ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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お久しぶりです。
アバタールチューナーからもう二十年ですか。月日の流れは早い物です。
ところで業績を伸ばすには昨今のリバイバルやらリマスターやらリメイクラッシュの波に乗るべきだと思うんですよね。
具体的には、アバタールチューナーとデビサマのリメイク作って欲しい。はやくしてよ。やくめでしょ。


第二十話

 起動したイセカイナビの効果によって目の前の景色がぐにゃりと歪む。

 ついさっきまで目の前にあった灰色のコンクリ壁とビルの外側に嵌め込まれている窓から差し込んでいたオレンジ色の夕日が掻き消え、その代わりに悪趣味な城と澱んだマガツヒで黒く塗られた空という景色に切り替わる。

 

「どうやら、あっちも準備は万端らしいな」

 

 ついこの間オタカラへのルートを確保した時には無かった筈の、無数のサーチライトという人工の光源が闇夜の空を真昼の様に照し、以前は誰も立っていなかった城門の前には赤黒いオーラの様なものを纏った見るからに強力そうなシャドウが六体立っている。

 

 取り敢えず門番達に見つからない位置に姿を隠して様子をうかがっていると、隣に居た竜司が口を開く。

 

「今更門番なんか置きやがって……どうする、ジョーカー」

 

「俺達だけだったら、万全を期す為に違う侵入経路を探すことになっていただろうけど、今回は助っ人がいるからな」

 

 新しく配置された門番を見て顔を顰めている竜司の気持ちも分かるが、この程度なら何の障害にもならない。

 俺の後ろで武器の調子を確かめていた真次郎さんに目配せする。

 

「では、当初の計画通りに」

 

「ああ。さっさと片付けよう」

 

 大斧を担いだ真次郎さんがその姿を門番たちにワザと晒すように歩き出す。

 歩く速さを緩める事無く近づいてくる真次郎さんの存在に目ざとく気付いた門番達が、真次郎さんに制止する様に警告しながら武器を突き出す。

 

「貴様、何者だ!」

 

「……無駄な問答をする気はねぇ。どけ、雑魚ども」

 

 明らかな敵対心を現した真次郎さんに意識が切り替わったのか、シャドウ達は問答無用で各々の武器を振り上げて真次郎さんを攻撃する。

 人間を殺すには過剰な程の威力が込められた無数の刃が真次郎さんに殺到するが、それよりも早く動いた真次郎さんの右手が腰のベルトから拳銃(ペルソナ召喚器)を引き抜く。

 

「いくぜ……『ディオスクロイ』!」

 

 召喚器で頭を撃ち抜いた真次郎さんを中心として青い炎が巻き上がり、その背後に巨大な影が現れる。

 嘗ての真次郎さんのペルソナである『カストール』は、玩具の馬に跨ったポリデュークス(明彦さんのペルソナ)の色違いといった見た目だったが、この世界では過去の出来事や発生した事件が異なっているせいか、真次郎さんのペルソナも心の成長と共に大きく姿が変わっている。

 

 玩具の馬は、強靭な四肢と屈強そうな体躯をした漆黒の馬に。

 胴に刺さった鏃が特徴的だった騎手は、黒と銀で彩られた鎧に身を包み、大剣を携えた騎士に姿を変えている。

 

「おぉおお!」

 

 シャドウ達が振り下ろした武器は、真次郎さんが召喚したディオスクロイの右手に握られた巨大な剣に例外なく防がれる。

 渾身の攻撃を防がれたせいでシャドウ達に生まれた致命的な隙を見逃すことなく、真次郎さんは大斧を全力で振り抜いて門の前に立っていたシャドウ達をまとめて吹き飛ばし、城門に叩き付ける。

 

「しまいだ! ディオスクロイ、『突進』!」

 

 左手で乗馬の手綱を握ったディオスクロイが、大剣の切っ先を正面に向け、城門に叩き付けられたせいで立ち上がれていないシャドウ達に向かって全力疾走する。

 巨大な大剣と巨躯を持った馬の突撃を、ダメージを負って体勢を崩したシャドウ達が耐えられるはずもなく、巨大な扉は守護をしていたシャドウ共々木っ端微塵に砕かれる。

 そして、ディオスクロイと城門がぶつかり合った時に発生した爆発音染みた巨大な破砕音がパレス中に響き渡り、その音でシャドウ達も異変を察知したのか、パレスのあちこちから強力なマガツヒの波動が立ち昇り、騒ぎの現場であるこの場所に向かってきているのを感じる。

 

「流石だなシンジ。俺も負けてられん! 来い、『カエサル』!」

 

 激闘の予感に喜悦を隠そうともしない明彦さんが、みるも無惨な姿になった城門から城の中に入り、どこからともなく湧いてきて真次郎さんを取り囲んでいたシャドウ達をペルソナで吹き飛ばす。

 

「僕達も行きます。どうかご武運を……行くよ。『ヤマトスメラミコト』」

 

「じゃあ、また後でね。何かあったらペルソナを通して連絡するから! 行こ。『コウゼオン』」

 

 先行する二人に続いて、りせさんと直斗さんも城に侵入する。

 シャドウが群がっている場所に真次郎さんと明彦さんが突撃して注意を引き、遠距離攻撃や支援魔法を使用するシャドウを直斗さんが撃ち落としながらオタカラへのルート上に光を当てているサーチライトを破壊し、りせさんが増援がやって来る方向や敵の数を全員に通達して目的地である城の中庭までの道へ誘導する。

 長年の努力で得た各自の能力もさることながら、琴音さんや悠さんといったリーダーが不在でも阿吽の呼吸と言ってもいい程の連携でシャドウを倒していく姿は、やはり頼もしい。

 

 大量のシャドウを引き連れながら城の奥深くへと姿を消していく四人を見送り、辺りが完全に静かになった頃を見計らって、隠れていた場所から抜け出して城の方へと足を進める。

 

「すげぇ数を引き連れてったけど、りせ殿達、大丈夫だよな」

 

「あのくらいの量なら、あの人達は一時間位戦える。アスモデウスが参戦してもそう簡単には崩せないさ」

 

 りせさん達が走って行った方向を見ながら心配そうな声を出したモルガナの頭を撫で、更に歩を進める。

 あれくらいでやられるならもっと前に、それこそニュクス・アバターやイザナミノミコト、そして魔人達との戦いで全員死んでいる。

 

「よし。俺達も行くぞ」

 

 瓦礫の山と化した正門を乗り越えて、以前に組み立てた通りのルートを通りながらオタカラがある部屋を目指す。

 

 城内を進んでいると時折聞こえてくる雷鳴と石が砕かれるような音──陽動班が暴れている音だろう──を聞きながら、稀に遭遇する城に居残っていたシャドウを倒しながら更に先へ進む。

 

「これなら楽に進めそうだな」

 

 竜司の言う通り、想定していたよりもシャドウの姿を見掛けない。どうやら陽動作戦はかなりの効力を発揮しているらしい。

 シャドウ達が明彦さん達の迎撃に回ってるせいなのか、壁や天井に設置されているキャンドルスタンドやシャンデリアの蝋燭に灯りが点いていないから、いつもとは打って変わってホラー映画ばりに静かになった城内を走っていると、ペルソナを通してりせさんからノイズ交じりの連絡が入る。

 

『蓮、かなりマズいかも!』

 

 ペルソナを通した通信は、受信する相手を明確に選ぶことが出来る特異な能力で、所謂テレパシーの一種みたいなものだ。この力は他の人間には聞かせたくない内緒話や敵を前にした状態で作戦をメンバーに伝えたりする時に重宝する力だ。

 だが今回は俺以外のペルソナ使い、つまり竜司達にも声を届かせているらしく、突然聞こえてきたりせさんの切羽詰まった声に怪盗団全員が困惑した表情を浮かべる。

 

『ついさっき、いきなりこのパレスに人間の反応が増えたの! ざっと数えて三十人ぐらい!』

 

 りせさんの報告を聞いた俺以外のメンバーの顔が蒼褪める。

 何の力も持たない人間がパレスに迷い込むというのがどういう意味か、そして力なき者が異能が絡む事件に巻き込まれるとどういう末路を辿るのかを、未遂だったとはいえ彼ら自身が身をもって体験しているから当然の反応ではある。

 

『こっちで何人か保護したけど、アスモデウスと戦いながらだと守るのが精一杯で!』

 

 想定した通りにアスモデウスは陽動に引っ掛かっているようだが、流石にアスモデウスに加えて大量のシャドウと戦いながら一般人を守る戦いになるとは想定していなかった。

 というか、三十人もどうやってパレスに引き摺り込んだんだか。パレスに入る唯一の手段であるイセカイナビも、半径数メートル程度を巻き込むのが精々のはずなのに。

 

「分かりました。こっちで手を打ちます」

 

『お願い! 出来るだけ早くね!』

 

 言葉数も少なく、りせさんが通信を切る。戦闘中のメンバーへの支援に集中する為だろう。

 こういう大規模作戦でイレギュラーが起きるのは今までも経験しているから覚悟はしていたが、精々が強力な悪魔を追加で呼び出して戦力強化をする程度だと思っていた。

 だが、まさか自陣を強化するのではなく一般人を使ってこっちの足を引っ張ってくるとはな。

 

 いや、もしくは青いイセカイナビのせいでこっちの動きが掴めないから、人質を取って戦力を分散させようとした可能性もあるか。

 一般人を見殺しにするか、戦力を分散させるかの選択を強いるのは悪魔らしい悪辣さを伴ったやり口だ。

 

「戦力の分散は避けたいが、仕方ないか」

 

 いくらこのパレス内のシャドウ達が陽動班の方に集まっているとはいえ、はぐれたシャドウが城の中をうろついているのは今までの探索からも分かってる。

 本当なら予備戦力として温存したかったのだが、一般人を見殺しにする訳にはいかない。

 

「来い。ピクシー、金時、黄龍」

 

 腰のベルトにぶら下げた封魔管にマガツヒを流し込んで金時とピクシーを俺達の直ぐそばに、そして黄龍を城の外側に召喚する。

 俺の呼び掛けに応えた悪魔達は封魔管の中から今の状況をある程度把握していたらしく、既に臨戦態勢だ。

 

「黄龍は救助者を見つけ次第背中に乗せてパレスの外にまで運んでくれ。金時はその護衛で、ピクシーは救助者の居場所特定とパレス外に連れ出した後の記憶処理を」

 

「了解だ大将。無辜の民を救う為なら、否はねぇ」

 

「人間の生き死になんてどうでもいいけど、ライドウの頼みだからやったげる。感謝してよね?」

 

 英傑として名を馳せた金時は、性格的に一般人を守る事にやる気を出しているが、ピクシーはあまりのり気ではない。

 まあ、気に入った人間以外は喋るマガツヒ生産機程度にしか認識していないピクシーの方が、悪魔らしい在り方なのだろうが。

 

「黄龍も頼んだ」

 

《委細承知した。主殿は己が役目を果たすがいい》

 

 雷鳴のように響き渡る低い声を発した黄龍は、善は急げと金時とピクシーを背に乗せてパレスの空を泳ぐようにして遠ざかっていく。

 

 俺が契約している悪魔達を召喚したことで、優れた探知能力を持ったりせさんもその事に直ぐに気付くはずだ。そうすればりせさんが俺の意図を察して救助者の位置を割り出して黄龍かピクシーに伝えてくれるだろうから、一般人の救助はあいつらに任せてしまっても問題ない。

 

「一般人の救助は黄龍達に任せて俺達は先を急ぐぞ。モナ、一応確認しておいて欲しいんだが、オタカラがある部屋までの道のりに人の気配はあるか?」

 

「ちょっと待て……シャドウの気配がごちゃごちゃしてて分かり辛いが、オタカラのある部屋の前に六人、いや八人いるな」

 

 マズいな。オタカラのある部屋の前ってことは、ホールの様な広い場所の筈。

 あの部屋はオタカラがある部屋に近いせいかシャドウのカモシダがよく彷徨いているし、以前に倒したオタカラを警備しているシャドウも再配置されているだろうから力のない人間は格好の餌食になってしまう。

 城の外の一般人を助けに行った黄龍達は直ぐには動かせないし、明彦さん達も同様だ。

 であれば、俺達がオタカラを奪うついでに助けに行くしかない。

 

「最優先目標は変わらずオタカラだが、一般人の救出も同時に行う。急ぐぞ」

 

 ペルソナを召喚して全員に素早さを上げる魔法(マハスクカジャ)を掛け、向上した素早さを活かして城の中を走り抜ける。

 隠密行動は最低限にして速度を確保しつつ、稀に遭遇するシャドウを斬り捨てながら全速力で目的地に向かって走り続け、オタカラがある部屋の前にある大広間に辿り着く。

 

「一度、中の様子を確認するぞ。皆は離れててくれ」

 

 用心の為に怪盗団のメンバー達には扉から離れて貰ってから扉に力を込めて開こうとするが、以前は鍵すら掛かっていなかった扉は、どれだけ力を込めてもビクともしない。

 

「開かないな。これも認知の変化によるもの……自分の大事な物を守ろうとする防衛反応みたいなものかもな」

 

「ヤタガラスの人達の予想が正しかったって事だね」

 

 今回の作戦に際して、ヤタガラスの作戦立案を担当しているチームや直斗さんからは指摘されていたのだが、予告状を出すことによってオタカラを守ろうとする反応がパレスに起きてしまうのではないかという話は以前から問題視されていた。

 だが、現状オタカラを具現化する方法が他になかった事もあり、結局予告状は出されたのだが。

 

「まあ、想定通りだ。モナ、頼んだ」

 

「おう。任せろ」

 

 当然、事前にそういう懸念点が上がっているということはそれの解決案を準備出来るという事だ。

 

「ジョーカー! 目論見通り、ここから行けそうだぞ」

 

 近場の柱をスルスルと登ったモルガナが指を差す先の天井付近の壁には、以前見つけた人一人が通れそうなサイズの穴が開いている。

 俺達もモルガナに続いて強化された身体能力に物を言わせて壁を登り、穴を覗き込んでみると、以前と変わらず大の大人が立って通れる程の壁の大穴は、大広間の梁に続く道になってしまっている。

 

 パレスの建物にはこの様な修繕されていない穴や妙に立て付けが悪い所や開きっぱなしの窓なんかが存在している。

 こういったパレスの構造上の欠陥やシャドウが感知出来ない『セーフルーム』なんかは、俗に言う所の心のスキマだったり、精神の不安定さがパレスに現れたものなのではないかと俺は見ている。

 こういう現象が起きるのはパレスの主の性格が原因なのか、それともパレスという存在そもそもの仕様なのかは分からないが、使えるものは有難く使わせて貰おう。

 

「警備はアホみたいに増やしているのに、こんなデカい穴を放置するなんて不用心だな」

 

「鴨志田の認識の問題だろうな。自身を脅かす存在を排除すれば自分の絶対性が保たれると考えているから、自分の悪い所を直そうとしない。その結果、兵隊としてのシャドウは増えても、心の一面であるパレスに現れた綻びは広がっているんだ」

 

 初めて侵入した時は城の状態も万全で、シャドウ達も組織立って警備をしており、ネズミ一匹いや猫一匹が気付かれずに侵入するのが精々だった。

 だが、今や城には誰でも通れる抜け道が創り出され、強力なシャドウは増えたが、強力な個体が好き勝手行動するようになったせいで城内の巡回も散発的になり、脅威度としては以前の方が遥かに高かった。

 

「侵入しやすくなったとはいえ、これから乗り込むのは敵の本丸だ。油断するな」

 

 怪盗団のメンバーが俺の言葉に頷いて、どことなく緩んでいた空気が引き締まったのを確認してから壁の穴を潜って梁を渡り、大広間に侵入する。

 

 足を踏み入れた大広間はかつての偉容を殆ど失っていた。

 教会を彷彿とさせる神聖さは消え失せ、薄暗いマガツヒが漂う明らかに混沌(カオス)側に偏った属性に満ちたその場に、複数の人影があった。

 

「うそ」

 

 思わずといった様子で震えた声を出した杏の視線は、眼下に広がる光景に釘付けにされている。

 

「おいおいおい」

 

「何してやがんだ、あの野郎ッツ!」

 

 杏の言葉に続くように、モルガナと竜司が怒りを露わにする。

 大広間の梁の上から俺達が見ている光景を考えれば、それも当然だ。

 

「超えてはいけない一線を、超えたな」

 

 大広間の中央で趣味の悪い台座の上に磔にされた、志帆の姿。

 そして、彼女と同じ様に天井から伸びる鎖で両手を縛られ、吊り上げられた状態のどことなく見覚えのある赤毛の少女とその少女とそっくりな栗毛の少女。

 少し離れた場所で、同じ様に吊るされながらも必死に抜け出そうとしているつい最近知り合いになった新島真と、薄い桃色のニット地のカーディガンを着たミディアムボブの明るい髪色をした少女。

 そこから少し離れた場所に、俺達の担任である川上貞代の姿もある。

 

「……もう、容赦は必要ないらしい」

 

 そして地面にうつ伏せに倒れた状態でカモシダに頭を踏み付けられている三島と、シャドウのカモシダの目の前で呆然としている鴨志田本人と、志帆や怪盗団のメンバーの護衛をしていた筈のデビルサマナーの三人が、惨殺されているこの光景を見てしまえば。




嘘みたいだろ?最初のパレスでの出来事なんだぜ、これ。
双子ちゃんは転校手続きで学園に来てました。因みに、丸喜先生は原作からして鴨志田の事件があってからカウンセラーとして赴任してきているので今はいねーです。
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