇の中を生きていた男の顔だ。
「…コレでも実家の方に俺のシンパは居てね。明日に愚弟がリアス嬢の所に向かうと報告があったんだ」
「それは…」
「一誠君、三つ巴する気ある?」
「ライザー様!ソレは」
「言ったろ、灸を据えると。ソーナ嬢には立会人として根回しして貰う。赤龍帝は君と俺を殺そうとした、それだけで二つ。判るだろ、セラフォルー様に話をつけてもらう。俺は、兄上と父上、そして、サーゼクス様に話をつける」
「駄目なら?」
「無下にはできないさ、なんと言ってもフェニックスの神童。その影響力は未だに大きい。嫌だけれど、未来ある若者の為だ。大人が泥を被るのは当たり前だ」
「…マスター、良いんですか?」
一誠はなぜ、そこまでライザーが自分に肩入れするのか判らない。でも、その言葉が嘘だとは思えない。だからこそ、理解できない。
「…一誠君、いや未確認4号。俺達は救われてんだ、他の誰でもない。君にな」
「…それは」
「未確認生命体第0号、奴を倒せる存在なんて世界中何処を探してもいやしないだろう。未確認生命体いや、グロンギだ。奴等は超古代に生きていた人類だ。まだ、俺達みたいな存在は少なかった…いや、居なかったかもしれぬい。そんな超古代の存在に俺達は、はっきり言えば対象不可能なんだ。君に対して、魔力的攻撃は無効化されたろ?俺も話に聞いたときは驚いたさ。もし、ソレを知らないまま戦っていたら悪魔も天使も死んでたさ。むしろ、人間の努力なんだぜ?神経斬裂弾、あれは人間が創り出した叡智だ。破壊とか、そっち方面にえるのはなんとも言えないけどね」
「それは」
違うとは言えないだろう、一誠は理解している。
むしろ、自分が行った事だからはよく覚えている。
「それに、俺は君に対してマトモな対処法は知らない。肉弾戦しかない、君に焼かれ、不死身の俺は死を覚悟したんだ」
「………」
「そんな、君と同じ能力を持った超生命体に君は勝った。君のお陰で世界は救われたんだ。そんな、そんな君に報いる男が居ても良いと思わないかい?」
オリビエの目は優しかった、でもソレがとても苦しい。
一誠が0号をもっと速く倒せていれば東京の3万人は死ぬことはなかったかも知れない。一誠と警察は常に後手に回るしかなかった。凄まじき戦士を受け入れていたらともし、自分ではなく『先生』ならとそう思えてしまうのだ。
「一誠君、君はまだ17の子供だよ?たとえ並の大人よりも人の生死を見てきたと言っても、17歳のティーンエイジャーに違いないのさ。だから……信じてくれ。俺や、君を信頼する仲間達を」
オリビエは一誠の手を深く握り締めた。