お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
石田雨竜 滅却師の数少ない生き残りであり、滅却師でありながらも、死神の一護と行動を共にする青年だ。
彼は一護と共に織姫を救出すべく虚圏へと突入し、破面達を次々と破っていくものの十刃であるザエルアポロには歯が立たず、恋次もろとも戦闘不能に追い込まれてしまっていた。
だが、そんな時に突如として現れたマユリ、ネム、千弘に驚きを隠せず唖然としていた。
「君達は…あー!!!!」
「ん?あー!!!貴方は!!」
そんな中、石田は3人のうち、最も記憶に残っている千弘を目にすると大きく声を上げる。
「君はあの時僕を壁に叩きつけた死神だなぁ!?」
「そういう貴方は私が壁に叩きつけた滅却師の方じゃないですか〜!」
石田の声に千弘も彼のことを思い出すと、すぐさまネムの懐から抜け出すと駆け寄った。
「あの時の傷がまだ治っていなかったんですね…本当にごめんなさい…」
「おや?滅却師は霊子を操るために肉体を見事なまでに鍛え上げられていると聞いてはいるが、どうやら君は随分と柔な様だネ」
「いやこれは違う!!確かにあの時の事は根に持ってるけど!!この傷はアイツとの戦いでついたものだ!!!」
そう言いマユリに対して反論した石田は佇んでいるザエルアポロへと指を向けた。
石田が指を向けると、それに釣られて千弘達は此方を品定めしているかの様に見つめているザエルアポロへと目を向けた。
「…ほぅ。知り合いかい?その滅却師は」
目を向けられたザエルアポロがマユリ達へと尋ねる。
ドレスの様な衣装に身を包みながら此方を観察し、身体中を舐め回すかの様に見渡しているその姿からは、一介の虚とは比べ物にならない程の強者としての気迫と得体の知れない恐ろしさがあった。
それに対してマユリは嘲笑いながら答えた。
「はて?知らんよ。そんな数週間も前の傷が残ったままの下等種。滅却師など、希少性を除けば私にとっては何の価値もない。とうの昔に興味を失っていたよ」
「な…なんだと!?初対面でいきな……ごはぁ!?」
マユリの言葉に憤慨した石田が立ち上がった瞬間に 彼の身体が吐血と共に足元から崩れ落ちた。
「大丈夫ですか!?こりゃ酷い…直ぐに回復薬を…!!」
「のわぁああ!!!注射を見せるなぁあ!!絶対に何か入ってるだろぉ!?」
千弘はすぐさま駆け寄り注射をしようとするが、それを見た石田が必死になって抵抗し始めた。
その一方で、そんな馬鹿騒ぎを横目にマユリはザエルアポロへと目を向ける。
「さて、バカの対応はバカに任せて…そろそろ君の名前を聞かせてくれないかい?」
「……何故だ?」
「なぜ?バカかね君は。決まっているだろう?君を瓶詰めにして瓶に名前を書くためだヨ♪」
そう言いマユリはザエルアポロを凌駕する程の怪しい笑みを浮かべる。それに対してザエルアポロは鼻で笑う。
「随分な言われ様だな」
「む…?」
すると ザエルアポロの翼が突然動き出しマユリを覆い、包み込んだ。それを見た恋次は何かを思い出したのか叫び出した。
「あれはさっき…俺達がやられた…!!」
「はい?どういう事ですか阿波頼副隊長」
「あの羽に包まれると殴られたらその分のダメージが跳ね返ってくる人形を作られちまうんだ!俺も石田もそれでやられちまった…!」
「そんな…………いや、待てよ…?」
恋次の説明に千弘は驚き目を大きく開かせるが、何故かある考えが頭をよぎる。
「……て事は、その人形があれば局長をボコボコにできるって事じゃないですか!」
「おぃいいい!!こんな時に何考えてんだテメェ!!」
「あ!す…すみません…局長の人形を手に入れた時の事を想像してしまって…踏んづけたりしたらどうなるのかなって!!」
「お前普段 涅隊長のことどう思ってんだよ!?聞かれたらマズイぞ!」
「大丈夫ですよ!局長は今あの羽の中ですから聞こえてませんって!」
千弘がそう言い終えた時であった。
ボトッ…
羽が開きマユリが出てきた。その光景を目にした千弘はやや眉を顰めて嫌そうな表情を浮かべる。
「うわぁ…ウンチみたい…」
「何か俺らも同じ目に遭ってるから嫌だな…」
「や〜い!!ウンコ!ウンコ局長〜!」
「やめろぉ!!!」
千弘が遠くから罵る一方で、マユリの人形を作り上げたザエルアポロは、手元に収まっている人形の頭へと指を置く。
「外野がうるさいなぁ…まぁいい。では、君も味わってみようか。僕の力を」
その言葉と同時に
___トンッ
ザエルアポロの指が人形の頭部を弾いた。それに連動するかの様にマユリの身体が脆い音を鳴り響かせながら後ろに後退していく。
「ぐぅ…!?」
「ハハハ!まだつついたばかりだよ?では次は…」
その様子に笑みを浮かべたザエルアポロは今度はその人形を割ると、中に詰められた一粒一粒の独特な形をしたマグネットを取り出す。それには『stomach』即ち胃を表す英単語が書かれていた。
そして
ザエルアポロの指がそのマグネットをへし折りマグネットが砕け散る音が響くとマユリの口元からは透明な液体が吹き出した。
「ごはぁ…!」
「涅隊長ぉおお!!!!」
その光景を見て恋次が叫んだ。このまま彼までもが殺されてしまえば自身らの勝機など一切ない。完全に絶望的な状況へと陥ってしまうだろう。
だが、そんな緊急事態であるにも関わらずマユリに同行していた千弘は表情一つ変える事なくその状況を見守っていた。
「お…おいお前!!俺も手伝うから早く涅隊長を助けねぇと!!」
「副隊長は動けないでしょ。無理はなさらないでください。それに、大丈夫ですよ。局長なら」
「はぁ!?何でそう言い切れるんだよ!」
千弘の言葉に対する恋次の疑問の声に千弘は応えた。
「あの人ここに来る前に臓器とか全部取り替えてましたから」
「え…?」
千弘の言葉に恋次は勿論だが、それが聞こえていたのかザエルアポロも目を大きく開き、動揺していた。
「な…なんだと…!?ね
千弘の言葉に耳を疑ったザエルアポロはマユリへと目を向ける。
すると、先程まで苦しんでいたマユリは不機嫌な表情を浮かべながら溜息を吐いた。
「全く。何故あのバカはこうもタネを明かすのかネ?まぁ奴の言う通り、今の私の体内にある健と臓器は全てはダミーと差し替えられている。そこの滅却師の体内に侵入させた監視用の菌で君らの戦いぶりは全て見させてもらったからネ〜対策済みなのだよ」
「ば…バカな…臓器を全て取り替えて…!?それに僕がこの能力を見せてからまだ1時間も経っていないんだぞ!?そんな短時間でこんな用意が…!!」
「出来るからここにいるんだヨ」
狼狽えるザエルアポロに対してマユリは表情一つ変える事なく淡々と告げる。ザエルアポロ自身もこの状況を想定していなかったのか、調子が崩れて唖然としてしまった。
だが、
「…フフ」
その表情はすぐに変わり、再び不気味な笑みを浮かべた。
その時であった。
ネムと千弘の背後にある瓦礫の山から彼の翼の触手が現れ、一瞬にして二人を締め上げた。
「フハハハ!油断したな隊長格!!部下の足元に気配りが足りないぞ!!」
「…おやおや」
2人を捕らえたザエルアポロは高らかと笑い声を上げる。だが、それに対してマユリは表情を変えることはなく、寧ろ捕らえられた2人の部下のうち、千弘を嘲笑うかの様に見ていた。
「随分と生温い締め付けじゃないカ。チビの方にもっと力を入れたまえヨ」
「な…!?」
「ちょっとぉおお!!局長ぉ!!!」
突然のマユリの発言にザエルアポロは考えてもいなかっかったのか動揺すると、恐る恐るマユリへと尋ねた。
「ぶ…部下ではないのか…!?」
「一人はそうだが、もう一人は態度がなってないから、そろそろ殺したいと思っていた所だったんだヨ。あ、取り敢えず原型は保ったままで頼むヨ。後の解剖に差し支えるからネ」
「な…なんて奴だ…!!」
マユリの残忍さにザエルアポロは恐るあまり冷や汗を流してしまう。その一方で、彼の触手に巻き付けられていた千弘は額に青筋を浮かべながら声を上げた。
「な〜に絞め殺させようとしてんですか局長〜!!!」
そう言いながら千弘は自身を巻き付けた触手へと手をかけると、左右に引きちぎった。
「な…!?僕の触手を…!?」
「ネムさん、じっとしててくださいね〜」
ザエルアポロが驚く一方で、拘束から抜け出した千弘はネムを縛っていた触手も一瞬にしてバラバラに刻み彼女も救出するとマユリへと詰め寄った。
「ちょっと局長!!少しは心配してくれてもいいでしょうに!!!」
「うるさい奴だネ。お前を心配するくらいなら、道端で踏み潰された蟻の方を心配するヨ」
「はぁぁ!?私の命はアリ以下ですかぁ!?本当に信じられない!!バカバカ!バーカ!!黒塗り!!金歯!!」
「何だってぇ…!?」
千弘にバカと言われたマユリは額に青筋を浮かび上がらせると、千弘の頬を引っ張りあげる。
「バカバカうるさいヨこのバカ!!!いい加減 上司に対する礼節というものを弁えたらどうなんだネ!?」
「ふへへ〜!アンタが上司?笑わせないでくださいよ〜!私の尊敬する上司はネムさんただ1人だけなんですから!」
「…///」
マユリに頬を引っ張られている千弘の言葉に、そばに立っていたネムは少しばかりか顔を赤くさせた。
その一方でマユリは懐からメモ帳を取り出す。
「よし今月の給料は80%カットといこう」
「うわぁぁぁぁん!!ごめんなさぁぁい!!許してくださぁぁあい!局長ぉお!!!」
「おい貴様らぁ!!!僕を差し置いて何をやっている!!」
「「え?」」
すると 今まで放ったらかしにされていたザエルアポロが声を荒げ、それを耳にした千弘とマユリは彼へと目を向ける。
「あのえっと…誰でしたっけ…?あの変なメイクしてる人…」
「はて?知らんよあんな気持ち悪い格好したやつ」
「貴様らぁ…!!僕を馬鹿にしやがって…!!それに気持ち悪いなどと一番君に言われたくないわッ!!!」
二人の態度に冷静であるザエルアポロも流石に堪忍袋の尾が切れたのか、自身の翼を操り千弘達へと向けた。
「今度は貴様ら3人の人形を作ってやる!!さしもの君も二度目はないだろうねぇ!!!!」
その言葉と同時に__
___ザエルアポロの翼が形を変形させながら千弘達へと向かっていった。それは前方からのみならず、彼らの背後からも迫っており、地中から出現した触手が彼らへと襲いかかっていく。
「涅隊長!!副隊長!!」
恋次が声を上げるが時はすでに遅い。彼ら周辺は触手によって包囲され逃げ場など存在しない。
そして触手によって包囲された3人に向けて翼が触手上の翼膜を広げながら迫っていった。
だが、この時ザエルアポロは判断を誤ってしまった。___涅ネムというある死神の怒りを買うキッカケとなる女性をも攻撃対象にしてしまったのだ。
「あ"ぁ?なにネムさんも入れてんですか…?」
突然とその場に響いた千弘の声が響くと共に迫っていた触手と翼全てがバラバラに斬り刻まれた。
「なに…!?」
ザエルアポロが驚きのあまり硬直する中、立っていたマユリは再び溜息をつくと、哀れみの目を彼へと向けた。
「はぁ…やれやれ。君を瓶詰めにするのは諦めるしかないようだネ」
その瞬間_____
_______ザエルアポロの身体を一筋の斬撃が走り右肩から左腰に掛けて巨大な傷が刻まれた。
「ガハァ…!!!」
身体へと刻まれたその巨大な傷から血液が溢れ出すと共にザエルアポロは口元から血を吐き出しながらその場に膝から崩れ落ちた。
「ぐ…な…何だ今のは…!?突然と僕の身体に痛みが…!!」
「貴方今、ネムさんにも手を出そうとしてましたね?」
斬られた箇所を抑え込み震えていたザエルアポロが見上げるとそこには鋭い瞳を向けながら見下ろしている千弘の姿があった。
「まさか今の斬撃…貴様の仕業か!?」
「そうですけど何か?」
「…!!(嘘だろ!?この死神…さっきから僕の邪淫姫の触手を引きちぎったり斬り刻んだりしていたが…一体何なんだ!?斬撃に関しては見えもしなかったぞ…!?)」
ザエルアポロは千弘の得体の知れない強さを目の当たりにしてしまった事で理解が追いつかず混乱してしまう。
その一方で千弘は既に次の行動へと移していた。
「何もしなかったら、局長に任せてましたけど、ネムさん攻撃した以上、私ももう容赦しません」
その言葉と共に千弘の手が刀の塚へと置かれ、次なる一閃を放つべくザエルアポロへと狙いを定めたのであった。
だが、ザエルアポロはまだ諦めてなどいなかった。
「何てね」
「ん?」
すると、千弘から距離の離れた場所に立っていたネムの足元から触手が生えて彼女目掛けて向かっていった。
「(あの女の身体に僕の母体を埋め込み新たに生まれれば傷を回復できる…!!いくら奴でもあそこまで届くまい…!!)」
ザエルアポロはネムから千弘の距離、そして刀を構える体制から完全に防ぐことが不可能であると悟ると勝利への僅かながらの可能性を見出し笑みを浮かべた。
だが、そんな中でマユリは更に呆れるかのように額に手を当てて首を振る。
「やれやれ。まさか君がこうまでバカとはネ」
「随分と冷たいなぁ!!部下なら少しは労ってやったらどうなんだい!?」
「別にあのバカに言ったんじゃ無いヨ。“君”に言ったのだヨ」
「_______は?」
その瞬間 ネムへと迫っていた触手が一瞬にして粉々に斬り刻まれた。
「な…なんだと!?あそこまでどうやって…」
「最初から気づいてましたよそんくらい」
「ひぃ!?」
再び千弘の声が聞こえ、ザエルアポロが思わず怯えながら前を向いた時には既に遅かった。
「地面の中を進む変な霊圧を感じましたからね。それに、案外 出てからネムさんに襲い掛かるまで結構遅かったし」
そこにはこちらに向けて背を向ける千弘の姿があった。
「まぁ死んだとしても、私の忠告を無視してネムさんに手を出した自分を恨んでくださいね」
背を向けた千弘はそう言いながら刀身と塚の間が少し見える刀を鞘へと戻した。
「き…きさ__」
カチン___。
その音が響いた直後 千弘の背後に立っていたザエルアポロの身体はバラバラに斬り飛ばされ地面へと崩れ落ちていった。最後の断末魔も遺言も何もかも残すことなくザエルアポロはその命を終えたのであった。