お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
「園原千弘…?ウチの雑用に何か用かネ?京楽隊長」
昼下がりの中、技術開発局を訪れていた京楽にマユリは目を向けると、彼は答えた。
「藍染の取り調べをした際に、彼の口からその名前が出てきてねぇ。彼ほどの男が名前を出すんだから、何かあるんじゃないかと思って」
「奴の口から名前が出ただけで、わざわざここまで来るかネ?」
「そう言われちゃねぇ!だけど…そういうのは君が一番分かってるんじゃないかなぁ?」
そう言い京楽は過去の霊術院の書類をマユリへ見せる。そこには、『真央霊術院』に所属していた頃の千弘の詳細が書かれていた。確かに園原千弘という生徒はおり、卒業も確認できている。
成績についても申し分ない物でもあるが、過去に在籍していた白哉達の程でも無かった。
「成績は至って普通。特進クラスの1組にいた記録もない。席管でもない一般隊士の名前が、藍染の口から出るなんておかしいと思わないかい?」
「それで?その紙切れを私に見せてどうしたいんだい?」
マユリの言葉に京楽は目を細める。
「聞き返すようで悪いけど君…まさかとは思うけど、数値をいじってりゃしないかい…?」
「なぜそう思う?」
「さっきと同じだよ。それに朽木隊長や更木隊長からの話も小耳に挟んでるし、毎日毎日、重たい荷物を持ちながら作業してる様子も見かけてるし、“初代様”から聞いた話にも似ていてねぇ。“流魂街に私を心の底から満たしてくれる最高の剣士がいる”と」
「……ほぅ?あのイカレた連中からも気に掛けられるとは、随分と人気者だネぇ」
数々の京楽の分析と推測にマユリは目を細める。
「だからその隊士に会わせろと、言いたいのかネ?」
「そうだね今すぐ会いたい。場合によっては_____
_______君らを拘束せざるを得なくなるかもしれないよ…?」
そう言う京楽の目は笑ってはいない。彼は呑兵衛のオヤジに見えるものの、勘が鋭く、この数分間の会話の中で、京楽自身はマユリが何かを隠していると確信していたのだ。
更にその言葉に嘘偽りはない。砕蜂率いる隠密機動隊こそ引き連れてはいないものの、発覚すれば報告することは目に見えているだろう。
だが、それでもなお、マユリは表情を崩すことは無かった。
「残念だが、お目当ての“バカ”はここにはいないヨ」
「…へ?」
「数十分程前に、ネムと一緒に任務に行かせたヨ」
すると
ジジ____
『マユリ様。緊急事態です』
通信機が起動してネムから連絡が入り、マユリは答えた。
「ネムか?何の用だネ」
『千弘さんが失踪しました』
「ほぅ?勤務中に抜け出すとはいい度胸だネ。ネム、時間を測れ。1時間経つごとに一月分の給与カットだ。それと、お前は戻ってコチラを手伝いにこい」
「えぇ!?」
『はい。マユリ様』
___ジジ。
「という訳だ。今日はもう帰ってくれたまエ」
「あ…うん…」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「ここ本当にどこ!?」
一方で、謎の世界に迷い込んだ千弘はその世界を駆け回っていた。だが、いくら走り回っても、瀞霊廷の景色は勿論、技術開発局の建物は見えてくることはなく、あるのは、特殊な作りの白い建造物のみであった。
「きぃいいい!!なんなんだよここ!?」
その時であった。
「来たぞ!!包囲しろッ!!」
「んん?」
付近の建物から声が響く。それと同時に周囲の建物の影から次々と白い軍服を纏った兵士達が現れ、一瞬にして千弘を包囲した。
「よくもちょこまかと!!」
「死神如きが我らが領地でよくも好き勝手してくれたな!?」
その数は100人を優に超えている。
だが、そんな緊迫した雰囲気にも関わらず千弘は先程と同様に尋ねた。
「すいませ〜ん!ここってどこで_____あれ?」
その瞬間 千弘は口を止めた。
見れば包囲した兵士達が、霊子を収縮させると、マシンガンなどの武器へと変化させていったのだ。それは正しく、滅却師に見られる『霊子兵装』であった。
その一方で、千弘を包囲した滅却師達のうち、部隊長らしき滅却師が手を上げる。
「死神如きに教える義理はない。ここで死ね」
その言葉と共に男はゆっくりと手を振り下ろす。すると、その合図と共に、周囲の兵士達の霊子兵装から霊子の弾丸が放たれたのであった。
「なるほどなるほど!これは驚いた。まさか滅却師がいるとは…ほとんど絶滅したと聞いてたんですが…こりゃ大発見ですね」
霊子の弾丸が迫り来る中、千弘は斬魄刀へと手を伸ばすと、握り締めた。
その瞬間
千弘の手が消えると共に向かってきた弾丸全てが掻き消された。
「なに…!?全てふせ____」
最後まで言い終えようとした時であった。部隊長の滅却師の身体が真っ二つに斬り飛ばされた。
「た…隊長ぉおおお!!!!」
「貴様ぁ…!!!」
斬り飛ばされた胴体が血を撒き散らせながら地面へと落ち、それを見た兵士達が霊子兵装を向ける中、千弘は刀身を撫でる。
「こちとら丁寧に話し掛けてんのに…襲ってくるアンタらが悪いんだろ…?」
「部隊長の仇をうてぇえええ!!!」
雄叫びを上げながら次々と向かってくるが、それに対して千弘は刀を握り締める。
「言っときますが…先にやってきたのはそっちですからね…?」
ここは滅却師達の住まう異空間 『見えざる帝国』
自身らが引き摺り込んだ1人の死神によって、その白く美しい布が血に染まる___。
○◇○◇○◇
見えざる帝国の中でも、最も巨大な建物かつ滅却師達の中でも最上位の強さを持つ星十字騎士団達が住まう巨城『銀架城』
その最上階に位置し、広大な部屋の奥に位置する玉座には1人の大男がワインを啜りながら、近くに立つ青年へ目を向ける。
「何やら騒がしいな。ハッシュヴァルト」
「はい…我々の動きを感知しようとした死神を捕らえたところ…中々の手練れなようで、現在も対処が遅れているようです。既に100名近くの死亡者が出ております」
「ほぅ。たった1人で聖兵を100人か…」
ハッシュヴァルトと呼ばれた青年の言葉に大男はワインのグラスを揺らしながら頷く。
「ふむ…ならば星十字騎士団を動かすことを許可しよう。必要あらば『親衛隊』を要請しても構わぬと伝えておけ」
「承知しました陛下」
そしてユーハバッハはまた玉座へと座るとワインを揺らし口に運んだ。
「さて…どれ程の者かどうか」
「それと陛下。今期の入団式にて、またお言葉をお願いいたします」
「いいだろう」
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その後、部屋を出たハッシュヴァルトはすぐさま司令室へと赴き、ユーハバッハからの指令を伝えると、帝国全域に放送される形で伝令が出された。
『ユーハバッハ陛下より伝令__。帝国内を死神が逃走中。星十字騎士団は警戒し発見し次第、即時排除せよ__。』
その放送がなり終わると、各地から次々と武器の用意などの音が鳴り響き始める。
「私は城内を回る。お前達も映像から目を離すな」
「「「はっ!!」」」
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「あ〜あ」
場所は変わり、千弘は自身の刀についた血を振り払うと、鞘にしまう。周囲には粉々に切り刻まれた滅却師達の肉片が散らばっており、周囲は血の海が出来上がっていた。
「まったく…話してくれればこうならなかったのに…あら?」
血溜まりの中で千弘は自身の服装を見渡す。見れば着ている死覇装は切り刻んだ兵士達の血で濡れていたのだ。
「あれま…血がこんなに…これじゃ警戒されるだろうな。どうしよう…」
千弘は何度も思考を凝らす。この服装のままでは先程と同じ険悪なムードになるだけだ。何としてでもここの場所が何処なのか知り、瀞霊廷へと戻らなければならない。
そんな中、あることを思いついた。
「そうだ」
千弘はすぐさま服を脱ぎ捨てた。