ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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1999  0歳 主人公誕生&ペルソナ2罰発生
2000  1歳 ムーンライトブリッジ爆破
2006  7歳 前世の記憶を思い出す
2011 12歳 ペルソナ3
2013 14歳 ペルソナ4
2016 17歳 ペルソナ5

年表はだいたい上の通り、主人公が秀尽学園に編入する時はハム子は満22歳で主人公と5歳差、番長は満20歳で3歳差ってことになります。
それに伴って前回の登場人物の年齢設定にガバが判明したので前話少し修正しました。

ペルソナ2・罰のあれこれは達也が死ぬ気で頑張って何とかしました。
主人公が居る世界にニャルとその化身は存在しません。


インタールード④

 中世の王城を連想させる灰色の石畳の廊下に敷き詰められた、高級感のあるレッドカーペットを土足で踏み付けながら、俺に向かって飛び掛かってきた全身鎧姿のシャドウを刀で斬り捨てる。

 大正ロマン風な学生服(ライドウ装備)に返り血のように飛び散ったマガツヒが塵になって消えるのを見届けつつ、戦場になっている廊下の両端から無双ゲーの雑魚敵のように押し寄せてくる全く同じ見た目の鎧型のシャドウの姿にため息をつく。

 

 この異界に初めて突入した時からそうなのだが、何故か異界に入ると同時に敵に感知されてしまい、毎度のようにこのような大規模戦闘に発展してしまうのだ。

 今回はパーティーメンバーを減らして俺とモルガナチームと単独のメンバーに分かれて潜入しているのだが、初めて探索した時から変わらずに今日も今日とてシャドウに取り囲まれながらの()()()探索となってしまっている。

 

「『金剛発破』」

「『マハガル』!!」

 

 俺のペルソナがアルセーヌになったことで、特大ダメージを与える魔法やスキルがほとんど使えなくなってしまった今、あれから地道に経験を積むことでようやく再取得出来た物理の範囲攻撃とモルガナが放った範囲風魔法によって、襲い掛かって来ていたシャドウ達が塵となって消え、シャドウの悲鳴と魔法による爆発音で騒がしかった廊下が静かになる。

 

『クリティカルヒット! そいつらで最後だよ。お疲れ様』

 

 耳元から聞こえてくる戦闘終了の合図を聞きながら刀を腰の鞘に納め、肩で息をしているモルガナに声を掛ける。

 遭遇するシャドウは能力的には弱い部類なのだが、何度全滅させてもどこからともなく湧いて出てくるので、疲労と消耗が激しいのだ。

 

「大丈夫か、モルガナ」

「ぜ、ぜっぜん、へいき、だぜぇ」

 

 この一ヶ月間、メメントスやこのパレスで戦闘経験を積んで見違えるほど強くなったモルガナだが、連戦に次ぐ連戦となると流石にガス欠気味なようで、今日の探索を始めてから一時間も経っていないのに息も絶え絶えな状態になってしまっている。

 

「今回もまともな探索にはならなさそうだな」

 

 このパレスに侵入して行動を起こそうとする前に毎回発見されてしまっているのを考えると、どうにもパレス内では敵側に俺たちの居場所がバレているとみて間違いないようだ。

 

『うそ、もう集まってきた!』

 

 耳元から聞こえてきた声に反応して周囲を見渡すと、廊下の両側から無数のシャドウが大挙して押し寄せてきているのが見える。

 どうやら今度はさっきの雑魚とは違って、それなりに力のありそうなシャドウと悪魔の混成部隊が派遣されてきたらしい。

 

『そいつらだけじゃない。その奥からも相当な数が押し寄せてきてるよ!』

 

 広範囲魔法を連発し続けたことでマガツヒを急速に消費してしまって、息も絶え絶えな状態のモルガナを抱えたままではあの数の対処は難しいだろう。

 

(となれば、ここは一旦撤退だな)

 

 ゲームだったら帰還用の魔法やアイテムがあったりするのだが、この世界ではそれらのアイテムは効力を発揮しないので、異界から帰還する時は徒歩か、ペルソナに運ばせるか、悪魔の背に乗るかの三択しかない。

 今回は探索に来た時からあまり移動できていないので徒歩で帰るとしよう。

 

「置き土産だ。楽しんでくれ」

 

 押し寄せてくるシャドウを警戒しつつ、ぐったりしているモルガナを小脇に抱えて全力で飛び上がって城の窓ガラスを破って外に飛び出す。

 俺とモルガナの体が完全に外に出たタイミングを見計らって、蠱毒と呪詛を練り込んだ手榴弾のピンを抜いて今しがた飛び出してきた窓に投げ込む。

 

 事前に設定した通り、キッカリ三秒後に起爆した全体攻撃版のノロイボム(敵全体に呪怨属性でダメージ)が増援のシャドウ達に大ダメージを与えて足止めしているのを確認してから出口を目指す。

 異界の出口までの一本道を抜けて城壁を超えると、一瞬だけ視界が歪み、それが元に戻った時には既に見慣れた薄暗い路地裏に景色が切り替わっていた。

 

 小脇に抱えていたモルガナが黒猫の姿に戻っているので、パレスを抜けるのには成功したらしい。

 シャドウは認知異界内にしか出てこないというのは分かっているが、悪魔共の性質的に一度敵対した場合は、相手が死ぬまで追いかけ回すはずなのだが、どうにもこのパレスにいる悪魔はパレスから出てくる様子はない。

 

 やはり普通の異界とは違いがあるのか、それとも奴らがこのパレスの中で何か企んでいるのか。

 どちらにせよ厄介事の臭いしかしないな。

 

「お疲れ様。レン」

 

 そんなことを思いながらダウンしてるモルガナを介抱していると後ろから声がかけられる。

 振り返った先に居たのは、トレードマークだったツインテールを変装の為に長い亜麻色の髪に緩くウェーブを掛けた(P4G・夏休み私服の)髪型にした女性だった。

 

「モルガナ、ダウンしてるの?」

「そんな事ないぜ『りせ』殿! ワガハイ、まだまだ元気、いっぱいぃぃ」

 

 俺たちに話しかけてきた女性、今や日本一有名なアイドルと言っても過言ではないくらいの知名度と人気を誇る『久慈川りせ』の言葉に反応して、最後の気力を振り絞って立ち上がったモルガナだったが、最後までセリフを言う事なく地べたにペシャリと倒れてしまう。

 

 りせさんがナビ役を務めてくれると知って今日は異様に気合が入ってたからな。

 良いところを見せたかったんだろうが、一時間ぶっ続けで戦闘しながら何回も魔法を放てばへばるのは当然と言えば当然だ。

 

「あまり無理はしないで下さいねモルガナ」

 

 そう言って俺達と同じようにパレスから出て来たのは、動きやすそうな私服姿のりせさんとは違い、ヤタガラスの戦闘服に身を包み、腰に届くまでの青みがかったストレートの長髪と氷を連想させるような怜悧な美貌が印象的な女性だった。

 そしてその女性の左手には穢れ一つない純白の羽、右手にはレイピアが握られ、抜き身の刀身からは黒色とも赤色とも言えない汚濁の様な液体が滴っていた。

 

「直斗さん、それ」

「ええ。君の予想通りでしたよ。蓮」

 

 刀身に付着した禍々しい色合いの液体と真っ白な羽が形を保てなくなり、空気に溶けるようにして痕跡一つ残さずに消えていく。

 汚れ一つなくなった綺麗なレイピアを無言で鞘に収めた『白鐘直斗』はハッキリと言い放つ。

 

「ようやく尻尾を掴みました。この『パレス』という認知異界、天使(悪魔)が関わっています」

 

 直斗さんのその言葉に、俺とりせさんが、同時に長いため息を吐く。俺とりせさん、そして直斗さんの気持ちは一つ。『また、あいつらか』だ。

 

「やっぱりか」

 

 メメントスやパレスで戦っていた時も感じていたが、どうにも今回の認知異界に出現する悪魔には天使の類が多いのだ。

 異界が発生した時に備え持つ属性によって、その異界で出現する悪魔の種族は偏るものだが、善と悪、秩序と混沌が均等に混ざり合って目に見える程の属性の偏りが存在しないメメントスやパレスにおいて、天使が大量に出現していたのは、今回の事件の裏側に奴らが関わっているから、と考えるのが妥当だろう。

 

「天使にいい思い出ないんだけど、またあいつら?」

()()()()()()()()()()()()()()、彼らはこの異界発生の原因ではないようです。ですが、何らかの目的を持ってこのパレスに居座っているのは間違いないでしょう」

 

 目的については、口を割りませんでしたが。と言う直斗さんと、天使が関与していることを知ったことで嫌そうな表情をするりせさんに声を掛ける。

 

「潜入が失敗した以上、今日はもうここに居てもしょうがないですし、みんなのところに戻りましょう」

 

 そうして薄暗い裏路地から出てタクシーに乗って蒼山一丁目のとある居酒屋に向かう。

 これから向かう店は昼は食事処、夜は居酒屋としてヤタガラス所属の人間が経営している店の一つで、悪魔絡みの話をするのにもってこいなのだ。

 

 タクシーに揺られながら今回の天使への尋問によって得られた情報を簡潔に分かりやすく伝えてくれる直斗さんの言葉を自分なりに嚙み砕いて記憶しつつ、頭の中の情報と照らし合わせる。

 天使が自前の異界を作るのはいつものことだが、今回は認知異界という奴らにとってもイレギュラーに値する異界に居を構えて何らかの活動をしているというのが気になるな。

 どうせ碌でもない事を企んでいるのだろうが、認知異界を使う理由はなんだ?

 

 そんなことを思いながら到着した居酒屋に入って顔馴染みの店員に案内されて店の中でも一番奥にある個室に移動すると、そこには既に見慣れたメンツが揃っていた。

 

「おー。蓮くん。おつかれー」

「あ、みんな、お疲れ様」

 

 事前に戻るという連絡を入れていたので既にこの店に集まっていた『天城雪子』と『里中千枝』がやってきた俺たちに向かって手を振る。

 パレスから帰還して連絡した時に先に始めてていいといったのだが、テーブルの上に料理が何もないことから、俺達を待っていてくれたらしい。

 

「お早い到着だな」

「そうっすね。もうちょいかかるかと思ってたっすけど」

「シショー達、来たクマー」

 

 そう言いながら俺たちに声を掛けてきたのは『花村陽介』『巽完二』『クマ』の三人だ。

 クマと完二さん以外の年上勢はそれぞれ自分の目標の為に東京の大学に通っており、今日は異界探索の際に何かあった場合に救助や援護をしてもらうために近場に待機してもらっていたのだ。

 基本的に東京に居ないメンバーのクマはジュネスでバイトしていた所を捕獲し、完二さんは来年には実家の染物屋を継ぐ為にヤタガラスの伝手で紹介した東京友禅で有名な染物屋で修行することになっているので住居の下見として来ていた所を捕まえたのだ。

 まあ、この一週間のパレス探索では敵に発見されるのがあまりにも早すぎたせいでまともな探索が出来ず、戦闘に次ぐ戦闘に加えてメメントスの探索まで付き合わせてしまったのだが。

 

「やはり、今回もダメだったか」

 

 そして最後の一人。我らが自称特別捜査隊のリーダーにして伊邪那岐大神(国生みの大神)をその身に宿す男、『鳴上悠』。

 特徴的なグレーの髪と瞳。もうすぐ二十歳を迎えるとはいえ、まだまだ若造と言ってもいい年齢にもかかわらず強烈な光を連想させる圧倒的な存在感は、魔性のオーラを放っている琴音さんとはまた別種のカリスマ性を持っている証拠だろう。

 

「ええ。やっぱり何らかの対策が必要ですね」

「そうか。じゃあ、とりあえず食事でもしながら話し合うとしよう」

 

 パレスが発見されたのは完全に偶然だ。

 発端は四月から俺が編入する予定になっている秀尽学園の下見をモルガナと一緒にしたことだ。

 下見で学園付近に近づいたときにモルガナが騒ぎ始め、騒ぐモルガナに言われるがままに移動すると、そこには巨大な西洋風の城になった学園が存在したのだ。

 

 モルガナが発見し、パレスと呼んだ認知異界の調査は急ピッチで進められた。

 理由としてはメメントスと何らかの関わりがあることが想定されたのと、人間が多く集う学園という場所が異界として成立しているので、認知異界に学生や教師が取り込まれて大規模な被害が出る可能性をヤタガラスの上層部が重く見たからだ。

 

 そしてパレスが発見された当初は万全を期してヤタガラスの人員と認知異界に詳しいSEESと特捜隊という大所帯で探索していたのだが、異界に入った瞬間に無数のシャドウに取り囲まれて連戦に次ぐ連戦になってしまい、探索がまるで出来なかったのだ。

 

 それからというもの、手を変え品を変え人を変え、様々なアプローチでパレスの探索に臨んでいるのだが、どうやっても今日のようにあっさりとシャドウに見つかって延々と戦闘をする羽目になってしまうのだ。

 

「やっぱり、影時間への適性や、マヨナカテレビ内での『メガネ』のように、何かしらの対抗手段がないとどうにもならなさそうですね」

「対抗手段、か」

 

 今日の調査内容を報告していた時に運ばれてきたかつ丼定食を食べながらそう言った俺の言葉に悠さんが反応して何かを考えこむような仕草をする。

 

「マヨナカテレビの時みたいな便利アイテム(メガネ)は作れないのか、クマ?」

「むむ、無理クマ。メガネを作れたのはクマがあの世界で発生したシャドウだからできたことで、パレスは別の力で動いてるみたいだからどーにもならないのよ」

「まあ、そうだろうな。もしもそれが出来てたら、いの一番にドヤ顔で自慢するもんな、お前」

 

 陽介さんとクマのやり取りを聞いていた他のメンバーももしかしたらの可能性が潰えたことで溜め息をつく。

 ヤタガラスの方でもパレスでシャドウに見つからずに活動できるように、装備や魔法に使い捨てのアイテムやらと日夜開発に励んでくれてはいるが、そういうものが一朝一夕では仕上がるはずもなく、僅かな手掛かりでも掴むことが出来れば、とこうして定期的にパレスに侵入しているのだ。

 

「でも急いで調査しないと。私のコウゼオンでスキャンしてみた感じだと日に日にあのパレスの力が増していってるから、早めに手を打たないともっと強力なパレスに成長しそう」

「そうですね。今日の単独戦闘でも感じましたが、発見当初に比べて出現するシャドウや悪魔の力が明らかに増しています。このまま放置していては必ず良くないことが起きます」

 

 りせさんや直斗さんの言う通り、当初はゲームでのレベル換算でLv.5程度のシャドウばっかりだったのだが、今日の探索ではLv.10に相当する力を持ったシャドウがちらほらと存在していたのだ。

 あのパレスがいつ頃発生したのかは分からないが、今の成長速度で成長が続くとすれば面倒事になるのは確実だ。

 

 実は、城の外郭から高威力の魔法をブッパしてパレスを消滅させるという手も考えたのだが、モルガナが言うにはパレスは強く歪んだ心を持つ者の歪んだ認知が具現化した異界であり、その中にはパレスの主のシャドウが居るのだが、個人のシャドウを殺すと最悪の場合は廃人化して生きる気力を失って自殺する恐れがあるので、おすすめ出来ない、と言われてしまったのだ。

 

 現状は未だ現実世界への悪影響や人的被害が出ていないのでヤタガラスからは見逃されているが、もしもあのパレスが人的被害を出すようになったら、ヤマトあたりは問答無用でパレスをメギドラオンで消し去るだろう。

 

 勿論、そうならないように色々調査して解決出来るように努力はするが、最終手段としては『アリ』な手ではあるのだ。

 

「パレスの主が誰なのか、ってのが分かってないつーのが結構キツイっすね。持ち主が誰かわかればそいつをふん縛っちまえば粗方解決するんでしょう?」

「どーだろ。モルガナの情報だと、パレスの持ち主は自分のパレスの存在を認識出来てないのに、パレスを作っちゃってるんでしょ?」

「そうね。持ち主を捕まえて隔離してもパレスは残ったままってことになる可能性の方が高いかも」

 

 完二さんのいうことも尤もだが、千枝さんと雪子さんの意見も正しい。

 自身が理解した上でパレスを作っているというなら、持ち主を捕まえて持ち主自身にパレスを崩壊させればいいのだが、本人が認識出来ていないものを破壊させるというのは実質的に不可能だろう。

 

「だから、『オタカラ』なのさ」

 

 テーブルの上で丁寧に焼かれたホッケを貪っていたモルガナがそう口にする。

 以前の話し合いでモルガナが出してくれた情報によると、パレスの存在を保っている核である『オタカラ』を奪い取ればパレスは崩壊するのだという。

 その方法でも、歪んでいるとはいえ欲望の核を奪い取ってしまうのでパレスの持ち主が廃人化する可能性はゼロではないが、パレスを魔法で吹き飛ばすよりもずっと廃人化のリスクを低減して穏便に事態を解決することが出来る手段だと言うのだ。

 

「確かに、何か大きな力の塊が存在してるのは分かるんだけどね。もっとしっかり探索してパレスの構造を把握できればいいんだけど」

「『オタカラ』が何処にあるかはパレス内を探索する必要がある。だが、あの包囲網の中でそれをするのは至難の業だな」

「結局、パレスの中で見つからずに探索する手段が必要ってことっすね」

 

 こうして振り出しに戻ってしまったパレスへの対策方法を考えるため、夜の営業が始まるまで居酒屋に居座って話し合ったり、各々の大学生活についての愚痴をはいたり、りせさんが芸能界の闇を愚痴ったり、直斗さんから若葉さんの捜索状況の報告を聞いたりした後、日も暮れていい時間になったので特捜隊が解散して各々帰っていくのを見送った後、俺もルブランへの帰路に就く。

 

 今日集まった面々を見て思ったが、やはり特捜隊のメンバーは認知異界をどうにかするということに対してのモチベーションは相当高いようだ。

 

 それもそうだろう。認知異界、そして悪魔の存在が人間の生活をどれだけ脅かしかねないかを彼らは身をもって知っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界でのマヨナカテレビ事件(ペルソナ4)はゲーム通りの顛末になってはいない。

 

 ゲームではマヨナカテレビという異界の直接的な犠牲者は、山野真由美、小西早紀の二人のみだ。

 諸岡金四郎、『モロキン』と呼ばれていた八十稲羽高校の教師も犠牲者の一人ではあるが、彼の死自体には異界や異能は関与していない。

 そして、その後はテレビ(異界)に入れられる人間はいても取り返しのつかない事態になる事は基本的になかった。

 

 

 

 だが、この世界ではそうはならなかった。

 

 

 

 原因はいくつかある。

 一つ目に、元々悪魔が存在していたこの世界では、事件の黒幕であるイザナミが外部からの干渉を嫌って八十稲羽とその周辺を異界で囲い込んでしまい、外側からの干渉を完全に遮断してしまったこと。

 二つ目に、全く同じ時期に東京受胎もどきが発生し、強力な悪魔に魔人、そして人修羅がこの世界にやってきてしまったこと。

 三つ目に、俺を含めたヤタガラスの人員のほぼ全員が東京受胎もどきの問題に対応していたため、八十稲羽の状況を把握するのが遅れてしまったこと。

 四つ目に、社会からの抑圧と自意識の乖離によってペルソナ使いとしての力を発現しかけていた久慈川りせと白鐘直斗が悪魔に狙われてしまい、八十稲羽に行く前にペルソナに覚醒して裏の世界を知ってしまったこと。

 

 そして致命的な五つ目。

 東京での人間、悪魔、人修羅が入り混じった最終決戦の時に、天使が横槍を入れてきたせいで仕留めそこなった魔人、『トランぺッター』と『黙示録の四騎士』が強大な異界が展開されていた八十稲羽を襲撃し、久保美津雄と生田目議員を含めた霊的素養の高い複数人の民間人をマガツヒ回収の為に殺害してしまったことだ。

 

 これらのゲームとの違いと、この世界では八十稲羽土着の霊能一族だった『堂島家』の女性当主(堂島千里)その娘(堂島菜々子)がマヨナカテレビ事件と魔人案件に巻き込まれ、それに付随して『鳴上悠』『花村陽介』『里中千枝』『天城雪子』『巽完二』『クマ』の計六人で構成されていた『自称捜査隊』のメンバーが事件に首を突っ込んできたことで、原作の流れというのは完全に崩壊してしまったのだ。

 

 そして案の定だが魔人の襲来に引っ張られるように八十稲羽に無数の悪魔が現れ、それに対抗するようにイザナミやアメノサギリが自分の計画が成される前に人間に死なれては困るので、()()()()()()()()()()にテレビの中にシャドウに襲われない異界を作って引きずり込むようになる。

 

 多発する失踪事件、道路や建物に残る謎の破壊跡、原因不明の不審死の件数が目に見えて増加し、見知らぬ人間(ヤタガラスの異能者)が八十稲羽に大勢やってきて活動していたりと、あの時期の八十稲羽は変化の少ない片田舎とは思えないほどの激動の一年だった。

 そういった負の連鎖が積み重なったことで、結果的に原作よりも多くの人間が犠牲になってしまい、最終的な死者数はゲームだった頃とは比べ物にならない人数になってしまった。

 

 魔人の襲来という世界崩壊の危機が起きてその程度で済んで良かったと考えるのか、それとももっと被害を抑えられたはずと考えるのかは、人によるだろう。

 

 そうして色んな人間の心に大なり小なり傷を残すことになったマヨナカテレビ事件だが、特捜隊、ヤタガラス、SEESのフルメンバーを動員してこの世界に居座ろうとした魔人や悪魔を殲滅して、人修羅が元の世界に帰るのを見届け、どうにか表面的に平和を取り戻したのが、三年前の事件の顛末だ。

 

 ゲームだったら、大変な経験をしたけど何だかんだ上手くいって大団円となるのだろうが生憎とこの世界はそんなに優しく設計されていないようで、マヨナカテレビ事件以降も様々な事件が発生している。

 

 シャドウや悪魔といった人外が事件を引き起こすなら、彼らはそういう存在なのだと納得は出来なくとも理解は出来る。

 しかし、人間の悪意や欲望によって事件が引き起こされてしまうとそうもいかなくなるもので、実際に人間の醜悪さに耐え切れずにダークサマナーになってしまうサマナーも多い。

 特にこの業界に居ると人間の悪い面ばかりが目立って見えてしまい、心を病んでしまう傾向にあるのは否定できない。

 

(『幽遊白書』の仙水忍のように人間なんてクソくらえってなってしまうこともあるからな)

 

 今の所SEESや特捜隊のメンバーにそういう傾向はないが、今回の異界事件が人間の歪んだ欲望が原因だとすると、そういう人間の醜悪な部分に直面する可能性はゼロではないだろう。

 

(今後はその辺も気を付けていかないと、だな)

 

 やらないといけないことは多いし、先行きも不安ではあるが、ここで諦めるという選択肢は俺には存在しない。自分の出来ることをやり通すとしよう。

 




ペルソナ4からこの小説のプロローグの間では某唯一神の降臨計画がメシア教の中で立ち上がり、世界各地で騒動を巻き起こし始めたので、主人公とペルソナメンバーは土着の霊能組織と協力してメシア教を止める為に世界を飛び回っています。
ライドウとメサイアとイザナギの名前が世界中の裏側を知る組織の中で有名になった直接的な原因はこの時のメシアンとの闘いが原因です。

一番最初に主人公が襲撃していたメシア教会もその計画に加担しています。
人体を概念兵器に変える為の実験とか、人間の脳髄が原材料のマガツヒ回収機とか作ってたので粛清対象になりました。

残当な結果です。

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