あ、今回鴨志田の過去に独自設定入れてます。
原作で描写されてる手口にやり慣れてる感があるので、このくらいはやってそうだなって。
「志帆!」
激情のまま梁から飛び降りて志帆を助けに行こうとした杏の腕を掴んで、動きを止める。
それと同時に、鎖で吊るされている少女たちを助けようと動き始めていたモルガナと竜司に目配せをして、自分勝手に飛び出そうとしていたのを辞めさせる。
「無策で突撃したら逆に彼女達を危険に晒す可能性がある。確実に助け出す為に、協力してくれ」
俺の言葉を受けて、怒りのままに飛び出そうとしていた杏が大きく深呼吸をして気持ちを切り替えるように目を瞑って小さく頷く。
またしてもカモシダに囚われるという不幸が降りかかった志帆を助けたいと思っているのは分かるが、無暗に突っ込んでしまっては助けられるものも助けられなくなってしまう。
それに、ヤタガラスの中でも精鋭である彼らを殺せる存在がまだこの場所に居るかもしれない。
そんな強力な存在と事を構える可能性があるのに、冷静さを欠いた状態で居てもらっては困る。囚われた人間達を助けると言うなら尚の事冷静になって貰わないと。
「余りのんびりはしてられないから、手短に行くぞ。スカルは当初の予定通りオタカラの確保を頼む。運び出すのが難しそうなら壁を破壊して外に放り投げてもいい。後で回収すればいいからな」
「……おう。ド派手にやっていいなら、俺の得意分野だ」
竜司も頭の回りは悪くない。一度冷や水を掛けて冷静さを取り戻させれば、状況をよく見て判断することは出来る。
それに、元々個人競技である陸上の選手だったからかは分からないが、竜司はチームで戦っても十分な戦果を出してくれるがソロで戦うともっと戦果を出せるタイプだ。
だから、今回の作戦の最優先目標であるオタカラ確保は竜司に任せた方がいい。
「そして、モナとパンサーは彼女達を縛っている鎖をタイミングを見て破壊、その後に救助を。具体的なタイミングは俺がもう一体の悪魔を召喚した時だ。抜かるなよ」
「了解だ」
「わかった……さっきは、ごめんね」
自信ありげに頷くモルガナとは対照的に落ち込んだ様子の杏。
恐らくはついさっきの、怒りに我を忘れて突撃しようとしたことを気に病んでいるのだろう。
「気にしなくていい。大事な人が危険に晒されれば誰でも動揺するさ。必ず助けよう」
「うん……ありがとう」
あれだけ手を尽くして危険な事に巻き込まれないようにしたのに、いざパレスに潜入したら志帆は攫われてるわ、知らない人間も巻き込まれているわ、なんなら鴨志田本人もパレスにいるやらで混乱してしまったのだろう。
「それで、ジョーカーはどうするんだ」
「奴らの前に姿を晒して、囮になる。あそこで死んでいるサマナー達の蘇生もしないといけないからな」
地返しの玉や反魂香を余分に持って来ておいて正解だった。
一定以上の力を持つ異能者は、肉体から魂が剥がれ切るまでにかなりのタイムラグが発生する。
彼らの様に身体を両断されていようが消し炭寸前の焼死体だろうが、魂の格がそれなりに有り体内にマガツヒが残っていれば蘇生は可能だ。
逆に言えばそのリミットを過ぎれば蘇生は不可能になる。此処まで殆ど邪魔されずに辿り着けたからまだ猶予はあるだろうが、のんびりとはしていられない。
「悪いが、今回は異論を受け付けられない。この作戦が現状では一番リスクが少ない」
「だが、その作戦だとジョーカーの負担が大きい。ワガハイかパンサーが援護に回った方が」
「いや、囚われている全員を一度きりのチャンスで助けるなら、この割り振りしかない」
最優先で助けないといけないのは、人質になる可能性が高いカモシダの近くにいる志帆と三島、そして見覚えのある双子っぽい二人だ。
三島はカモシダから暴行を受けたのか、酷い怪我を負っているようだし、双子はこの異常事態を上手く呑み込めていないようでパニックを起こしている。
唯一、こういう事態の経験がある志帆だけは毅然とした態度でカモシダを睨み付けているが、身体の震えは隠せていない。
怪我をしていたり混乱している彼らを助けるだけでも大変なのに、それに加えて少し離れた場所にいる新島真と茶髪の少女、担任の川上先生も助ける必要がある。
「俺の悪魔とペルソナも救助に回せば、一息で四人を同時に助ける事が出来る」
なにやらシャドウの方から熱心に話しかけられている鴨志田本人は、あの様子だと人質になったりはしないだろうから後回しにしても問題ないだろう。
ただ、
「質問は此処までだ。各自配置に就いて準備してくれ」
有無を言わせない俺の様子に、まだ納得がいっていなさそうな怪盗団のメンバーが不満を呑み込んで梁を伝って各々の配置に就く。
竜司はオタカラがある部屋に続く扉に最も近い位置に。モルガナは志帆や双子を吊るしている鎖を破壊出来る位置で、杏は志帆の真上辺り。
全員が配置について準備を整えている間に、俺も死んでいるサマナー達とカモシダの間に立てる様な位置を目指して音を立てないように梁を進む。
『いい加減認めたらどうだ』
目的地に向かって進んでいると、下からカモシダの声が聞こえてくる。
やはり俺が知っているシャドウとは様子が違う。本体を殺して入れ替わろうとしていないし、かと言って人質を解放して穏便に事を済ませようとしている感じもない。
『お前は俺さ。忘れられないんだろう、あの時の快楽が』
「ち、ちがう。俺は」
『世間と現実を知っている年増の恋人よりも、メダリストという称号だけで俺を盲目的に信じる世間知らずと関係を持つ方が興奮するもんなぁ?』
ニヤニヤと笑いながらそう言ったカモシダは、怯えている鴨志田本人の前に立ち、更に言葉を続ける。
『恩師の娘だか何だか知らないが、メダリストでエースの俺様があんな年増と結婚なんて冗談じゃない。肩書に群がってくる頭の軽い女を喰う方がよっぽど有意義じゃないか。なあ、
……なるほど。仮にも世界を相手にして勝利を掴んだチームだったんだから信頼関係が端から無かったということはないんじゃないかと思っていたが、鴨志田の女癖の悪さが関係悪化の原因だったのか。
その辺の情報が出て来なかったのは、ヤタガラスの調査不足だったのか、あるいは。
『ただ、もっと上手くやるべきだったな。恩師の娘を振る位ならどうとでもなったが、未成年に無理矢理関係を迫って手を出したのがチームメイトにバレたのはリスク管理が甘い証拠だぞ』
ああ、そういう。
志帆と杏から鴨志田に関係を迫られていた時の事を聞いたことがあったが、えらく慣れた感じで脅迫していると思っていたが、成功体験があったのか。
どおりで妙に手慣れている訳だ。
「恩師と恋人を裏切り、未成年にそんな真似していたとしたら、そりゃあチームメイトからはハブられるわな」
というか、そんな真似をしておいて捕まってない辺り、そのチームメイトとやらも余り真っ当な人間じゃあなさそうだな。
鴨志田が教職に就けているということは、鴨志田の所業を知っていたチームメイトは保身の為か、鴨志田から何らかの口留めをされたのかは分からないが、その事を告発しなかったということなのだから。
まあ、異能が絡んではいなさそうだからその辺の事はヤタガラスの管轄外だな。後で表側の警察とかに情報流しておくか。
「そ、それは」
『そしてチームを追い出されたお前が流れ着いた秀尽学園も、お前の全てを肯定してくれる場所ではなかった』
カモシダのその言葉に、困惑と恐怖が浮かぶばかりだった鴨志田の表情に明確な怒りが浮かぶ。
「……あの、クソガキ共」
『そう。坂本と雨宮が
カモシダの奴、責任転嫁も甚だしいな。
元はと言えば鴨志田が教職にあるまじき真似をしていたのが問題だろうに。
これ以上奴に好き勝手喋らせていると竜司か杏が我慢の限界がきてカモシダに殴り掛かりかねん。早急にあのよく回る口を黙らせるか。
「随分な言い様だな。貴様が自分の欲望を制御出来ていない事が、そもそもの原因だろうに」
『ッツ!? 誰だ!!』
カモシダが言葉を発するよりも早く梁の上から飛び降りると、懐から取り出した死者を蘇生させる『地返しの玉』を三つ放り投げてサマナー達の死体に当てる。
サマナー達に当たった地返しの玉が暖かな光を放つと共にサマナー達の肉体の損傷が修復され、同時に蘇生も行われていることを確認してからカモシダがいる方に向き直る。
「心の怪盗団、参上。貴様の
俺の姿を認識した瞬間、カモシダは驚きと歓びの感情が混じった表情を浮かべ、本体である鴨志田は困惑と怒りの感情を露わにしている。
「心の怪盗団、だと? ふざけるなよ。この訳の分からない状況もお前が原因か! この、お前、お前は……ああ、クソ、お前が誰なのか知っている筈なのに、
混乱した様子を見せる鴨志田の反応に眉を顰める。
自分が割りと特徴的な髪型をしている自覚があるし、仮面も目元しか隠していないから俺を目の敵にしている鴨志田には正体がバレると思っていたのだが、どうやらそれが分からないらしい。
あの反応には見覚えがある。他者の認識を阻害するタイプの術を使われた人間の反応にそっくりだ。
現状、俺は認識阻害系の術を使っている訳ではないから他に原因があるだろうが、まあいいか。
「俺の正体など、どうでもいい事だ」
『ああ、その通りだ。これから死ぬ下賤な輩の名など知る価値もない』
俺の言葉に対してそう言い返したカモシダは、足蹴にしていた三島の首を掴んで引き摺り起こし、その無防備な腹部を殴り付ける。
カモシダのその行動を見た瞬間、反射的に腰から下げた刀の柄に手が伸びる。
『おっと、動くなよ。女は弄ぶ為に丁寧に扱うが、男は雑に殺す為に連れて来たんだ……俺様の言いたいことは分かるよな?』
「いいや、分からないな」
俺の返答に驚いた表情をするカモシダから目を離さないようにしつつ、刀とは反対側に吊るしている封魔管にマガツヒを込める。
つい最近まで俺の正式な契約悪魔はピクシー、金時、黄龍の三体だけだったが、ベルベットルームで悪魔合体が出来るようになったことで念願かなって、とある悪魔と正式に契約を結ぶことが出来た。
実戦で呼び出すのは初めてだが、その実力は契約時に手合わせした俺自身が良く知っている。
「来い。
俺の呼び声と共に封魔管から人影が飛び出す。
その影は並みの人間では認識すら出来ない速度で走り抜けて、カモシダとの距離を瞬く間に詰める。
黒い烏帽子型の兜に緋色の鎧具足を身に纏っているにも拘らず、一切の音を出さずにカモシダに肉薄したヨシツネは、打刀と脇差の二刀を居合の様に引き抜いて三島の首を掴んでいたカモシダの左腕を一切の躊躇なく切り落とす。
切り落とされたカモシダの腕から撒き散らされたマガツヒを浴びてもなお陰る事のない美男子がやり過ぎないように悪魔とのテレパシーで制御しつつ、更に追加でペルソナを呼び出す。
「アルセーヌ!」
間髪入れずに召喚したアルセーヌを操って、天井から伸びる鎖に囚われていた双子を抱き上げさせる。
何故か双子が驚いた様な、探し物を見つけた様な表情をしているが、今は気にして居られるほどの余裕がない。
「今だ!」
それと同時に梁の上で待機していたモルガナに合図を出すと、余りにも目まぐるしく状況が動いたせいで固まっていたモルガナが自分の役割を思い出したように『マハガルーラ』で志帆と双子を捕えていた鎖を断ち切る。
「来て、カルメン!」
続いて行動を起こしたのは、梁から勢いよく飛び出して志帆を救出しようとする杏だった。
空中で呼び出したカルメンに着地時の衝撃を緩和させ、そのままの勢いで志帆を抱き上げて一目散に飛び上がり、俺の後ろにまで移動する。
瞬く間に助け出された志帆にカモシダ達が注目している間にヨシツネが三島を、アルセーヌが双子を抱き上げて俺の後ろに連れてくる。
それに加えて、モルガナが残りの三人、新島真と茶髪の少女、そして川上先生を縛っていた鎖を断ち切ってくれていたようで、三人とも警戒心を露わにしてはいるものの、今までのやり取りから一応は味方だと認識してくれたようで、大人しく俺達の後ろに隠れてくれている。
それを見届けた竜司がこちらにグッドサインを出してからオタカラのある部屋に飛び込んでいく。これで此処に居た人質は全員救出出来たし、オタカラの方も問題なく確保出来そうだ。
「……それで、俺様の言いたいことが、なんだって?」
『ク、ククク。成る程。やはりアスモデウスの言う通り、今のままで勝つのは難しそうだ』
五秒と掛からずに人質達を救出されて形勢逆転された筈のカモシダが、片手を失ったまま不敵に笑う。
やはり、妙だ。以前に遭遇した時のカモシダはこんな状況に置かれて笑っていられるほど肝が据わっていなかった。何かがおかしい。何を見落としている?
『では、仕上げだ』
ドロリ、と大広間の床から湧き出してきた黒いマガツヒが次々と盛り上がり、俺達とカモシダ達の間に壁を形成する。
そして、そのマガツヒの壁から見覚えのある人影が次々と現れる。
「あ、あれ、もしかして私?」
壁の様に盛り上がったマガツヒから現れたのは、志帆や杏、他にも秀尽学園で見かけたことのある女生徒や女性の教師の姿をした、鴨志田の認知上の人物たちだった。
それも全員が全員、ビキニタイプの水着やバニーガールの衣装などの布面積の少ない過激な衣装をその身に纏って、カモシダにすり寄っていく。
『我が半身よ。俺と共に来い。そうすれば、この認知上の肉人形だけでなく、本物の人間もこの世界に引き摺り込んで好き放題出来る。誰にも邪魔されず、誰にも憚る事無くな』
「ほ、本当、か?」
無数の女性の形をした認知存在を従えるカモシダの姿に何かしらの思うところがあったのか、フラフラと立ち上がった鴨志田が、熱に浮かされた様にカモシダに近付いていく。
『自分に嘘は吐かないさ。
「は、はは、ハハハ、ハハハハハ! やっぱり俺は特別だったんだ! 俺は、メダリストで、学園の王の鴨志田卓なんだから!!」
さっきまでフラフラと覚束ない足取りだった鴨志田は、今や全速力と言っても過言ではない速度で走り出し、膨大なマガツヒが渦巻いているカモシダと認知存在達の輪の中に混じってしまう。
「やめろ! 人間としての形を失うぞ!」
咄嗟に刀を抜いてカモシダに斬りかかるが、間欠泉の様に湧き出ているマガツヒの奔流に刀が押し返されてしまう。
それに加えて、何処からともなく飛んできた火球や、こちらを捕らえようとする深い緑色の触手をさばき切るのに手間取ってしまい、鴨志田達の合流を許してしまう。
「『五月蠅いんだよ。これが、俺だ』」
瞳を黄色く輝かせた鴨志田が渦を巻くマガツヒの中に消える。
それを確認したカモシダが右手を空に向けると、この大広間の奥、オタカラがある筈の部屋から黄金に輝く巨大な王冠が飛んでくる。
「この、クッソ、止まれぇぇぇえええ!」
ひとりでに空を飛ぶ王冠には、人間が一人取り付いており海賊を連想させる衣装を纏い空を飛ぶ船を操る大男と共に王冠の飛翔を妨害しようとしている。
だが、その努力も余り効果がないようで、王冠は着々とカモシダの手元に近づいている。
「スカル!?」
「スカル、もういい! オタカラから離れろ!」
王冠を押し留めるのに夢中で大広間にまで来ていた事に気付いていなかったのか、俺達の言葉に驚いた様な表情をしたスカルがペルソナを消して王冠から飛び降り、俺達がいる場所に着地する。
「わりぃ、止められなかった」
「気にするな。オタカラがあんなサイズで、カモシダが自由に操れる代物だとは思ってもみなかったからな」
そんな話をしている内に、手のひらサイズにまで縮小されたオタカラがカモシダの手に収まり、不敵に笑ったカモシダが認知存在達と共にマガツヒで出来た黒い膜に覆われる。
そして、真っ黒なドーム状の形をとったマガツヒの塊から心臓の鼓動の様な音が鳴り始め、段々と圧を増していくマガツヒの胎動に警戒心が駆り立てられる。
「全員戦闘用意! 戦えない人達は出来るだけ後ろに下がれ!」
俺がそう言うと同時に全員が武器を取り出し、凄まじい圧を放出し始めたマガツヒの塊を見ながら、油断なく構える。
「ジョーカー様!」
怪盗団のメンバーではない人間の声に振り向くと、そこに居たのは蘇生されたばかりのヤタガラスのサマナーが立っていた。
彼女は確か、志帆の護衛を担当していたサマナーだったか。
「傷は?」
「治しました。それよりも、気を付けて下さい。今のカモシダはただのシャドウではありません」
傷は治ったとしても死の痛みを体験してからの蘇生による心的ダメージが残って居るはずなのに、わざわざ言いに来たってことは今のカモシダには何かあるのだろう。
確かに気にはなっていたのだ。ヤタガラスのサマナーの中でも上澄みである彼女達をカモシダが殺せるのかと。
「我々はカモシダに敗れたのではありません。ついさっきまでここに居たアスモデウスともう一体の悪魔に敗れたのです」
彼女のその言葉と同時に、強大な圧力を放っていた黒いドームに皹が入り、その内側から巨大な何かが現れる。
『ハハ、ハハハ、ハハハハハ! 力が漲る! これで俺も特別な存在になれたんだ! 俺は
黒いドームを破って現れたカモシダの上半身がピンク色をしていたり、鴨志田を悪い方向にデフォルメしたような見た目であるのは、正直材料になった人間の事を考えればある意味当然なので、別にどうでもいい。
だが、そんなことよりも問題なのは、奴の下半身の方だ。
深緑色の体色に無数の触手。そして男性器を連想させる様な出で立ちとその巨体を支える黄金のチャリオットに乗った状態で、天を突く程に自身をそそり立たせているそのご立派な姿はシャドウに取り込まれても健在のようだ。
「アスモデウスの奴、シャドウに悪魔を取り込ませたのか!」
「恐らくは。それも魔王クラスの高位悪魔『魔王:マーラ』を、です」
現実の鴨志田の性格に変化が起きていた原因もハッキリしたな。そりゃあ一般人の精神世界に強大な悪魔が居座る様になったら性格に多大な影響が出るだろうさ。
ましてや、それが人間を堕落させる権能を持った魔王であれば尚の事。
「だが、相当無理をして取り込んだんだろうな。自意識を持って暴れていた時のマーラを知っているがあの時とは比べるまでもない」
流石のアスモデウスも一朝一夕で圧倒的に格下である人間のシャドウに魔王の名を冠する悪魔を取り込ませて、シャドウ側が主人格になるように調整するのは至難の業だったはずだ。
十中八九、適当な言葉か認知存在の女性を与えてマーラを騙し、志帆たちの護衛をしていたサマナー達と戦わせたのだろう。
そして、マーラが弱ったタイミングでカモシダに取り込ませ、マーラとの戦いで消耗していた護衛達を殺し、その後で明彦さん達陽動班を迎撃しに行ったという所か。
「本当に余計な事をしてくれる」
魔王マーラは今世で何度か戦ったことがある相手だが、どの戦いでも容易く勝てる戦いではなかった。
俺が戦ってきた悪魔の中でも間違いなく強敵に数えられるマーラを取り込んだことで、鴨志田達がどれだけパワーアップしているのか未知数なのが厄介だ。
「総員、攻撃を警」
『マララギバリオン』
俺達が行動を始めるよりも早く放たれた火炎魔法が視界を埋め尽くす。
並みの火炎魔法とは一線を画す威力を秘めたその緑色の炎は、城の最上階付近にあった大広間の壁と天井を含めたありとあらゆる物を吹き飛ばす。
当然、そこに居た人間達も含めて。
ようやく登場した最初のボスと専用技が強化されたご立派様のエントリーです。
実際、カモシダみたいな悪魔の誘惑に抗える人間ってどれだけいるんでしょうね。
創作だけをしていられる生活を保証してくれるなら、作者は誘いに乗っちゃいそうです。