ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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遅れて申し訳ナス。
鼻の伸びないピノキオソウルライクやってました。


第五話

「どうだ、モルガナ、コロマル」

 

 鴨志田のパレスに首尾よく侵入した俺達は、事前に立てた作戦通り、城の入り口でモルガナの探知とコロマルの鼻を頼りに救助者の捜索を行っている。

 今回はイゴール製のイセカイナビでパレスに侵入しているので、無数のシャドウに襲われてはいないし、稀に見つかったとしても何もさせることなく倒せているので、ガブリエルやアスモデウスが感づいた様子もない。

 やはりパレスの外側に坂本と高巻のスマホを赤いイセカイナビを起動した状態で、囮として置いて行ったのは正解だったみたいだな。

 

「この感じ、最低でも十人は捕まってるみたいだぜ」

「ワフ」

「『一人は離れた所、残りは一塊になっている』とコロマルさんは言っています」

 

 パレスに囚われている人間がいることは想定していたが、たった一日でこの人数が捕まっているとはな。

 この分だと、いくら助けても次から次へとイセカイナビを持っている人間が異界に攫われ続けることになるかもしれない。

 

「ワン!」

「『孤立しているのが、探している匂いの人間だ!』って言ってるぜ。大将」

 

 どうやら高巻が渡したお守りは正常に機能したらしい。

 防衛手段を持っていた鈴井は逃げることが出来て、一塊でいるのがそれ以外の人間という風に分かれているのだろう。

 どちらも急いで救出する必要はあるが、どちらかを優先して助けるか、それとも部隊を分けて両方同時に救助するべきか。

 

「おい、この一人でいる奴のところに馬鹿でかい反応があるぞ。これは……アスモデウスか!?」

「うそ、志帆は大丈夫なの!?」

「す、すまないアン殿。ワガハイの探知力じゃあ、その人間が生きていることぐらいしか分からねぇ」

 

 パレスに入ったことでマスコット形態になっているモルガナに詰め寄る高巻を諫めながら、モルガナからの情報を考慮して作戦を立て直す。

 流石に、アスモデウスクラスの悪魔を相手にした場合、あの御守りでは身を守るのは不可能だ。

 戦力を分けるのは愚策ではあるが、ここは並行して救助するべきか。

 

「作戦変更だ。鈴井の救出には俺とコロマルで行く。残りのメンバーで他の人間の救助を」

 

 アスモデウスという強力な悪魔がすぐ近くにいる以上、鈴井の救出は最速で行なわなければならない。

 だから、どちらかの救助活動中に勘づかれてもう片方を危険に晒してしまう可能性を減らすために純粋にスピードを出せる俺とコロマルで鈴井を救出し、他のメンバーは大勢を救助出来るコウリュウを連れて一塊になっている奴らの救助に向かってもらう方が効率がいい。

 

「っ、志帆の事、お願いね」

「……ああ。必ず助ける」

 

 高巻の心情的には鈴井の救出メンバーに加わりたいはずだが、それを押し殺して俺の指示に従ってくれる。

 ここで救出出来ませんでした、ではヤタガラスとライドウの名の沽券に係わる。必ず助けてみせるとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パレスの地下空間を、複数の人影を乗せた黄金に輝く巨体が、調度品やシャドウを粉砕しながら泳ぐ。

 城の通路を削り取るように進むコウリュウは、蓮の手持ち悪魔の中で最も防御力に長けた悪魔であり、その黄金に輝く鱗は悪魔が繰り出す魔法や物理攻撃を弾き、逆にその巨体に見合った質量に物を言わせた体当たりで悪魔たちの命を吹き飛ばしていく。

 

「ス、スゲー。暴走列車に乗ってるみたいだ」

 

 モルガナの案内に従ってパレス内を猛スピードで進むコウリュウに、時々現れるシャドウが攻撃を仕掛けるが、電車並みの巨体と通路の壁に挟まれてミンチよりもひどい状態になりながら消えていく。

 そんなスプラッターな光景を見せられた竜司の言葉に、金時が笑いながら答える。

 

「コウリュウは大将の切り札の一つだからな。顕現時のマガツヒ消費が激しいから基本的に短期決戦か長距離を急いで移動する時しか呼ばれないが、こういう力も速さも必要な作戦なら最適解なのさ」

 

 実際、広大な砂漠や大海原を再現した異界を探索する時に、蓮はコウリュウを移動手段にしており、その巨体に見合わぬ飛翔速度と無数の耐性、そして高位悪魔としての攻撃力と防御力を持つコウリュウは、露払いとしても移動手段としても優秀だった。

 

「あそこだ、あの牢屋に全員いるぞ!」

 

 シャドウを蹴散らしてパレスを進んだその先、モルガナが指差す無数の牢屋が並ぶその場所には救助対象以外にも、百人を超える人影が囚われていた。

 

「うそ、こんなにいっぱい人が」

「違うぜ、杏殿。ここにいる連中は殆どシャドウだ」

 

 牢屋の中にすし詰め状態で囚われている、秀尽学園の学生や教師の姿をしたシャドウ達は、その体に突き刺さった管からマガツヒが吸い出されているにも関わらず、身じろぎ一つ取らずに虚ろな目でボウっと何もない天井を眺めている。

 その中には体を構成するマガツヒを殆ど吸い取られてしまったのか、半透明になっている者すらいるのだが、自身が消滅する寸前ですら呆然と天井を眺めている姿は一種のホラー映像のようにも見える。

 

「ひっどい有様ね」

 

 無数の牢屋が並ぶその通路に巨体を横たえたコウリュウから飛び降りたピクシーが、とある牢屋の中を見てその可愛らしい顔をしかめる。

 すし詰め状態で閉じ込められているシャドウ用の牢屋とは異なり、それなりにスペースの空きがあるその牢屋に倒れていたのは、全員秀尽学園の指定体操服を着た男子生徒だった。

 

「中岡と陸上部の連中、それに、バレー部の三島じゃねぇか!?」

 

 竜司のその言葉に、残った全員がコウリュウの背中から飛び降りる。

 先んじて行動していたピクシーがその小さな身体を活かして牢屋の鉄格子の隙間をスルリと通り抜け、男子生徒たちの口元に近寄って息をしているか確認する。

 

「うーん、生きてはいるみたいね。ただ、急いで治療しないと死んじゃうかも」

 

 ピクシーのその言葉に血相を変えた金時とアイギスが、その怪力で鉄格子を抉じ開けて瀕死の男子生徒達に近寄る。

 薄暗い地下牢では遠目からは判別がつかなかったが、そばに近寄ってみればマガツヒを吸収する例の管が彼らにも突き刺さっており、それに加えて男子生徒達は打撲や裂傷といった傷を無数に負っており、中には手足があらぬ方向に捻じ曲がっている者までいる事がハッキリと分かる。

 

「バイタルチェック……完了。生命活動危険領域です。最低限の治療を施し医療機関に搬送します。坂本さん、高巻さん、手伝ってください」

「あ、ああ。勿論!」

「う、うん。先ずは、何からすればいいの?」

 

 男子生徒達の身体に突き刺さっていたマガツヒを吸収する管を金時が素早く斬り捨てた事を確認したアイギスは、背負ってきていた大きなバックパックから簡易な医療キットや一般人用に効果を薄めた霊薬を取り出して二人に指示を出しながらテキパキと治療を進めていく。

 

 本来であれば、これほど酷い傷でも高位回復魔法を使用すれば癒すことが出来るのだが、相当量の血液とマガツヒを失ってしまっている一般人に負担の強い高位回復魔法を掛けてしまうと、魔法の負担に耐え切れず、ショック死してしまう可能性があるため、今回は回復魔法の行使が出来ないのだ。

 

 もしも、この場所に琴音が居て、メサイアが持つデメリットなしの完全回復魔法『オラトリオ』を使用出来れば話は違ったのだろうが。

 

「ひでぇな。シャドウにやられたのか?」

「いや、普通のシャドウはこんな風に遊ばずにさっさと殺すだろうさ。痛めつけて感情を揺さぶってマガツヒを吐き出させる。このくそったれなやり口は、悪魔の仕業だ」

 

 重傷を負っている男子生徒達と応急手当てを行う三人を庇う様に、牢屋の入り口に立って会話しながらも警戒をしていたモルガナと金時、そしてコウリュウが何かの気配に反応して不意に顔を上げる。

 

 彼らが見上げた先、薄暗い地下室の天井にいつの間そこにいたのか白く輝く大きな翼を持った美しい女性が浮かんでいることに気付く。

 

「『マハブフダイン』」

 

 その女性、『ガブリエル』がその手を翳すと同時に放たれた人の背丈を優に超える無数の巨大な氷柱は、牢屋の外に居た金時やモルガナだけでなく、重傷を負った男子生徒達や彼らを治療しているアイギス達も巻き込むような規模と範囲で展開される。

 このまま放って置けば治療に専念しているアイギスや竜司たちは押し寄せる氷柱の群れに押しつぶされてしまうだろうが、此処には彼ら以外の歴戦の勇士が居る。

 

「『マハジオダイン』!」

「『マカラカーン』」

「『暴れまくり』」

 

 金時が右腕から強力な雷撃を放って氷柱の半数を撃ち落とし、ピクシーがコウリュウに魔法を反射する魔法を発動する。

 そしてコウリュウは、飛んできた氷柱をその巨体を活かして全身で受け止め、マカラカーンの効果で一つ残らず弾き飛ばす。阿吽の呼吸と言っても差し支えない抜群の連携によって、彼らの後ろには水滴一つ届いていない。

 

「やはり、この程度では仕留められませんか」

 

 実体化させた黄金喰い(ゴールデンイーター)を油断なく構えた金時がガブリエルに目を向ける。

 ほんの半日ほど前に戦ったその悪魔は、以前よりも明らかに力が増しているようにも見えた。

 恐らくは一般人のシャドウと秀尽学園の男子生徒達から吸い上げたマガツヒで自身の力を強化したのだろう。

 

「チッ。パレスへの被害もマガツヒを奪っているシャドウにもお構いなしかよ」

「たかがシャドウ程度、何匹塵になろうと問題ないでしょう? まあ、人の姿をしたシャドウはどこぞの人間の精神そのものですから、死んでしまうとそのシャドウの持ち主が()()()()()()()()を発症してしまうかもしれませんが」

「テメェ」

 

 ガブリエルのその言葉を聞いた金時は己の得物の柄が軋むほどその手に力を込める。

 ガブリエルは暗にこう言っているのだ。ここで一般人のシャドウを見殺しにすれば、シャドウという名の自身の精神を失った人間が無気力症、もしくは精神暴走を発症するぞ、と。

 

「大したマガツヒを生み出さないシャドウなどどうなってもよいですが、今あなた方が治療している質の良いマガツヒを生み出す者たちは返していただきます」

 

 金時達に一方的にそう宣言したガブリエルは、自身の配下である下級天使を大量に召喚して応急処置を続けるアイギス達に差し向け、自身も戦線に加わる。

 ガブリエルと天使達が真っ先に狙ったのは、この場において明らかに力が劣っている二人、つまりは竜司と杏だ。

 

「やらせるかよ!」

 

 瞬く間に男子生徒達が囚われていた牢屋に飛び込んで来たガブリエルが、その両手に氷の礫(マハブフ)を発動して二人を殺そうとするが、その動きにいち早く反応した金時が間に割り込んで二人を庇う。

 

 間髪入れずにガブリエルの掌から放たれた氷の礫を、電撃を纏った黄金喰い(ゴールデンイーター)で粉砕し、その勢いで、常人では追い切れない速度で連撃を放つ。

 

 金時の攻撃は確実にガブリエルに届いているが、斬撃や電撃で負った傷は、魔法を使用していないにも関わらず瞬く間に治癒していく。

 この異様な回復力もシャドウや人間から吸い上げたマガツヒを湯水のように使用して実現してるのだろう。

 

 このままここで戦い続ければ学生達だけでなく、人の精神の具現であるシャドウを戦闘に巻き込んでしまうと判断した金時が、ガブリエルを殴り飛ばして強引に距離を取る。

 

「ピクシー。俺が奴を押し留める。その間に雑魚の殲滅と救助の援護を頼めるか」

「もう。しょうがないわね。人間なんて何人死んだところでどうでもいいけれど、ライドウが困るのは良くないものね」

「頼むぜ」

 

 気分屋で基本的に蓮の言うことしか聞かないピクシーが自身の提案を了承してくれたことに内心で安堵しつつ、ガブリエルの反則じみた回復力を上回る攻撃を繰り出す為に、金時自身の切り札を切ることを決意する。

 

「見せてやるよ。俺の全力を」

 

 能や浄瑠璃などの伝統芸能の題材として、現代にまで残っている怪童丸という少年を主軸にした「山姥物」という物語のジャンル。

 その大本になった伝承に曰く、類まれな怪力で足柄山の猛獣たちの頂点に立った怪童丸。

 後の世で頼光四天王が一人、坂田金時と呼ばれるようになる怪童丸は、諸説あるが雷神とも目される赤い龍と山姥の間に生まれた子であり、幼少期の彼は全身を血に塗れたような真紅に染めた、途轍もない暴れん坊だったという。

 

 悪魔が蔓延るこの世界において、その伝承が真実であるかは定かではないが、幼少期の蓮に悪魔として召喚された英傑・坂田金時の両腕は血よりも紅く染まっている。

 そして、普段はその力を鎧や包帯で徹底して封印し、主である蓮の許可なしには決して解放しようとはしない。

 

 

 その身体に宿った力の強大さゆえに。

 

 

 主である蓮によって、金時に施されている封印を解いた次の瞬間、金時の左腕の手甲が弾け飛び、続けざまに右腕の包帯が解けて、その身体から漏れ出たマガツヒで金時の全身が赤く染まる。

 

「いくぜ」

「ッ!!」

 

 普段の黄金に輝く雷光ではなく、赤黒い色に染まった雷撃がガブリエルを襲う。

 金時の鉞から放たれた雷撃の余りの速さにガブリエルは対応できず、その美しい翼の片翼を焼き払われてしまう。

 しかも、蓄えたマガツヒによる回復が自動で発動しないことに驚いたガブリエルが、金時を睨みつける。

 

「このッ、人間霊風情が!!」

「生憎と、今は人間霊じゃなくて悪魔なんでな!! ブッ飛びな! 『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』!!」

 

 自身が所持するスキルの中でも最大の威力を誇る技を発動させ続けながらガブリエルに突貫し、仲間たちに危害が加わらないようにする為に、地下牢の分厚い壁をぶち抜いて戦場を別の場所に移す。

 恐らくは、この地下牢に辿り着くまでの道中で発見した、シャドウ達を拷問していた広い空間にまで強制的に移動させる腹積もりなのだろう。

 

「さて、と」

 

 金時の献身によってガブリエルという脅威は瓦礫の向こう側に消えたが、ガブリエルが召喚した無数の天使達は未だに健在だ。

 

 これから負傷者の搬送と一般人のシャドウ(精神の具現体)を逃がす作業が完了するまで、誰かがあの大量に湧いて出て来た天使を相手にしなければならないが、民間人二人と実力が足りていないモルガナにはこの役割は不可能。

 十分な実力を持つコウリュウは、百人を超える人数を一度に搬送できる為、戦闘に参加せずに救助と避難に専念することになるだろう。

 

 そうなれば必然的に、この場で百を超える数の天使を相手するのはアイギスとピクシーの役割になる。

 

「ピクシーさん。私も援護を」

「いらないわ。さっさと治療してそいつらと脱出しなさい」

 

 腕があらぬ方向に捻じ曲がっている男子生徒、三島と呼ばれた少年に応急処置を施していたアイギスがピクシーにそう申し出るが、ピクシーは不機嫌そうに鼻を鳴らして天使達を見据える。

 

「「「「『マハコウハ』」」」」

 

 ピクシーがよそ見をしたのを隙が出来たと判断したのか、天使達が一斉に祝福属性の魔法を放って彼女を殺そうとするが、ピクシーは余所見をしたままその右手を天使達に向ける。

 

「『メギドラオン』」

 

 視界が真っ白になる程の閃光と共に悪魔の半数近くが光の粒子になって消滅する。

 

「しょうがないから付き合ってあげるわ。暇つぶしぐらいにはなるといいけれど」

 

 炎、氷、風、雷、そして万能。

 無数の力の塊を宙に浮かべて薄く笑う、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のその姿は文字通り悪魔的な美しさだった。




十四代目から引き継いだピクシーはとても強力な悪魔ですが、蓮の言うことしか聞きません。
因みに、人修羅も頑張って育てたピクシーを相棒にしてます。

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