ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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コミュ回。
カモシダとの決戦に向けた準備期間です。


第十三話

 

『なるほど。アラはあるが作戦のスジは通っておるようだな』

 

 カモシダパレスにある『オタカラ』へのルートを確定させた翌日。

 午前中の授業が終わり、昼飯用に購買で買った惣菜パンを食べながらスマホをハンズフリーにして周囲に声が聞こえる状態で、今日までの行動の報告と今後の行動方針を電話相手に報告する。

 

『懸念があるとすれば、アスモデウスか』

 

「ああ。パレスの核になっている『オタカラ』の確保の邪魔をしてくるだろうし、何よりこっちとしてもあれ程高位の悪魔を野放しにはしておけない」

 

 アスモデウスと最後に相対したのはガブリエルを始末した時だが、あれからアスモデウスの動向を一切掴めていないのが厄介だ。

 アスモデウスが現実世界に干渉している形跡は今のところ見つかってないが、それは逆にパレス内で何か企んでいることの証左でもある。だというのにカモシダパレスはシャドウが増えた程度で根本的な部分が変質するレベルの大きな変化はなく、アスモデウスに憑りつかれているに等しい鴨志田も、表面上は優しい教師を演じられる程度には理性を残している。

 

『パレスを消し飛ばすのも鴨志田を始末するのも容易いが、下手に(鴨志田やパレス)を砕くと中身(アスモデウス)が現実世界に顕現しかねん』

 

「カモシダやメメントスの主はどうか知らんが、アスモデウスはそれを見越した上でパレスに引き籠っているのかもな」

 

 強力な力を持つ悪魔が下手に現実世界で事を起こせばヤタガラスを筆頭とした霊能組織に嗅ぎつけられ、企みを邪魔される。

 かと言って異界を作り出して悪巧みをしようとしても、大悪魔が異界を作れば現実世界の霊的バランスが崩れ、同じように何らかの霊能組織に察知されるリスクがある。

 だから、悪魔が作る異界よりも現実世界に近く、異界を操る術に疎い奴が主をしていて、ヤタガラスが大悪魔を現実世界に顕現させない立ち回りを取るという条件を満たしたやり方が、今回のパレスを利用する企みなのだろう。

 これなら、プライドの高い大悪魔や四大天使が人間のシャドウに手を貸している理由にも納得がいく。

 

『忌々しい羽根つき共が……未だに沈静化していない他の異界は我々で対処する。お前は引き続きパレスとメメントスに関連した事件の解決を最優先としろ』

 

「了解。行動と異能の制限は?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()の名の下に一切の制限を取り払う。あらゆる手段を用い、國家を防衛せよ』

 

「委細承知した。こっちは何とかする」

 

『頼むぞ。ライドウ』

 

 まさか異能の制限無しとは、ゲイリンの爺さんも大盤振る舞いだな。

『最悪の場合は、現実世界への被害も考慮せず事態を収拾せよ』と命令されたようなもんだ。それ程までに事態を重く見ていると言う事でもあるのだろうが。

 通話を切ったスマホをポケットに仕舞って後ろを振り返る。

 

「と言う訳だ。この件が片付くまでパレスの主に狙われている民間人と現地協力者を現実で護衛するのがお前たちの任務になる。死力を尽くせ」

 

「「「ハッ」」」

 

 俺の言葉を聞いた三人の人影が瞬く間に屋上から姿を消す。

 彼らは重要人物の護衛を担当する訓練を受けたサマナーで、その中でも腕利きの連中を今回の任務に抜擢した。例えアスモデウスであっても彼らの守りを突破して現実世界の怪盗団のメンバーや志帆に干渉するのは容易いことではない。

 

 一般人の志帆は言わずもがなだが、認知異界で力を振るうことに特化しているペルソナ使いの二人は現実世界での戦闘力に乏しい。

 現実世界での護衛は付けておくに越したことはない。

 

「護衛はこれで良し。後はパレスに攻め込むまでに準備を整えるだけだな」

 

 武器に防具、各種アイテムの用意。俺は追加でペルソナの強化と悪魔合体も試しておくか。いままでのパレスとメメントスの探索でペルソナのストックもあることだし。

 ああ、後は鴨志田に出す予告状を準備しとかないとな。学生がやる様なイタズラっぽくした上で、奴の所業を把握しているような文面の物をだな。学生のイタズラだと思われれば警察に通報される可能性も低いし。

 この辺はこういう事に詳しそうなプロ(直斗さん)にアドバイスを貰うか。万が一警察に提出された時に指紋とかDNAが残ってると隠蔽が面倒だ。

 

「よし、じゃあまずはベルベットルームに顔を出すか」

 

 事件に巻き込まれたり、異界の探索をしてたりで、まだ二、三回しかベルベットルームに足を運べてないんだよな。

 ……ご機嫌取りの為に、お土産買って行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後。

 怪盗団の面々にモルガナを預け、彼らと助っ人に呼んだ直斗さんとで予告状のデザインと文面を考えて貰っている間に一人で渋谷の入り組んだ裏路地を進んで行く。

 以前通って来た道順を思い出しながら暫く進んで行くと、ビルが密集している筈の渋谷で不自然にスペースが開けられた場所に辿り着き、お目当ての店の看板が目に入る。

 

 その店の前には鮮やかな青いバーテンダーの装束を纏った一人の少女。

 恐らく、俺がこの半異界と言ってもいい空間に入った時点で来店を察知していたのだろう。その少女……ジュスティーヌが、さも当然の様に出迎えてくれる。

 

「ようこそ。我らがベルベットルームへ。首を長くしてお待ちしておりました」

 

「一週間振り位かな」

 

「おおよそ、そのくらいかと。今日はどのようなご用件で?」

 

「ペルソナの整理と悪魔合体だな。ワイルド能力のお陰でペルソナの選択肢が増えるのはいいが、手持ちが多すぎてもな」

 

 そんな風にジュスティーヌと雑談をしながらベルベットルームに入ると、以前と変わらず俺以外の客の居ない広々としたバーの中で、ベルベットルームの住人達がそれぞれが思い思いの生活を送っている。

 

「おや、ライドウ様。ようこそ。ベルベットルームへ」

 

「久しぶり、エリザベス。あ、これお土産」

 

「おお。これはご丁寧にありがとうございます……それで、今日はどのようなご用件で?」

 

 俺がベルベットルームに入ってきたことにいち早く気付いたエリザベスが近寄って来たので、渋谷駅で買ったケーキセットを手渡しながらジュスティーヌにしたのと同じ説明をすると、話を聞いたエリザベスが何かを考え込むように押し黙ってしまう。

 

「……成程。少し確認したいこともあるのですが、お時間はありますか?」

 

「? ああ。大丈夫だが」

 

 エリザベスに促されるままテーブル席へ着いて、テオドアが出してくれた紅茶を味わいつつエリザベスと対面する。

 妙に深刻そうな表情をするエリザベスに疑問を感じていると、ペルソナに関しての対応をしてくれている双子、カロリーヌとジュスティーヌも俺達の近くにやって来る。

 

「ライドウ様、今現在ご自身が宿しているペルソナは戦力になっていますか?」

 

「いや、正直そんなにだな。ペルソナ合体も何度かしてもらったが今のパレスやメメントスに現れる奴らと同じくらいの力しかなくてイマイチ使い辛くてな。もうバフ/デバフ要員として割り切ろうかと思ってる」

 

 俺のペルソナがブギーマンだった頃は自分、ペルソナ、仲魔の三体で同時に攻撃したりも出来ていたが、それはそれぞれの能力が大体同じくらいで連携を取りやすかったからだ。

 だが、ブギーマンが俺の本当のペルソナとして覚醒し、シャドウとしての一面が限りなく薄まってしまったため、ペルソナが半自動で行動しなくなった上にペルソナとしての格がリセットされて、攻撃手段としては率直に言って使い辛くなってしまった。

 

「貴様、何故それを先に言わんのだ!」

 

「なんと。そのような状態だったとは」

 

 俺の言葉に思うところがあったのか、カロリーヌとジュスティーヌは驚きつつも何やら憤慨した様子でウンウンと二人で悩み始めてしまった。

 

「なるほど。それは由々しき問題でございますね」

 

 普段は余り表情の変わらないエリザベスも何処となく驚いているように見える。

 ゲームとして遊んでいた時は序盤のペルソナの能力は大体低めだったから特段気にするようなことではないと思っていたが、何か問題があるのか。

 

「ペルソナは本人の力量の強弱、ワイルドであれば築いたコミュニティの親密度に左右されます。貴方ほどの方のペルソナがあのパレスのシャドウと同程度に弱々しい事など、本来はあり得ません」

 

 そう言ったエリザベスの青い燐光を纏った右手が俺の胸部に触れる。

 何かを探る様にエリザベスが手を動かす度に、神妙な表情をしたり珍しく眉間にシワが寄ったりしている所から察するになにか俺に問題があるのだろうか? 

 

「……貴方の『心の海』には今まで築いてきた絆による強大な力が確かに宿っています。宇宙(ユニヴァース)世界(ワールド)に至ったあのお二方に負けず劣らずの力が」

 

 そう言って手を離したエリザベスの視線がカロリーヌとジュスティーヌに向けられる。エリザベスの黄金の瞳で見つめられた二人が若干たじろぐ。

 

「ですが、それを引き出せていない」

「ペルソナを引き出す側の我々に問題がある、か」

 

 どうやら今のペルソナ合体の性能低下は彼女達にとっても想定外の事だったらしい。

 今のところ別に苦労はしてないが、今後の事を考えれば自分の力量に見合ったペルソナを呼べる方がいいのでどうにか原因の究明と解決してくれると助かるな、などと考えながら悩んでいるエリザベスと双子を見ていると、いつの間にか俺達の横にやって来ていたマーガレットが口を開く。

 

「そも、ペルソナを合体させる秘術は本来であれば主しか使えぬ特別な力。力の根源である主がベルベットルームに不在であるのと、あの場所から逃げ出した際に力を渡されたカロリーヌとジュスティーヌの力が削られているのが、不調の原因でしょうね」

 

「……遺憾ではあるが致し方無い。ジュスティーヌ」

 

「他に方法はないようですね。カロリーヌ」

 

 マーガレットの言葉を聞いた双子は小さくため息をついた後、互いに頷き合い俺に近づいてくる。

 

「本来ならば我らこそが客人の旅路を助ける為に力を貸さねばならんというのに、まさか客人に助力を請わねばならんとは」

 

「……恥を忍んで、貴方にお願いがあります。あの者に奪われた我らの力を取り戻す、若しくは奪われた力と遜色ない程の力を我らが身に付けることの手助けをしていただきたく思います」

 

「無論、助力に見合った対価も出す。本来なら渡す予定の無かった特別な力を得たペルソナ、賊神(ピカロ)の販売。合体費用の軽減。報酬として出せるものは他にも色々とある……で、どうする?」

 

 どうするも何もない。

 今後を考えればペルソナの強化は必須。何より今回の件の黒幕が『力を司る者』からその力を奪っているというなら、取り返さないという選択肢は存在しない。

 つまり、散々世話になった彼らを助けられるというなら否は無い。ということだ。

 

「分かった。君たちに力を貸す。その代わり君たちの力も俺に貸してくれ」

 

「いいだろう。取引だ」

 

「交渉成立、ですね」

 

 そう言った二人と握手をした瞬間、聞き覚えのあるフレーズが脳裏にこだまする。

 

『我は汝、汝は我。汝、ここに新たなる契りを得たり』

『契りは即ち、真なる目覚めの輝きなり』

『我、「剛毅」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり』

『大いなる反逆の一翼とならん』

 

 二人との間に感じる、魂の繋がり。なるほどこの二人もコミュの相手か。

 なまじゲームでのベルベットルームの住人達の一般常識とのズレを知っているから無理難題を吹っ掛けられないか不安になってくるな。

 

「話は纏まったようですね。それではライドウ様、今日ここに訪れた本来の要件に取り掛かるとしましょう」

 

 この後、エリザベスと滅茶苦茶悪魔合体した。

 




最初のダンジョンでレベル70オーバーのペルソナを使役できる筈だった主人公。
黒幕的にはペルソナ合体が脅威になると分かってるのでその強化方法をイゴールと共に序盤で奪った形です。ファインプレーですね!

まあ、そもそも悪魔合体とかある上に、剛毅のコミュランクが上がればペルソナ合体も性能が向上するんですけどね。
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