ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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ご立派様のスキル名が相変わらず酷すぎて書いてて笑いが止まりませんでした。


第二十二話

 唐突に放たれた広範囲火炎魔法によって天井や壁どころか最上階の大広間が丸ごと吹き飛び、マガツヒで濁った夜空が良く見えるようになった場所で、異形のシャドウがひとりごちる。

 

『小手調べ程度のつもりだったが、捻り潰してしまったかぁ?』

 

 魔王マーラと自分の本体である鴨志田卓を取り込んだことによって、主人格として身体を操っているカモシダの力は、この状況を作り上げたアスモデウスの予想を大きく上回るほどに跳ね上がっていた。

 それこそ、魔法の威力、力の強大さだけを見れば圧倒的格上であるアスモデウスを上回る程に。

 

『素晴らしい。圧倒的な力だ。これさえあれば富も名声も女も思い通り……ああ、そうだ。もしも、もしもアスモデウスも取り込む事が出来たらどうなるのだろうか』

 

 だらしなく開いた口から、カモシダの欲望が形になったような涎を流しながら、吹き飛んでしまった元大広間を闊歩するカモシダ。

 時々人が隠れられそうなサイズの瓦礫をチャリオットの車輪で踏み潰しているのは生き残りが隠れていないかを確認しているのだろう。

 

『ああ、そうだ。女を囲うならガキだけじゃなくて女優やアイドルなんかもいいなぁ』

 

 取り込んだマーラの戦術を模倣している為か、敵を排除しきったかどうかを確認してはいるものの、カモシダの意識は既にこれからの事、どんな女をこのパレスに引き摺り込もうかという考えにシフトしていた。

 

 だから、気付かなかった。

 

「空間殺法」

 

 己の背後から襲い掛かってきた退魔刀(赤口葛葉)の刃に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの『マララギバリオン』という魔法の威力には驚いたが、カモシダの奴こっちの準備具合を甘く見たな。

 予告状を出すまでにあれだけ準備する時間があったんだ。魔法を吸収したり反射する効果を持つアイテムを準備しないわけがない。

 

 当然、今回の作戦にも不意打ち対策の為にある程度の数は持ち込んでいたが、奴の魔法から志帆達を守るために想定以上に使ってしまった為、残り数はほぼゼロになってしまった。

 もう一度あの魔法を使われたら志帆達を守る術はない。

 

 だから、カモシダが再び範囲攻撃を繰り出す前に決着を付けるしかない。

 

「空間殺法」

 

「八艘跳び」

 

 爆発染みた魔法の攻撃によって舞い上がった砂埃を引き裂いて現れた三つの白刃が幾重もの斬撃を作り出しカモシダの背中を斬りつけるが、奴の下半身から生えている無数の触手が俺とヨシツネの攻撃を迎撃する。

 手にした力の強大さは兎も角、戦闘経験の少なそうなカモシダでは絶対に反応できないと思っていたのだが、目論見が外れたか。

 

『お、おお!? 奇襲とは卑怯な!』

 

 なんだ。背後からの奇襲程度で驚いているということは、この触手はカモシダが自分で操っている訳ではないのか。

 恐らくは、カモシダに取り込まれたマーラの部分が攻撃に対して反射的に反応しているという感じか。

 

「確かに力だけは魔王に匹敵しているが、使い方がお粗末だな。力を使う奴がこんなに下手糞だと、取り込まれたマーラも嘆いてるんじゃないか?」

 

 無数の触手による防御と反撃は大した精度だが、かつて本物のマーラが操っていた時程には精度も威力も及んでいない。

 次々と繰り出される触手による反撃を躱しながら、逆に触手を切り飛ばして段々とカモシダの攻撃手段を奪っていく。

 

『調子に乗るなよ!』

 

「カルメン! アギラオ!」

 

 自分の周囲を走り回りながら触手を切り落としていく俺とヨシツネが鬱陶しくなったのか、大振りな攻撃を放とうとしたカモシダの顔面に火球が直撃し、攻撃をキャンセルさせる。

 魔法が飛んできた方をチラリと見ると、救出した三島の傷を回復アイテムを惜しみなく使用して癒しながら魔法を撃った杏の姿があった。

 

 そして、手持ちの契約悪魔が全員死んでしまっているであろうサマナー達が、傷を癒したばかりの体を引き摺って志帆達の護衛をしている姿も見える。

 ちょくちょくカモシダの行動を阻害するようなタイミングで飛んできている魔法は彼らの仕業か。

 

「パンサー! 炎系は効果がないみたいだ!」

 

「ホント、相性悪すぎ! 見た目もサイアクだし、もー、何が何でもブッ飛ばす!」

 

 モルガナからの情報で魔法が効かない事が分かると、杏は新調したサブマシンガンに攻撃手段を切り替えて、前衛を務めているメンバーに回復魔法と支援魔法を飛ばしながら銃弾をばら撒く。

 余り前衛に出て来ないのは、この激闘の場から逃がす術がない志帆達とまだ回復し切れていないサマナー達を何時でも守れるようにしているからだろう。となれば、ここは前衛が意地を見せないとな。

 

「スカル!」

 

「任せろ! 来いよ、キャプテン・キッド!」

 

 杏とモルガナによってタルカジャとスクカジャを重ね掛けされた竜司が自身の武器を振り上げ、カモシダの下半身であるチャリオット部分の右側にフルスイングで叩き付ける。

 そして、その攻撃に合わせるようにキャプテン・キッドが自身の乗る船の衝角を叩き付ける。

 

 補助魔法を受けた竜司達の攻撃は中々の威力が出ているようで、カモシダが大きく怯んで後退する。

 

『ガァッ!? おのれ、賊風情が!!』

《マラマラダンス》

 

 あの妙な踊りは確か、マーラの専用技で高確率で洗脳か魅了を付与する技だ。

 マーラと戦った時は、味方の半数が魅了されて大混乱に陥った事もある最悪の技だ。

 

「魅了系の魔法だ! 気をしっかりと保てよ!」

 

 いつでも状態異常を解除できるように備えながら身構えるが、技を繰り出したのがカモシダだったからかスキルは不発に終わってしまい、何の異常状態も発生せずに終わる。

 これじゃあただ変な踊りを見せられただけだな。

 

「残念だったな。人を堕落させる者としての『格』が、足りてないぞ!」

 

 カモシダの冷静さを奪う為に罵倒で煽りながら、拳銃に氷結弾を装填して連続で打ち込む。

 

『ぬ、ぬうぅ。冷たさで、し、萎んでしまう』

 

 カモシダはマーラを取り込んだ事で異常なくらいに強化されているようだが、逆を言えばマーラとしての弱点も引き継いでいるんじゃないかと踏んだのだが、どうやら正解らしい。

 

「弱点属性はマーラのものをそのまま引き継いでいるな。全員、氷結系に攻撃を絞れ!」

 

 俺の指示に反応した怪盗団のメンバーは銃に装填している弾を氷結弾に変えたり、氷結魔法の呪符を武器に張り付けて簡易的な氷エンチャントを武器に施してからカモシダに殴り掛かる。

 前世のゲームの様に弱点属性を突かれたからといって問答無用でダウンするということは無いが、それでも他の属性攻撃に比べれば明らかに攻撃の通りが良い。

 こうなってくると、この場に氷結属性に特化した能力者が居ればもっと良かったのだが、ない物ねだりをしてもしょうがないか。

 

『いい加減に、しろ!』

《地獄突き》

 

 弱点属性で攻撃され続けているせいで反撃できない事に業を煮やしたカモシダが、下半身のマーラの部分を突き出すようにして俺に攻撃を仕掛けてくる。

 だが、やはり戦い方が稚拙すぎる。

 

「テトラカーン」

 

 懐から取り出した呪符を空中に投げ、自身の前面に物理攻撃を反射する障壁を張る。

 相手の体勢を崩さず、アイテムや魔法が使用出来なくなるような状況にしないまま物理一辺倒の大技をだすなんて、反射してくれと言っているようなものだ。

 

『ガ、ガァァアア!?』

 

 一方的に殴られている今の状況を打破するために放った渾身の一撃だったんだろうが、物理反射魔法(テトラカーン)によって攻撃をそのまま跳ね返されたことで、攻撃に使った部分に自分のスキルが直撃した形になり、マーラの形をしている部分が複雑骨折したみたいな姿になってしまう。

 

「よ、容赦ねぇな」

 

「敵に与える容赦は持ち合わせてないからな。まあ、もしかしたら鴨志田本体の方にもダメージ行ってるかもしれんが、そこは自業自得という事で」

 

 下半身からの激痛に、ピンク色の体色を赤くさせたり蒼褪めさせたりして身悶えするカモシダを見ながら若干引いた感じの視線を俺に向ける竜司。

 男としてはあの痛みを想像するだけで顔面蒼白になるレベルだが、一々そんな事に配慮してられる程、俺は出来た人間ではない。

 

「しかし、カモシダの奴やけにタフだな。ガブリエルやアスモデウスの様に不死身と言う訳ではなさそうなのは幸いか」

 

 冷気を纏った釘バットに鞭に刀、直撃した部分を凍結させカモシダの行動を阻害しつつ肉体を凍らせて砕くという戦法を取っているのだが、奴の体力を減らすのに大概時間が掛かってしまっている。

 

「大技でゴリ押すか?」

 

「いや、現状でもダメージは通っている。このまま押し込めばいい」

 

 杏やモルガナがカモシダと一定の距離を保ちながらサブマシンガンとスリングショットで氷結弾を打ち続けてダメージを与えてくれているので、時間は掛かっているものの着実にダメージを蓄積させられている。

 だがまあ、一筋縄では行かないだろうな。

 

『クソ、回復、回復だぁあ!』

《妄執のトロフィー:精力増強》

 

 ダメージが蓄積して息も絶え絶えになったカモシダがそう叫び、チャリオットの上に置かれていたトロフィーに手を突っ込んで、トロフィーの中に入れられていた認知存在の女性達を掴み上げる。

 そして、そのまま彼女達を自分の口に放り込んで咀嚼をすると、傷を負ったカモシダの身体が瞬く間に癒え、魔法やスキルの連発で消耗していたマガツヒすらも回復してしまう。

 

「はぁ……もう見飽きたぞ、この流れ」

 

「アスモデウスやガブリエルの何番煎じだよ」

 

 消耗していた筈のカモシダが全回復するという光景を見て、つい口から漏れ出てしまった文句に竜司が同意する。

 まあ、高々全回復程度ならかわいいものだ。不死身ではなさそうだし、回復手段がなんなのかもハッキリしているし、何より肝心の本体の戦い方がなっていないから全回復しようが、範囲魔法に気を付ければ然したる脅威じゃない。

 

「モナとパンサーにはこのまま本体へ攻撃して注意をひいてもらって、俺達でトロフィーを破壊するぞ」

 

「よし。あの野郎に目にモノ見せてやるぜ」

 

 竜司とアイコンタクトを交わした後、愛刀を構えた俺が先行してカモシダに突撃する。

 自分の回復手段がなんなのか気付かれたことを理解したのか、カモシダが必死な形相を作り、俺に向かって無数の触手を差し向けて来る。

 

「ヨシツネ!」

 

 津波の様に押し寄せる触手を正面から斬り捨て、速度を落とすことなく前に進みながら、別の場所でカモシダの触手を斬り捨てていたヨシツネに指示を飛ばす。

 俺の指示を受けたヨシツネがカモシダの身体を駆け上って行き、一際高く飛び上がってカモシダの顔を真正面に捕らえられる位置に辿り着く。そして次の瞬間、ヨシツネの両手に握られた刀がカモシダの顔を横一文字に斬り付ける。

 

『ギャアアアアアアアァア!』

 

 ヨシツネの刃は、俺が指示した通りにカモシダの両目を切り裂き、カモシダの視界を奪う。

 そして、顔と眼球を斬られた痛みで大暴れしているカモシダが出鱈目に振り回している両腕と触手を刀でいなしながら、目標までの進路を確保する。

 

「行け! スカル!」

 

「応よ! 金時直伝、必殺のぉお! 『ゴールデンスパーク』!」

 

 竜司が自身の武器に雷撃を纏わせながら、カモシダの回復手段であるトロフィーにフルスイングで叩き付ける。

 それと同時に武器を起点として放たれた雷撃魔法(ジオンガ)が発動して、雷撃と物理攻撃のダブルパンチを食らったトロフィーに一瞬で皹が入り、竜司がバットを振り抜くと同時にトロフィーが砕け散る。

 本家本元の金時が使う技を魔法を駆使して見様見真似で再現した劣化技の筈だが、中々どうして。侮れない威力が発揮されている。

 

『あああ! 俺の、俺のトロフィーが!』

 

 トロフィーを破壊されたことで中身のマガツヒと認知存在達が床に流れ出し、そのまま空気に溶けるようにして消える。

 頼みの綱の回復手段を奪われたからか、それとも大事にしていたトロフィーを破壊されたからか、カモシダが凄まじい怒りの形相で俺と竜司を睨み付ける。

 

『貴様ら、楽に死ねると思うなよ!』

 

 




強大な力もそれを十全に振るえる技量なり戦術なりがないと、そう大した脅威にはならないって感じです。
まあ、なりふり構わずマララギを連発されると危ないですがね
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