ヤタガラスのサマナー達がレベル60前後
前作の仲間とライドウの仲魔達がレベル70前後
合一前のアスモデウスのレベルが80
今のライドウのレベルは82
ピクシーのレベルは99
そんで、合一後のアエーシュマのレベルは圧巻の142
レベル差的にゲームなら負けイベント確定なんですが、現実の悪魔相手にそんな理屈が通じる筈もないので勝たないと普通にBAD ENDです。
『さあ、続きと行こうか。ライドウ』
あの四人を瞬殺し、余裕綽々の態度を崩さないアエーシュマから目を離さず腰に吊るした封魔管を軽く触る。
金時とヨシツネはアエーシュマに負わされたダメージが大きすぎて、実体を保てなくなって封魔管の中に強制的に戻されてしまっている。
つまりは文字通りの瀕死状態になっているから、今すぐ彼らを再召喚する事は出来ない。
吹き飛ばされた明彦さんと真次郎さんもマガツヒの発露が途切れていないから死んではいないだろうが、今すぐに戦線に復帰するのは厳しいだろう。
合一とやらを果たし、あの四人を真正面から容易く打ち倒すまでに爆発的に跳ね上がったアエーシュマの戦闘力を鑑みるに、真っ当な手段でアエーシュマを倒すのは今の俺達では不可能だ。
もしもここがただの異界で、奴がただの悪魔だったなら一度撤退して態勢を整えてからリベンジするという選択もあったが、奴の目的がこのパレスを現実世界に浸食させて、あの馬鹿げた力を現実世界で振るう事だという以上、ここで奴を倒さなければならない。
だが、どうする。
奴の力が跳ね上がったのは合一とやらの影響なのは分かっているから、その合一を解けば弱体化させることは可能だろうが、そんな方法があるのか……
『ライドウ、儂を出せ』
アエーシュマとの力の差に歯噛みしていると、腰に吊るしている封魔管から声が聞こえてくる。
今まで契約してきた手持ちの悪魔達は全員出払っている為、現状で封魔管の中から俺に話しかけてこれる悪魔は一体しかいない。
「……マーラ」
『ここで貴様等が死んでしまっては儂が望む未来を見ることが出来ん。鴨志田と合体したのは儂にもそれなりの利があったからだが、今の儂からしてみれば百害あって一利なしじゃからな』
マーラが時間を稼いでくれるというなら確かに有り難い。
マーラが時間を稼いでいる間にアエーシュマが今までベラベラと喋っていた情報を直斗さん達と共有すれば勝利への糸口が見つかるかもしれない。
だが、俺達と戦い強引に鴨志田との合体を解除させられた事で万全の状態とは言い難いマーラが、今のアエーシュマ相手にどれだけ時間を稼げるのか。
「仕方ないわね。私も使いなさい」
契約によって魂の結びつきがあるマーラとテレパシーのような感じでやり取りをしていたのを遮る様に、斬り飛ばされた俺の腕を回復魔法でくっつけてくれたピクシーがため息交じりに言い放つ。
「致命傷を負ったってどうせ封魔管に戻るだけなんだから気にせず使いなさい。蘇生出来なきゃ終わりな人間と、封魔管さえ無事なら例え塵になっても復元できる契約悪魔。どっちを優先するかなんて言わなくても分かるでしょ、ライドウ」
「……分かった」
ついさっき契約したマーラを召喚し、俺の腕の治療を終えて肩に乗っていたピクシーに追加でマガツヒを譲渡する。
意図せず苦渋に満ちた声色になってしまった俺の言葉を聞いたピクシーが呆れた様に苦笑いし、マーラが愉快なモノを見たと言わんばかりに笑う。
「一分でいい。時間を稼いでくれ」
『一分は盛りすぎだ。精々三十秒が限界じゃろうて』
「そーね。もしも瞬殺されちゃったら、ゴメンネ」
そう言って、悪魔らしく、笑って死地に赴く二人を背にして直斗さん達の元に向かう。
当然、俺を抹殺しようとしているアエーシュマが後方に下がろうとする俺を見逃す筈もなく攻撃を放とうと距離を詰めてくるが、それを遮る様にピクシーとマーラが立ち塞がる。
『どけ! 今更貴様ら程度、物の数ではないわ!』
《メガトンレイド》
『ハハハ!! 高ぶって来たわ!』
《地獄突き》
「ライドウにあんな真似したんだから、取り敢えず百辺死になさい!」
《メギドラオン》
盛大な爆発音と何かがぶつかり合い崩れる音を背に、今までの戦いで天井も壁も吹き飛ばされ、風通しが良くなった城の一角に陣取って重症を負った明彦さん達を治療している仲間達の元に向かう。
「直斗さん!」
霊薬や高位の回復魔法を使い、床に寝かせられた明彦さんと真次郎さんへ治療を施しているサマナー達とりせさんを視界に収めつつ、何か考え事をしている直斗さんに声を掛けると切羽詰まった様子の直斗さんが俺の方に顔を向けて口を開く。
「怪盗団とサマナーの皆さんから粗方の状況を聞きました……時間が無いので結論から言います。僕は『オタカラ』さえ確保すればこの状況を打破する事が可能だと考えています」
指折り数えながら見聞きした事実と自分の推察を混ぜながら推理を展開する直斗さん。
どうやらアスモデウスを引き付ける為の囮をしていた時の負傷や消耗を癒さずに、サマナー達や怪盗団から集めた情報を使って推理し、この窮地を切り抜ける為の活路を作り出そうとしてくれているらしい。
「サマナーの方々から聞いたアスモデウス、いえ、アエーシュマの発言から推察するに、『合一』には悪魔と対象になる人間と『オタカラ』が必要かつパレス内でしか出来ない。これが絶対条件と見て間違いないでしょう。そして注目すべき点は、どれか一つでも要素が欠ければ合一は成り立たなくなるという点です」
「つまり、オタカラを奪って合一を成立させる条件を崩壊させてしまえば良いってことか……成程。合一が成された時点で現実世界に飛び出していかないのは、俺を排除する為だけじゃなくて、そもそも合一した状態を保つにはパレスの中に居ないといけなかったからか」
「恐らくは。なのでオタカラをアエーシュマから奪えば活路が開けるでしょう。ですが問題が一つ。アエーシュマが体内に取り込んでしまったオタカラをどうやって奪うか、です」
そう言えば、オタカラはアエーシュマが吸収してしまったんだったか。
オタカラを物理的に取り込んでいるのか、それとも概念として吸収してしまったのかで手出しできるかどうかが変わってくる。どうにかしてそれを判断できればいいんだが。
「
「目?」
「ワガハイが教えてやっただろう! 目に見えぬものを見る、怪盗に必須のスキル『サードアイ』だ!」
そう言えば、ピッキングツールとかの怪盗道具の作り方を教えてもらった時にそんな話をしていたか。
怪盗服を身に纏って自称怪盗になっただけでそんなスキルが身に付くとは思ってなかったから今まで意識してこなかったが、モルガナがあそこまで自信満々に言うのなら試してみる価値はある。
どの道他に術がない以上、何でも試してみるしかない。
「やってみるか」
マーラとピクシーを圧倒しているアエーシュマにピントを合わせ、某狩人×狩人で出て来たオーラを目に集中させて見えないものを見る『凝』という技をイメージしながら両目にマガツヒを集中させる。
「これは……なるほど。便利な技だな」
両目に集中させたマガツヒを通して見る世界は、全体的に青みがかった世界だった。
構造物は灰色に近い配色をしているのに対して、仲魔のマーラやピクシーは全身が淡い緑色の輪郭をしている。そして、敵であるアエーシュマは燃えるような赤い色をしている。
「オタカラは……あれか」
アエーシュマの真っ赤な輪郭の中に膝を抱えて丸くなった小さな灰色の人影が見える。あのシルエットを見る限り、あれはアエーシュマに取り込まれた鴨志田だろう。
そして、そのシルエットとは別に金色に光るメダルの様なものがアエーシュマの輪郭の中、人間で言えば心臓に当たる位置に存在しているのが見える。
どうやら合一を果たしたといっても、完全に一体化した訳ではないらしい。
「オタカラは人間で言えば心臓に当たる部分にある。まだ完全に一体化出来て無いからなのか、実体を持ってるようだから物理的に摘出できそうだ」
「心臓……あの暴力の嵐を掻い潜って、奴の急所を貫いて、オタカラを奪取する……あまり現実的とは言えませんね」
そう言った直斗さんの視線の先では、全ての触手を切断され黄金のチャリオットが消失し、天を突く程の威容を誇っていたマーラが真っ二つに両断されその身体を霧散させていた。
そして、俺の手持ち悪魔の中でも最強格であるピクシーがボロボロの状態でアエーシュマに踏みつぶされ、マガツヒに変換されてしまう。
アエーシュマに下された二体の悪魔達が自動的に封魔管へ戻ってきているのを感じ取れているからこそ動揺していないが、やはり仲魔が倒れていくのは気分の良いものではないな。
『我が戦った悪魔の中でも一二を争う実力だった。だが、
マーラとピクシーがその命と引き換えにして負わせた傷を回復魔法で癒しながら俺達に近付いてくるアエーシュマ。
やはり、以前のアスモデウスや既に倒したガブリエルが持っていた様な異常な回復力と不死性を今のアエーシュマは持っていないと見ていいか。他人の『ネガイ』を使った不死性は『オタカラ』を使った合一と相性が悪いとかそんな所だろう。
異常な回復力も不死性も無いのであれば、オタカラを奪うチャンスはある。
「現実的でなくとも、今は道理を蹴っ飛ばして無理を通すしかない……みんな、行けるか?」
俺の問いかけに、怪盗団を含めた仲間達全員が頷く。
それを見た直斗さんが、アエーシュマにバレないようにりせさんを介してテレパシーの様に一か八かの作戦を全員に伝える。
「作戦はシンプルです。我々の中で一番の実力者でアエーシュマの外殻を貫く事ができ、オタカラを奪える可能性が一番高いジョーカーを万全の状態でアエーシュマと相対させます。僕たちはそれを成す為の壁になり、道になり、奴を縛る枷になります……覚悟はいいですか?」
直斗さんの案は作戦とは名ばかりの特攻突撃だ。
ヤタガラスのサマナー達や場数を踏んでいる直斗さんは問題ないだろうが、怪盗団はどうだろうか。
「「「全ては護国の為に」」」
「「「勿論!」」」
ハッキリと全員がこの作戦に同意した事に僅かに目を見開いて驚いてしまった。
護国の為に今まで戦ってきた覚悟ガンギマリなヤタガラスのサマナー達ならいざ知らず、異能に目覚めてから日の浅い怪盗団のメンバーは命を懸けて無茶をする事に忌避感があると思っていたのだが。
「覚悟があるなら多くは言わない……勝つぞ!」
《マハタルカジャ》
《マハスクカジャ》
《マハラクカジャ》
ヤタガラス所属の三人のサマナー達がなけなしのマガツヒをふり絞って味方全員にバフを掛ける。
護衛任務中にパレスに引き摺り込まれ、マーラとの死闘で一度死んでいたにも関わらず意地と根性で立ち上がったサマナー達が先頭を走り、アエーシュマに突撃する。
『羽虫に用はない!!』
《アグネヤストラ》
「私たちが盾になります!」
マーラに倒された手持ちの悪魔は再召喚出来ず、マガツヒも殆ど残っていない。にも関わらず、鍛えた肉体を盾にすることでアエーシュマの攻撃を防いだサマナー達がその場に崩れ落ちる。
事前に掛けたバフと普段からの血の滲むような訓練のお陰か、肉体が消し飛んで即死するような事はなかったが、全身に大きな裂傷が刻まれ打撲痕が出来る程に受けたダメージは大きい。放っておけば死に至る程の負傷だ。
彼らがこの戦いの中でもう一度立ち上がるのは難しいだろう。
「だが、よくやった!」
三人がアエーシュマの攻撃を防いでくれたお陰でアエーシュマに大きな隙が出来た。
ここで一気に距離を詰めて決着を付ける!
「ご武運を、ライドウ様」
スキルによる攻撃を受け切って崩れ落ちたサマナー達をその場に置いて、更にアエーシュマとの距離を詰める。
それを見たアエーシュマがマガツヒを集中させた右手を俺達に向ける。
『消し炭になれ!』
《マハラギダイン》
「炎なら私が!」
アエーシュマが放った紅蓮の炎を受け止めるべく、ペルソナを召喚した杏が前に出る。
だが、いくら得意属性が火炎で強度の高い火炎耐性を持っているとはいえ、圧倒的に格上のアエーシュマの炎を耐えられるとは限らない。
「待て、パンサー!」
「大丈夫。信じて!」
俺の制止を振り切って前に出た杏が、押し寄せる炎の津波にその身を晒す。
「いくよ。カルメン!」
杏が召喚したペルソナが炎の津波をその身で受け止める。
だが、全てを焼き払わんとする灼熱の炎は、杏とカルメンの火炎耐性を容易く貫通し、二人の身体を瞬く間に焼き始める。
「ああ、あああ、ぁぁぁぁああああああ!」
マガツヒを身体とペルソナの防御力に全振りして灼熱を耐えるパンサー。
ほんの一瞬にも、無限に近い時間にも思えた火炎の津波が収まると同時に、炎によるダメージを受けなかった面子は更にアエーシュマとの距離を詰めるべく走り出す。
アエーシュマに向かって走り出した俺達の後ろで、ダメージ過多で顕現出来なくなったペルソナが空気に溶ける様に消え去り、最高クラスの防具と怪盗服という追加の防具があってもなお両腕が半ば炭化する程の炎を耐えきった杏がその場に崩れ落ちる。
「あと、任せたよ。ジョーカー」
「ああ!」
ペルソナの消滅による反動と両腕に負ったダメージのせいで気絶したパンサーをその場に置いて、アエーシュマとの距離を詰める。
それなり以上にあったアエーシュマとの距離はもう殆どない。このまま奴に肉薄して胸部を切り開き、物理的にオタカラを奪い取ればこっちの勝ちだ。
「往生しろや!」
『小癪な!』
アエーシュマの脳天目掛けて竜司が振り降ろした霊木釘バットをアエーシュマが左腕でガードするが、ステータス的に圧倒的格上である筈のアエーシュマの動きが何故か止まり、左腕の外殻に僅かに皹が入る。
よく見てみると他にも攻撃を受けていない筈の部分に綻びが生まれているし、アエーシュマから感じ取れるマガツヒの量も合一直後に比べれば幾分か見劣りする。『合一』という状態に何か不具合でも起きて力の総出力が落ちてきているのかもしれない。
だが、それでも奴の力は圧倒的だった。
『ぬぅん!』
皹の入った左腕に無理矢理力を込めて竜司の霊木釘バットを弾いたアエーシュマは、その拳をがら空きになった竜司の腹に叩き込んで床に叩き付け一撃でダウンさせる。
「が、ぁ!?」
「スカル!」
『よそ見か! ライドウ!』
続けて振るわれた右拳を、マガツヒを流すことで一時的に元の刀身の長さを取り戻した愛刀で受け止める。
受け止めた拳の威力は凄まじいが、それでもさっきまでの防御不可能な程の威力はない。受け方や力の流し方を工夫すれば無傷で受け流すことも可能な程度まで出力が落ちてきている。
『死ね!』
《ゴッドハンド》
今のままでは圧しきれないと判断したのか、本来なら巨大な拳をロケットパンチの様に射出して攻撃するスキルを自分の拳に纏う事で攻撃力を補ってきたアエーシュマの拳を迎撃すべく刀を正眼に構える。
そして、刀を振るおうとした瞬間、見慣れた銀髪の男性が自分の拳をアエーシュマの拳にぶつけて大きな隙を作りだす。
「今度はしくじるなよ、アキ!」
「勿論だ。やられっぱなしは、性に合わん!!」
アエーシュマの攻撃に割って入って来たのは、命にかかわるレベルの重傷を負って治療中だったはずの明彦さんと真次郎さんだった。
渾身の攻撃を防がれたことで生まれたアエーシュマの隙を突き、今度は直斗さんが愛用のリボルバーを携えてアエーシュマの懐に潜り込む。
「これだけ近ければ、ご自慢のスキルは使えませんね!」
銃声が一発だけに聞こえる程の高速六連射。
胸部の外殻に銃口を押し当てた状態で放たれた貫通属性の銃弾は、アエーシュマの硬い胸部外殻に皹を入れ、相当な硬度を誇っていた外殻を破壊する。
『この、虫けらがあああぁぁああ!!』
ここに来て漸く俺達が何を狙っているのかを察したアエーシュマが怒りを露にしながら、直斗さんを殺害するべく左腕を振り上げる。
「そうは、させねー、ぜ」
だが、その拳が振り下ろされることは無かった。
『き、貴様!』
「このスカル様が、あんなパンチ一発で、倒れてたまるかよ!」
アエーシュマの左腕に抱きつくような形で拘束し、更にペルソナにも腕を掴ませてアエーシュマの動きを封じた竜司がニヒルに笑う。
「ナイスファイトだ、スカル!」
右腕は弾かれ、左腕は拳を振り上げた状態で動きを拘束され、急所である『オタカラ』を収めた心臓付近の外殻は罅割れ砕けている。
ここで決めるしかない。
アエーシュマの心臓を貫く軌道で蒼く輝く刀身を全身全霊で突き出す。
「覚悟!」
『負ける訳に、いくかぁあああ!』
完全に死に体を晒していたアエーシュマが自身の体内にあるマガツヒを爆発させるように猛烈な勢いで放出する。
突然発生した突風を伴うマガツヒの放出に、アエーシュマの動きを抑えていた竜司達が吹き飛ばされる。
動きを阻害するモノが無くなったアエーシュマは自由になった左手を突き出し、ワザと俺の刀に貫かせる事で刺突の勢いを落とし、更に拳を握り込むことで心臓に届かないギリギリの位置で刀の動きを完全に止められてしまう。
それに加えて、アエーシュマが自分のマガツヒを俺の刀に無理矢理流し込んで来る。
『これで、マガツヒ操作で刀身の長さを操作することは、出来ない! 我の勝ちだ、ライドウ!!』
左腕を犠牲にして俺の攻撃を止めたアエーシュマが残った右腕を振り上げる。
このタイミングで回避行動には移れない。とはいえ、このまま攻撃を受ける気もない。
「押せ!! モナ!!」
これまでの攻防に紛れてアエーシュマの後ろに回り込んでいたモナが真っ黒な車に変身し、背後からアエーシュマに激突する。
「うぉぉぉぉおおおおお!」
タイヤが空転するほどの勢いでアエーシュマの背中に衝突したモルガナカーの存在が予想外だったのか、後ろからの攻撃に備えていなかったアエーシュマの身体が前に押され、刃の切っ先が罅割れた胸部に深く突き刺さる。
「これで、終わりだ!
青い輝きを放つ刀身がスキルの補助を受けて強引に振り抜かれ、アエーシュマの胸部を深く切り裂く。
そして、斬り飛ばした外殻の内側にあった
「その『オタカラ』、頂戴する!!」
アエーシュマの腕に突き刺さって抜けなくなった愛刀の柄から手を離し、そのまま右手をアエーシュマの穴の開いた胸部に突き入れる。
念の為に『サードアイ』を発動させているこの状態で、黄金に輝いている『オタカラ』を見逃す筈もなく、そのままオタカラを右手で掴んで引き摺り出す。
『が、があああぁぁああ!!』
オタカラを強引にアエーシュマの身体から引き摺り出すと同時に奴の身体を蹴飛ばして距離をとる。
強引に奪ったオタカラは俺の手に収まると同時にその姿を悪趣味な王冠から、何かの優勝メダルのようなモノに姿を変える。
これは、鴨志田の歪んだ欲望を形にした王冠から、歪む前の鴨志田のネガイに形を変えたということなのだろうか。
『ラ、ライドウゥゥゥゥウウウ!!』
怒りの感情が多分に含まれた絶叫を上げたアエーシュマの身体が激しく痙攣し、身体に蓄えていた膨大な量のマガツヒが漏れ出し始める。
恐らくは、オタカラが奪われた事で合一が解かれ、自身の肉体の制御が不可能になってきているのだろう。
「お前を生かしておく訳にはいかない。ここで止めを……なんだ?」
オタカラを奪い取ると同時にパレス全体が揺れ始める。
始めは微小と言ってもいいレベルだった揺れは、瞬く間に普通の人間なら立っている事すらままならない程の揺れになり、それに加えてカモシダの城どころかマーブル模様の薄暗い空にも亀裂が奔り始めている。
『これで、終わったと思うなよ。ライドウ!』
計画が破綻した事に対してなのか、それとも制御しきれなくなった自身の肉体に対してなのかは分からないが、口汚く罵声を吐いたアエーシュマは自分の身体から気絶した鴨志田を引き摺りだし、俺に向かって放り投げてくる。
「な!?」
投げ飛ばされた鴨志田を反射的に受け止めてしまったせいで生まれた一瞬の隙を突いてアエーシュマが城から身を投げ出して逃げ出してしまう。
しまった。弱体化した今が奴を仕留める絶好のチャンスだったのに。
「クソ……今は皆の安全が優先か」
見た限りではただ気絶しているだけで命に別状はないようだが、気絶している鴨志田を放って置く訳にもいかないので米俵のように肩に担いで、所々床が抜け落ち始めた城を走り抜ける。
アエーシュマに吹き飛ばされた面子は行動不可能になるような怪我は負っていなかったらしく、他の気絶していたり負傷しているメンバーを助け起こしたりして一か所に固まっていた。
「みんな、無事か」
「なんとか、ってところだな。サマナー達とパンサーの怪我が酷いから早く治療しないとマズいぞ」
自身もアエーシュマから全力の拳を食らっていて治療が必要な筈なのに、他の人間の心配をする竜司に頷き返してモルガナに声を掛ける。
「オタカラを奪った影響だろうがパレスが崩壊し始めている。モナ、全員乗せて脱出出来そうか」
「定員オーバーギリギリだが、何とかするさ!」
そう言ったモルガナが空中でくるりと回転した次の瞬間、二頭身のマスコットキャラクター染みた姿が大きな車に変身する。
そして、重傷を負っているメンバーにできる限りの回復魔法と回復アイテムを使用して急いで応急処置を施し、俺を抜いた全員を強引にモルガナカーに乗せてから運転席に座るりせさんに話しかける。
「それじゃ、後はお願いします」
「……援軍とかは、待てない?」
「完全に取り逃がした時のリスクが大き過ぎます。ここで確実に仕留めないと、ロクな事にならないでしょうから」
「……分かった。怪我にだけは気を付けてね」
りせさんの言葉に頷き返してモルガナカーから離れた俺に向かって、焦った表情をした竜司が窓から顔を出す。
「おい、何してんだジョーカー。早く逃げないとマズいんじゃないのかよ!」
「オタカラを手に入れた時点で今回の怪盗団としての仕事は終わった。だが、
アエーシュマから奪い、懐に入れていたオタカラを取り出して竜司に向かって投げ渡す。
飛んできた『オリンピックの金メダル』を竜司が危なげなくキャッチしたのを確認したりせさんが有無を言わせずにモルガナカーを発進させ、城や空だけでなく、世界全体が崩壊し始めたパレスの中を突っ切って行く。
あれなら何とか脱出できるだろう。
「さて、と」
パレス自体が崩壊し始めたことでさっきよりも感じ取りづらくなってはいるが、合一が解かれ崩壊し始めていたアエーシュマの肉体からは高濃度のマガツヒが漏れ出ていた。今ならまだその痕跡を追跡出来る。
好き放題やらかしてくれたアエーシュマをみすみす取り逃がすつもりは、無い。
アエーシュマが逃げ出したのと同じ場所から飛び降りて、その真下にあるアエーシュマが逃走に使った現実に繋がる空間の裂け目に飛び込む。
「知っていることを洗いざらい吐いて貰うぞ。アエーシュマ」
この世界線だと怪盗団のメンバーもわりかし修羅勢です。
パレスやメメントス以外の異界にも潜っているし、前作の先輩方からスパルタ教育を受けているのでその辺の心構えとかが原作と違う感じです。