ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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 P3Pで不満だったのは、女性主人公を選んだ時に、綾時が女性にならなかった事です。
 キタローの様になりたいと考えたからファルロスも綾時もあの見た目だったという設定なのに、女性主人公でもあの姿なのは設定に矛盾があると思ってます。
 まあ、予算とか綾時を恋人にしたいプレイヤーに配慮したが故の結果なんでしょうけども。

 なので、この二次創作では好き勝手にやらせて貰います



インタールード③

 一月中旬のある日のこと。

 今年の冬は寒さが厳しく、久方ぶりに都心での降雪を観測したその日、あまりの寒さで布団の中から出てこなくなったモルガナをルブランに置いて、俺は単身、港区の辰巳ポートアイランドに向かうモノレールに揺られていた。

 

 前世ではお台場が有名スポットだった人工島は、この世界では辰巳ポートアイランドと呼ばれており、そこに繋がるレインボーブリッジと呼ばれていた大きな橋は、ムーンライトブリッジと呼ばれていて、ペルソナ3の一連の事件のある意味での始まりの地でもある。

 ペルソナ3の事件を解決した今となってはあまり寄り付かない場所なのだが、今日はどうしても外せない用事があったので電車とモノレールを乗り継いで辰巳ポートアイランドに向かっている。

 

『次は巌戸台。巌戸台です』

 

 五年前は何度も聞いていたアナウンスに懐かしさを覚えながら、背負ったカバンがずり落ちないように位置を直し、モノレールが停車した後、すぐに降車してそのまま巌戸台駅を出る。

 チラリとスマホの時計を確認したところ、今は十五時半を少し回ったところか。待ち合わせの時間である十六時にはもう少し時間がある。

 

「久方ぶりにポロニアンモールにでも行ってみたかったが、これは無理そうだな」

 

 タルタロスとエレボスの襲撃を片付けてからは、訪れる用事がほとんどなかったこともあって、ポートアイランドには全く訪れていなかったが、この数年で人工島はその面積を大きく広げ、桐条財閥の系列会社が大幅に数を増やし、相当な人間がこの島で生活するようになったらしい。

 その事もあってか、俺が活動していた五年前に比べて巌戸台駅の周辺は人混みが凄いことになっている。

 

 事前の情報では俺の知り合いが迎えに来てくれる事になっているとのことだったのだが、大都市の駅並みに人間で溢れ返っている状態なので、迎えに来てくれているという車も見つからないかもしれない。

 

「ん?」

 

 どうしたものかと考えていると、車でごった返しているロータリーの一角に紅いスポーツカーが止められており、そのすぐ傍に立っていた男がこちらに近づいて来ているのが見える。

 

「まったく、驚いた。この時間の駅周辺がこんなに込むなんて知らなかった」

 

 そう言って俺に話しかけてきたのは、白に近い髪色とそこらの俳優よりも整った顔立ち、そして実戦で鍛え上げられた筋肉質だが引き締まった体が特徴的な男性だった。

 そしてこの人は、俺にとって大切な戦友でもある人だ。

 

「迎えに来てくれる人って、貴方だったんですね。『明彦さん』」

「ああ。久しぶりだな。蓮」

 

 ちょっと前まで上半身裸でマントを羽織っただけというアバンギャルドな姿で戦場を駆けていた姿からガラリと変わって、高級そうなタキシードに身を包んでいる彼は、『真田明彦』。

 この世界でもペルソナ能力に覚醒し、他のメンバーと共にタルタロスを駆け抜け、今ではヤタガラスの戦闘部隊の一員として、海外でも凄腕デビルハンターとして名を馳せている。

 

 本来なら外部協力員として裏の世界や組織という枠組みからはある程度距離を置く筈だった彼だが、この世界にはシャドウ以外の脅威である悪魔が存在していて、異能者が奴らの標的になりやすい事と、力なき人を守るという彼の目的もあって、今ではヤタガラス内部の戦闘部隊『シャドウワーカー』の立派な一隊員だ。

 

「半年ぶりぐらいですね」

「そうだな。去年のあれが起きて以来か?」

「・・・あー」

 

 確かにこうして直接会うのは、前科が付く事になったあの事件以来か。あの事件の後始末とメシア教の大規模計画を阻止するために日本中を飛び回っていたせいで、ペルソナ使い達と交流するタイミングを中々確保できなかったのだ。

 まあ、あの事件の件で彼らの思いを無下にしてしまったので、どの面を提げて会いに行けばいいか分からなかったからというのもあるのだが。

 

「積もる話はあるが、先に移動しよう。この後の予定も詰まっているからな」

 

 そう言って歩き出した明彦さんの後を着いていき、彼が運転する高級そうなスポーツカーに乗って今回の目的地に移動する。

 

 これから向かうのは桐条財閥主催のパーティー会場だ。

 このパーティー、桐条財閥の人間以外にもグループや傘下、協力会社などが一堂に集う経済界の一大イベントとして行われており、ヤタガラスもフロント企業として幾つもの会社を抱えているのでこのパーティーにはほぼ毎回参加している。

 去年は確か、ヤマトが代表として参加していて、ヤマトが峰津院という京都の名家の当主と知っていたり、ジプスの局長だと知っていた人間から凄まじい量の縁談を取り付けられそうになり、見目麗しい美女達からアプローチ(ハニートラップ)を仕掛けられたりしたせいで、暫くの間ヤマトの不機嫌度がMAXだったりしたものだ。

 なので今年はヤマトがパーティーに行くのを嫌がり、双葉の件で借りを作った俺に代理人として白羽の矢が立ったのだ。

 

(その点、俺の場合は気が楽だな。『葛葉ライドウ』の名前は知られていても俺の人相は広まっていないだろうし、葛葉家の養子になったとはいえ産まれは一般家庭。色んな人間に絡まれる要素はほぼ無い。のんびりと高級な食事を堪能させて貰うとしよう)

 

 そんなことを考えながら明彦さんと他愛ない雑談をしていると、今日のパーティー会場がある辰巳ポートアイランドの新たなランドマークとして有名な『ミレニアム・ビル』が見えてくる。

 あのビルが建っている場所は、五年前まではメシア教によって『カテドラル』が作られ、ゆくゆくは『TOKYOミレニアム』としてメシア教の聖地になる筈だった場所だ。

 

 だった、というのは、既にその施設が破壊されているからだ。

 他所の国ならいざ知らず、この日本に、ましてや当時はタルタロスが近くに存在していたこの場所に、そんな建物を建てさせるのは、ヤタガラスとしては絶対に許容できなかったのだ。

 その結果として、カテドラルとTOKYOミレニアムを作って人工救世主を誕生させたいメシア教過激派と、メシア教の邪魔をしたいガイア教とファントムソサエティ、そしてこの機会に全員ブチのめしたいヤタガラスでの三竦み状態で戦争が始まり、建物の基礎部分すら残らなかったカテドラルは完全に消滅。メシア教の過激派とその企みは文字通り露と消え、ガイア教やファントムソサエティのダークサマナーも相当数が死亡することになった。

 

 そんなこんなで所有者すらいなくなった空いた土地に、桐条財閥が新たな複合施設として『ミレニアム・ビル』を建てた、というのが事の経緯だ。

 

「いつ見ても高いビルですね」

「そうだな。だが、タルタロスほどではあるまい」

 

 暫く車に揺られて到着したミレニアムビルのその偉容に、ありきたりな感想を洩らした俺に反応した明彦さんが答える。

 確かに、塔の高さが雲の上を通り越していたタルタロスに比べれば建物の高さとしては低いだろうが、それでも日本屈指の高さのビルなのは間違いない。

 

「というか、ここの何階でパーティーやるんですか?」

 

 送られてきた案内で、ここがパーティー会場だとは知っているのだが、具体的にどの階でやるかまでは書かれていなかったので、明彦さんにそう尋ねると、ニヤリと笑った明彦さんは人差し指をピンと立てて分かりやすく上を示す。

 

「もちろん、最上階だ」

 

 そう言ってさっさと歩き出した明彦さんに付いて行き、エントランスホールを通過しエレベーターに乗り込む。

 エレベーターの中にあった案内板を見る限りでは、六十階から上は桐条財閥の占有フロアになっているようで具体的な構造は分からないのだが、最上階である七十階だけは専用のエレベーターじゃないといけないらしく、一旦六十階まで普通のエレベーターで上がり、そこから専用エレベーターに乗り換えて最上階に向かうことになるらしい。

 

「これ、高所恐怖症の人は登れなさそうですね。なんでエレベーターの壁面がガラス張りで、外が見える構造なんでしょう」

「さてな。高尚な人間の趣味は俺には理解できん」

 

 こういうデザインだと外から狙撃されそう、だとかどの階で降りたのか丸わかりになってしまうな、とか攻撃する時のパターンも、護衛する場合のパターンもシミュレートしてしまうのは、命を懸けて戦う人間のサガという物なのだろう。

 …前世だったらただの中二病だな。

 

 そんな話をしながらエレベーターで昇ること暫し。

 ようやく今日のパーティー会場であるミレニアムビルの最上階に到着したのだが、エレベーターを降りた先のエントランスには人が一人も居らず、パーティー会場だと予想出来る扉の先も、人があまりいないのか話し声も騒めきも全く聞こえない。

 

「明彦さん、ホントに此処なんですか?」

「ああ。目的地はここだ。もっとも、今日のパーティー会場は五階下で、開始時間は十九時からだがな」

「え?」

 

 明彦さんの言葉を理解する前に、背後の物陰から飛び出してきた何かが、俺が反応するよりも早く腕を抱き込むように巻きつく。

 咄嗟にマガツヒを全身に巡らせで肉体強化を行い、鋼鉄製のワイヤーの様な物を強引に引き千切り、封魔管に手を伸ばして悪魔を召喚しようとするが、その前に背後から伸びてきた腕に捕まってしまい、完全に拘束されてしまう。

 

「チェックシックス、であります」

 

 聞き覚えのある声と懐かしい口調に驚いて振り向くと、そこには、どことなく人間離れした雰囲気を感じさせる金髪碧眼の美少女がいた。

 

「アイギス!?」

「蓮様が咄嗟に対応できないようであれば、新作のステルス迷彩、およびスピード強化外骨格の組み合わせの効果は上々のようです」

 

 ただパーティーに出席するだけの腹積もりでここまで来たのに、まさかガチ装備のアイギスに両腕を後ろ手にされて拘束されるとは思ってもみなかった。

 

 ここまでの流れから、どうにも嫌な予感がしてきたので拘束から抜け出そうと躍起になるが、ガッチリと拘束されているせいで、アイギスに怪我をさせないように振りほどくのは不可能のようだ。

 

「よくやった。アイギス」

 

 そんな風に俺達が暴れていると、目の前の扉が開き、一人の女性が部屋から出てくる。

 その女性は日本人にしては珍しい、紅いローズレッドの髪に、ブラウンの瞳。凹凸のハッキリとした抜群のスタイルをした美女だった。

 そして、俺は、彼女の事も良く知っている。

 

「お、お久しぶりです。美鶴さん」

「ああ。久しぶりだな。蓮。実に半年ぶりか?」

 

 こめかみに青筋を浮かばせている様にも見える美鶴さんから視線を逸らすために部屋の中を見ると、その奥にはとても見覚えのある茶髪の美女二人(琴音さんとゆかりさん)と、パッとみでは水色にも見える長髪を三つ編みにした美女(風花さん)が俺に手招きしているのが見える。

 その奥には桐条家のメイドさんに服をとっかえひっかえされながらパーティー用の衣装をコーディネートされている順平さんに真次郎さん、そして既に着せ替え人形状態が終わったのか、タキシード姿で疲れた表情をしながら椅子に座っている乾に、のんびりと欠伸をしているコロマルの姿があった。

 

「パーティーまで時間はある。さあ、話をしようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく。これに懲りたら、シッカリと反省するように」

 

 美鶴さんのその言葉を最後に、女性陣は支度の為に別室に移動していく。

 彼女達が移動したことで、ようやく美鶴さん、ゆかりさん、琴音さん、風花さん、アイギスという美女五人からの説教から解放された俺は、ヘロヘロになりながら部屋に設置されたソファーに座り込む。

 

 どうやらあの場にいた琴音さんの証言とヤタガラスに上げた報告書から、一番最初にメメントスに潜った時の経緯と琴音さんが合流する前の出来事も含めて皆に知られてしまい、迂闊なことをした事、誰にも連絡しなかった事、単身でしんがりをやって死にかけた事、この半年の間まったく連絡をしなかった事も含めて散々説教されてしまった。

 

 男性陣は俺を庇ってくれたのだが、迂闊に俺を擁護するような発言をしてしまったせいで真次郎さん以外はあっさりと言い負かされて物のついでとばかりに説教されてたし、唯一の頼みだった真次郎さんはどちらかと言えば女性陣側だし。散々な目に遭った。

 

 ぐったりしてる俺を心配してくれたのか、近くに寄ってきて心配してくれているコロマルをわしわしと強めに撫でる。

 もう十年以上生きているので、高齢犬に該当するコロマルはシャドウ相手に大立ち回りしていた時ほどの元気はない。確か、もうシャドウや悪魔に関わらずに済むように、桐条家で面倒を見ているんだったか。

 そんな事も思いながらコロマルの毛並みに癒されていると、今度はグロッキー状態から真っ先に復帰した順平さんが一人の女性を連れて近寄ってくる。

 

「よ。久しぶりだな」

「…久しぶり」

 

 そう言いながら俺のもとにやって来たのは、この世界でもペルソナ使いとして覚醒し、タルタロス案件の解決に貢献した『伊織順平』。

 そして、白いパーティードレスを着た元ストレガの『吉野千鳥』。この世界では琴音さんのメンタルケアにより一念発起した順平さんが全力で説得し、悪魔や他のストレガのメンツから守り続けたことでその熱意に絆されて味方に引き入れることが出来ており、ペルソナ能力を引き出す為に施された怪しげな投薬の影響も異界由来の万能薬(エリクサー)とヤタガラス驚異の医療技術で、ほぼ常人と変わらない状態にまで治療出来ている。

 

「お久しぶりです。その後、特に問題はないですか?」

 

 実は、この世界のチドリさんは、本来はただのエネルギーでしかないマガツヒを物質として生成する事が出来る特異体質で、ペルソナ能力に目覚める前は悪魔やダークサマナーに狙われるのが日常茶飯事だったという、世界観が融合したことによる弊害が発生しているのだ。

 そして、ここ半年くらいでまたメシア教とファントムソサエティが復権の為に蠢動し始めていて、それに呼応するように海外のダークサマナーの活動が活発になっているので、彼女の周囲に変化がないか確認しておきたかったのだ。

 

「ヤタガラスが提供してくれた魔除けのお陰で、ここ最近は悪魔は殆ど来てないわ。ダークサマナーの方も順平が何とかしてくれてるし」

 

 そう言って順平さんと腕を組んで幸せそうにするチドリさんを傍らに置いた順平さんが、真剣な表情で口を開く。

 年齢を重ね人生経験を積み、悪辣な悪魔やダークサマナーと戦っていることもあってか、タルタロスを探索していた頃とは比べ物にならないくらいに大人びた雰囲気になっている順平さんを見るたびに、ついつい別人なのではないかと思ってしまう。

 

「お前が強いのは知ってるが、あんまり無茶はするなよ。お前一人に世界を背負わせない為に、俺達がいるんだからな」

「順平さんがまともなこと言ってる。…何か悪い物でも食べましたか?」

「なんだと、こいつぅ!」

 

 俺が冗談交じりにそう言うと、一瞬ポカンとした表情をした順平さんが笑いながらヘッドロックを仕掛けてきたので、俺も冗談めかして笑いながら謝る。

 そして、俺達のそんな姿を見てチドリさんも笑っていると、その後ろから更に二人の人影がやってくる。

 

「折角身嗜みを整えたんだ。あんまり暴れるなよ、伊織」

「お久しぶりです。蓮さん」

 

 そう言って俺に話しかけてきたのは、トレードマークだったニット帽がなくなった代わりにワックスで髪をオールバック風に整えた『荒垣真次郎』と同じく髪型を今風の男性アイドルの様にセットした『天田乾』だった。

 二人ともついさっきまで桐条家のメイドさん達にスタイリングされていたので完全にパーティー用のキッチリした姿になっており、この姿で街を歩けばそれだけで多くの女性の目を引くだろうな、と思ってしまう。

 

「半年ぶりですね」

「そうだな。ったく、お前がいない間、美鶴達を抑えるの大変だったんだぞ」

「ええ、本当に、本っ当に大変でした。蓮さんにはいなかった間の埋め合わせをキッチリとして貰わないと割に合わないです」

 

 冗談めかしてそう言う二人と久しぶりに雑談を交わす。

 普段は新宿に出店した『はがくれ』二号店の店長業をこなしている真次郎さんは、時々シャドウワーカーの協力員として活動している。

 戦闘能力はこのメンバーの中でも屈指ではあるが、ペルソナ能力が不安定なこともあり、基本的にはシャドウが絡まない類の事件を担当して貰っている。まあ、この世界には悪魔がうようよしているので、ペルソナなしでもかなり強い真次郎さんはヤタガラスでも一目置かれている存在だ。

 

「そういえば、乾。()()()は元気か?」

「ええ、お陰様で。この間ヤタガラスの任務をこなすついでに、一緒に温泉旅行に行ってきましたよ」

「ああ。あの箱根での悪魔騒ぎか。地元の異能者が苦戦していたらしいけど」

「異界の中での戦闘だったので、ボクのペルソナ(カーラ・ネミ)を存分に使えましたから問題ありませんでしたよ」

 

 一方の乾の方は来年には月光館学園の高等部に進学するとのことで、中学の生徒会長として、その甘いマスクと人当たりの良さで生徒だけでなく、変人の多い月光館学園の教師陣からも受けがいいらしい。

 そして、()()()ヤタガラスのフロント企業で働いてる事も相まってか、シャドウワーカーの一員としての活動にも積極的に参加している。

 

 乾の母親が生きているのは、殆ど偶然のようなものだ。

 前世の記憶を取り戻した時に異能に目覚めてしまった俺は、その時に既にペルソナ能力にも目覚めていたらしく、影時間の最中でも『象徴化』せずにいたのだ。

 その辺の事情もあって、葛葉での修行を終えて任務をこなすようになった時に、いずれ首を突っ込まざるを得なくなりそうなタルタロスを偵察しに行ったのだが、ちょうど真次郎さんのペルソナが暴走して被害を撒き散らしそうになる寸前の現場に居合わせてしまい、放って置く訳にもいかず当時はまだ目覚めたばかりだった『ブギーマン』で鎮圧して人的被害をゼロに持っていくことに成功したのだ。

 

 乾の母親のように、この世界がペルソナ世界ではなく色々なアトラス作品が混ざっているのが原因なのか、本来は亡くなる筈だった人の助けがギリギリで間に合ったり、逆に異能絡みで苦労する人間がいたりもする。

 良いか悪いかは別として、助けられそうな時は全力で助ければいいだけだ。

 そんなことを思いながらみんなと雑談していると、チドリさん以外の女性陣がパーティーの支度の為に移動していった部屋の扉が開く。

 

「おお。馬子にも衣裳ってやつか?」

「…みんな、キレイ」

「へぇ」

「わあ。皆さん、綺麗ですね」

 

 開かれた扉から入ってきたのは、色とりどりの個性のあるパーティードレスを身に纏った女性陣だった。

 

 全体的に淡いピンク色で統一されながらも、紅いワンポイントのバラのアクセサリーが印象的なゆかりさん。

 露出が少なく、エバーグリーンのドレスと白のストールで清楚な雰囲気が出ている風花さん。

 初めて会った時に着ていた水色のワンピースに雰囲気が似ているドレスを着たアイギス。

 肩と背中が大胆に露出していて、その抜群のスタイルを惜しげもなく主張したデザインの紅いドレスの美鶴さん。

 そして、普段の活発な印象とは真逆の大人びた印象の黒一色で統一された肩の出たドレスを着た琴音さん。

 

「みんなよく似合ってます。本当に綺麗です」

 

 正直な感想を述べると、それを聞いた女性陣の中でも特に嬉しそうな顔をしたゆかりさんが、いたずらっ気のある表情をしながら近づいてくる。

 

「どうよ。見蕩れちゃった?」

 

 今やドラマに映画にと色んな所で引っ張りだこな、新進気鋭の演技派女優としても活動している『岳羽ゆかり』。

 女優として活躍しているからか、自分の魅せ方が半年前よりもずっと上手くなっていて、色気と美しさが増して魅力的になったゆかりさんに対してアレコレ言葉を飾り立てるスキルはないので、率直な感想を伝えるべきだな。

 

「ええ。正直にいうと見惚れてました。凄く綺麗です」

「そ、そう。なら、よかった」

 

 率直な感想に弱いのか、滅多に見せないゆかりさんの照れた表情を堪能していると、今度は風花さんとアイギスが近寄ってくる。

 

「この日の為に色々と頑張ってたものね。ゆかりちゃん」

「毎朝のロードワークに食事制限。女優業の合間にメイクの修行。美に妥協しないゆかりさんの本気を感じたであります」

 

 大学からそのまま大学院に進学する予定で、日頃は機械工学の勉強をしつつ、ヤタガラスで悪魔を可視化するデバイスの開発にも携わっている『山岸風花』。

 その優し気な雰囲気と人当たりの良さから、ヤタガラスの中で密かにファンクラブが結成されているとか、いないとか。

 自分から目立ちたがるタイプではないものの、十二分に整った容姿と落ち着いた雰囲気があり、半年前まではよくやっていた風花さん主催のお茶会は俺の中では屈指の癒しの時間だった。

 

 そして『アイギス』はというと、この世界にはシャドウ以外の敵対存在がいることもあってか、明彦さんと一緒に世界中の悪魔討伐任務に従事しており、時々帰国してはこうして俺達や姉であるラビリスと会ったりしている。

 そんなアイギスだが、発現しているペルソナが影響しているのか、俺と一緒にギリシャで悪魔退治をしていたときにアテナを名乗る神に取引を持ち掛けられたり、アフロディーテからガラテア(彫刻から人間になった存在)の様に、人になるつもりはないかと持ちかけられたりと、何かとギリシャ系の神に縁があるのがここ最近の心配事か。

 

「風花さんもよく似合ってますよ。アイギスは……なんだか動き辛そうだな?」

「ありがとう。ようやく蓮君も戻って来てくれたことだし、またお茶会を再開させてもいいかもね」

「はい。私としてはこういう物よりも普段の動きやすい姿の方が良いのですが」

 

 嬉しそうにはにかむ風花さんとは対照的に、服装に利便性と機動性を求めるアイギスをなだめていると、普段は一つに纏めている緩くウェーブした長い茶髪を下ろし、いつもとは真逆の大人びた雰囲気の琴音さんと、彼女とは逆に真紅の髪を後頭部で一纏めにしたせいで、背中と肩が露出していて、白い肌が眩しい美鶴さんが近づいてくる。

 

 琴音さんは世界を股に掛けるペルソナ使いとして活動していて、ここ最近は確かハワイあたりでダークサマナーの拠点を、薙刀を振り回しながら粉砕したそうだが、この大人びた雰囲気からは想像もつかないな。

 

 そして美鶴さんは、桐条の次期当主としてヤタガラス傘下の実行部隊、『シャドウワーカー』を創設し、家の研究部門をヤタガラスと合併したり、この世界では生存している現当主の『桐条武治』さんと共に財閥の力とペルソナやシャドウの研究の両面で著しく貢献しており、ヤタガラスの新たな屋台骨になり始めている。

 

「サプライズは驚いてくれた?」

「心臓が飛び出るかと思いましたよ」

 

 恐らくだが、さっきのアイギスによる奇襲は、悪戯好きな琴音さんが仕掛人なのだろう。

 メメントスで早めに美鶴さん達に連絡をするといっていたのに、双葉の件に掛かりきりになってしまっていた俺を強引にでも彼女達と話をさせるためにやったのだろうが、相変わらず無茶する人だ。

 

 だけど、そのおかげで今日顔を合わせた時は何処かギクシャクした雰囲気があったが、アイギスの奇襲とその後の説教で良くも悪くもそう言う感じがなくなったのは間違いない。

 

「そう言わないでやってくれ。この件は私も一枚噛んでいるしな」

 

 抜群のスタイルを惜しげもなく晒した美鶴さんの姿に、視線が色んな所を行ったり来たりしてしまう。

 赤の他人からのハニートラップは鼻で笑ってスルー出来るのだが、どうにもよく知った仲の人のそういう姿には気恥ずかしさが先立ってしまう。

 

「ふふ。なんだ、この格好が気になるのか? 心配するな。会場では上着を羽織るさ」

 

 そう言って美鶴さんと琴音さんが俺の隣に座ると、他のメンバーも各々椅子やソファーに座る。

 パーティーまではまだ時間があるようだし、これは完全に色々と聞かれるパターンだな。

 

「さあ、この半年間何があったか聞かせてくれ」

 

 美鶴さんのその言葉を皮切りに、話しても問題ない範囲で、ヤタガラスの任務でメシア教の教会の査察をしていたこと、色々あって喫茶店で寝泊まりしていること、しゃべる猫や覚醒した俺自身のペルソナの話、そしてメメントスの話をする。

 

 勿論、この手の裏側の話題だけでなく、ルブランでのバイトの話だったり、他のメンバーがこの半年間何をしていたのかということを話しているうちに、互いの微妙な距離感もキレイさっぱり消え、以前のような関係性に戻れただろう。

 

 そして、楽しい時間は過ぎるのも早いもので、運ばれてきた茶菓子や紅茶を飲みながらの会話はパーティーの時間が迫ってきたことでお開きとなる。

 

 俺以外のメンバーは既に正装に着替えているので問題ないが、俺はまだ私服のままなので、ヤタガラスの備品から借りてきた服に着替えようとすると、ついさっきまで給仕をしてくれていた美鶴さんと同い年のお傍御用、つまり専属のメイドであり、P4U2やペルソナ3のドラマCDとかにも登場している、『斉川菊乃』さんが何人ものメイドさんを引き連れてくる。

 

「お嬢様の良人(りょうじん)になりうる方を財閥のお歴々に宣伝する良い機会だという当主様のご意向もあります。桐条の名に懸けて、会場に半端な姿で送り出したりは致しません」

 

 そう言って群がってくる菊乃さん達から逃れようと助けを求めるが、男性陣は誰一人として目を合わせてくれないし、女性陣も助けてくれる気配はない。

 声を上げることも出来ないまま、俺はパーティー開始の時間までメイドさん達の着せ替え人形になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノロノロと階段を上って、最上階にある重たい鉄の扉を開くと、ヘリポートが備え付けられた屋上の冷たい夜風が非常階段に吹き込み、火照った身体を冷ましてくれる。

 桐条家のメイドさんの手によってタキシードに着替えさせられた俺は、当初の予定通りにパーティーに出席したのだが、何故か俺が葛葉ライドウであることがバレていたせいで、想定していたよりも大勢の人間の相手をする羽目になってしまい、目立たず高級料理をたらふく食べるという目標は達成できなかった。

 

 みんながそれとなく傍にいてくれたお陰で、露骨な見合い話とか縁談の話とかはされなかったが、それでも色んな人間から獲物をみるようなギラついた視線を浴びまくったせいで妙に気疲れしてしまい、こうして一人でミレニアムビルの屋上に出てきて休憩する事にしたのだ。

 

「今日は満月か」

 

 ついさっきまで厚い雲が空に掛かって雪が降っていたはずなのだが、都合のいいことに俺が外に出ると同時に雲が晴れ、堕ちてきそうな程に大きな満月が視界に映りこむ。

 吸い込まれそうなほどに綺麗な満月を眺めていると、背後から声が掛けられる。

 

「やあ。良い夜だね」

 

 何年経とうと忘れる筈もない。

 夜の闇の様に優しく、毒の様に甘い声を聴いた瞬間、勢いよく振り向く。

 そして、振り向いた先には、時には仲間として、時には敵として、そして最後は、ユニバースに至った琴音さんの心の宇宙に還り、ペルソナになった筈の存在がそこに立っていた。

 

「望月、トキメ」

 

 俺の目の前にいたのは、銀色の長い髪に青い瞳、琴音さんそっくりの顔立ちと泣きボクロが印象的な女性だった。

 どうにも成長した琴音さんの姿を反映しているのか、嘗て交流があった時以上の魔性の魅力に溢れた姿を見た俺の頬が引き攣る。

 並みの人間ならその姿を見ただけで魅了状態になりかねない。

 

「まるで幽霊でも見たかのような反応だね、蓮。君も知っているだろう? 僕は人間が存在する限り『不滅の存在』だって」

 

 そう言って楽し気に笑う女を見つつ、このタイミングで現れた彼女に思考を巡らせる。

 

 この世界に『望月綾時』は存在しない。

 望月綾時という存在は、ニュクスの到来を告げる終末のラッパを吹く為の存在である、『デス』のもう一つの姿でしかない。

 そんな人間ではない存在がペルソナ3の主人公である少年と酷似した姿をしていたのは、彼の中に封印され十年間も彼と共にあったことで人間に、いや、ペルソナ3の主人公の様になりたいと考えたが故に、あの姿だというのが前世での通説だった。

 

 移植版のP3Pで女性主人公を選んでもその姿が変わらなかったのは、単純にゲーム的な制約や予算の問題、そしてファン向けのサービスだったのだろう。

 だが、そういった要素が存在しない、現実であるこの世界では、『デス』つまりファルロスであり、いずれ望月綾時になる筈だった存在は、望月綾時と同じ様に自分を宿した人間である汐見琴音の様になりたいと考え、この世界に彼女を模した女性として顕現したのだ。

 

「あなたの本体(デス)は融合したニュクスと共に()()()()()()()()()()()()()形と実体を捨てて、琴音さんの心に還ったはずだ。なぜ、実体を持って此処にいる」

 

 俺のその言葉にクスリと笑ったトキメが、ゆっくりと近づいてきて手を伸ばし、その白魚の様な細い指で俺の頬をなぞる。

 

「光が強くなれば、闇もまた濃くなるってことさ。というか、そんなに警戒しないで欲しいな。今回はただ単に君の事を想って警告をしに来ただけなんだから」

 

 そんな事を言いながら正面から抱き付いてきたトキメを抵抗することなく受け入れる。昔の『デス』だった頃の彼女が相手だったら問答無用で仲魔たちが引き離そうとしていただろうが、封魔管から出てくる様子すらないところを見ると、どうやら今回は本当に俺を害する気はないらしい。

 

 なんだかんだと、五年前はここまで近くに彼女を近づけたことが無かったので妙に意識してしまう。

 服越しに感じる柔らかい感触と、琴音さんとは異なる何処となく夜を連想させる甘い香り。そして、深い海の様な、もしくは青い宇宙のような彼女の瞳に釘付けになってしまい、視線が捉えられて離せなくなる。

 

「気を付けて。大いなる光がやってくる。大いなる闇である(ニュクス)よりも強大で恐ろしい存在が」

 

 お互いの頬がくっつくほどの距離で囁かれたその言葉に、驚いて目を見張ると、確かに感じていたトキメの体温と感触が急に消える。

 

「何をやっとりますか!?」

 

 いつの間にか屋上に来ていた琴音さんが顔を真っ赤にしながらトキメに怒鳴っている。どうやら琴音さんがトキメを引き離してくれたらしい。

 基本的に今のトキメは、琴音さんのペルソナ、もしくはシャドウといった状態の筈だ。だから、自分の心の宇宙にトキメがいないことを察知してここまでやって来たのだろう。

 そんなことを考えていると、髪や瞳の色は正反対だが、双子の様にそっくりな二人がやいのやいのと言い争い始める。

 

「今や僕はもう一人の君のようなものなんだし、(ニュクス)の男の趣味が君そっくりになるのも仕方ないことだと思うのだけれど」

「それはそれ、これはこれ! もう一人の自分に恋愛でリードを取られるとか意味が分からないんですが!?」

「恋のダービーはハリケーンってやつだね」

「絶対違う! というか、そんなの何処で覚えてくるの?」

 

 仲のいい姉妹の様に二人が言い争っていたせいか、屋上に次々と特別課外活動部のメンバーが集まって来てしまい、いなくなった筈のトキメとの予期せぬ再会に驚き、喜んでいるメンバーを見つつも、どうにも俺は嫌な予感が拭えずにいる。

 

 トキメが実体化出来るようになったのは、彼女の力が大きく増したからだと彼女自身が言っていた。

 当然の事だが、琴音さんの心の宇宙に居るはずの彼女が何の前触れもなくそんな力を付ける筈もない。万が一彼女が毎日コツコツと何らかの手段で力を付けていたのだとしても、必ず琴音さんが気付く筈だが、今日のこの日までそんな話を琴音さんはしていなかった。

 

 だとすれば本当に今この瞬間に、実体を得る程にトキメの力が増したと考えるべきだ。

 まるで、一方に傾いた天秤を元に戻す為に、もう片方に重りを乗せるように。光と闇のバランスを崩さない為に。

 

(『大いなる光』ねぇ)

 

 メメントスに巣食う偽イゴールは天使側、つまり光の存在だった。決めつけるのは性急に過ぎるが、心のどこかでそうなんじゃないかという考えが拭い切れずにいる。

 

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 ヤタガラスに毎日のように上げられているメメントス関連の報告書には大体目を通しているが、その中でも特に多い報告が、メメントス自体はおどろおどろしい場所なのに、何処か光の気配を感じるというのと、たったの数階層しかない異界なのに、異常に天使の類が出現するという報告だ。

 

 ただの状況証拠でしかないが、今回の事件にはメシア教、もしくは奴らを傀儡にしている大天使、または、ニュクスよりも強大な光として候補になりうる『唯一神そのもの』が背後にいるのかもしれない。

 

 脳裏を過ぎった最悪の予想に溜息がでるが、ここで慌てた所でどうしようもない。

 今後は最優先でメメントスの下層に降りる方法を探すことにして、今はこの日常の光景を噛み締めるとしよう。




ペルソナ4の時には東京受胎モドキが発生。
幕間の物語の最後に出てきた精鋭部隊サマナー達の尽力で儀式完遂の前に「氷川」と「高尾祐子」を確保できたのでモドキ程度で済んだ状態です。
東京は死なずに、『彼』も産まれませんでしたが、儀式が中途半端に進行したせいでアマラ経絡と不完全な形で繋がってしまい、そこから別世界の人修羅と魔人と悪魔が東京でドッタン★バッタン★大戦争。

ミニ真・女神転生Ⅲが勃発。

東京受胎によって人間がほぼ死滅することはありませんでしたが、民間人にもそこそこ犠牲が出ており、いろんなカバーストーリーが駆使されて当時の国のトップや政財界の重鎮以外には隠蔽されてます。
まあ、被害が被害なので国が大事件を隠蔽しているという陰謀論は滅茶苦茶出回っていて、政府や警察とかへの不信に繋がってます。

インタルードそろそろ終わるので他のキャラクターが主人公にどうゆう感情を向けてるか一覧欲しいですか?

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