転生者の教え子兵藤一誠 A new HERO new LEGEND 作:影後
「ごめんください」
「いらっしゃい、喫茶店ポレポレ。好きな……あら?今朝の少年」
「はい、あの財布を落とされて」
店主は頭を掻きながら笑顔を向ける。
「君、良いやつだな」
「ありがとうございます!」
「っと、後ろのお客様はご家族?」
一誠の後で待っているのは黒歌、ビートチェイサーの後に乗っていたのだ。
そして、黒歌の荷物から頭をちょこんと出すシロ。
「こんな所に喫茶店が……」
「そっ、喫茶店ポレポレ。二代目店主のオリビエ・マーキス。元アメリカ人。これがメニューね」
「じゃぁ、オリビエブレンドアイスコーヒーを1つ。一誠は?」
「俺も同じのを…あと、この天然ミルク?」
「そう、産地直送のミルクよ。でも、猫ちゃんには」
「にゃ~」
「駄目だったら俺が医者に連れて行くので!」
「了解」
オリビエは瞬く間に飲み物を出す。
ブラックではない、飲みやすく、甘すぎない。
そんな調整が加えられたアイスコーヒー。
「凄い」
「オリビエブレンドは俺が全部やるのさ、だめならブラックを頼んでね?シロップとかは付けるし。ほら…牛乳」
「にゃ~」
ペロペロと美味しそうに舐めるシロを一誠は笑顔で見守る。
「う~ん、ペットも食べられる食事目指そうかな?行けるかな?」
「すごいですね、オリビエさん」
一誠は困り顔ながら何処か楽しそうにするオリビエを羨ましく見つめる。
「そりゃぁね、ここは俺の夢の城だからさ。俺、自分の足で歩いて生きたいんだ。親に縛られずにさ、だからここまで来たんだ。夢だった店も持てて、閑古鳥は泣いてるけど黒字出せてるし」
「……俺も……夢、叶えられますかね?」
一誠は聞いてみたかった、叶えた存在が目の前にいる。だから、聞いてみたかった。
「んなの、君が諦めてんだから無理よ」
「え?」
「夢ってのはさ、持ってるだけですっげえ暖かくなれる。んでも、諦めちまったら全て終わりだよ。君、諦めてんだろ、そんな奴が夢を叶えられるとか言うなよ。燃やすんだよ、冷え切った心をもう一度爆発させんの!んで、最高火力だして、夢に向かって走る!」
オリビエはガッツポーズを見せながら一誠に熱弁する。
「どんなに苦しくても、どんなに辛くても、必ずゴールはある!君の目はまだゴールを見つけてないだけだけど、案外、近くにあるのかもね」
オリビエはキランとした笑顔を一誠に向けて微笑む。
一誠の近くに居ない、おちゃめな大人の男だった。
「あの……オリビエさん。ここって」
「俺がいる時は開いてるさ、一人で切り盛りしてるからね。休む時は休みだし、まぁ……ご近所さんにはそれでも来てもらえてるし、いいよね~」
「一誠、どうしたの?」
「ごめん、姉さん少しトイレに」
「突き当りを先にだよ、ごゆっくり」
一誠が立ち去ったのを見送り、オリビエは鋭い目つきになる。
「終わったな、俺の自由な喫茶店のマスターライフ」
「…フェニックス家の天才。ライザー・フェニックスが何してるにゃん」
「そういうお前は主殺しのくせに……まぁ、内容は知ってる。殺されて当然の奴さ、俺は何もせんよ。だから、塔城小猫だったね!俺のことはグレモリーに報告しないでくれる?」
「貴方が消えた時大変だったんですよ!部長の方にも皺寄せが来て、しかも貴方の弟と婚約になるし」
「あらら、弟と婚約かい?」
白音もとい塔城小猫はライザーを睨む。
彼女の主であるリアス・グレモリーの望まぬ婚約者にして、[疲れました]と一言だけ書き置きを残し行方不明だったライザーがまさか、こんなところに居たのだ。
「……話さないから聞いてほしい」
「へぇ、何を」
「一誠は未確認4号として」
オリビエは持っていたコップを危うく落としそうになる。
「まじかよ、それで」
「一誠をサポートしてほしい。私達じゃ上手くできない時もある」
「…はぁ、わかったよ。協力者ってか……まったく。気にはかける、でも、それ以上をする気はないぞ?」
「……わかった」
「あと、俺は黒歌なんていう手配悪魔は見てないし、知らない。眷属ちゃん、理解してるな?」
「……はい、」
「んじゃあな」
ライザーはグラス磨きに戻る。
少しすれば、一誠もトイレから戻って来る。
「はぁ……美味しい」
「また来てくれよ……待ってるぞ」
「はい、マスター!」
「マスターって」
一誠達はそのまま立ち去る、それをライザーはじっと見つめていた。
「まったく……待てよ、転生者的な雰囲気はなかった。つまりだ、彼奴は原作の一誠。……終わってね?」
一誠はなにもない一日を謳歌していた。
家の手伝いをしようとしても、姉に阻まれ、シロは何処かに消え、本当にやることがなかった。
未確認の情報は入らず、あるのはビートチェイサーを乗り回すだけ。
『はぁ……ここは何処なんでしょうか』
「危ないっ?!」
ビートチェイサーを倒し、自分が怪我をすることを厭わない。例え、赤信号をわたって来た少女でも引いたら悪と言われるのは一誠なのだ。
幸いにも後続する車両や人間は居らず、いるのは自分とその少女だけだった。
『だっ大丈夫ですか!』
「飛び出してくるなんて!何を考えて……」
立ち上がろうとした瞬間、足に激痛が走る。
一誠はビートチェイサーを押しながら近くのベンチに腰掛ける。
『あの……』
『イタリア人?イタリア語だけど伝わる?』
『はい……』
『悩んでいるかもしれないけど、赤信号は守ろうよ。君も俺も死ぬかも死ぬかもしれなかったんだよ?』
一誠は怒る、人の死はとても苦しいものだから。
自分が死ねば家族が悲しむ、一誠が少女を殺してしまえば、自分の家族だけでなく、少女の家族が苦しむ。
『ごめんなさい』
少女は手を一誠の足に当てると、淡い光を放つ何かをする。
『これって……』
『…ごめんなさい』
『待って、話を』
そう、続けようとした瞬間だ。
再び奴が現れた。
「クウガ…そして、アギトの素質を持つもの」
『ひっ……』
『隠れて!』
「……変身!!」
少女の前で、新たな怪人に立ち塞がる様に戦士が立ちはだかる。
「クウガ……貴様もアギトか」
「アギトがなんだか俺は知らない!でも、俺は……ただ、皆の笑顔を守りたいだけだ!」
銀色の亀のような怪人、名はトータスロード。
銀色の体表を持ったその姿に、クウガは未確認とは違う何かを感じていた。
『……クウガ』
少女は知っている、世界を股にかけるニュースだった。
日本で起こった未確認生命体による事件、知らないはずがない。
「はぁ!」
「効かぬ」
甲羅の様な背に、クウガの拳は阻まれ、逆に弾き返される。体制を立て直し、拳を構えるがクウガの前からトータスロードは姿を消した。
「何処に、う!!!」
背中から羽交い締めにされ、まるで試すように甚振られる。
「クウガ、その程度か」
「うっ……違う!超変身!!」
眩い光と共に紫のクウガに変わる。そのパワーにより、トータスロードは弾き飛ばされた。
「ふっ…」
ビートチェイサーからハンドルを引き抜き、タイタンソードへと変化させる。
「ハァァァァ」
「なに」
甲羅で受けようとしたトータスロードだったが、甲羅が砕け、その肉体にタイタンソードが刺さる。
「このまま」
そして、クウガは思い出す。
現在地がどこなのかを、人は居ないが住宅地だ。
ここで、この存在を倒すわけにはいかないと。
「…クウガ、認めよう。お前はアギトだ」
「だから、アギトってなんだよ!」
「いずれわかる」
トータスロードは瀬に刺さっていたタイタンソードを引き抜き、地面に突き刺す。
そして、クウガに対して言葉を残すとそのまま地面の下へと消えていった。
「……もう、何なんだよ」
『貴方は……クウガ』
怯えながらも、物陰から出てきた少女に対し、クウガはサムズアップをしてみせた。