お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
涅マユリと涅ネム、他一名の活躍によって旅禍の一人である滅却師は無事に捕縛され医療場へと搬送されていった。
その報告は他の隊にも瞬時に知れ渡り、戦意を向上させていった。
「…旅禍一人にこれ程とはな…」
一番隊隊舎にて、現場に急行した四番隊の隊員から送られてきた資料を目にした元柳斎は額に皺を寄せていた。
そこに映っているのは倒壊した周囲の景色である。見るからに悲惨で数人は死んでもおかしくはない程のものであった。
故にその状況から元柳斎は推測した。
____今回の旅禍は一筋縄ではいかない__と。
「全隊に伝えよ。このまま警戒を怠るなと」
その言葉に頷いた伝令兵は静かに姿を消すのであった。
だがその翌日。
5番隊隊長である藍染惣右介が何者かの手によって刀で磔にされる形で死亡した報せが届いたのであった。
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その一方で旅禍の一人を捕えるのみならず、周辺の建物を破壊した張本人はいつも通りに過ごしていた。
「おい、そこにある資料を取ってこい」
「了解です…」
だが、その表情はとても暗いものであった。なぜならば、藍染の訃報を耳にしたからだ。彼は真央霊術院にて相談役として就いており、千弘も彼によく悩みなどを相談していた。更に彼は霊圧が強く鬼道の扱いにも長けていた為に、鬼道の教科書には彼独自の効率の良い詠唱方法も載せられていた。
それ程の人物の訃報は彼に世話になった多くの隊員の心を抉ったのだ。
「藍染隊長…残念だな…もう少し鬼道について聞きたかったんですが…」
「お前には必要ないだろバカめ」
「誰がバカですかぁ!?」
「君の視認できない抜刀術、怪力、脚力。それ程の力のどこに鬼道がいるというのかネ?」
「どんな買い被り方ですか!?鬼道がいらないとは限らないじゃないですか!!それに私未だに卍解どころか始解さえもできてないんですよ!?このままだといつ命を落とすか…!!」
「命を落としてくれるなら私としては物凄くありがたいんだがネ〜」
「ムカ…!!!」
マユリの言葉に頭に来た千弘は何かを思い出すとニヤニヤとしながら言い返した。
「そういえばこの前、立ち入り禁止の倉庫を興味本位で覗きましたけどもあれなんですか?全部、ネムさんが書いた貴方の似顔絵や絵日記や成長記録簿じゃないですか!!」
「はぁ!?」
その言葉に資料に目を通していたマユリは即座に目を離すと顔を真っ赤に染め上がらせ千弘の胸ぐらを掴み上げた。
「貴様ぁあ!!!あれを見たのか!?何勝手に見ているのかネ!?今すぐ手術台に横になりたまえ!!その記憶を消してやる!!」
「う〜わ図星だ局長〜!!いつもネムさんにキツイ態度とりますけど本当は娘の様にすっごく大切にしてるんじゃないですか!や〜いむっつりパパ!!娘を大事にする親の鑑〜!!」
「誰がむっつりパパだぁ!!!このチビ!!チンチクリンめ!!今すぐ横になりたまえ!!改造した超硬質メスで解剖してあげるヨ!!
「誰がチビだ腐れ局長ォオ!!!それよりもアンタの髪の毛全部むしり取って御大将みたくしてやりましょうか!?」
「やれるものならやって見たまえ!!!」
そんな中であった。
『瀞霊廷内にいる全隊員及び旅禍の皆さん。こちらは四番隊副隊長の虎徹 勇音です…。これは四番隊隊長【卯ノ花烈】と私【虎徹勇音】からの緊急伝心です…暫しの間 ご静聴願います…これからお伝えする事は全て真実です…』
頭の中に突然と四番隊の副隊長である虎徹勇音の声が聞こえてきた。
「あれ?これは勇音副隊長の…」
「こんな時にあの女の隊の副隊長が何の用意かね…?」
その声を耳にした二人は取っ組み合いを止めると、彼女の伝達に耳を傾ける。
______。
その内容はなんと藍染が謀反を企てた報せであった。
「そんな!!あの藍染隊長が!?」
「ふん。興味がないネ。私の実験にくら____」
「藍染隊長ぉおお!!!」
その報せを聞いた千弘はすぐさまその場から出て行ったのであった。
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外へと出た千弘はその場から藍染の霊圧を探知する。
「この霊圧は…処刑台の双極の方から…!!」
彼の霊圧が感じた場所へと目を向けた千弘はその場から一気に踏み込み、前へと踏み出した。
その瞬間
千弘の姿は虚空へと消え失せる。
否、消えてなどいない。その脅威的な脚力で駆け出した事で音速さえも超える速度で駆け抜けていたのだ。
「んわ!?なんだこの風!?」
「きゃあああ!!!干しておいたフンドシが〜!!」
周囲に強風の影響が出る中、それに目もくれず千弘は僅か数秒程度で処刑台が設置された地点へと到達していた。
だが、時すでに遅し。見れば上空には亀裂が走り、多くの巨大な虚『メノス』達がおり、その穴の中へと自らの意思で向かっていくかの様に消えていく藍染の姿があった。
いや、彼らだけではない。3番隊隊長『市丸ギン』や9番隊隊長である『東仙要』の姿もあった。
「そんな…このままじゃ何も聞けないまま…どうにか此方に気を引かせないと…」
間に合わないと判断した千弘は思考力を働かせて、何とか此方へと気を逸らし、自身が到着するまで時間が稼げないか考える。
そんな中 一つの案が思い浮かんだ。
「あ、そうだ!髪を少しでも切れば!!!!」
髪を切ればその感覚に気づき、気を此方にも向けるはずだ。
そう考えた千弘はすぐさま近くの屋根へと飛び移ると、その場から脚を力強く踏み入れる。
その瞬間
千弘の身体はその場から一瞬にして消え去り、藍染を見上げる護廷隊の皆の背を前に、一気に上空へと消えていく藍染達と同じ目線へと到達した。
そして 斬魄刀の塚を掴み消えていく藍染の頭に向けて狙いを定める。
「すみません…藍染隊長…!!!」
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空から現れた大虚。そして彼らが扱う反膜という光に当てられながら空へと消えていく藍染。その目は護廷隊にいた頃の穏やかな雰囲気が失われ、全てを滑稽に見下ろす冷徹なモノへと変わっていた。
今回の朽木ルキアの現世にて長期滞在や死神の力の譲渡という罪による処刑は全て彼が斬魄刀の能力で四十六室を操っていた事が原因であった。
今回の目的である“崩玉の入手”を終えた藍染は、口々に自身らへと物を言う隊長達に向けて静かに言い放った。
「誰も彼も天に立ってなどいない。これからは___
_____私が天に立つ」
その言葉に下に立っていた隊長達は言葉を失ってしまった。
その時であった。
「…!!!」
頭部から“何か”が頭上をすり抜けていく感触が感じられた。
それと同時に後頭部の周囲に何やら涼しげな風も感じられる様になった。
「あ…藍染様……」
「あれまぁ…これ…どゆこと…?」
東仙とギンの絶句する声にまさかと思い手を当ててみると、そこには少しザラザラとした感触があり、更に背後へと目を向けるとそこには此方に向けて刀を構える少年死神の姿もあった。
「な…!!!」
その少年を目にした藍染はようやく自身にされ所業を理解して心の底から怒りを露わにする。
「貴さ________」
だが、その言葉を言い終える前に大虚によって開けられた入り口は閉じたのであった。
下に立っていた護廷隊の皆が最後に目にしたのは______
________丸刈りにされて輝く彼の後頭部であった。
それを皆の背後から見ていた千弘は肩を下ろすのであった。
「間に合わなかった……」