ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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今話にてカモシダパレス編完です。
長かった……え、まだ最初のボスをシバいただけだって?
嘘でしょ……


第二十七話

 ライドウ達から逃げ出したアエーシュマは、とある場所を目指して夜明け間近の渋谷の街を走り続けていた。

 

『やはり()()()()合一を成した直後に、全力の戦闘をするのは無理があったか』

 

 本来の力を取り戻した事で純白に輝いていた外殻は、今や煤と自身の身体から流れ出たマガツヒに塗れて元がどんな色だったのか分からないほどに汚れてしまっている。

 そして本来なら心臓があるべき位置に大きな風穴が空けられ、身体の至る所に刀傷を作り、外殻の末端がボロボロと崩壊しているのにも関わらず傷付いた今の身体でも出せる最高速度で目的地に向かって走り続けている。

 全ては己の野望を成し遂げる為に。

 

『今回は失敗に終わったが、得難い教訓とデータを得た。次は、次こそは必ず……!』

 

 負担の大きい『合一』の実行と、ライドウ達による強制的な『合一』の解除によって発生した多大なペナルティはアエーシュマを著しく弱体化させていた。

 アスモデウスだった頃と同程度にまで弱体化してしまった力をどうにかして補填する為にアエーシュマは人間のシャドウが集まっているメメントスを目指していた。

 

 巨大な認知異界であるメメントスは今、渋谷駅を利用する人間のシャドウが囚われている地の底の監獄である。

 そこに囚われているシャドウを食らって一時的に力を補填し、巨大な認知異界に陣取る事でアエーシュマとしての自分を保ちながら鴨志田以上に自身との合一適性が高い依り代を見つけ出し、再度『合一』を果たす事をアエーシュマは目論んでいた。

 

『あの簒奪者の創造物を頼るのは業腹だが……いや、奴の計画を()()()()()()と考えればよいか』

 

 アエーシュマ達のように『知恵』を奪われ悪魔に身を堕とした者達が『簒奪者』と呼ぶ存在。

 今の世界の法則を作り上げた簒奪者の置き土産であるメメントスの主を、自分の計画の為に利用する事に仄暗い愉悦を感じてしまったアエーシュマは見過ごしてしまっていた。

 

 夜明け前だろうと普段はそれなりに人影がある渋谷の街に()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どういう、ことだ』

 

 メメントスに逃げ込もうとしたアエーシュマの目には、ついさっきまで死闘を繰り広げ、そしてパレスで立ち往生している筈の葛葉ライドウが素知らぬ顔で自分の目的地への入り口を封鎖している姿が映っていることだろう。

 

『なぜ、貴様が此処に居る!』

 

「鴨志田に憑りついてせこせこパレスで悪巧みしている奴が予備のプランを用意してないとは考え辛かったからな。メインの計画が失敗したら他に把握しているだろうパレスに逃げ込もうとするのは簡単に想像できた」

 

 それに加えて、パレスから逃げ出した後のアエーシュマの痕跡がほぼ一直線に渋谷駅を目指していたというのも先回り出来た要因だ。

 こんなにも早く追手が来るとは思っていなかったからか攪乱工作をしてなかったのも命取りになったな。あれだけ好き放題していた悪魔をみすみす見逃すわけないだろうが。

 

「先回りしている途中でこの一帯をヤタガラスの権限を使って封鎖した。これで一般人を喰い殺してマガツヒを補給する事は出来ない」

 

 ヤタガラスの戦闘要員達は世界各地の異界平定に東奔西走しているから直接的な援軍を呼ぶことは出来ない。

 だが、政府や警察関係者に働き掛けて一部区間を封鎖するくらいなら異能を持たない後方要員でも問題なく手配できる。

 それに加えて、予備の武装やヤタガラスで保管している秘蔵の全回復アイテムを用意することも。

 

「お前は、此処で死んで逝け」

 

 パレス内で左腕を斬り落とされたせいでライドウ装備の左腕側が無防備になってしまったので予備として保管されていたもう一組の装備を纏い、予備の刀の切っ先をアエーシュマに向ける。

 

『何処までも、邪魔をしてくれる! 貴様こそ死んでいけ、ライドウ!』

 

「葛葉四天王が一角。十五代目葛葉ライドウ。推して参る!」

 

 崩壊する身体に残った僅かなマガツヒを無理矢理全身に巡らせて殴り掛かってきたアエーシュマの右腕と真正面から打ち合う。

 アエーシュマの拳の外殻はそれなりの硬さを未だに堅持していたが、力を大幅に減じたせいか一瞬の拮抗の後に蒼い輝きを宿した刃がアエーシュマの拳を縦に切り裂く。

 

『おおお!』

《ゴッドハンド》

 

 拳を唐竹割りにされても動じることなく無事な左腕にスキルを纏わせて放たれた追撃に対して、姿勢を深く沈める事で回避する。

 そして、がら空きになった胴体目掛けて渾身の一撃を放つ。

 

「これで、終わりだ!」

《朧一閃》

 

 万全の状態で放たれた横一文字の斬撃はソニックブームを発生させながらアエーシュマの胴体を両断し、アエーシュマの背後の道路に深い亀裂を刻む。

 そして斬撃によって発生した突風が両断されたアエーシュマの身体を吹き飛ばし、そのついでに効果範囲内に建っていた街路樹や道路標識、街灯に信号機も纏めて薙ぎ倒す。

 

「……やっぱり、現実世界で全力を振るう訳にはいかないな」

 

 アエーシュマを斬る為にはあれだけの威力が必要だったとはいえ、斬撃の効果範囲内にあったあらゆる物を薙ぎ倒してしまった事に内心冷や汗を掻きつつも、吹き飛ばしたアエーシュマを追いかける。

 確実に息の根が止まったことを確認するまでは安心出来ない。

 

 突発的なハリケーン被害にあったよな様相を呈している渋谷駅を歩き回り、倒れた街路樹や街灯やらを乗り越えながら暫く探し続けて、漸くアエーシュマを発見する。

 

『ここまでされては認めざるをえんか……我の完敗、だな』

 

 右腕を斬り裂かれ、下半身は完全に消え去り、切断面から大量のマガツヒを流しながらもアエーシュマはまだ生きていた。

 生きているなら丁度いい。今回の騒動についてこいつには色々と聞きたいことがある。

 

「悪魔の流儀に習うなら、勝者が全てを持っていくんだろ。洗い浚い知っている事を吐いて貰うぞ」

 

『フ、フハハ。そうだな。勝者がすべてを手にするのが悪魔の流儀。知りたい事は教えてやろう。我が答えられる事に限るがな』

 

「……それじゃあ、合一とナホビノってのはなんだ」

 

 とりあえずこれだけは聞いておきたかった。

 大抵の異能関係の事柄が書かれているヤタガラスの古文書にすら、合一やナホビノとやらに関連する記述は無かったと記憶している。

 もしもあれだけの力を発揮する存在がこれからポコジャカ現れたりしたらたまったもんじゃない。対策を打つためにも、俺の事をナホビノと呼んだ理由を知る為にも、ナホビノに関する情報は聞きだしておきたい。

 

『それは答えられない。我に合一の方法を伝授した『お方』との契約があるからな』

 

「はぁ……まあ、そう上手くはいかないか」

 

 アエーシュマが自力でパレスを利用した合一する為の手段を編み出したというなら、ここで口封じしてしまえば他の悪魔やダークサマナーにこの情報が広まる事はなかったのだが、誰かからの入れ知恵だとすると最悪の場合この知識が裏の世界へバラ撒かれることになるかもしれない。

 

『だが、その疑問に答える事が出来るお方を教えてやろう』

 

「……それは、誰だ」

 

()()()()()()()と交流のあった貴様なら、この世界に法則を敷いた四文字を名乗る簒奪者を打倒せんとする『閣下』に心当たりがあるだろう』

 

「閣下って……おい、まさか」

 

 様々な主義主張を持つ悪魔達が決して直接的に名前を呼ぼうとはしないにも関わらず、共通して敬意を表す存在に俺は心当たりがある。

 マヨナカテレビを攻略していた時に出会った別世界の人修羅と協力して何とか魔界に追い返した、()()()()()()()()()()()()()()()()の姿をしたとある悪魔の名前が脳裏をよぎる。

 

「……自分の世界に戻った人修羅を追って、この世界からは居なくなったと思ってたんだがな」

 

『人修羅が居た世界の閣下はな。だが、この世界の閣下はあの出来事を見て人修羅を生み出すのではなく、ナホビノによる()()()()()に方針を切り替えたのさ』

 

「……」

 

『ククク。力と可能性を示したばかりに閣下に目を付けられるとは難儀な事だな、ライドウ。精々あの方が手繰る遊戯盤の上で踊り狂うがいいさ』

 

 メメントスやパレスは秩序(ロウ)側の企みによる産物なのは明らかだ。だから混沌(カオス)側はぺ天使共の企みに相乗りしてあわよくば労力を使わず計画と成果を横取りしよう、みたいな感覚で協力していたのだと思っていた。

 だから、混沌(カオス)よりのカモシダパレスにガブリエルが居て嫌々ながらもアスモデウスと協力して居たのだろうと。

 

 だが、前提から違っていたとしたら。

 

 ぺ天使共は奴らの独善で行動を開始し、混沌(カオス)側の悪魔達は閣下とやらの意を汲んで秩序(ロウ)側の計画を促進させつつ最終的に乗っ取る前提で行動していたのだとしたら、最終的に決裂するのだとしても不俱戴天の天敵である筈の秩序(ロウ)陣営と混沌(カオス)陣営が協力する事を意味している。

 

 ……まあ、悪魔はこらえ性が無いからどうせ直ぐに計画を破綻させるのも厭わず両陣営の間で殺し合いを始めるだろうが、多少なりとも協力し合う腹積もりがあるってことが厄介だ。

 

「面倒だな」

 

 疲労感がたっぷりと混じった溜め息を吐いた俺を嘲笑っていたアエーシュマだが、唯一残っていた上半身にも大きな皹が入り始め、アエーシュマから感じとれるマガツヒの波動がそこらの低級悪魔よりも小さくなっていく。

 特大の爆弾情報は聞き出せたが、それ以外は全く聞き出せなかったか。

 全てを知りたければ、ルシファーを問い質せという事か。

 

『色欲の罪を背負わされ、苦汁を舐めるばかりの悪魔としての生だったが、暴力と死闘に塗れた最後の一瞬(今夜の戦い)は、存外、悪くなかったな……』

 

 丁度夜が明け、朝日の光がアエーシュマの姿を照らし出すのと同時に肉体を構成するマガツヒが抜けきり、アエーシュマの姿がゆっくりと消えていく。

 完全にマガツヒの反応が消えているから反撃の為の偽装だったり、何らかの手段で逃走したという事はない。間違いなくアエーシュマは消滅したと判断していいだろう。

 

「……長い一日だった」

 

 夕暮れ時にパレスへ突入したのに、一件落着したのは夜明け間近だ。

 流石に何度も死にかけたり、使用時の負担が大きいソーマを使ったせいで肉体的にも精神的にも消耗が激しい。今日が休みで助かった。報告とかを後回しにすれば半日位は休めるだろう。

 考えることも対策しないといけない事も山の様にあるが、今日くらいは休ませて欲しいものだ。

 

 ヤタガラスの情報部に簡単に報告を飛ばしてから地面に固定されていたお陰で何とか無事だったベンチに座り、ヤタガラスの事後処理班が到着するのを待ちながら暫く微睡んでいると聞き覚えのある若い女性の声が聞こえて来る。

 

「う、うわ。大惨事じゃん……何が始まるんです、大惨事大戦だ。って奴じゃん」

 

 疲労が凄まじく立ち上がるのすら億劫だったので首だけを動かして声の主を確認すると、そこに居たのはヤタガラスで『赤いイセカイナビ』の対策プログラムを組んでいる筈の双葉が立っていた。

 

「双葉……?」

 

「ライドウ……お前本当に凄い奴だったんだな。私はあんな風には戦えないよ」

 

「戦い? ……待て、何を言っている」

 

「あ、そうだった、今マジでヤバいんだよ! 手を空けられたのが私しかいなくてインドア引きこもりの私が臨時で連絡員してんの!」

 

 俺の問いかけにハッとした様な表情をした双葉が自分のスマホを取り出して赤いイセカイナビを起動させて俺に突き出してくる。

 その画面に映っていたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()だった。

 

「赤いイセカイナビでお前達の戦いが配信されてて、マジで大変なんだって!」




因みに、ここで取り逃がしてたら再び合一神としての力を取り戻し力を安定させたアエーシュマがメメントス攻略時の中ボスになってました。
やっぱり、後顧の憂いを断つためにも敵はどこまでも追いかけてしっかりと根切りにしないと駄目ですね! 

そして、最後の展開は折角スマホにアプリを強制的に入れられるんだから、この位はやってもよかったと思うという自分の思惑を反映した結果です。
原作の黒幕の思惑的に怪盗団を持ち上げてる為にいい所を見せて、それから突き落とす為に悪い所を捏造して不特定多数にばら撒く方法としてこれ以上ないツールだと思うんですがね。
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