8周年を前にドゥルガーガチャいっぱい回して石が溶けてしまったので、投稿します。
意味深なことを言った偽イゴールがあの場所から消えた後も、俺達は異界内の探索を続けたのだが、異界の奥地にあったとある場所から進むことが出来なくなってしまった。
これ以上の探索は悪手と結論付けた俺達は、モルガナの案内に従って地上を目指していた。
実際のところ、探す場所がなくなってしまったので帰ることにしたというのが正しい表現なのかもしれないが。
探索中や地上へ帰るまでの道のりは、これまでの攻勢が嘘のように穏やかだった。
チラホラと見かける野良シャドウは、臨戦態勢の琴音さんに恐れをなして泣きながら逃走する始末なので、実質無害といってもいいくらいだ。
5年前のタルタロス下層でもよく見た光景だが、本能的に人間の
凶悪そうな馬に乗った正統派な重騎士といった見た目の『ベリス』や、悪臭漂う肉塊という恐ろしい見た目の『スライム』が全力で逃走する姿には涙を禁じ得ない。
「むむむ。久々に暴れられそうだったのに全然襲い掛かってこない」
「そりゃそうだろ。いくら欲求に正直なシャドウでも、挽肉生成器に自分から飛び込むバカはいないっての」
「お、こんな
「いふぁい、いふぁい、いふぁーい」
この短時間で随分と仲良くなった二人のやり取りを聞きつつ、メメントスを進んで地上を目指す。
ひたすら歩くだけではビックリするくらい暇だったので、メメントスの道に目を凝らしてよく見てみると、色々なモノが地面に落ちていることに気付く。
何かの部品だったり、見たこと無い包装の食品といった一般的にはガラクタやゴミと呼ばれるものが大半だが、その中には貴重な魔石や貴金属、錆びてはいるが、真剣なんかも落ちているようだ。
認知異界産の品は効果がイマイチだったり、一つの効果しかなかったりと通常の異界の物に比べれば価値は下がるが、貴重な資材には違いないので、目についた品を片っ端から拾いつつ歩き続ける。
「妙な異界だな。主の意向が完全に反映されている訳ではないのか?」
タルタロスはニュクスが降臨するための神殿、マヨナカテレビはイザナミが住まう神域という側面があったため、希少価値の高いアイテムや強力な武具が納められている場所があることに納得できる雰囲気とでもいうか、そういう土地としての『格』があった。
しかし、このメメントスはそういう雰囲気を感じない。なんというか、もっと俗っぽいとでも言うべきだろうか。
実際、野良シャドウの配置や人を迷わせる悪辣な迷路のようになっている異界の構造自体は、あの
この異界が認知で成り立っている以上、誰かの認知によって形状や在り方が変化するはずなので、そうなるとこの認知異界に異界の主以外で影響を与えている存在が別にいるのだろうか。
「分からないな」
単純にこの異界を真に支配している存在、例えば『天使』とかが存在するのか、それとも別の存在と共同で管理をしているのか。
どちらも有り得そうで、有り得なさそうなのが何とも言い難い。
「蓮くん」
そんなことを考えていると、モルガナの頬を伸ばして遊んでいた琴音さんが俺に近寄って来て、片手に抱えていたモルガナを俺の肩に乗せる。
琴音さんに散々こねくり回されてグッタリしながらも、律儀に道案内は欠かさないモルガナに、内心で称賛を送りつつ琴音さんの言葉に耳を傾ける。
「イゴールの事、早く助けないとね」
「ええ。何かの手掛かりだけでもいいから、早く見つけたいですね」
真剣な表情の琴音さんの言葉に頷きつつ、そう返す。
実のところ、色々と大恩あるイゴールを助ける為につい先ほどまでメメントスを探索していた時に、更なる地下に続いていそうな場所を見つけはしたのだ。
見た目は現実にもある、地下に向かうエスカレーターがあったのだが、そこには強固な封印が施されていて、琴音さんのメギドラオンですら破壊できなかった事には驚いたものだ。
どうやら、あの封印を解くための何らかの鍵は、このメメントスには無いようで、その鍵を見つけない限りは更に地下に降りてイゴールの捜索や救出をするのは不可能と思っていいだろう。
「タルタロスみたいに、満月の度にやってくる強力なシャドウを倒す、とかなのかな」
「強力なシャドウが封印の要になっている可能性はゼロではないですね。出来れば探知に特化したペルソナ使いに、この異界の探知を依頼したいとこではあります」
強力な探知能力を持つペルソナ使いには心当たりがあるのだが、どうにも二の足を踏んでしまう。
「風花とか、りせちゃんは、蓮くんが言えば直ぐ来てくれると思うよ?」
「・・・あー」
「その反応。まさか、まだあの時のこと引き摺ってるの?」
そう。実はこの半年ほど、俺は琴音さん以外のペルソナ使い達とあまり連絡を取っていなかったりする。
その理由は、俺に前科を付けてくれやがった酔っぱらい男が関係している。
あの男はどうやら、なんとかという政党の有力議員だったらしく、問答無用で俺を有罪にしようと相当な強権を使って事を進めたらしい。
事件現場の監視カメラの映像でも俺と男の間は数メートルは離れていて殴るなんて物理的に不可能だし、殴られたと主張する凹んだ男の顔には
DNAや指紋なんかの証拠はあくまで人間相手だから有効なのだ。当然、悪魔の犯行でそんなモノが残るはずがない。
つまり、物的証拠が何もないのに俺を有罪にしようと躍起になって、あの男は証拠の捏造や偽の目撃者を用意したらしい。
悪魔の行いは別として、手慣れた様子で証拠の捏造や偽の目撃者を用意するという行いに、怒りを噴出させた『直斗さん』や『美鶴さん』といったメンバーを筆頭に、ペルソナ使いの仲間達が当時は相当に大荒れして色々と大変だった。
俺にもメリットがあるから、召喚した悪魔のやらかしは自分の責任だから、と言ってどうにかその場は治めたのだが、俺を心配して行動を起こしてくれた彼らにNOを突き付けてしまったことが後ろめたくて、ここ最近あまり連絡を取っていないのだ。
「ちゃんと連絡取らないとだめだよ?美鶴とか一時期スマホの前で待機してた時もあったし」
蓮くんからの連絡を待ってたんだと思うよぉと、ニヤニヤと笑いながら言う琴音さんに対して、苦笑いが出てしまう。
あの異界関連で、これから色々と大変な事が起きそうだし、今後の事も含めて仲間たちのブレーンにあたるメンバーと今日の事も含めて早いうちに話しておくべきだろう。
「今度ちゃんと連絡取ります」
「ん。よろしい」
そんなことを話しながらメメントスを進んでいると、段々と異界特有の重苦しい雰囲気が薄れ始めていることに気付く。
どうやらメメントスの出口が近いらしい。
「あそこだぜ」
俺の肩に乗っかったままそう言ったモルガナの指が示す先には、駅の改札口のような場所があるように見える。
実際に近づいて確認してみると改札の方は機能していないようで、切符を入れることなく素通り出来た。
まあ、切符を要求されても困ってしまうが。
改札口がある、そこそこの広さの空間には、駅や空港によく置いてあるコインロッカーが幾つか置いてあるだけで、他には特に物は無いようだ。
その代わり、異界の壁の一部が切り取られたようになっている場所があり、その切り取られた場所から向こう側の、人通りが少なくなった渋谷駅の様子が見える。
この景色を見る限り、どうやら地下鉄に向かう階段が異界の入り口として機能しているらしい。
「吾輩、先行ってるぜ」
そう言ってさっさと異界から脱出したモルガナに続き、琴音さんも異界から出て行く。
二人に置いて行かれないように俺も渋谷駅の様子が見える場所に手を触れ、身体を通過させる。
プールや海にゆっくり入っていくときの様な冷たい水面を通る感覚の後に、赤と黒で覆われていた視界が、薄暗い夜明け前の光景に切り替わる。
どうやらちゃんと戻ってこれたらしい。
ようやく一息つく事が出来そうなことに安堵して、大きく息を吐くと、俺の目の前を『光る何かが』通り過ぎる。
「青い、蝶?」
青色の淡い光を放つ蝶が、俺のそばをしばらく飛んでいたかと思うと、急に耳元で誰かに囁かれるような声が聴こえてくる。
『奴から解放された今こそ、主との契約により貴方に芽生えた『力』の鍵を解きます』
『きっと成し遂げてくれると信じています。ご武運を。マイ、トリックスター』
その声は一瞬しか聞こえなかったが、幼い少女のような声だった気がする。
「…まさか、な」
青い蝶、解放、主、契約、力。
何処かで聞いた様な単語が並べられたその言葉に、嫌な予感を感じて周囲を見渡し蝶の姿を探すが、その姿はどこにもなくその存在の痕跡もない。
「…要調査だな」
山積みになっていく解決すべきタスクに溜め息を吐きつつ、地上に出ると、一台の大型トレーラーと何台かの車両が俺達が出てきた場所を囲んで、俺達を人目から隠すように停められていることに気付く。
黒塗りの車両に囲まれるという物々しい様子に、猫の姿に戻ったモルガナは眼を白黒とさせているが、俺と琴音さんは特に慌てることなくその車列の中で一際目立つ大型トレーラーに近づく。
俺達の姿を確認したのか、その車列の先頭車両から一人の女性が降りてきて俺達に向かってくる。
彼女はヤタガラス所属のサマナーであり、俺が『ライドウ』の名を襲名してからずっと側仕えとして様々な面で支えてくれている、『迫真琴』さんだ。
「ご無事なようで何よりです。ライドウ様」
「真琴さんも夜遅くに、ありがとうございます」
「いえ、緊急事態だったので当然です。もう数分戻ってくるのが遅ければ、精鋭部隊を派遣する予定でした」
その精鋭部隊は現在認知異界の調査中なようで、俺に気付いた面々が時々手を振ってきている。
彼らの顔には見覚えがあるな。確か討伐任務で一緒になったり、戦闘訓練を共にこなしたサマナー達だ。
俺が任務漬けの日々で忙しかったこともあり、彼らと仲良くなるほど交流を重ねている訳ではないが、見知らぬ相手と言う訳ではないので会釈をしておく。
「ライドウ様。替えのお召し物はトレーラーに積んであります」
手早く着替えて下さい。とそう言う真琴さんにお礼を言いつつ、大型トレーラーで牽引されているコンテナの中に入る。
コンテナの中には、ヤタガラスの霊能装備局と桐条財閥のシャドウ研究部が合同で作成した、ライドウ専用装備として与えられている高性能な対シャドウ、対悪魔用の戦闘装備の数々が積まれていた。
そして、これ見よがしに置かれている大正浪漫風な学生帽と学ランにも見える改造服と黒のマントという『葛葉ライドウ』の正式装備から身を逸らしつつ、備え付けの簡易シャワーで血を洗い流してから、絶妙に分かりづらいところに置かれている黒のジーンズと藍色のセーター、白のダウンジャケットを着込んでコンテナから出る。
「あら、あの服はお気に召しませんでしたか?」
「これから帰るだけなのに、戦闘服を着るわけないだろう」
やはり、あの服を用意したのは彼女だったらしい。
彼女は事あるごとにあの服を俺に着せようとするのだが、大正時代ならいざ知らず、現代であの格好は悪目立ちしてしまう。
あの服は、第二次世界大戦時に失われてしまった特別な技術で作られた物らしく、平安時代から続く霊能集団の葛葉家が所持している対霊装備の中でも、屈指の性能を誇る装備ではあるのだが、普段着にする訳にも持ち歩く訳にもいかないので、今回みたいな突発的に発生する戦闘時には使用できないのがネックだ。
「それはそうと、琴音様から軽くではありますが今回の件の事情は伺っています。色々と忙しくなりそうですね。ライドウ様」
「不本意ではあるがな」
好き好んで厄介事に首を突っ込んでいる訳ではないのだが、いつも厄介事の中心で戦うことになってしまっている以上、十中八九今回もそうなるだろう。
今回の件も含めて、この認知異界自体にも色々と気になることはあるが、流石に疲労がピークに達しつつあるので今日はもう帰るとしよう。
異界の調査自体は、これから派遣されてくる調査隊や真琴さん率いるヤタガラスのサマナーと、消耗の少ない琴音さんが引き受けてくれたので、俺はヤタガラスが用意してくれた車に乗り込み、話があるというモルガナを連れてルブランへの帰路につく。
今の時間はもうすぐ午前4時になるところなので、早く戻らないと仕込みをするために佐倉さんが店にやって来てしまうかもしれない。
『ようやくお戻りかい。主ぃ』
最高級の居心地を提供してくれた車に揺られること20分。
開きっぱなしの二階の窓からルブランの屋根裏部屋に戻ると、驚くべきことにまだドッペルゲンガーが顕現していた。
「色々と面倒ごとに巻き込まれてな。助かったよ、ドッペルゲンガー」
『いいさ。長い付き合いだ。超過分は美味い物食わせてくれればチャラにしてやるよぉ』
そう皮肉気に言って、黒い塊に戻ったドッペルゲンガーは、封魔管の中に戻っていった。
召喚した時に与えたマガツヒでは、ここまでの時間、実体を保つことは出来ないはずだ。
どうやら自分のマガツヒを消費してまで律儀に俺の影武者をしてくれていたようだし、近いうちに葛葉御用達の高級料亭にでも連れて行ってやろう。
「お前、デビルサマナーでもあるのか」
「封魔管をここに置いていってしまってたから、あの闘いでは呼べなかったけどな」
ドッペルゲンガーを含めた俺の仲魔を封じた6個の封魔管を興味深そうに眺めるモルガナの頭を撫でていると、モルガナが聞きたいことがある、と口にする。
恐らくはモルガナと交わした『取引』の件についてだろう。
「メメントスを探索するっていう取引は、継続でいいのか?」
「ああ。俺としてもメメントスを完全攻略する必要が出てきたからな」
「にゃふふ。そいつは朗報だが、メメントスの探索は相当大変だ。ソーマの提供程度じゃ釣り合わねぇ。だから、吾輩が持ってる鍵開けや異界探索に役立つ道具作りの技術を伝授してやるよ」
「へぇ。よし、取引成立だ」
認知異界を放って置く選択肢が端から存在しない以上、モルガナとの取引は俺にとってメリットしかない。
そんなことを思いながらモルガナが差し出してきた前足を右手で握り返した瞬間、僅かな耳鳴りの後、ついさっき聞いた正体不明の少女の声で、聞き覚えのあるフレーズが脳裏にこだまする。
突然脳裏に響いた声に驚いて、握手をしたまま固まってしまった俺に対して心配そうに声を掛けてくれるモルガナに、大丈夫だと言い、プラスチック製のビールケースを並べてマットレスを敷いただけの簡易的なベッドの上に腰を下ろす。
間違えるはずもない。
さっきのは前世では何度も聞いた、
あのセリフ実際に本人に聞こえていたのか、とか場違いなことを考えてしまうが、それよりも問題なのは。
「俺が、ワイルド能力を?」
自分の中に確かに感じる、さっきまでは無かったはずの
感覚でしかないが理解できる。今の俺は、
「嘘だろ」
巨大な認知異界の出現。他者とのコミュニティを力に変えるワイルド能力の発現。
そして事件の黒幕に目を付けられてしまった俺自身。
勘違いであれば嬉しいのだが、これだけ条件が揃ってしまった以上、そうである可能性は認めなければいけないだろう。
可能性の話ではあるが、どうやら俺は『ペルソナの主人公に転生したらしい』。
何処かにいるだろう主人公のサポートをして事件を解決するつもりでいたのに、自分が主人公だと気付いてしまった雨宮蓮クンのこの時の気持ちを20字以内で表現しなさい。
主人公本人のアルカナは混沌のままですが、ワイルド発現と共に愚者~審判の素養も生えてきてしまった感じです。コミュ構築開始です。
ワイルドを持つものは自身のアルカナを持たないのか、それとも相手のアルカナに合わせた『ペルソナ』を被るのか。
ゲーム的には設定すると面倒だから無いんでしょうけどね。
プロローグそろそろ終わるので『他のキャラクター視点から見た主人公』はみたいですか?
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はい
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いいえ