ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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真VVいいですね。ミマン集めが大変なのは真Vのままなのはちょっと苦笑いが出ましたが。



第十八話

「それじゃ、『オタカラ』の奪取は、満場一致で明日の放課後って事でいいな」

 

球技大会から数日が経った四月二十日の放課後。

俺を含めた怪盗団のメンバー達は、以前予告状を作った時のセーフハウスに集まっていた。

 

臨時のセーフハウスとしてしか使用されていなかった為に物が少なくて殺風景だったこの場所も、怪盗団のメンバーが出入りするようになってからだいぶ様変わりしており、色々と小物や生活用品が置かれて生活感が増している。

なんならこのまま、なし崩し的に怪盗団のアジトになってしまいそうですらある。

 

そして、そんな場所で怪盗団の面々が装備品を点検したり、前々から作っていたパレスの地図を眺めてオタカラまでのルートを再確認したりしている。

ほんの二週間前までは戦いの「た」の字も知らずに生きてきた彼らが、霊木を削りだして作った釘バットや悪魔の皮から作られた鋼鉄をも削り取れる禍々しい鞭なんかを、慣れた手つきで黙々と整備しているのを見て、喜ぶべきなのか嘆くべきなのか。

東京と一般人の日常を守護する役目を負う者としては、一般人を戦いに巻き込んでしまった事に忸怩たる思いはあるが、今更どうこう言っても仕方ないのだが。

 

「ああ。問題ないぜ」

 

「おう。気合い入れてかないとな」

 

「私もオッケーだよ」

 

俺の言葉にメンバー全員が作業を止めて頷き返す。

カモシダパレスの存在を知ってから大分時間が経ってしまったが、これでようやく鴨志田の歪んだ欲望を奪い、パレスを消滅させる為の一手を打つことが出来る。

 

「以前にも説明したと思うが、最優先目標は『オタカラ』の奪取だ。必然的に俺達は出来るだけ隠密行動をしないといけない」

 

全員の顔を見渡した後、テーブルの上からカモシダパレスの見取り図を取り、備え付けのホワイトボードに貼り付ける。

続いてホワイトボードに備え付けられている赤い水性ペンで目的地までのルートをなぞった後、それとは別に今度は黒のペンでパレスの中庭付近を塗り潰す。

 

敵側の戦力が大したことなければ正面から乗り込んでもよかったが、今のレベルの怪盗団を引き連れた状態で正面突破を実行するのはリスクが高過ぎる。

だから、アスモデウスやシャドウの大群を相手にしないで済むような『オタカラ』へ辿り着く為のルートを通る為に、入念に打ち合わせをしておく必要がある。

 

「もしもの事態に備えて、今回の作戦にはパレス内を警備しているシャドウの注意を引く為の陽動班が参加する」

 

今までの経験上こういう作戦の時に限ってイレギュラーが発生する事が多く、ましてや大悪魔が居座っている異界にカチコミを掛けるなら尚更だ。

だから今回はもしもの時の備えとして陽動班に参加してもらい、『オタカラ』がある部屋から遠い場所、黒ペンで塗り潰した城の中庭辺りで大暴れしてもらう予定だ。そうすればアスモデウス達の意識は自然と彼らに向かい、逆に俺達は奴らから妨害を受ける可能性が低くなって、作戦行動中のイレギュラーが発生する確率を下げることが出来る。

 

とは言え、この作戦では陽動班に多大な負荷を掛けることになるから、出来る限り手早く『オタカラ』を奪ってパレスから脱出する必要があるが。

 

「なんにせよ時間との勝負だ。陽動が仕込みだとバレない内に『オタカラ』を奪取する。明日はスピード重視で行動することを心掛けてくれ」

 

カモシダだけなら出し抜くのも容易いだろうが、アスモデウスが居るとなれば、『オタカラ』がある部屋や『オタカラ』自体に何らかの仕掛けを施している可能性も考えられる。

悪魔というのは、基本的には悪辣な存在だからな。

 

「他に何か気になる点とかはあるか?」

 

怪盗団の面々を見渡すと、ホワイトボードに貼り付けられた地図を確認していた竜司が手を挙げる。

 

「オタカラを奪った後、戦力を集めてアスモデウスを倒したりしないのか?」

 

アスモデウスの対処、か。

正直に言えば明らかに人間を食いものにしているアスモデウスは、ヤタガラス的には討伐しないとならない悪魔だ。

だが、オタカラを確保しつつ大量に湧いて出てくるだろうシャドウやアスモデウスの配下の悪魔の相手をしながら、その上でアスモデウスを倒すには戦力が足りない。

 

「出来れば倒しておきたい。が、現状では努力目標だ。『オタカラ』を奪った後で対処可能なら撃破を目指す程度に認識しておいてくれ」

 

正直に言えば、琴音さんか悠さん、もしくはヤマトかホーク辺りが一人でも作戦に参加してくれれば、アスモデウスを打倒して、その後ゆっくりと『オタカラ』を回収する事も可能だろう。

だが、とある理由からパレスばかりに戦力を割いていられないから、戦力を集結するのが難しいのが現状だ。

 

「ま、怪盗団の仕事は『オタカラ』を奪うこと。今回はそこに集中してくれればいい」

 

どことなく納得がいってなさそうな顔をする竜司をなだめつつ、明日の作戦について話を進める。

ペルソナ使いである怪盗団を認知異界に関わらせる事に否は無いが、悪魔にはあまり直接的に関わらせたくはない。奴らへの対処は護国組織であるヤタガラスの領分なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の深夜。俺は秀尽学園の真正面にある商業ビルの屋上に居た。

 

「それじゃ、頼んだ」

 

東京は眠らない町と言われているが、それは特定の地域だけだ。

夜中まで営業している店や二十四時間営業のコンビニなんかの人が集まる理由がなければ、どれだけ人口が多かろうと人通りがないタイミングというのは存在する。

 

そんな人通りのないタイミングを見計らって、ヤタガラスから借りてきて一時的に契約を結んだ『ポルターガイスト』と『グレムリン』を召喚して指示を出す。

俺の指示に従い、二体の悪魔がそれぞれ百枚近くの予告状を持って、秀尽学園に乗り込んでいく。

 

春先の事故で(こうむ)った被害を修繕したついでに学園のセキュリティが見直されたという話だったが、どれだけ最新のセキュリティだろうと悪魔への対策が施されていなければ、悪魔達の侵入は防げはしない……これは、今後の課題だな。普段生活する場所に今のように悪魔の侵入をホイホイ許してしまうのは問題しかない。最低限の結界くらいは敷いておこう。

 

金にモノを言わせ、これ見よがしに増設された頑丈な鍵や監視カメラを素通りした悪魔達は、通風孔などの人間では出入り不可能な場所から予告状の束を抱えたまま校舎に侵入していく。

 

「さて、これで準備は万端。気合も十分。装備の慣らしも終わったし、アイテム類の検証も終わった」

 

パレスから『オタカラ』を盗み出す準備としては十分だろう。

本音を言えば出来れば怪盗団の仲間たちにもっと戦闘経験を積ませ、彼らのレベル(魂の格)を上げておきたかったが、あまり悠長にしてられない事情もある。

 

「皆の準備は?」

 

「滞りなく。事前に活動予定を調整し、真田様、荒垣様、久慈川様、白鐘様に協力を依頼済みです」

 

俺の隣でグレムリン達の行動をつぶさに観察していた真琴さんが手元のタブレット型端末を見ながら反応する。

真琴さんが口にした人員と怪盗団のメンバーが、どうにか集めることが出来たパレス攻略の為のメンバーだ。ただの異界を攻略するなら十分すぎる位の戦力ではあるんだがな。

 

「そうか……やはり、琴音さんか悠さん、ヤマトとかは動かせそうにないか?」

 

「残念ながら、現状では厳しいかと」

 

まあ、そう上手くはいかないか。

メメントスが発生してからというもの、異界の活動が活発になっているのは知っていたが、どうやらここ最近は日本だけでなく海外の霊地もその傾向にあるらしい。

中でも、神話の主神クラスが住まう異界の活動が妙に活発になっているらしく、土着の霊能組織だけではどうにもならない状態になりつつある。

 

なので、あの二人やヤタガラスの幹部などの最高戦力達はここ最近海外にある異界の平定に掛かりきりになっている。

国内ですら手が足りていない現状で、護国組織であるヤタガラスがわざわざ海外の異界平定に乗り出しているのには理由がある。それは、国外のGP(ゲートパワー)が急激に上昇するのを抑える為だ。

 

「海外の異界活性化を放置してGP(ゲートパワー)が急上昇したら、目も当てられんからな……仕方ないか」

 

「彼らの頑張りだけでなく、メシア教やガイア教、ファントムソサエティ等の大きな組織がいつもの様に力を削り合っているので、何とか異界の均衡が保たれている状態というのが業腹ではありますが」

 

前世のゲームで散々暗躍して面倒事を引き起こしてきたメシア教やガイア教、そしてファントムソサエティ等の厄ネタ組織は、この世界でもロクな連中ではない。

だが、敵対している組織が管理している異界を堂々と踏み荒らすような真似までし始めるとは思わなかった。

 

特にメシアやガイアなんかは不倶戴天の天敵同士という事もあってか、海外では相当やり合っている。

どちらもが自身が信仰する強大な悪魔(天使)を召喚する土壌を作るために、その土地のGP(ゲートパワー)を上昇させては敵対組織に襲撃されて異界を崩壊させられたり、その報復で相手が庇護している村一つを呪殺したり、所属しているサマナーを殺したり殺されたりと、海外の裏社会は最早完全な無法地帯になりつつある。

 

「異界の活性化自体はメメントスに起因しているようだから、メメントスを潰せばその辺の争いもある程度は収まると思うんだがな」

 

「それまで()()()()を維持できれば良いのですが」

 

真琴さんの懸念は尤もだ。

甘く見積もっても後一年程度この状況が続けば、世界各地のGPが対処不可能な程に上昇し、主神クラスの悪魔が制限無しに出現する世界になるだろう。

そうなれば、人間が生きているこの世界は文字通りの意味で『終末』を迎えることになる。

 

「阻止するさ。今までと同じ様にな」

 

前世の知識を持っている俺としては、タイムリミットが大体一年ぐらいという事に作為的なモノを感じないでもないが、やる事は今までと何も変わらない。

敵を倒し、人間の世界を滅ぼす要因を排除し、大切な人達とこの国を守り、そのついでに世界も守る。それだけだ。

 

そんな事を話していると、学園の方から二体の悪魔がこちらに近づいてくる。

抱えていた予告状の束が無くなっているから、仕事は終わったようだ。

 

「サマナー。オワッタ」

 

「完璧ナ仕事」

 

「助かったよ。グレムリン、ポルターガイスト」

 

合計で二百枚近い枚数の予告状を学園の至る所に貼り付けて来てくれた悪魔達にお礼を言いながら、報酬として用意していた魔石を渡す。

回復手段としても使える魔石はそれなりに貴重な品だが、必死になって節約に務める程のモノでもない。作業の報酬としては十分だろう。

 

「ウマ、ウマイ!」

 

「気前ノ良イサマナー。コンゴトモゴヒイキニ」

 

グレムリンとポルターガイストが報酬として渡した魔石を取り込んだ後、用意していた封魔管に悪魔達を戻してから、悪魔達が入った封魔管を真琴さんに渡す。

グレムリン達のお陰で仕込みも終わったし、明日に備えてさっさと帰って寝よう。

 

「じゃあ、明日は手筈通りに」

 

「はい。ご武運を」

 




終末の可能性その1
メメントスが起因となり世界中でGPが爆発的に上昇。放置すれば一年以内に地球が魔界と同じ環境になり、悪魔が何の制限もなくポコジャカ現れ地上を闊歩する様になって人類は衰退します。
『人類は衰退しました』エンド
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