ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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年始に色々と大変なことが起きて投稿できず、申し訳ない
自然の力ってやっぱこえーわ


第十話

「それでは、今回の件の沙汰を言い渡す」

 

 東京都、築地にある根願寺。

 前世の世界では仏教系のとある宗派の寺院が存在していたのだが、この世界では超國家機関ヤタガラスが所有する建物が存在している。

 地上にある建物は普通の寺院としての活動も行っていてかなり有名な寺院なのだが、裏側、特に異能の存在を知っている人間にとっては、その地下空間にある巨大な異界に建てられたヤタガラスの総本部の方が有名だろう。

 

 異界を管理する悪魔(八咫烏を遣わせた神)の権能で日に日に巨大になっていく異界に対応するように、異界で採れる材料で増築に次ぐ増築を繰り返している総本部は、敷地的な問題や神秘の漏洩的な問題で地上には決して出現させられない類の建物となっている。

 

 そんなヤタガラスの本部において、この本部が建てられた作られた当時から存在するヤタガラス内独自の取り決め事(法律)を破った人間を裁く場所に、俺は立っている。

 

 この裁判は俺の悪魔が引き起こしてしまった諸々の問題に対しての物だ。

 軽度の器物破損等の罪であれば罰金か一時的な異能力の封印という処置がされ、一般人の虐殺や禁術の行使などの重い罪の場合は動物への強制変身や死刑といった沙汰が下されるのだが、今回の場合は。

 

「一般人への異能の露呈という禁破り、物的、人的被害状況とそれに伴う諸々の影響を加味し……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤタガラス本部に設置されている鍛錬場に、金属同士が激しくぶつかり合う音が鳴り響く。

 某天下一武道会や某暗黒武術会の会場を彷彿とさせるドーム状の建物内に設置された円形型の石造りの舞台の上で鎬を削り合っているのは、霊木をベースにした釘バットを武器とし、髑髏の意匠が目立つ怪盗服を着た坂本と、神秘の力を秘めた大盾を鈍器のように振り回すサングラスをかけた大男、巽完二だ。

 

「どうした! そんなんじゃ仲間どころか、自分の命すら守れねぇぞ! 気合い入れろ!」

 

「ッツ、押忍!!」

 

 坂本の返事を聞いた完二さんがニヤリと笑い、鍛えた筋力にモノを言わせた圧倒的な移動速度で坂本の懐に飛び込み、手に持った大盾を振り抜く。

 本来は防御に使うはずの大盾を打撃武器として使用している完二さんの並外れた腕力から繰り出される攻撃の威力は凄まじく、咄嗟に防御態勢を取っていた坂本が大きく吹き飛ばされ、その背中を鍛錬場の床に強く打ちつける。

 

「近接だけじゃねぇぞ! タケジザイテン!」

 

「っく、キャプテン・キッド!」

 

 持ち前の負けん気で痛みに耐えながら、完二さんが呼び出したペルソナに対抗するべく坂本もペルソナを呼ぶが、今回は流石に相手が悪すぎる。

 

 同時に放たれた完二さんの手加減した雷撃と坂本の全力の雷撃がぶつかり合うが、キャプテン・キッドが放った雷撃は瞬く間にタケジザイテンの雷撃に飲み込まれる。

 そして一切勢いを落とさなかったタケジザイテンの雷撃がキャプテン・キッドに直撃したことで、ダメージの許容量を超えたキャプテン・キッドの姿がブレて空気に溶けて消える。

 

「ペルソナが!?」

 

「隙だらけだぞ!」

 

「ガッ!?」

 

 ペルソナが強制的に解除されたことに動揺した坂本にタケジザイテンの拳が叩き込まれる。

 ヤタガラス謹製の防具の認知を歪めて、その上に怪盗服を着込むことで物理的にも魔法的にも防御力が大幅に上がっているので大きな怪我は無いだろうが、石畳を叩き割る程の威力を持つ攻撃をモロに食らった坂本はダウンしてしまう。

 

「今回は十五分か。結構持った方だな」

 

 坂本がペルソナ使いとしての先輩であり戦い方やペルソナの特性が似通っている完二さんに、戦い方を物理的に叩き込まれるようになってはや三日。

 元々近接戦闘に関しては才覚があったのか、初日は一分と持たずに叩きのめされていたのだが、三日目にしてそれなりに太刀打ち出来ているのは正直驚いている。

 長ずればヤタガラスの中でも上位の戦闘力を持つ者になるだろうが、まだまだこれからだな。

 

 ダウンした坂本を完二さんが助け起こしている横で、空気を切り裂く鞭の音が鳴り響く。

 こっちもそろそろ決着だな。

 

「くぅ! 来なさい、カルメン!」

 

「来て。スメオオミカミ」

 

 坂本達の決着が着いた横で盛大に戦っている怪盗服姿の高巻がヤタガラスの戦闘服を着た天城雪子とぶつかりあう。

 カルメンとスメオオミカミが放った火炎弾(アギ)が空中で衝突し、鮮やかな火花をまき散らしているのを気にもせず、雪子さんが軽やかな動きで高巻に接近して鋼鉄製の扇子による打撃を叩き込む。

 坂本と同じ様に性能のいい防具を身に付け、その上から認知の変化による『怪盗服』という防具を纏っているとはいえ、雑魚シャドウなら一撃で爆散する威力の打撃を腕に直撃させられた高巻の表情が苦悶に歪む。

 

「こん、の!!」

 

 苦手な接近戦を仕掛けられて動揺した高巻が、咄嗟に後退して所持していたサブマシンガン(マイクロUZI)の銃口を雪子さんに向けて苦し紛れに弾をバラ撒くが、二人の間に割って入ったスメオオミカミが銃弾をすべて防ぎ切り、お返しと言わんばかりに火の玉を無数に(マハラギオン)放つ。

 

 猛烈なスピードで自分に向かって飛んでくる火の玉を恐れた高巻は、射撃を中断して回避行動を取ろうとしたのだが、高巻が回避をしようとした方向に待ち構えていたスメオオミカミにその身体を拘束されてしまう。

 基本的に人間よりも膂力に優れているペルソナに拘束されてしまっては、身体能力がずば抜けている訳ではない高巻ではもはやどうすることも出来ない。

 ここから逆転する術は今の高巻にはない以上今回はここまでか。

 

「うう。結構がんばったのに」

 

「そんなに落ち込まなくても大丈夫よ。高校生だった頃の私よりずっと戦えてるもの。きっとすぐに強くなるわ」

 

 今回の高巻の敗因は、異能を磨き上げてペルソナの能力を向上させれば、ペルソナによっては特定の属性ダメージを無効化するようになる事を知らなかったことだ。

 まさか、雪子さんが自身のペルソナを自分の魔法で作り上げた炎の壁に突撃させて、高巻の回避先に先回りさせて来るとは思ってもみなかったのだろう。

 

「杏、大丈夫?」

 

「ううー。また負けたー」

 

 雪子さんにぼろ負けした高巻を慰めているのは四人の戦いを鍛錬場の外で見ていた()()()()だ。

 

 どうして一般人である鈴井がヤタガラスの本部にいるのか。

 それは、彼女がカモシダの執着対象になっているからであり、アスモデウスからはその精神、つまり『ネガイ』を未だに狙われていることが想定されているからだ。

 

 鈴井以外のパレスに囚われていた元陸上部員と男子バレー部の三島は、パレス内部で受けた拷問やそもそもパレスに囚われの身になっていた事への負担が大きかったのか、パレスから連れ出しても中々目を覚まさなかった。

 

 当然彼らをそのままの状態で放置していく訳にもいかず、ヤタガラスの人員が元陸上部員とバレー部員の怪我を癒した後に簡単な悪夢を見せて、ちょっとした夜遊びをした後に悪夢を見たという風に認識させて日常生活に復帰させた。

 自身の子の無事を案じていた親御さん達にも混乱魔法(プリンパ)忘却魔法(マカジャマ)で記憶処理を施して、そもそもそんな出来事は起きていなかったと認識させることで、違和感なく生活を送れるように配慮もしている。

 

 だが、ペルソナに覚醒した坂本と高巻、そしてアスモデウスとカモシダに直接的に狙われている鈴井は何の対策もせずに日常生活に戻すわけにはいかない。

 身の守り方、ないしは戦い方を身に付けないまま彼らを外に放り出せば瞬く間に悪魔の格好の餌食にされてしまう。

 

 そういう事態を防ぐために、この三人には異界内だけではなく現実世界での自身の身の守り方を習得してもらう為に、()()()()()()()()()()ヤタガラス本部にまでここ数日来てもらっているのだ。

 

「訓練お疲れ。これ、差し入れ」

 

 肩で息をする疲労困憊といった様子の高巻と坂本に、疲労回復効果のある霊薬を混ぜたスポーツドリンクを手渡す。

 

「あ。雨宮君」

 

「お、雨宮」

 

 そう。現在、秀尽学園は一週間の学校閉鎖になっている。

 理由は勿論、俺の手持ち悪魔であるコウリュウが校舎に突っ込んだことで色々な物が破壊されてしまったことで、学園の運営がままならなくなってしまったからだ。

 

 まあ、表向きには配管の老朽化によるガス爆発ということになっているのだが。

 

「判決はでたのか?」

 

「理不尽なこと、言われてないよね?」

 

 俺が裁判に赴くというのが嫌な思い出を連想させたのか、若干圧のある完二さんと雪子さんを宥めてから今回の判決結果を報告する。

 

「今回はお咎めなし。完全に無罪放免です」

 

 俺の言葉を聞いて年上二人が安堵した表情をして、同級生三人が不思議そうな表情をする。

 ……ああ。そういえば、その辺の事情は話してなかったか。ま、わざわざ話すような事でもないし、あの件(シャア声の議員)に関しての話はおいおいでいいか。

 

「コウリュウが校舎を破壊したことで秀尽が休校になったのは話したと思うが、そのおかげで人命を救えたことが判明したから今回は無罪放免だったって事だ」

 

 パレスから鈴井達を救出してから今日この日まで、ヤタガラスの人員が何度かカモシダのパレスに侵入しようとしたのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どうやら学校が閉鎖された事でパレスの主である鴨志田の認知上で、カモシダのパレスは誰も出入りできない断絶した世界になった、と認識されてしまった様で、どんな存在も出入り出来ない空間になってしまったのだ。

 

 その結果、完全にパレスの攻略は停止してしまったが、こちらからパレスに干渉できない代わりに、向こうもパレスから現実にちょっかいを出せなくなったようで、赤いイセカイナビで目を付けられた人間がパレスに攫われる事件は鈴井達以降は発生していない。

 それ以外にもシャドウからマガツヒを吸い尽くされて廃人化している人間も出ていないようなので、パレスとその内部に巣食っている悪魔の活動は完全に停止していると見ていいだろう。

 

 つまり、学園が休校になったことで結果的に人命を守ることに繋がったから今回はお咎め無しということになったのだ。

 

「だが、学園が再開してからが本番だ。今のうちに十分に力を付けておかないとな」

 

 閉ざされたパレスでカモシダとアスモデウスがどれだけ力を蓄えられるかは定かではないが、そう大したことは出来ないだろう。外部からのマガツヒ供給が断たれた上に、自力でマガツヒを生成できるのはシャドウであるカモシダだけなのだから。

 どちらかというと、学園が再開された時にマガツヒを確保しようとしたアスモデウスを筆頭とした悪魔たちが何を仕掛けてくるか分からないのが懸念点ではあるか。

 

 まあ、その対策もしっかりと用意することになっているし、今は坂本と高巻に力を付けさせるのが先決だ。

 

「そら、休憩は終わりだ今日はまだまだいくぞ」

 

「こっちも頑張りましょうか。マガツヒもまだまだ余裕あるでしょ?」

 

「「そ、そんな~」」

 

 首根っこを引っ掴まれて引き摺られて行く坂本と高巻に合掌しつつ、俺は用意してきた護身用の霊具を鈴井に手渡す。

 

 鈴井には異能を発現する程の才覚はないが、それは別に戦えないという訳ではない。

 呪符や霊具の補助があれば自分の身を守るくらいは出来るようになるだろうし、最悪誰かが助けに来るまで持ち堪えられればいいわけだしな。

 

「じゃあ、こっちも始めるか」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 




無限城みたいな増設に増設を繰り返す違法建築ヤタガラス本部
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