お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
「わぁぁぁ!?藍染隊長のケツがぁぁ!?」
「千弘さん。落ち着いてくださ____あ」
慌てる千弘を宥めようとネムが肩を抑えた時であった。突然とネムの脚がぐらつき、彼女の体制が崩れて千弘に抱きつく形で倒れてしまう。
「わわ!?」
それによって千弘の体勢も前に崩れてしまい、突き出していた人差し指は____
ズボ
_____更に深く突き刺さった。
「あ"あ"あ"あああぁぁぁ!!!!」
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「えぇ…」
一護は唖然としていた。
それもそうだ。先程まで化け物ぶりを見せていた藍染が肛門を押さえながら蹲っている光景が広がっているのだから。
そして、そんな彼の傍では、藍染の背後から現れた千弘がアタフタしていた。
「あがぁああ!!!」
「わわ!大丈夫ですか!?すいません…まさか藍染隊長のケツの目の前に出るなんて思いもしなかったので…」
そう言い千弘は蹲る藍染へと近づいていく。
「__!」
その光景を目にした直後、一護はようやく正気を取り戻した。今は藍染の霊圧や強さが一介の死神を一撃で吹き飛ばしてしまう程の強さだ。それをあんな至近距離にまで近づいてしまえば命はない。
藍染に近づく千弘に一護は叫んだ。
「バカ!ソイツから離れろ!!」
「え?」
もう手遅れであった。千弘が此方へと目を向けた時には既に藍染の姿が千弘の背後へと回っていた。
「園原千弘ぉ…!!」
「んあ?」
ドスの効いた低い声が響き渡り周囲の空気を振動させていく。そんな霊圧に対して何のリアクションも起こさない千弘は、振り向くも既に藍染の腕は斬魄刀へ巨大な霊圧を纏わせていた。
「よくも私に恥をかかせてくれたな…!!!」
そして、藍染の腕が握り締めていた斬魄刀を千弘目掛けて振り下ろした。
「消えろぉおおおお!!!!」
その瞬間
「なにすんですかいきなり!!!」
「ごはぁ!?」
「へ…?」
振り下ろされた藍染の斬魄刀が一瞬で木っ端微塵になると同時に藍染の頬へと千弘の拳が深く突き刺さり、藍染の身体をぶっ飛ばした。
「えええええええ!?」
何が起こったのか?唐突すぎる光景に一護は訳がわからず目を点にしながら驚きの声を上げてしまう。
一方で
千弘の一撃を受けた藍染は立ち上がりながらも殴られた箇所を押さえながらその場に膝をつき、荒い呼吸を繰り返していた。
「はぁ…!はぁ…!(なんだこの重い一撃は…!霊圧も感じなかった…まさか純粋な身体能力のみでこの威力なのか…!?)」
息を吐くたびに腹から伝わる明確なその痛みに苦痛の表情を浮かべながら千弘へと目を向ける。
「ごめんなさいねぇ。私、少しばかりか過酷な環境で修行してた上に、“三つ編みで眼鏡”の怖い人から逃げてたので、カウンターする癖がついちゃったんですよ〜」
そう言う千弘の目はとても鋭く、全身から滲み出ている殺気を全て此方に向けていた。
「ぐ…!」
崩玉と融合してもなお千弘の力に届かない事実はまさに屈辱に他ならない。だが、藍染はそれを決して許さず目を血走らせる。
「崩玉と融合した私でさえも足元に及ばないとでも言うのか!?」
「崩玉?何ですかそれ?ウカムのレア素材ですか?___お?」
「そんな筈はない!!」
立ち上がった藍染はその場から飛び出し、再び千弘目掛けて斬魄刀を振るう。
「崩玉は宿主の願いを聞き入れ無限に進化する!!霊圧も何もかも超次元の存在になった私ならば貴様など超えられる筈だッ!!!!」
そう叫びながら藍染は次々と千弘へと刀を振り回していく。その刀の威力はもはや達人ですら凌駕し、彼の斬撃が当たった岩や岩石は一瞬にして木っ端微塵となっていく。
だが、
「ホイホイホイホイ」
振り下ろされた斬魄刀を千弘は鞘ごと引き抜いた斬魄刀の塚で防いでいた。
___ッ!!!
__ッ!!! __ッ!!!
__ッ!!!
次々とぶつかり合う斬魄刀。視界し鏡花水月を発動させる時間などない。1秒、否、0.1秒、0.01秒でも早く千弘へと一撃を見舞うために藍染は刀を振り回していく。対して千弘は何一つ表情を変えることなく藍染の刀を捌いていった。
その斬り合いを間近でネムと共に目にしていた一護はその迫力に圧倒されていた。
「すげぇなアイツ…藍染と互角にやり合ってるぞ…」
「当然です。千弘さんは始解も卍解も習得せず、純粋な剣術のみを鍛え上げてきたのですから。その剣術はまさに極致。尸魂界の全ての斬術を身につけ、それを自己流に昇華させている千弘さんに純粋な剣術では敵うはずありません」
「マジかよ…!?アイツも剣八と同じで始解も卍解もねぇのか!?」
「それと、互角ではありません。彼の表情をよく見てください」
「え…?」
一護は藍染と斬り合う千弘の表情へ目を向ける。
「ふわぁ〜」
余裕の表情どころか眠たそうにあくびまでしていた。だが、藍染の刀を捌くその太刀筋に一切のブレはない。
それはつまり、藍染の太刀筋は完全に見切り、もはや集中するまでもないという事である。
そしてその事実は勿論だが、藍染を刺激した。
「おのれぇええええ!!!何故だぁあ!!!何故当たらないんだッ!!!」
「いやいや。動きが単純すぎるんですって」
「ふざけるなッ!!!」
__!!!!
一度後退した藍染は再び飛び出し斬魄刀を一振りするが、千弘は再び斬魄刀の塚で受け止める。
「終わりですか?」
「まだだ…!!」
咄嗟に藍染は千弘の刀を掴み取ると、瞬時に破道を発動させた。
「『破道の九十【黒棺】』…ッ!!!」
すると、周囲の空気が振動しながら黒い霊子が収束していき、千弘と千弘の刀を掴んでいる藍染もろとも飲み込み始めていった。
「今の私の破道は山本重國をも凌駕するぞ!!!私の霊圧に加えて極限まで圧縮された重力の奔流に耐えられるか________」
そう言いかけた時であった。
「えい」
____パリィィン
千弘のもう一方の腕が振り回されると、ガラスが壊れる音と共に周囲を覆っていた黒棺が粉々に砕け散った。
「な……」
「全く…変な技使わないでくださいよ。おっかない」
「〜!!!」
崩玉によって、自分は虚も死神さえも超越する存在となった。以前よりも確かに強くなった。だがそれすらも通じない事に、藍染の鋼の精神は少しばかりが傷を負い、すぐさま千弘から離れて後退した。
その時であった。
____ドクン
「…!?」
突然と藍染の身体が鼓動と共に振動すると、藍染の胸元の崩玉から巨大なオーラが溢れ出した。それはまるで今の自身を否定するかのようであり、全身の疲れが次々と吹き飛び力が湧き上がってくる。
「そうか…やはり許せないか崩玉よ…!!」
その力の奔流に藍染は激しく発光する崩玉の埋め込まれた胸ぐらを掴む。
「私が奴に負ける事などあってはならんか…!!!!」
すると、藍染の全身が巨大な光に包み込まれていき、千弘の斬撃によって付けられた傷が次々と塞がっていく。
藍染の身体が崩玉によって、進化を遂げ始めたのだ。
一方で、
「うわ眩し!?何ですかあれ!?目に悪いなぁもう〜!!」
「そんな事より千弘さん。そろそろマユリ様の指定した時間です。研究室へ急ぎましょう」
「わわ!?もうそんな時間なんですか!?あのバカ(藍染)に構っててスッカリ忘れてた!急がないと!!」
「…え?あ!おい!?」
ネムからマユリの依頼である実験器具を取りに行くタイムリミットが近づいていることを知らされた千弘は、すぐさま刀を鞘にしまうと、遠方に見える瀞霊廷へ目を向けてすぐさま駆け出した。
だが、それを藍染は決して逃がさなかった。
「この私を前にして…逃走とは随分な余裕だな…!!!」
その言葉と同時に、巨大なオーラの中から光を纏いながら藍染が飛び出し、駆け出す二人のうち、ネムの背後に現れた。
「ならばその人形から先に片付けてやる!!!」
そして、追いついていく中、藍染は手に斬魄刀を生成し、目の前にいるネムの背中目掛けて振り下ろした。
「な…危ねえ!!」
避けろォオオオ!!!!!」
一護の叫び声が響き渡る中、藍染の振り下ろした刀がネムの背中へと振り下ろされていく。
その時であった。
「テメェ…ウチの副長がなんだって?」
「!?」
ドスの効いた低い声と共に、藍染の目の前に千弘が現れ、それと同時にネムへと振り下ろされた藍染の斬魄刀が木っ端微塵に砕け散った。
「なに…!?」
「誰が、誰を片付けるって…?」
「…!!」
その声が聞こえた時には、既に目の前に千弘の姿があり、こちら目掛けて刀を構えていた。更に、構えるその斬魄刀は鞘から完全に引き抜かれていた状態であった。
「それが…貴様の斬魄刀…!?」
それを見た藍染は絶句してしまう。長年、不明とされてきた千弘の斬魄刀の正体。どんな範囲であろうと、一瞬にして斬り刻むその斬れ味と間合いの仕組みについてどうなっているのか気になっていた。
だが、正体はさして変わらぬ浅打であり、その刀身は赤と黒が入り混じった霊圧を放ち稲妻が迸っていたが、それ以外の特別なものなどなかった。
「なんだ…?ただ霊圧を纏っただけか!?それが貴様の____」
「黙れクソが…!!」
「!?」
最後まで言い合えるよりも前に、千弘の刀が一振りされる。それによって藍染の両手両足が斬り飛ばされると同時に背後の巨大な岩石が一瞬にして木っ端微塵となった。
「が…!?」
「ウチの副長を人形呼ばわりしてんじゃねぇぞ…!!!」
藍染の身体が宙を舞う中、千弘が再び刀を握り締める。
「真呼元帥からはあまり怒るなって言われてるけど…流石に聞き捨てならねぇなぁ!!!!このクズ野郎がッ!!!!」
その瞬間
______一振一千斬
千弘の目が光ると同時に刀が振り回され、藍染の全身という全身が切り刻まれた。
「…!」
断末魔さえも上げることなく、その斬撃に当てられた藍染の身体は肉片と化し、衝撃波によって背後の岩石へと叩き飛ばされたのであった。
「おいおい…マジかよ…!?」
その光景を見ていた一護は言葉を失ってしまう。それもそうだ。護廷隊の主力となる隊長のみならず、元柳斎までもが出払ったにも関わらず、倒すことができなかった藍染を、たった一人で圧倒しているのだから。
「…ふぅ」
その一方で、藍染を切り刻んだ千弘は霊圧を抑えながら斬魄刀を鞘に納めると、ネムに駆け寄った。
「副長!お怪我は!?」
「大丈夫ですよ。ありがとうございます千弘さん」
駆け寄られたネムはその行動に頬を緩ませ笑みを見せると、千弘の頭を撫で、それに千弘は頬を赤く染め上げながら笑みを見せた。
「えへへ!では行きましょう〜!!」
「はい」
それから二人は藍染に目を向けることなく、瀞霊廷に向かっていったのであった。
「……」
取り残された一護は、何が何だかわからず、ただ走っていく二人の後ろ姿を見つめる事しかできなかった。
「…アイツ、何者なんだ…?」
すると
「あれが…あれでもまだ本気ではないと言うのか…!?」
「!?」
背後の瓦礫から声が聞こえ、振り返るとそこにはバラバラとなった肉片が融合し、元の姿に戻った藍染の姿があった。
だが、その身体からは先程よりも力が感じられない。恐らくバラバラに切り刻まれ、その身体を再生させる事にエネルギーを使いすぎたのだろう。
それはまさに、最大の好機である。千弘の手柄を横取りすることに後ろめたくなりながらも、一護は斬魄刀を構える。
「おい。もう終わりにしようぜ藍染。アイツほどじゃねぇが、俺が相手になってやる」
「生意気な口をきくな…人間風情が!!!」
その後、一護との激動の末に藍染は殺すまでにはいかなかったものの、事前に浦原が埋め込んでいた鬼道が発動し捕縛、投獄される事となった。
だが、この一件で一護は藍染を仕留めるために死神の力を代償として扱える切り札を使ってしまったため、死神の力を失ってしまったのであった。