転生者の教え子兵藤一誠 A new HERO new LEGEND   作:影後

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舞台は整った。
オリビエは自分の行いとそれで創り出した環境をそう思う。
だが、自分は大人である。ならば、子供の夢や心ぐらい守りたい。悪魔にも、心がある。


烈情 参

リアス・グレモリーの拠点たるオカルト研究部の部室。

そこに彼女の義姉に当たるグレイフィアが訪れていた。

 

「嫌よ、まだ時間じゃない。それに、貴女もあの男の評判は理解しているはず」

 

「ですが、お嬢様の婚約者です」

 

「あの、部長。この人は?」

 

「ケント、彼女はグレイフィア。その私の家、グレモリー家のメイドよ」

 

荒島賢人の言葉にそう、リアスは返す。

賢人はリアスにとってのJOKERたる赤龍帝であり、何れは眷属最強になるだろう存在だ。

 

「眷属の方々にも周知させるべきでは?」

 

「_____そうね、皆。話が」

 

グレイフィアの言葉を皮切りにリアスは話を始めようとする。

だが、ソレを邪魔するかのように部室に描かれたグレモリーの転移陣が起動する。

 

「フェニックス」

 

誰かがそう呟いた。そして、その魔法陣から男が

 

「やぁ、愛しのリア」

 

現れた瞬間硬直する。

 

「……随分と態度がでかいな。愚弟よ」

 

ソレは、神聖さ、神々しさ、恐ろしさ、そして烈火の如き燃え上がる魂を体現した様な焔。世界の、文明の始まりたる『焔』を宿し、魔界と天界の両陣営に喧嘩を売ることも厭わない存在。

 

「………はつ……がっ……」

 

魔法陣から現れた男も、グレモリー眷属も小猫を除いて言葉が出ない。とうの子猫はまるで飼い主と出会えたペットのように小さく笑顔を浮かべている。

 

「グレイフィア様、此度は我が愚弟が失礼を致しました」

 

「いえ、かのフェニックス家の神童に」

 

「失礼、私はもう童ではないさ。それに、既に出家したみ。フェニックスを名乗っては居ないのだがね」

 

ソレは正に王の風格、誰もが頭を垂れる存在だと思えてしまう。

 

「……さて、愚弟。君は何をしに来たのかな?」

 

「ふっ…巫山戯るな!なら、なら貴方が口を出す権利はないじゃ」

 

「そう、私はまだフェニックスどころか名前を出しては居ない。つまり、此処には居ないのだ。そう、『まだ』ね」

 

オリビエが一歩一歩、ゆっくりと歩きだす。

焔が当たりを燃やすかとも思えたが、そんな気配は一切ない。

それどころか焔はフェニックスの男へと向いている。

 

「さぁ、愚弟。初めまして、は?」

 

「…はじ…初めま」

 

「んん~!声が聞こえんなぁ?」

 

オリビエはフェニックスの男の口を右手で掴む。

 

「喋れない口は必要ないかな?」

 

「ぼ…ぼぐは………ぶぇびっぐすげの…ばるだー…ぶぇびっぐ」

 

「汚いな…実に汚い」

 

オリビエは左腕で何度も、何度も、何度もフェニックスの男の顔を殴る。回復はしない、オリビエの聖なる焔とフェニックスの再生能力は同一であり別物。『聖なる焔』と『悪魔の炎』オリビエはその両方を有しているが、普通のフェニックスは『悪魔の炎』のみなのだ。

 

「ライザー様!おやめください!!」

 

「グレイフィア様、貴女は認めたな?私は此処に居ないのだ。ならば、何をしようと問題あるまい」

 

「……オリビエさん、あの人が今の貴方を見たら」

 

「…塔城小猫君。ソレは言わない約束だろ?」

 

オリビエは偶然現れた、偶然出家した家の愚弟と、愚弟再会してしまいつい、色々と溜まっていた不満が爆発しただけなのだ。

オリビエは子猫からパイプ椅子を出してもらい、その場に座る。

 

「いやはや、失礼した。俺の名前はライザー・フェニックス。ふん…今は16時46分か。では、これ以前に俺はいなかった」

 

「……ライザー、ソレは私にも」

 

「当たり前だよ、リアス嬢。その愚弟は勝手に転び、勝手に消えない傷を負った。良いね?」

 

そう言いながらライザーは座っていたパイプ椅子を持ち上げ、倒れている男の腹に振り下ろす。

 

「がはっ……ごふっ……」

 

「誰が倒れて良いと言った?さっさと起きろ、我がフェニックス家を穢す気か?そうか、」

 

ライザーは倒れているフェニックス家の人間の首を持ち上げる。

小猫はもう何を言っても無駄だと感じている為、何も言わない。

三男と四男の不仲は魔界では有名な話だ。リアスはもう関わりたくないとそっぽを向き、グレイフィアはなんとか止めようとするが聖なる焔に焼かれる為、動けない。

 

「嫌な予感がしましたが、まさか当たるとは」

 

もう一度、フェニックス家の紋様が現れ少女が姿を見せた。

 

「お久しぶりです、ライザーお兄様。ベルギットを離していただけませんか?」

 

「レイヴェル、私はいい加減ゴミを処分したくて」

 

「おやめください。そんなのでもグレモリーとの架け橋です」

 

「わかった、殺すのは後にしよう」

 

ライザーが腕を離すと怯えながらレイヴェルの影に隠れるように動くベルギット。

 

「ふっ…巫山戯るな!僕にこんな事をし」

 

「邪魔です」

 

「ひぎっ?!」

 

レイヴェルに蹴り出され、ベルギットはライザーの前に現れる。

カタカタと震え、威圧感のかけらもない。

 

「ねぇ、グレイフィア。こんなのとか、本当なの?まだ、ライザーの方が良いわよ?」

 

「ご遠慮ください、グレモリー家のお転婆娘様と結婚は嫌です。第一、もうフェニックス家の家臣達の血みどろなど見たくない」

 

そう、ライザーが出家した理由は兄より優れてしまった故、当主を鞍替えさせようとする存在が出てきたのだ。

次男は優れているが、長兄ルヴァル程ではない。ルヴァルと同等かそれ以上のライザーに白羽の矢が立ってしまった。無論、ライザーは家族を愛している。だが、かつて実の母に一生消えない火傷を負わせてしまったこと、そして家族を分裂させる状況に嫌気が差していた。

そこで、更にグレモリー家との婚姻。ライザーは転生者でもあり、拒否したかった。そのため、地上に稀に逃亡し資金を稼いだ。

そして、こんな家族思いなライザーがなぜ弟たるベルギットを殺そうとするのか。レイヴェルと双子の兄として生まれ、当初は兄であるライザーにもよく懐いて居たのだが、ある日何を考えたかライザーを眷属にしようとしたのだ。無論、ライザーはその様な裏切り行為を許す事はせず殺害しようとした。しかし、あろうことか双子の妹たるレイヴェルを眷属にし、自身の盾にした。

ライザーはその様な非道を許せず、なんと長兄ルヴァルが止めに来るまでベルギットを再生しては殴り、再生しては殴りを繰り返していた。

止める頃にはライザーの服装、顔面はベルギットの返り血で染まり誰も言葉を出せなかった。

そんな事が過去にあり、出家。そしてベルギットを見ると心の底からドス黒い殺意が湧いてくるのだ。

 

「次にレイヴェルの後ろに隠れてみろ、いや……お前の四股を剥ぎ再生するたびに殺してやるよ。心を壊し、殺してくれと懇願」

 

「ライザー様、レイヴェル様も怯えています。落ち着いて下さい」

 

「……ライザーお兄様」

 

目尻に涙を浮かべるレイヴェルを見れば、ライザーも怒りを落ち着かせる。

 

「まあ良い、ベルギット。さっさと此処に来た目的を話せ」

 

「はっ……グレモリー家が結婚式を速めて」

 

「はぁ!巫山戯ないで!私の生活よ!親が勝手に決めたのに、何で私が!」

 

「そうだな、それに元々は俺との婚姻だった。俺が一方的に破棄したのに、よりにもよってお前とか?」

 

「……ライザー、何かあるの?」

 

「レーティングゲームで決めたらどうだろう?」

 

「レーティング…ゲーム」

 

「そうだ!レーティングゲームなら、俺は負けな」

 

「ちなみにこれはサーゼクス様と、セラフォルー様の署名だ。両者ともこのレーティングゲームに興味がおありでね」

 

「なによそれ!レーティングゲームって」

 

リアスは知らないのか、困惑しているがグレイフィアは知っていたのか視線を逸らす。

 

「ライザーお兄様、私も知らないのですが」

 

「此処に現グレモリー家当主様と御父様の署名もある。このレーティングゲームはもう、回避できない」

 

「ライザー、ソレは私も」

 

「あと、今回のレーティングゲームは三つ巴だ。良かったね、俺とも戦えるぞ?」

 

ライザーの言葉にリアスは驚愕し、ベルギットは怯える。

ライザーはレーティングゲーム無敗、しかも眷属を有さず己の身体一つで戦ってきた勇姿だ。強さがあれば何も必要ない。

眷属無しのレーティングゲームを無理矢理認めさせ、ライザーを侮った相手を悉く沈めた経歴がある。しかも、全てが公式戦だ。

 

「ライザー、ソレは私達とも戦うと?」

 

「正解だ。詳しくはグレイフィア様に聞け。そうだ、期日は1週間後。強くなる事を期待する。手加減できると思えないのでね」

 

ライザーは不穏な空気だけをのこし、焔につつまれる。

 

「では、当日お会いしよう。さらばだ」

 

ライザーが消えるとベルギットは頭を抱えて怯えだす。

 

「終わりだ…ははっ……終わりだ…皆、皆殺される!」

 

「いえ、貴方の他の眷属は知りませんが私は殺されませんよ」

 

「ふざけるなよレイヴェ」

 

「…ふん、リアス・グレモリー。ライザーお兄様には勝てないと思いますが…このクズとその眷属に負けるのは許しません。お兄様も、このクズが負ければきっとこの縁談も御破算にしてくれます」

 

「…はぁ、しょうがないわね」

 

そう!誰もが悪魔同士のレーティングゲームだと思っていた。

だが、現実は血を血で洗う、戦場なのだ。

 

「良いのかい、一誠君」

 

「……今だけは、今回だけは俺は……大丈夫です。怒りには飲まれない」

 

静かな怒りの焔を灯して、漆黒のボディと赤い瞳のクウガ。

 

「時は来た、さぁ行こうか。クウガ!」

 

 

 

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