お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
園原千弘の朝は早い。
「ふわぁ…」
朝日が差し込む部屋の中、布団からあくびをしながら目を覚ました千弘は頬を叩くと気合を入れて起き上がる。
「よし!」
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彼の所属する十二番隊の主な業務は技術開発局での研究や施設の遠隔管理だ。日々、多くの科学者達が血と汗を流しながら管理や研究に没頭している。
そんな隊に所属している千弘の業務は主にコーヒーや茶菓子などを配る雑用と、研究の補助係である。
「おい、21番と35番の瓶を持ってきたまえ」
「はい。お待ちどうです」
マユリに指示された千弘は、一瞬にして戻ってくると、指示された通りの薬品を彼へと渡す。
この様に彼は局長であり隊長でもあるマユリの助手として毎日、研究の補助を担っているのだ。
そんな中であった。
「…ん?」
実験の補助をしている中、千弘は何やら妙な霊圧を感じ取ったのか、明後日の方向へと首を向ける。
「どうしたのかネ?」
「いや、何か感じたこともない霊圧が…突然と現れて…」
「ほぅ…?成る程。それは____」
マユリが答えようとした瞬間。
___!!!!
突然と瀞霊廷中に緊急用のサイレンが鳴り響いた。
「おろ!?このサイレンってまさか!?」
「旅禍に決まっているだろう騒がしい。君が感じた霊圧もそいつらだろう」
【旅禍】それは死神の交通審査も受けずに尸魂街へ入り込んだ魂の事である。災いを招く者という意味で呼ばれ恐れられており、知らせが入り次第即捕縛が義務付けられている。
突然と鳴り響いたサイレンに千弘が驚く一方で、それを見ることもなく察していたかの様な口ぶりでこぼしたマユリはそのサイレンが鳴り響いているにも関わらず実験の手を止めなかった。
「しばらくすれば止まる。ほら、ボサッとしているんじゃないヨ」
「はぁい…」
マユリの言葉に従うかの様に返事の声を溢しながら千弘も補助へと戻るのであった。
この様に、千弘は毎日毎日マユリの補助を行なっているのだ。
旅禍が侵入してきてもこの様である。
だが、今回の旅禍はそうはいかず、今までとは比較できない全く異なるものであったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから翌日。事態は急変を迎える事となる。
「全く面倒な事をしたくれたヨ」
「あれ?どうしたんです」
翌朝、隊士達が隊舎へとあつまっており、それを不審に思った千弘が研究室へと赴くと珍しく隊長羽織を着用しているマユリの姿があった。だが、その様子は何やら気に入らない事でもあったのか、不機嫌であった。
「局長どうしたんですか?」
「市丸ギンが旅禍を手引きしたと知らせが入ってネ。急遽、隊首会が開かれる事になったんだヨ」
「成る程〜」
【隊首会】
それは総隊長である山本重國が招集を掛け、全隊長が集合の元、開かれる会議である。内容は護廷隊の活動業務の意見交換に始まり、賊軍に対抗するための作戦会議などと、様々な目的のもと、招集されている。
マユリは研究に没頭しており、それを妨げる原因である隊首会を酷く嫌っているのだ。
「そんな訳ダ。私はしばらく出る。戻ってくるまで面倒事を起こすんじゃないヨ」
「了解です。あ、送りましょうか?」
「余計なことをするんじゃない!!貴様と一緒に歩くと親と子だと揶揄われて腹が立つのだヨ!!」
そう言いマユリは一番隊隊舎へと向かっていった。
その姿を見送った千弘は同じく隣に立っているネムへと声を掛ける。
「さてネムさん。旅禍なんですが私達で全員捕まえてしまいましょうか?」
「いえ…」
それに対してネムは首を横に振った。
「いくら貴方が強くとも隊長であるマユリ様の指示も無しに勝手に動いてしまうのは隊の調子を崩すため危険かと」
「確かにそうでした…では、ゆっくりと待ちましょうか」
ネムの注意に千弘は頬をポリポリと掻きながら引き下がると、縁側に戻り腰を掛けるのであった。
その様子を見たネムはただ一言呟く。
「ですが、貴方に掛かればそれは可能でしょう」
「え?何かおっしゃいました?」
「いえ…」
それから少し時間が経過するとマユリが帰還し、十二番隊へと指示を出したことにより、皆は散っていった。
千弘は勿論、ネムと共にマユリと行動である。何故かマユリは不機嫌であったが、何かあったのかは聞かない様にしていた。
◇◇◇◇◇◇
「…ん?何か感じますね」
マユリと共に出撃した千弘は路地を進む中、ある気配を感じた。その言葉を聞いたマユリは立ち止まる。
「…確かに。これはすぐ近くにいるネ。護邸十三隊には見られない異質な霊力…どうやらビンゴの様だ」
そう言いマユリは歩き出した。マユリもどうやら感じ始めたらしい。そのまま進んでいき道を抜けると更に広い道へと出た。
現在彼らがいるのは死刑囚が処刑される場所より少し離れた白い石で作られた場所である。
道へと出た千弘達は道の向こう側に見える分かれ道からこちらに向かってくる気配を感じ取った。
「来ました」
その時だった。
目の前にある分かれ道から自身らと同じ死神の黒い装束に身を包んだ眼鏡を掛けた青年が現れた。
「…な!?3人か…ついてないな…けど、井上さんと別れたのは正解だった…」
現れた青年は自身らを見ると歯を噛み締めながら立ち止まる。
その一方で青年を見たマユリは青年の発する独特な霊力を感じると驚きの声を上げる。
「ほぅ。死神には感じない霊力…これは驚いた。まさか旅禍の中に『滅却師』が紛れ込んでいたとは」
【滅却師】それは死神とは別に霊力を持った呪術師である。彼らは全員人間であり古の時代は現世で有名な術者であったとされている。だが、徐々にその血は絶えていっており、今では全く聞かなくなっていた。
マユリによるとこの青年がその滅却師であるというのだ。
その一方で、滅却師の青年は自身らを睨み付けて警戒していた。
「…道を通してもらえるか?」
「申し訳ないんですが、無理ですね。捕縛を命令されているので」
そう言い千弘は前に出る。それに対して滅却師の青年は眼鏡を掛け直すと両腕から霊力を放出した。
「そうか…なら…力ずくで通させてもらうよ…!!」
その言葉とともに青年の霊力は両腕を覆い尽くすと形状を変化させアーチェリーへと変わった。
練り上げられた霊力によって象られた形は極めて繊細であり、彼も滅却師の中では高い水準の実力を持つ事が窺えるだろう。
「やめたまえヨ。大人しく捕縛されて私の被験体になった方が身のためだヨ?」
「さり気なく被験体にしようとしないでください。もう興味はないでしょう」
「おっとそうだった。解剖する前に君が現れた事で興味を失ってしまったんだったヨ」
マユリの言葉に突っ込みながら千弘はこちらに向けて矢を構える青年に再度忠告した。
「もう一度だけ言います。めんどくさいので捕まってください。こっちも早く終わらせて研究所の手伝いしなくちゃいけないので」
「おいぃ!!それはしばらく禁止と言っただろぉ!?」
「だって落ち着かないですもの。大体休むっていっても何をするか分からないですし」
「それを考える為に数日の休暇を与えたんだろうがぁ!?君は本当にバカなのか!?バカ中のバカなのかネ!?」
「あ!今バカって言いましたね!?バカって言った方がバカなんですよ!!腐れ局長!!むっつりパパ!!」
「誰が腐れ局長だ!誰がむっつりパパだ!!!それにバカと言われる方がバカなんだよ!!このバカバカ!こんなくだらない理由で怒ったのは生まれて初めてだよ!なんなんだネこの世界一くだらない体験は!?」
マユリと千弘が言い争っている中、後ろで待機していたネムが二人に声を掛ける。
「あの…お二人とも」
「「何だ!?(なんですか!?)」」
二人が振り向くとネムは自身らの背後へと指を向けた。
「滅却師の方…行ってしまわれましたよ」
指を向けられた方向へと目を向けるとそこには駆け抜けていく滅却師の青年の姿があった。
それを見た千弘は瞬歩を使い一瞬にして追いつくと腕を振るい背中に当てた。
「失礼」
「が…!?」
腕がトンっと音を立てながら当たるとその青年はゆっくりと倒れ意識を失う……
筈だった。
そのまま青年は道を隔てる壁に向けて吹き飛んでいく。
「あ」
そして
_____ドガシャァァァン!!!
壁に激突していった。その衝撃によって道を隔てる壁が粉々に破壊され辺りに砂埃が舞い滅法師の青年は下半身を出しながら崩れた瓦礫に埋まってしまった。
「…」
その悲惨な光景を千弘は固まりながら見つめていると後ろから歩いてきたマユリがメモ帳を取り出す。
「とりあえず修繕費は今月の給料から引いておくからネ」
「ちくしょぉおおお!!!!」