ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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ルビコンを三周してたので遅れました。
今はスターなフィールドを駆け回ってます。

皆さんは今年の水着鯖は全員ゲットできましたか?
水着メリュ子が今、一番癖に突き刺さってます。


第二話

「手古摺っているようだな」

 

 突然聞こえてきた低く野太い声。

 その声の主は、キッチリと閉じられていた筈の城壁の門を開いて俺達のいる場所に悠然と歩いてきている。

 

「…何の用ですか、『アスモデウス』」

 

 いたる所から棘の生えた真紅の骸骨といった見た目の悪魔・アスモデウスは、両脇にほぼ全裸の女性に見えるシャドウを引き連れていて、それを見たガブリエルが眉を顰める。

 

「なに、偉そうな事を言って出て行った割には、たかが人間一人仕留められん間抜けを笑いに来ただけよ」

 

 アスモデウスと呼ばれた悪魔に煽られたガブリエルの額に青筋が浮かぶ。

 天使と悪魔が凄まじく仲が悪いのはいつも通りだが、純潔を司るガブリエルと色欲の大罪の象徴ともされるアスモデウスが同じ空間に居て、問答無用の殺し合いに発展していないとは。

 お互いの感情を無視してでも共存する理由が、このパレスにあるってことか。

 

(…カモシダ(鴨志田のシャドウ)は居ないか。どうやら奴らもこのパレスを維持するのに必要なモノが何なのかは理解しているようだな)

 

 パレスの仕組みをモルガナから聞いて、パレスの仕組みをヤタガラス側で解析した時からパレスの要であるカモシダの暗殺やパレスの破壊は、ヤタガラスの中では()()()()()()()()()として上がっていた。

 現実世界の鴨志田本人は、一般人に危害を加える可能性のある異界の発生源になってしまっているので、既にヤタガラス内での鴨志田の扱いはダークサマナー予備軍といった状態だ。

 

 俺個人としては、このパレスを意図的に悪用している訳でなければ、出来る限り穏便な形で事態を収束させて、然るべき手順で現実世界での罪を償わせるのが妥当だと思ってはいる。

 とはいえ、ヤタガラスの考えはもしもの時に打つべき手立てとしては妥当なモノなので、手段の一つとしては理解もしていたし、その案を実行する時は俺も駆り出されるだろうから、ある程度はその場合の行動についてもシミュレートしていたが、もしもカモシダの暗殺やパレスの破壊を実行するとなれば、目の前の悪魔達の妨害があるのは確実だ。

 

(あのクラスの悪魔の目を盗んでパレスの主であるカモシダを害するのはほぼ不可能。となると、実行可能な解決策は、いつも通り正面から戦力をぶつけてゴリ押すか、モルガナの提案通り『オタカラ』を盗むか、だな)

 

 ここ最近の探索でカモシダをパレス内で見なかったのは、俺達がパレス内で暴れ回ったせいでカモシダを暗殺されるのを恐れたあいつらが、城の奥や隠し部屋とかで保護しているからだろう。

 そして自分たちはパレスを警備して侵入者狩りに専念するようにしたってわけか。

 

「ふん。あれが貴様が言っていた『ライドウ』か。成程、奴と遊ぶのは面白そうだ」

「あれは私の獲物です」

「獲物とは言うが、貴様、軽くあしらわれてたではないか」

 

 骨だけの顔をニヤニヤと歪めてガブリエルを煽るアスモデウス。

 不俱戴天の天敵である悪魔に煽られて、今にもアスモデウスを殺そうと襲い掛かりそうなガブリエルとそのまま殺し合いに発展してくれれば楽なのだが、そう上手くは行かないだろう。

 

 俺にはアナライズの能力がないので経験と勘に基づいた感覚でしか測ることが出来ないが、奴らの力はLv.80越え、単純な戦闘力だけなら一神話の主神クラスと見て間違いないだろう。

 俺一人なら奴らを同時に相手しながらでも辛うじてで撤退できるだろうが、一般人を守りながらとなると些か厳しいものがある。

 

 だから、こっちは仲魔に協力してもらうとしよう。

 

(いつでも行けるぜ、大将)

 

 仲魔からの念話を受けて、怪盗服の裏に隠していた封魔管を取り出す。

 その行動を察知したアスモデウスとガブリエルが、煽り合いを止めて俺に向かって高速で接近してくるが、一手遅い。

 もう準備は整っている。

 

 瞬く間に近づいて来たアスモデウスが繰り出した、並みの人間なら掠っただけで粉々になるであろう殺人的な威力の拳撃を躱し、左手に持った拳銃を連射してガブリエルの『ブフダイン』の発動を食い止める。

 そうして確保したほんの僅かなチャンスを逃すことなく、右手に握った封魔管を魔法発動の為に離れた位置にいたガブリエルに向ける。

 

 封魔管には既に十分なマガツヒが充填されている。あとは呼び出すだけ。

 

「来い!『金時』!」

 

 一瞬の閃光の後に、一人の男が突如としてガブリエルの目の前に出現する。

 バンダナの様な物で逆立たせた黄金の髪に翡翠の瞳、平安時代の武家の衣装というにはだいぶ派手な装束を纏ったその偉丈夫は、動揺するガブリエルに構うことなく、担いだ(まさかり)に自身のマガツヒを注いで雷を纏わせる。

 

「必殺!『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』!!」

 

 俺が契約している悪魔の中でも随一の戦闘力を持つ、平安時代の怪異狩りの英傑、『坂田金時』の全力攻撃。

 

 金時との契約の触媒にもなった(黄金喰い)による物理的な斬撃と、ヤタガラスの魔改造で鉞に備え付けられたカートリッジに蓄えた電撃を同時に放つという、金時が所持するスキルの中でも最強の単体攻撃スキル。

 並みの悪魔なら塵も残さず蒸発させられる威力があるのだが。

 

「不意打ちとは、卑怯な!」

 

 ついさっき自分が不意打ちした事を棚に上げて、金時を非難するガブリエルにはそう大きなダメージを与えられなかったようだ。

 どうやら奴は近くに突っ立っていた、アスモデウスが引き連れていた女性型のシャドウを盾にして自身へのダメージを軽減したらしい。

 意思の薄い木っ端シャドウとはいえ、仮にも天使を名乗っておいて肉盾で攻撃を凌ぐとは、奴ららしいやり口だ。

 

「その霊格、キサマ、英霊か!」

「手前らのような外道の問いに、答えてやる義理はねぇな!」

 

 問答無用と言わんばかりに金時がガブリエルに突進し、鉞を振り抜く。

 ガブリエルも負けじと氷結魔法と祝福魔法をバラ撒きながら派手な戦闘を始める。

 やはり、何らかの力を与えられているガブリエルの方が地力は勝っているようだが、愛用の獲物(黄金喰い)と積み重ねた戦闘経験、そして何よりガブリエルの弱点でもある電撃属性の攻撃を上手く使って、危なげなくガブリエルを抑えてくれている。

 

 あっちは問題なさそうだな。であれば後は、こっちだな。

 

「カモシダの要望だ。死ね、ライドウ。『ベノンザッパー』」

「お断りだ! アルセーヌ、『ザン』『マハザン』『ザンマ』」

 

 ガブリエルと金時を無視して俺に襲い掛かって来たアスモデウスを、坂本と高巻の護衛に充てていたアルセーヌを再召喚して迎撃する。

 アルセーヌのレベルが足りてないからか、魔法での攻撃は今一つダメージが無いようだが、衝撃魔法を食らうたびにアスモデウスの動きやスキルの発動がキャンセルされているところを見るに、どうやら奴は衝撃か疾風属性が弱点なのだろう。

 

(ガブリエルは電撃、アスモデウスは衝撃か疾風、弱点がハッキリしたなら行動キャンセルを連発させるのも可能だろうが、決め手に欠ける現状では耐久戦になるな)

 

 属性相性で有利を取れば問答無用で行動を妨害できるので、その間に大技を叩き込んで倒しきるのも手だが、奴ら程の力を持つ悪魔を殺しきるまで戦っていたら、いつものようにシャドウの大軍に取り囲まれて袋叩きにされるのは目に見えている。

 やはり、今は撤退するのが賢明だな。

 

「金時、モナ、撤退だ!」

 

 俺の合図を聞いた金時が『黄金喰い』の出力を最大にしてガブリエルに電撃を放ち、弱点を突いて一時的に麻痺状態にさせると同時に、その顔面を全力で蹴り飛ばして城壁まで吹き飛ばしてから俺の近くに後退する。

 それと同時に俺も全力の『マハザンマ』を発動させてアスモデウスをガブリエルの近くにまで吹き飛ばす。

 

「そんな微風では、我を傷付ける事は出来んぞ!」

 

 城壁近くまで吹き飛ばされたアスモデウスが怒りを露わにしているが、一々構っている暇はない。

 怒り狂うアスモデウスを無視して、モルガナに向かって合図を出す。

 

 事前の打合せで決めていた合図を見たモルガナは、腰に取り付けたポーチから黒い塊を取り出し、愛用品のパチンコにセットしてガブリエルとアスモデウスに向かって発射する。

 二体に向かって飛んで行った黒い塊、一般的に『閃光手榴弾』と呼ばれている対悪魔用の処理が施されたそれは、狙い通り奴らの目の前で炸裂し、凄まじい閃光と爆音が奴らの視界と聴覚を潰す。

 これで奴らに『目眩』状態を付与できた。あとは逃げるだけ。

 

「金時、あっちの金髪頼む!」

「了解だぜ、大将!」

 

 この異常事態に、一般人である坂本と高巻は完全に固まってしまっている。出来れば自力で走って脱出して欲しかったが、流石に無理そうだったので、体格的に余裕のある金時に坂本の運搬をお願いする。

 二メートル近い身長の大男に米俵の様にして担がれていく坂本を視界の隅におさめながら、俺は高巻の膝裏に腕を通して横抱きの状態、俗に言うお姫様抱っこの状態で高巻を抱えて走り出す。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「全力で走るから、舌を噛まないように気を付けて」

 

 高巻が落っこちないようにしっかりと抱きかかえて、モルガナが掛けてくれた『マハスクカジャ』によってスピードが劇的に向上している俺と金時が走り出す。

 城の内部に入り込んだ状態だったら逃げきれなかっただろうが、ここは城の外で、パレスと現実世界を繋ぐ出入り口も近い。このまま問題なく逃げ切れるだろう。

 

「貴様、逃げるな!!」

 

 ガブリエルの憎々しげな叫びを無視して全力疾走する。

 今日はパレスを攻略やレベリングとかの目標があったんじゃなくて、訳も分からずにパレスに引きずり込まれた状態なんだ。誰がまともに戦うかよ。

 

 それに、強大な力を持った四大天使の本体や魔王の登場とかいうイレギュラー中のイレギュラーが起きている以上、さっさと逃げてヤタガラス全体に情報を共有して対策立てるのが先決だ。

 

 後ろの方でガブリエルが俺達に向けて魔法を乱射しているのが見えるが、既にパレスの出口をくぐり抜ける寸前の俺達に届く筈もない。

 そのままの勢いでパレスの出口を通過し、パレスを脱出する。

 

「…どうにか逃げ切ったか」

 

 現実世界に戻ると、パレスに侵入した時と同じ場所に戻れたようで、顔を出した太陽が薄暗い裏路地を照らしている。

 坂本を地面に降ろして、役目を終えたと判断した金時が空気に溶けるように封魔管に戻ったのを確認した後、俺も抱きかかえていた高巻を降ろす。

 

 暫く待っても、ガブリエルとアスモデウスがパレスから出てきて俺達を追撃してくる様子はない。

 どうやら他の悪魔と同じように、奴らもパレスから出てくる気はないらしい。やっぱり奴らはパレスに自体に用があるのだろうか。

 

「あ、あのさ」

「聞きたいことも言いたいことも沢山あるだろうけど、まず確認させて欲しい」

 

 さっきまでの出来事が何なのか俺に確認しようとした坂本の言葉を遮り、俺のスマホを取り出してイセカイナビを指さした状態で画面を二人に見せる。

 

「このアプリに似たやつが、スマホにインストールされていないか?」

 

 俺の有無を言わせない口調に気圧されたのか、戸惑いながらも自身のスマホを確認した坂本と高巻の表情が驚愕に染まる。

 恐る恐るといった様子で二人が見せてくれたスマホの画面には、俺が持っているイセカイナビとよく似たインターフェースをしたイセカイナビが起動していた。

 どうやら、このパチモノのイセカイナビが俺達がパレスに迷いこんだ原因とみて間違いなさそうだな。

 

「今日の放課後、時間を作ってくれ。色々と説明するよ」

「いいのかよ、蓮。勝手に決めて」

「しらを切っても、ナビを持ってる時点で巻き込まれる可能性が高い。それに放っておいて死なれると寝覚めが悪いからな」

 

 ヤタガラスの上層部に相談せず二人にアレコレ説明するのは良くはないだろうが、イゴール製の物とは違う、『赤いアイコンのイセカイナビ』なんて明らかな厄ネタを持たせたまま解放するわけにはいかない。

 最低限アプリの機能や削除が可能かぐらいは調べておくべきだ。

 

「ね」

「ね?」

「「猫がしゃべった!?」」

「ワガハイは猫じゃねぇ! モルガナだ!」

 

 パレスから出たと同時に黒猫の姿に戻ったモルガナを指さしながら、大声で叫んだ二人のリアクションに笑ってしまう。

 今の今まで、猫が喋ることよりも驚きと理不尽と恐怖に満ち溢れた光景を見ていた筈なんだがな。

 

 怒り狂うモルガナを宥めながら、逃走中に拾っていた自分の鞄を背負い直して学校を目指す。

 やっぱり、今回の認知異界事件も一筋縄ではいかなそうだ。




この世界には人の願いを叶える『聖杯』がありますね。
そう言えば、どこぞの世界では聖杯を求めて英霊が戦争してるとか。

ビーストとか呼ばれてるマザーハーロットが居るとかなんとか。

まあ、ちょっとした与太話ですがね。

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