ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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因みにコミュ相手を含めた主要人物達の年齢は公式から明確に定められている人物以外はフワッとしているのであしからず。
P5のロマン相手は大体二十代中盤から三十代前半のイメージで。


第十六話

「やっぱり品ぞろえはさほど良くないみたいだな」

 

「そりゃ、大怪我したら普通は病院にいくからな。ヤタガラスで取り扱ってる『傷口に塗るだけですぐさま怪我が治る軟膏』なんて売ってたらそれだけで大騒ぎだろうさ」

 

 直斗さんを自宅に送ってからルブランに戻る途中、ふとした切っ掛けで探索に使用する回復アイテムの話になったので、帰り道にある薬局やドラッグストアを回ってみたが、やはり求めている品は置いていないようだ。

 分かっていた事ではあるがどこの薬局にも絆創膏や包帯、鎮痛や解熱作用のある市販薬しか売っていない。

 

 流石に認知の力を利用しても、ただの頭痛薬をあらゆる怪我と病を癒す万能薬に改変するのは無理だからなぁ。

 さて、消耗品の入手経路はどうしたものか。

 

 ヤタガラスの医療部門は今現在、日本各地の異界を鎮圧しているデビルサマナーへの援助に付きっきりだし、回復アイテムや霊薬の類の在庫も払底し始めていると聞いている。

 この状況で支援を寄越せと言うほど状況がみえていない訳ではないが、かと言ってオタカラを奪取する為にパレスへ潜入すれば十中八九アスモデウスとやり合う事になるのが分かっている以上、それなりに効果が保証されている回復アイテムは確保しておきたい所だ。

 

 そう思っていたからこそのドラッグストア巡りなのだが、広く効果を知られた物は認知異界の中では誰もが思い描いた通りの効果しか発揮しない。

 銃や剣という物が凶器だという認識が一般的に広く浸透しているから、認知異界では偽物も本物同然の効果を発揮する。

 俺達もその特性を上手く利用しているが、それは裏を返せば効果がどんなものか理解されているものは、認識されている程度の効果しかないという事だ。

 

 だから異界の中で早く怪我を治したいなら回復魔法か、回復魔法と同じ効果を出せる霊能アイテムを使用するのが異能者の定番だ。

 ゲームでもよく使っていた宝玉とか宝玉輪、モルガナに初めて会った時に貰ったソーマとかがいい例だろう。

 

 だが、認知異界内に限定すればもう一つ方法がある。それは、アイテムに特殊な回復効果があるのだと()()()()方法だ。

 マヨナカテレビで特捜隊が使っていた野菜や果物の類が特殊な力を発揮していたのもその現象の一端だ。ただの野菜がマガツヒを補給し、傷を癒し、宝箱の鍵開けにまで使える。

 まあ、あれらの野菜が破格の性能を誇っていたのは、国生みの神(イザナギ)を宿した悠さんが手塩に掛けて育てていたから、ちょっとした霊能アイテムになっていたという理由もありはするだろうが。

 

「所謂プラシーボ効果の超絶強化版みたいなものだ。認知異界ならではだがな」

 

「ふーむ。ワガハイが集めてたアイテムも今までの戦いで底をついてるし、いっそのこと市販薬じゃなくて病院で使う点滴みたいのがあればいいんじゃないか?」

 

「ちゃんとした医薬品か。医者が処方した医薬品ってだけで認知異界でもそれなりに効果を発揮するだろうが、特に病気でもないのに、ほいほい薬を処方してくれる病院があるとは思えないな」

 

「んなー。あ、あそことかいいんじゃねーか。ルブランの近くの病院。人の出入りも少なそうだし」

 

 ああ。そう言えば確かにルブランの近くに個人医院があったか。ダメ元で行ってみるか。

 目ぼしい物が見つからなかったのでドラッグストアを後にして、電車に乗って四軒茶屋にまで戻る。時間は既に20時を過ぎているからか人の姿はまばらで、酔っ払ったサラリーマンが帰路に付いているのが見える程度だ。さて、武見医院とやらはまだ営業してるか? 

 

「お。まだやってるみたいだ」

 

 どうやら夜遅くまで営業しているタイプの病院らしく、他の人の姿は無いが灯りはまだ点いている。

 

「じゃあ、後は頼んだぜ」

 

「行かないのか?」

 

「ワガハイ、消毒液の臭いダメなんだ。先帰ってるぜ」

 

 そう言って鞄から抜け出したモルガナは、あっという間にルブランがある方向に消える。

 ルブランの扉に、いつの間にか付いていた猫用の出入り口があるから店の前で待ち惚けするような事にはならないだろうから、まあいいか。

 

 ここで手をこまねいていても仕方ない。取り敢えず中に入ってみるか。

 病院の扉に手を置いてゆっくと開いて中に入ってみると、一番最初に目に入る位置にある受付の窓口に、艶のある黒髪をショートカットにした赤い瞳の美女がいた。

 

「いらっしゃい。初診?」

 

「あ、はい。ちょっと体調が悪いので診察して欲しいんですが」

 

「……ふぅん」

 

 受付から立ち上がってこっちを観察しているが、すごい見られてるな。

 というか、服装が凄い。黒いボディコンワンピースの上から白衣を纏っただけという姿は、スタイルに自信があるから出来る格好なのだろうか。

 いや、実際に似合っているが、医者として正しい恰好なのかと言われると首を縦には振れないな。

 

「ま、いいわ。診察室にどうぞ」

 

 そんな取り留めもない事を考えながら、促されるまま診察室に入って女医さんと対面すると、彼女は問診票を書きながら手に持っていたボールペンで俺を指す。

 

「それじゃあ、お名前を聞いてもいいかしら」

 

「雨宮蓮です」

 

「雨宮、蓮と。私はこの医院の責任者の武見妙です。それで、今日はどういうご用件で? 仮病クン」

 

 マジか。一発で仮病だと見抜かれていたのか。

 全然繁盛してないように見えたからあまり腕の良い医者ではないのだろうと考えていたが、多少観察するだけで患者の体調を察する事が出来ているあたり、かなり腕の良い医者なんじゃないか? 

 

「あー。確かに体調は悪くはないんですが、ちょっと、切り傷とか打ち身とかに効く薬を出して欲しいんですよね」

 

「傷薬ねぇ……こう言っちゃなんだけど、多少の傷を治すなら市販薬でも問題ないよね?」

 

 そりゃ、そう言われるわな。もうちょっとそれっぽい嘘を考えておくべきだった。

 いやでも、これから頻繁に怪我をする可能性があるんで傷薬下さい。なんてどういう嘘をつけばよかったのか見当も付かないし、なんと言って誤魔化したものか。

 

「全く。これでも一応は医者なんだから理由もなしに処方箋を出せる訳ないでしょ」

 

「まあ、ですよね。仕方ない。心苦しいが、乙女さんに都合して貰うか

 

 流石にそう上手くはいかないか。

 ここから言い訳していい感じに言いくるめられるとも思えないし、この医院で医薬品を購入することは諦めて、普通の病院にも勤めている乙女さんに上手いこと薬品を調達して貰らえないか相談しよう。

 そう思って座椅子から立ち上がろうとするが、武見さんが俺の腕を掴んでその動きを止める。

 

「待って。キミ、乙女……柳谷乙女と知り合いなの?」

 

「え。ああ、はい。よく知ってますよ」

 

「ふぅん……ちょっと、そこで待ってて」

 

 そう言った武見さんは、俺を診察室に残したままスマホを取り出して慌てて隣の部屋に移動する。何事かと不思議に思っていると、隣の部屋で武見さんが会話しているのが聞こえてくる。

 声のボリュームはそう大きくないのだが、身体能力が強化されているのに伴って五感も強化されているのが災いして、大体の声を拾ってしまう。

 

『久しぶり。元気にしてる?』

『うん。こっちも変わりないわ。ちょっと聞きたいんだけど、雨宮蓮っていう高校生知ってる?』

『え。何その反応』

『うん。うん。ちょっと今しがたうちに診察に来て、怪我を治す薬を処方して欲しいって言ってきてて』

【……!?……!!】

『ちょ、声大きいって。いや、別に怪我はしてないみたいだけど、薬だけ欲しがるのも妙だなって思って』

『うん。うーん。へぇ。それは良い事聞いたわ。うん、ちょっとだけ便宜を図ってあげる』

 

『あと、未成年に手を出すと犯罪よ?』

【!?……!……!!!】

『はいはい。そういう事にしておくわ。じゃあまたね』

 

 戻って来た武見さんは獲物を弄ぶ猫のようなニヤニヤとした表情をしている。

 これはあれだな。次に乙女さんに会った時にからかうネタが出来て喜んでいるとか、そういう感じなんだろう。

 

「取り敢えず確認は取れたから、切り傷用の軟膏と打撲に効く湿布は処方してあげる」

 

「おお。ありがとうございます」

 

 乙女さんが良い感じに言いくるめてくれたのか。今度何かお礼をしに行かないと。

 ……お礼をする相手がどんどん増えていくが、まあいいか。

 

「それで、ついさっき乙女から聞いたんだけど。君、凄く身体が丈夫らしいね」

 

「はあ。身体は頑丈な方ですが」

 

 悪魔やらシャドウやらを狩り続けた結果、今や魂と肉体の強度は人間離れしているので、何があってもそうそうぶっ倒れはしない。

 というか、頑丈さがなければ今日まで生きていけてないとも言えるが。

 

「じゃあ、そんな君を見込んで私からの提案。私の実験に付き合ってくれるなら、とっておきの薬を処方してあげてもいいわ。昔からやっている研究がちょっと滞ってて、限界値を見極める為のデータが採れる頑丈で優秀なモルモ、実験た、もとい協力者が欲しかったの」

 

「全然隠せてない……まあ、薬を都合してもらえるなら、構いませんが」

 

「よし。じゃあ契約ね」

 

 武見さんが差し出した手を握り返すと、最早慣れてきた耳鳴りと共に一瞬視界が揺れる。

 

『我は汝、汝は我。汝、ここに新たなる契りを得たり』

『契りは即ち、真なる目覚めの輝きなり』

『我、「死神」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり』

『大いなる反逆の一翼とならん』

 

 耳鳴りが止むのと同時に手を離すと、武見さんが待ちきれないと言わんばかりに立ち上がり、診察室の奥に消える。

 ガサゴソという音がしているが、一体何をするつもりなのやら。

 

 暫く時間をおいてから戻って来た武見さんの右手には、何かが握られている。

 

……嫌な予感がする

 

「はい、じゃあこれ飲んで」

 

 ドンッ! と目の前に置かれた容器に目を瞬かせる。

 化学の実験なんかで使ってそうな透明なビーカーに、並々と注がれているのは極彩色をした液体だ。不定期に泡立っている上に微妙に悪臭がする『ソレ』を見た自分の頬が引き攣っているのが分かる。

 

「これ、ですか」

 

「見た目はアレだけど成分的には大きな副作用とかもないわ。まあ、身体の弱い人が飲むと昏倒しちゃうだろうけど」

 

「それはダメなタイプの薬物なのでは?」

 

 取引である以上、うだうだ言っててもしょうがない。どうせ苦しむならいっぺんに飲み込んで我慢した方が、まだましだろう。

 無言のままビーカーを掴んで、液体というか粘体になっている物体Xを、一気に口に含み味を認識しないようにする為に一気に飲み込む。

 

「おお。あれをいっき飲みとは肝が据わってるね」

 

 驚いた様な声に何か言い返してやろうと思ったのだが、口が開けられない。

 その原因は間違いなく無理矢理呑み込んで胃にまで落とした粘体の味、いや臭いもあるか。胃の底からこみ上げてきた最悪な味と共に視界が極彩色になる。

 

 そして、物体Xの余りのマズさが起因となって、幾つかのトラウマが刺激されてしまい、()()()()()()()()()()()()()

 

 

『これ、一生懸命作ってみたの』

 調理過程と使用する素材が、明らかに間違っているかつての風花さん渾身のメギドラオンクッキング。

 

『今度はきっと味がするはず』

 素材だけでも美味しい物や味が濃くなる調味料を使ってる筈なのに、味どころか匂いすらしなくなった雪子さんの進化した虚無ライス。

 

『林間学校の時のリベンジってことで』『山海珍味を豪華に混ぜてみた』

 SEESと特捜隊でキャンプをした時に進化した形でお出しされた、ムドオンカレーという再現された悪夢。

 

 

 脳裏を過ぎったトラウマ達に必死で蓋をして、ビーカーを武見さんに返す。

 この味自体は新たなトラウマになりかねないが、薬物としての効能は大した事はないな。まあ、確かに一般人が飲めば余りのマズさとヒドイ臭いのせいで、昏倒するレベルの劇物なのは確かだが。

 

「ヤバいですね、これ」

 

「へぇ。意識もハッキリしてるのか。これは良いモルモットをゲットしたかも」

 

 とうとうモルモットって言い切りやがった。言いたいことは幾つかあるけど、まあいい。協力すると言ったのは俺だしな。

 

 その後、物体Xを摂取した俺の経過観察をしつつ、脈を図ったり味覚以外の体調の変化や、肉体のデータ取りにしばらく協力する。

 思っていたよりも時間がかかる作業だったので、明日とか別日にしてもらえればよかったな。

 

「良いデータが取れたわ。協力ありがとう……じゃあこれ、追加で渡せる医薬品の一覧ね。あくまで自由裁量ということで、薬品を使って起きた副作用は自己責任でよろしく」

 

 そう言って渡された一覧にはいくつかの薬品の名前と効果が書かれていた。取り敢えず一通り買ってメメントスあたりで効果を試そう。

 

「ありがとうございました」

 

「はい。お大事に」

 

 手持ちの現金で一通りの薬品を買って外に出ると、思ったよりも病院に居座ってしまっていたようで、さっきまでチラホラとあった人影は、既に何処にもない。

 しかし、乙女さんと武見さんが知り合いだったのは驚いた。乙女さんは普段結構な大病院に勤めていて割と忙しくしている人なのだが、個人医院を営む武見さんとはどういう縁で知り合ったのだろうか。

 

 まあ、乙女さんの知り合いなら悪い人ではないのだろう。今度乙女さんに話を聞いてみればいいか。

 そんな事を考えながらルブランに帰ろうとすると、一人の男性が俺の目の前に立ち塞がっている事に気付く。

 

「お前、あの病院でなにしてた」

 

「……ただ診察を受けただけですが」

 

「なんだ、ただの客か。じゃあ悪いことは言わねぇ。手に持ったそれを捨てて二度とこの病院に近寄るな」

 

 つば付きの帽子を目深に被った、まだ青年といっても問題ない年嵩さの男は、俺がついさっき買った医薬品が入っているビニール袋を指差す。

 

「お断りします。俺には必要なモノなので」

 

 そう言った俺を愉快な物を見る様に表情を歪めた男は、懐から金属製の筒を取り出し大事そうに撫でながら取り出し、それを見せびらかすように笑う。

 男が撫でている筒は、普通の筒じゃなさそうだ。薄っすらとだが、マガツヒを纏っている。

 

「断られちゃ仕方ないな。仕方ない、仕方ない。なるべく死体は出すなってお達しだが、邪魔者は排除しないとなぁあぁぁああ!」

 

 そう言った男が金属の筒を強く握り締めるのと同時に、筒からマガツヒが立ち昇り、瞬く間にそのマガツヒが人型を形成する。

 一メートル前後の身長に、樹木のような質感のある濃い緑色の肌。白く濁った瞳はぎょろぎょろと動き、今回の獲物である俺の動きを見逃さない様に忙しなく動いている。

 恐ろし気な見た目はまさしく悪魔と言った風体で、その比較的小さな体躯が発揮する力は並みの人間を遥かに上回り、明確な悪意を持って襲い掛かってくるものなら人間一人を物言わぬ肉塊にすることも容易だろう。

 

「さあ、その哀れなガキを殺せ! 『モコイ』!」

 

 召喚者の命令に従い、普通の生き物では決して出せない速度で俺に『突撃』して来る。

 霊能に覚醒していない人間だったらそのまま轢き殺されるだろう。

 

「最近、お前のような奴が多いな。前に渋谷で捕まえた奴もそうだったが、モコイを使役するのが流行ってるのか?」

 

 この程度の悪魔相手に武器を抜く必要はない。当然、それを使役しているダークサマナーに対してもだ。

 カジャ系やデカジャ系のバフ・デバフを使う事無く愚直なまでに、俺に突進してくるモコイの顔面に一切の容赦なく右ストレートを叩き込むと、モコイの頭部が爆発するように粉砕され、胴体すらも空気に溶けるように霧散していく。

 

(? 妙だな。低位の悪魔であっても流石にこんなに脆い筈はないんだが)

 

 低位の悪魔を一撃で倒すことは今まで何度もやってきたことだ。というかそれくらい出来ないと『ライドウ』という名前は背負えない。

 当然、大したマガツヒを感じさせないこのモコイと俺の間には圧倒的なまでの力量差がある。だから一撃で倒せるのは不思議じゃないが、ダメージを与えるどころか原形すら残さず弾け飛んでしまったのは流石に妙だ。

 それに、悪魔がマガツヒで構成された存在とはいえ殴ったりすればその強さに応じた感触が返ってくるものだが、このモコイを殴った時の感触はまるで紙風船を殴ったようで、全く手応えがない。

 

「な、は?」

 

「悪いな。低位悪魔にやられるほど耄碌してないんだ」

 

 自信満々に召喚したモコイが一撃で殺された事に理解が追い付いていない様子のダークサマナーに対して、一足飛びで距離を詰めて隙だらけの胴体に拳を叩き込む。

 普段ダークサマナーを相手にする時くらいの手加減で繰り出した拳が相手の腹部に深く突き刺さる。意識を奪う程度の力加減で攻撃したのだが、骨が砕ける感触と、内臓が潰れる様な音と共にダークサマナーは派手に喀血して、白目を剥きながら自分が吐き出した血だまりの中に倒れ伏す。

 

「……危なかった。拳を止めるのがあと少し遅かったら殺してた」

 

 気絶した状態で、陸に打ち上げられた魚の様に痙攣しているこのダークサマナーが大して強くないのは、モコイを召喚した時からわかっていたが、あまりにも貧弱すぎる。

 悪魔を使役しているから、てっきり霊能に目覚めた覚醒者だと思って殴り飛ばしたのだが、もしもあのまま拳を振り抜いていたら俺の拳はこのダークサマナーの胴体を貫通し、問答無用で殺害していただろう。

 つまりそれは、霊能に覚醒していない人間の肉体強度しかないという事の証左でもある。

 

「感じるマガツヒの量も一般人よりもかなり少ないな。この量だと霊能には覚醒してないと見てよさそうだ」

 

 これは、あれだな。

 ちょっと前に流行った半グレやヤクザの下っ端に低位の悪魔と契約させて、邪魔者を排除する為の鉄砲玉に仕立てるという犯罪の手法に似ている。

 特に、鉄砲玉にされた人間が霊能に覚醒していないせいで契約した悪魔にマガツヒどころか魂や精神すら喰われて、情緒不安定かつ異様なまでに好戦的になる所や、霊能に覚醒していない人間と契約したせいでマガツヒの供給が追い付かずに結果的に悪魔が弱体化している所とかがそっくりだ。

 

「あの組織は根切りにした筈だが、残党がいたのか?」

 

 ほんの二、三年前にこの手口で暗殺業を営んでいた犯罪組織があったが、奴らはヤタガラス主導の殲滅作戦で組織丸ごと壊滅させた筈なのに、生き残りがいたとは驚きだ。

 再発防止の為に、末端の構成員も念入りに調べ上げて全員漏れなく記憶を消してブタ箱か、あの世に送ってやったつもりだったが。

 

「連中の残党だと確定した訳じゃないが、きな臭いのは確かか」

 

 取り敢えず気絶したダークサマナーが死なないように、気絶から起きない程度の回復魔法(ディア)をかけてから拘束する。目を覚まして暴れられたりしたら面倒だからな。

 そしてスマホを取り出し、ヤタガラスの情報局に連絡してこの惨状の片付けを依頼し、ついでにこいつから情報を吸い出して貰うように連絡した後、今度は個人的に交流のある人物に電話を掛ける。

 

『何の用だ!!』

 

「開口一番でそれか。随分な言い草だな」

 

『こっちは今忙しいんだ! 異界から湧き出てくるクソ悪魔共をぶち殺すのになぁ!』

 

 連続する銃撃音と魔法による爆発音。

 どうやらちょっとよろしくないタイミングで電話を掛けてしまったらしい。

 

「掛け直そうか?」

 

『一々俺に気を遣うな、鬱陶しい! さっさと話せ!』

 

 情緒不安定過ぎるだろ。まあ、本人が良いというならいいか。

 忙しそうだから手早く伝えよう。

 

「悪魔を使った鉄砲玉を量産していた組織の件、覚えてるか?」

 

 電話先で鳴り響いていた銃声と爆発音が一瞬、完全に止む。

 戦いが終わったのかと思ったが、敵対しているであろう悪魔の声は聞こえてくるので、どうやら戦闘自体はまだ続いているらしい。

 戦っている最中は大体ハイテンションになるアイツが静かになる訳がない。

 

 まさか、話に集中する為に手っ取り早く片付けようとしてないか? 

 

「おい、やめ」

 

『あばよ。クソ悪魔ども』

 

 俺が止める間もなく、電話先で爆音が鳴り響く。

 それも銃声なんか目じゃない程の爆音は、さながらミサイルが至近距離で爆発したと錯覚してしまうほどの大音量だ。まったく、今度はどの悪魔を()()にしたのやら。

 

『で、あのヤクザの下部組織だかなんだかが、どうかしたのか』

 

 スマホのスピーカーからは、もう電話相手の声以外は聞こえてこない。

 恐らくは爆音に比例する破壊力が、悪魔が湧き出てきていた異界に叩き込まれたのだろう。まあ、どんな作戦内容だったのかは分からないが、指令を無視して異界を吹き飛ばすような真似はしないだろう。

 ……しないよな? 

 

「今まさにあの組織に所属していたっぽい奴が俺の足元で瀕死になっててな。あの件はお前の管轄だったろ、()()()()

 

『直ぐに向かう。そのクズを逃がすなよ』

 

「取り敢えずヤタガラスの本部に運んで拘束しておくから、後は頼んだ」

 

 キョウジが余りにも早く電話を切ったので、俺が最後に言った台詞がちゃんと聞こえていたのかも分からないな。

 相変わらず悪魔やそれを利用するダークサマナーへのアタリが厳しい奴だが、さて、取り敢えず回収部隊が来るまで待機しますか。

 




世界観が混じれば生まれや育ちにも違いが発生する可能性もありますよね。
もちろん、元の世界線よりも境遇が良くなるとは限りませんが。

この世界のキョウジはデビルサマナー 葛 葉ライドウ対死人驛使に登場する初代キョウジに近い感じです。目的の為なら手段は選びません。
一体全体、ダレナンダロー(すっとぼけ)
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