あの日、アイドルになると宣言して一年は経ち、アイは少し変わった。まだほんの僅かだが、しかし何処か最近のアイは様子がおかしい…
「…………」
「………っ!」
アイに見られていることが増えた。何故か視線を向け目を合わせると逸らす事がある。けど話す時は普通に話せてはいるが…相変わらずノートを見せろやら宿題の答えを見せろと言うのは全く変わりはないが、何処か変だ。
後は、最近俺の事を呼び捨てに呼ぶようになった。いつもはレイ君が、レイって呼ぶようになった。あだ名には変わりないけど
「(俺、アイになにかしたっけ?)」
全く心当たりがない。ただ、アイから何か込められている視線というのはわかる。
しかし今の俺はそんなことを考える余裕がない。
「(最近この辺りも……怪物事件が増えてきた)」
最近では今いる場所より遠いが怪物による被害事件が増えてきた。
「(この世界に“デザイアグランプリ“が開催されていないのは確認済みだが……ジャマトとは違う何かがいるのは確かだ)」
俺は懐から黒いドライバーを取り出す。こいつを使う時が近いうちにきそうな気がして、今ははみに離さず持ち歩いている。
「さて、帰るか…」
俺は荷物をまとめ、今日の授業を終え帰路につく、アイはアイドル活動をしている為、当然のように最近一緒にいる事は少なくなっている。
後ついでに言うと、俺は小説を書き始めた。数百年いろんな世界を生きてきた中でやったことがない。5回目の人生で出会った浮世“
「(まっ、俺は余り目立つようなことはしたくないし…小説家も悪くないかもな。確かペンネームで本名も隠せる上、顔出しは個人の自由だし、やってみる価値はあるかもな)」
しかし、俺の書いた小説が後に有名になる事にまだ、この時は知らなかった。
アイside
私は星野アイ、最近は苺プロダクションに所属しているアイドル。今は踊りや歌のレッスンやらで忙しい日々を過ごしている。
そして私には幼馴染み的な1人の男の人がいる。彼、九十九黎翔は、私が自慢できる程の友達だ。
私ほどではないが、かなり顔のレベルは高いし、後…相当鍛えているのかかなりの細マッチョ体型だ。それを見たのは私が彼の家にお邪魔した時、偶然シャワーを浴びた後で上半身は何も着ていなかったからだ。
ここだけの話…耐性がなかったせいか鼻血が出かけたことは私だけの秘密。
後は運動神経や勉学、その他もろもろの事も何でもこなしてしまう。英語はペラペラだし、全教科100点は当たり前…じゃなくて、あまり目立ちたくないのか彼は点数を撮りたい点だけを器用に取る事が出来る。この事を知っているのは私だけ。まぁ、レイが本気でやれば全教科100点は余裕だと思う。
でも、彼は時々、つまらなそうな顔をしたり、辛そうな表情をする時がある。流石の私も心配して何度か彼に声をかける事があるけど
「なんでもない、アイが気にする事じゃない」
と、毎度はぐらかされる。
そんな彼は私以外の誰かと一緒にいる事はないが、色々な人に話しかけられる事が多いし、話しかけられればしっかり話すだけで自ら話しかける事は少ない。と言うか私以外に話しかける姿をあまり見ない。
私は、レイが羨ましい。そんな異性と付き合えたらどんなにいいだろうか、私も興味がないわけじゃないが…そう言う気持ちがよくわからない。
彼に告白をしたと言う噂も時々耳にしたり、下駄箱にラブレターがあるのなんてよく見る。それを見たり聞くたび胸が苦しむ感覚がある。これがよくわからない。
けど、一度としてレイに告白に成功したと言う話は聞いた事がない。それを聞いて安堵する自分もいる。
そんな彼と出会ったのは小学生の頃だった。母親が窃盗で逮捕され、施設に預けられた私は前にいた小学校から別の学校に転校する事になった。友達も元から一人もいなかったので特に問題はなかった。
『星野アイと言います。よろしくお願いします』
『えー、星野さんは九十九君の隣の空いている席ね。九十九君は彼女の面倒を見てあげてくださいね』
『はい』
自分の席が示されそこに向かう。第一印象は'不思議な子'だなと思った。なんというか…雰囲気が他の子とは断然違っていたから
『九十九黎翔、よろしく』
その後は色々と教えてもらった。私は名前や顔を忘れやすく間違えるのに…転入早々話しかけてくれた子は関わらなくなったのに、彼は変わらず接してくれた。名前を間違えずにレイの事をしっかり呼べた時はすごく嬉しそうな顔をしていたのを今も覚えている。
これが、私と彼との長い関わりの始まりだった。
「レイ〜、今日の放課後どこか一緒に寄り道しない?」
「別にいいが、どこに行くんだ?」
最近はアイも忙しくこう言うやり取りも少なくなったが、こう言う誘いは彼女からの誘いの方が多い。そして、大抵は奢らされるパターンだ。
休日の時は俺のうちに来た途端出かけようと言われた挙句、断ったのに母さんから強制的に摘み出され、彼女の買い物に同行する事もよくある。
俺の母さん、何処かアイに甘いんだよなぁ…晩飯も一緒に食べる事もよくあったし。
「えーとね、たしかこないだ言っていた出店のクレープ屋があるんだ。あれを食べたいと思ってさ。それと、今週休みの日は暇?」
「特に何もないが、お前が俺に予定聞くの珍しくないか?」
「私だって学ぶんですぅ!この恋愛映画、観に行こうと思って…」
「どうした急に、アイドル始めて心変わりでもしたのか?いや、今後の為の勉強か?アイドルの中にも女優になってたり、バラエティ番組にもよく出てるしな」
俺の質問の意図が伝わったのすぐに返って来た。
「いや〜、ほら、私って誰かを愛する?ってよくわからないじゃない。レイの言う通りアイドルやめた後の勉強になるのかなと思って」
「……そうか」
アイの言ってることに納得はする。見る事には構わないが、どうしても嫌な記憶や思い出を思い出してしまう。
「やっぱり行きたくない?無理して来てもらう事はないけど…」
どうやら俺は顔に出ていたらしく、無理しなくてもいいなんて言われた。こう言う時のアイは嘘はなく純粋に心配してくれてる。
「いや、大丈夫だ。折角アイが誘ってくれたんだ。一緒に見に行くか」
「やった〜!レイ、好き〜」
「そう言うのは嘘でも言うもんじゃないぞアホ」
「あうっ…」
俺はアイの額を軽くデコピンを喰らわす。彼女は額を手で抑え少し頬を膨らませながらそう拗ねる。
「それはライブに見に来てくれた人に言ってやれ、ファンは喜ぶと思うぞ?」
「あ、そうそう、ライブで思い出したんだけど、初ライブの日程決まったよ!」
「へぇ、ようやく決まったのか」
「今度来てね!絶対だからね!」
「わかったわかった。行くからそんなにグイグイくるな」
この光景を見た一部の生徒はあれで付き合ってないのか?と疑問に持っいたみたいだが、2人はそれに気づく事はなかった。
数週間後………
「ここでいいんだよな」
俺はアイに言われたライブ会場に足を運んでいた。席の場所は中央あたりでちょうどいい距離から見れる場所だ。まだ駆け出しなのもあり客はアイドルオタクしかおらず、俺みたいな客は少ないが…もし上手くいけばドーム会場が満席になるくらい人気になる。
携帯を見ながら時間を潰す。今の時代はまだガラケーだからスマホない。おそらく後5、6年したら出るだろうが、俺は一応スマホ型のアイテムはあるのだが、今の時代じゃ流石に人前では扱うわけにはいかないので扱っていない。家の中か、緊急事の時にしか使わない。
しばらく経つと、いつの間にかゾロゾロと観客たちが集まってきた。
するとステージで女性の人が挨拶を始めた。
「次は、本日初ライブのB小町の方々です!!」
どうやらもう始まるらしい、アイの場合緊張などはないと思うが、やはり心配だ。
「(頑張れよ…アイ)」
俺は内心で応援するしか無く、ライブ会場はこじんまりとしている。
そして……ライブの開始時間が来た。
「…………………」
アイがアイドルのアイとして流れる音楽に合わせて歌い、踊る。俺は…言葉を失っていた。
「……ここまでとはな」
俺は驚きを隠せなかった。メンバーの中でアイ1人だけが違う。アイ以外の人達がどうしても霞んで見えるくらいに。
「(こりぁ…将来化けるかもな)」
そう思いながらもライブを見守り続けた。客は少ないが、ライブの盛り上がりは最高潮。見に来て正解だったと思いながらアイは最後まで歌い、踊りきった。
俺は少し喉が渇き飲み物を買いに行こうと思っていた時だった。
ドゴォォォォォォン!!
「っ⁉︎なんだ!」
突然ものすごい衝撃音が響き渡り、俺は急いで会場に戻る。そして会場の天井には穴が空いており、そこから人型の何かが落ちて来た。そう、人間ではない何かがいた。
それは、まるで異形の形をした人の怪物だった。
「ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!!!」
そこから先は言うまでもないだろう。
『ウワアアアアアァァァァァァァ!!!!!?????』
「ば、化物だぁ!!」
「な、なんでこんな所に!?」
「に、逃げろぉ!!」
皆恐怖に怯えて、観客は逃げ惑うしか無かった。
「マジかよ、今日に限ってここでかよ…」
メモリ型のデバイスを使った犯罪や怪物による事件はよく聞いていたが、こんな所で遭遇するとはな………しかもやはり俺が知ってるジャマトとは違う。
「っ!アイ!」
怪物はアイたちに近づいていた。理由はわからないがどうやら狙いB小町の人たちらしい。
俺は恐怖の余り近くにへたり込んでいた観客に声をかける。
「おいあんた!」
「え?は、はい!」
ようやく正気に戻ったのか俺の声に返事をする。
「そこにへたり込んでないでここから急いで逃げろ!ここから出たら、急いで警察を呼べ!」
「お、おい!!」
俺は手に黒いバックルを手に持ち全力でアイののもとへ走った。
アイside
「嫌……来ないで………!」
怖い。私は唸り声を上げながら近づいて来る怪物に後退りするしか無かった。嫌だ、こんな所で死にたくない!まだ、やりたい事が沢山あるのに!
ドン!
「!?」
壁…嘘、もう下がれない!?
『グゥア!』
「あ……」
怪物は私を殺そうと腕を振り上げてくる
「嫌、死にたくない……」
なんでだろう、殺されそうなのに、どうしてもレイと過ごした思い出が思い出される。
「誰か………レイ」
ああ、これが相場灯かな…まだ、レイと…一緒にいたかったなぁ…
「…助けて……レイ!」
パシュンッ!
『グオオオオオ!?』
「………え?」
突如、怪物は火花を散らしのけ反った。
「ウォラァ!!」
『グゥア!?』
誰かが怪物を蹴り飛ばし蹴られた怪物は怯む。今、何が起こったの………?そう思っていると、目の前に白い銃を持った…私が一番知る人が…守るように立っていた。
「アイ、大丈夫か⁉︎」
「れ、レイ!」
『グウァァァァァァァァァァ!!!!!!』
「っと、悠長に話してる場合じゃないな…」
レイは怪物が目の前にいるのにすごく冷静に見据えている。私が今まで見た事のない目だ…けど、なぜかその目を見ると、とても安心する。
「アイ、今から起きる事…他言無用で頼むぞ」
「え?う、うん、分かった………」
DESIRE DRIVER
レイは突然手に持っていた黒い物を腰に当てると、それがベルトとなり腰に自動で巻き付く。
レイは銃を消し、片方の手には肋骨型の扉を模した紫色の何かを取り出し、ベルトにはめ込んだ。
SET
「変身」
その言葉と同時にレイは左手を顔の横に持っていき指を鳴らして、鍵部分を捻り展開させた。
GRAB!CLASHOUT!
ZOMBIE
文字から紫色の液体が溢れ出し、ゾンビの鎧のような物が展開され、するとレイの全体に黒に包まれ、仮面と鎧が装着された。
右手には紫色のチェーンソー、左手には大きなカギヅメ。ゾンビを思わせる禍々しい装備を纏った。
そして顔は…
「く、黒い…狐?」
顔は黒い狐を模した仮面だった。私は思わず声に出してしまった。
「仮面ライダー…ノワール・ギーツ」
「ノワール・ギーツ?」
ノワール・ギーツと名乗ったレイはいつもと雰囲気が違った。そして手に持っていた紫色のチェーンソーを相手に向け言い放つ。
「アイの初舞台を台無しにした落とし前は、つけさせてもらうぞ」
READY FIGHT