ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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妙に幅広いオカルト知識を持ってる人間が、この世界観で狙われない訳がないんですよねー


第二十九話

 新学期が始まり、新入生も何となく新しい生活に慣れ始めた4月の下旬。

 朝礼で唐突に告げられた全校集会の開催に文句を漏らしながらも体育館に集まった生徒達は、またぞろハンプティダンプティめいた校長の長話を聞かされるのかと思っていた。

 そしてステージに登壇した校長の姿を見た生徒達が予想通りの光景にうんざりした表情をしていると、普段のジャージ姿とは打って変わって喪服の様な礼服を身に纏った鴨志田卓が現れて、いざ喋ろうとしていた校長を押し退けてそのマイクを握る。

 

「今日、この場に集った皆さんに、私は懺悔しなければならない事があります」

 

 バレー部を全国大会に導き、秀尽学園の名を全国に知らしめた名コーチの尋常ならざる様子に生徒達は困惑を隠せずにいる。

 そも、関わりの薄い生徒にとって鴨志田という男は爽やかで気さくな体育教師という認識であり、後悔が滲むような表情を浮かべる男という認識はないからだ。

 そして、関わりが深い生徒にとっては、鴨志田はわざわざこんな場を設けて生徒相手に懺悔する様な殊勝な男ではないと認識しているが故に。

 

「私は、教師としてあるまじき行いに手を染めました。導くべき生徒達に指導と称して暴力を振るい、再起不能になるほどの怪我を負わせ、あまつさえ」

 

 鴨志田の唐突な罪の自白に動揺を隠せないでいる生徒達と発言をやめさせようとする校長に構うことなく、鴨志田は更に言葉を重ねる。

 

「あまつさえ、自分の立場を笠に着て、特定の女子生徒達に性的行為を強要しようと脅迫めいた行為をしていました」

 

 鴨志田の言葉に衝撃を受けたのか生徒も教師も大きく騒めく中、閉め切られていた体育館の扉が開き、青い制服を着た警察官が二人現れたことで騒めきが更に大きくなる。

 

「坂本くん、高巻さん、鈴井さん、バレー部の皆。そして私が廃部に追いやった陸上部の皆……本当に、本当に申し訳ない」

 

 ステージから降りて、深々と頭を下げる鴨志田の姿を見たことで漸く事態を呑み込むことが出来たのか、ステージから飛び降りて鴨志田に詰め寄り発言を撤回するように叫ぶ校長と、怒りを露わにする元陸上部の面々が大騒ぎし始めたのを少し離れた所で見ていた竜司と杏、そして志帆に目を向ける。

 

「鴨志田の罪は異能を知らない人達でも裁く事が出来る。後は警察に任せるとしよう」

 

「私としては、もう十分に鴨志田には罰が与えられている気もするんだけどね」

 

「あんな姿を見ちゃうと、どうしてもね」

 

「それでも、ケジメは付けねーと。なあなあで済ませたら事情を知ってる俺達以外の被害者が安心出来ねぇだろ」

 

 怒りと困惑を露わにする生徒達と顔を真っ青にしている校長をしり目に、警察官に連行される鴨志田を見ながらも、以前の燃え滾る様な怒りの表情をみせない杏と志帆。

 隣にいる竜司も眉間にシワを寄せて鴨志田を睨み付けているものの、二人の言葉を否定する気はないらしい。

 

 まあ、そうだろうな。

 だって、つい最近まで鴨志田は実質的に()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カモシダパレスを崩壊させてから数日が経ったある日の事。俺は怪盗団の面々と志帆を連れて都内にあるとある病院に脚を運んでいた。

 この病院は、つい五年程前に立てられた比較的新しい病院なのだが、世界各地から最先端技術が集い、各分野の名医が大勢所属している事で瞬く間に世界有数の病院として名を知られるようになった。

 普通はたった五年ので国内有数の大病院を作り上げ、日本全国どころか世界にまで手を広げて巨大な医療施設グループを立ち上げるのは余程の資金とコネがなければ不可能である。

 

 だから勿論、この病院の拡大には裏がある。

 

 此処はヤタガラスの息が掛かった施設で、表向きは普通の病院として稼働しているものの、本命は霊障や呪い等の普通の医療では解決出来ない症状をオカルト治療法を用いて癒す為の施設だ。海外に展開しているアレやコレやの医療施設も突き詰めれば土着の信仰を守り、メシアンやらガイアーズの蛮行を食い止める為の一助として展開している。

 

 まあ、インチキオカルトではなく本当に効果がある霊能治療を表側の患者相手にも使用する事があるせいで不治の病を治療できると表側でも瞬く間に有名になってしまい、設立当初の目立たず国内を守れるくらいに細々とやっていこうなんていう経営方針は最早明後日の方向に突き進んでいるのだが。

 

 そんな病院の中の広々としたエントランスを通り、親族とヤタガラス関係者以外は立ち入り禁止の区域に存在する霊障の影響で社会復帰が見込めない人間が収容されている区画にある一室に足を踏み入れる。

 そして、俺達が足を踏み入れたその部屋の中には、白衣を着た黒縁メガネを掛け無精ひげを生やした医師とベッドに寝かされた男性が居た。

 

「……ぁ……ぅ…ぃ」

 

「…様子はどうですか?」

 

「駄目ですね。やはり魂が死んでいます。真っ当な治療方法では社会復帰どころか、生命の維持すら不可能でしょう」

 

 白いベッドに寝かされ、天井を見つめたまま言葉になっていない呻き声を洩らしているのは、アエーシュマとの合一からどうにか救い出した鴨志田卓だ。

 だが、その様子は尋常のものではない。

 両目の瞳孔は完全に開き切っていて、右目は焦点が定まらず忙しなく動いているのに、左目は天井を見つめたまま微動だにしていない。その上、半開きになった口からは意味をなさないうめき声が絶え間なく漏れている。誰がどう見ても今の鴨志田は正気を保てていないと判断するだろう。

 

「症状としては、数年前に流行ったタルタロス由来の『無気力症』が一番近いですが、あれよりも症状が重いですね。あれよりももっと深い部分の精神が傷付いているせいで、自発的な行動が全て不可能になっています。このままではそう遠くない内に呼吸すら自発的にしなくなるかと」

 

「……そう、ですか」

 

「即死しなかったのはマーラやアエーシュマの気まぐれでしょう。ま、デビルシフター適性や特別な才能もなしに悪魔と合体すればこうなるのも当然ですね」

 

 確かに悪魔の姿に変身して戦う『デビルシフター』の適性があれば悪魔との合体にも耐えきる可能性はあるが、あの力はただでさえ数の少ない異能者の中でも更に希少な能力だ。

 悪魔に変身する力というのは異能の中でも殊更に暴走し易く、力を制御する訓練法を知らない一般家庭に生まれたデビルシフターの異能を持つ者が悪魔に身を堕としてしまう事件は後を絶たない。

 今回、鴨志田が悪魔と合体しても人間としての形を失わずに済んだのは、別に鴨志田がデビルシフターとしての適性があったからと言う訳ではない。ただひたすらに、運が良かった、それだけだろう。

 

「このままにしておく訳にもいかないので一縷の望みに賭けてみようかと思っているんですが、もしもの為に医療チームを集めて貰えますか?」

 

「ふむ。ライドウクンの頼みなら是非もありません。非番だろうが仮眠中だろうが関係なく当院の精鋭達を集めてきますね」

 

 飄々とした態度を崩すことなくそう言った鴨志田の担当医は、俺が返事をする間もなく個室を出て行きあっという間に姿を消す。

 

「なんというか、随分と軽い感じの医者だな。医者というより科学者みたいだ」

 

 一般人にバレないように肩掛けのバッグに詰め込まれたモルガナが、病室を出て行った医師に向けて不満を漏らす。

 確かに、患者に寄り添って怪我や病を癒す表側の一般的な医者と比べるとそう見えてしまうだろう。

 

「あの人の娘は邪教のサバトで生贄にされかけたからな。自発的にだろうが無意識にだろうが異能を悪用する人間を根本的に嫌ってるんだ。悪魔関連の被害者やその遺族の中ではだいぶ穏当な対応をしている方だぞ」

 

 彼は宗教・民族文化・近代倫理を筆頭に幅広い知識を持つ精神科医として名を馳せる日本屈指の名医であり、悪魔やらダークサマナーが起こす事件に巻き込まれた被害者達に寄り添って、再起不能と判断された人々を立ち直らせて社会復帰させ続けている人徳のある人物なのは間違いないのだ。

 ただ、異能を悪用して罪のない人間を陥れる輩を心底嫌っているだけで。

 

 彼が霊能犯罪による被害者の家族だと聞いて竜司達の表情が曇る。

 異能で悪事を働く輩が掃いて捨てる程いるとなれば当然、その被害者や遺族の数もそれ相応に膨れ上がる。自分達が関わっていない事件の被害者を思って心を痛められるのは彼らが優しい人間だからであり、間違いなく美徳ではあるのだが、彼の娘は無事に助けているし事件も既に解決している。概ね円満に片付いている事件の事をあまり気にさせない方がいいか。

 

「まあ、仕事で手を抜くような人じゃないから大丈夫さ。それよりも竜司、アレは持ってきたか?」

 

「あ、ああ。持ってきたが、これ、今の鴨志田の役に立つのか?」

 

 戸惑いながらも竜司が鞄から取り出したのは、蛍光灯の光を反射して黄金に輝いている『金メダル』だ。

 当然だが普通の金メダルではない。これはカモシダパレスでアエーシュマから強奪…もとい、盗み出した鴨志田の『オタカラ』だったものだ。

 

「パレスでは趣味の悪い王冠だったのに、現実に持ちだしたら金メダルに変わっちゃうなんてね」

 

「あ、これあの大きな王冠だったものなんだ。もはや何でもありだね」

 

 鴨志田のオタカラをしげしげと眺めながらそう言った杏に志帆が反応する。

 そういえば、色々とバタバタしていたせいで志帆にはあの時の仔細を伝えられてなかったな。

 

「ん? これ…」

 

「志帆、どうかした?」

 

「このメダル、鴨志田先生がオリンピックで金メダルを獲った時のメダルにそっくりだなーって。前に自慢気に見せられた事があるから覚えてる」

 

 やはりそうか。

 現実に持ち出したオタカラがこの姿を象ったのは、鴨志田の欲望の始まりがコレだったからだろう。オタカラは鴨志田の歪んだ欲望の具現であるパレスの核だ。つまり、欲望自体の核、欲望の源泉と言ってもいい。

 

「嫌々始めた事だろうと、それ以外に道がなかったからやっていたのだろうと、それでも走り続けた理由は存在するもんだ。鴨志田にとっては()()()()()()()()()()()()()()()が生きる目標だったんだろう」

 

 誰でも持っている生きる目標が色々な柵や面倒事に巻き込まれて、理不尽に晒され、歪みきった果てに罪を犯す理由になった。

 鴨志田は相対的に悪人寄りの人間だが、そんな人間は別に珍しい物ではない。鴨志田よりも悪辣な人間は腐るほどいるし、例え悪人でない人間でも自分のネガイを捻じ曲げて道を踏み外す事はある。

 鴨志田の場合は、誰でも持っている承認欲求が肥大化し捻じ曲がり、それが色欲と支配欲に行きついてしまったのだろう。

 

「ライドウクン、お待たせしました」

 

 竜司から受け取ったオタカラの状態を確認しながらそんな事を考えていると、鴨志田の担当医が他の医者と大量の機材、そして精神干渉が得意な異能者達を引き連れて戻ってきた。

 

「ライドウクンが何をしようとしているのかは何となく察しが付きます。もしもこれが成功すれば、その時の患者の脳波や霊体の動きを解析する事で、悪魔やダークサマナーに精神や魂を壊された被害者の治療に役立つかもしれませんので、計測を許可して頂きたいのですが」

 

「あー。まあ、好きにして下さい。成功する可能性は割と低いけれど、それでも良ければ」

 

 俺がそう言うと同時に、集まった医者と異能者達が身動ぎすらしない鴨志田の身体の至る所に電極やら端子を貼り付け、医療現場で目にする事もある機材だけでなく胡散臭いオカルトチックな謎の機械の電源も入れていく。

 普通ならこういう事をするには患者本人か家族の同意が必要になるんだろうが、鴨志田の家族に連絡を取ってアレコレ手続きを済ませてなんて悠長な事はしてられない。

 魂が死んで精神が壊れている人間は、実質的には脳死状態になっているみたいなものだ。機械で延命措置をとっても、魂と精神がなければ肉体は急速に生きる力を失い、早晩完全に死に至るだろう。

 

 だが、それは困る。アエーシュマと合一していたのなら、奴の思考や知識をある程度は読み取れたはず。これだけ色んな人に迷惑を掛け、結果的に死者は出ていないとしても知らず知らずのうちに、それなりの人数を殺しかけたのだ。

 なんらかの情報を引きずり出さなければ割に合わない。

 

「つまりは、のんべんだらりと死んでる場合じゃないってことだ」

 

 鴨志田の霊能の素養は平均的な非覚醒者程度。つまり、『リカーム』に代表される死者蘇生や、あらゆる異常状態を消し去り完全回復させる『メシアライザー』のような強力な魔法を掛けようものなら、霊能の素養が無いせいで肉体が耐えきれずに爆発四散してしまう。

 とはいえ、通常の医療や科学での魂や精神の回復は不可能。

 

 ではどうするのかといえば、簡単だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 手に持っていた金メダルを鴨志田の胸に置き、オタカラにマガツヒを流す。すると、明確に形を持っていたメダルが物質としての形を崩し、不定形の光に変化しながら段々と鴨志田の身体に吸い込まれていく。

 元々が一般人の欲望で創られたものだったからか、より大きな力に対しての抵抗力はゼロだったようで、あっという間にその姿を光に変化させた元メダルが全て鴨志田の胸に吸い込まれたのを確認してから手を離す。

 

「成程。オタカラはパレスの持ち主の欲望の核。魂と精神が息絶えてもそれを賦活させる原動力があれば再生させることは不可能ではない、という事ですね。これで鴨志田が目覚めれば長いこと寝たきりの無気力症の患者や、精神暴走を起こしている患者の治療に光明が見えます! これはつまり崩壊した魂と精神に自身の欲望という分かりやすい目標に対して『第二の意識』を向けさせることで魂の確立を促してそれを呼び水に崩壊した精神を寄せ集めて嘗ての人格と記憶を完全再生させようという神をも恐れぬ……」

 

「先生、先生……()()()()()。考察はその辺で。鴨志田の容体はどうですか?」

 

 やや興奮気味に各種計器の数値と睨めっこしながら凄まじい早口で俺の考えを正確に推察し、更に持論を継ぎ足して展開し始めた鴨志田の担当医……ほんの数年前までは月光館学園の養護教諭をしていた『江戸川先生』に苦笑いしながら鴨志田のバイタルを確認するように促す。

 

「おおっと、これは失敬。教師だった頃のクセが抜けてませんねー」

 

 濁流の様に流れ始めた言葉を途中で堰き止めた江戸川先生は他の医師達と共に様々な機器を観察し、互いに頷き合ってから自分の白衣のポケットからどどめ色をした粘体が収まった試験管を取り出す。

 

「ちょっとまて。この流れで、何故()()を?」

 

「んー。懐かしいでしょう? コレの効き目はライドウクンも良く知ってると思うのですが」

 

 江戸川先生が持っている試験管の中身の事は良く知っている。この世界の彼が結婚していて娘までいて、更には悪魔関連の事件に巻き込まれてそれを助けた時に、原作知識がある人間としてファンボーイめいた軽い気持ちで『怪しい薬』の事を聞いてしまった事がある。

 その後なんやかんやで俺と琴音さんと悠先輩がその怪しい薬をイッキするハメになり、精神と嗅覚と味覚に大ダメージを負う事になったのだが、江戸川先生が持っている試験管の中身は正にその時の『怪しい薬』なのだ。

 

「なんならバージョンアップを重ねて、今や普通の人間になら臭いだけで飛び起きる『これ』を鴨志田に嗅がせます。バイタルは正常、身体的にも健康体、精神とマガツヒの正常性も先程のオタカラ返還が効いたのか一般人と同等の数値になっています。つまりは、大体健康体。気付けをすれば目覚めるでしょう」

 

 気付けというか、止めに刺す事になりそうな劇物の蓋を江戸川先生が開こうとしたその時、焦点の定まっていなかった鴨志田の目の動きが止まり呻き声を洩らすばかりだった口から確かな言語が零れ落ちる。

 

「こ、こは……坂本、高巻……そうか、俺は」

 

 意識を取り戻した鴨志田がゆっくりと周囲を見渡し、そして俺達の姿を確認すると彼の口元が歪み、開きっぱなしだった瞼が閉じて大粒の涙が零れ落ちる。

 外面を取り繕い、皆に好かれる好漢を演じていた時には決して見せなかったであろう、ともすれば情けない表情を取ることが出来るのは彼が人間として確かに生き返った証明だろう。

 

「すまない…鈴井、三島……申し訳、ない。全ては俺が愚かだったばかりに……すまなかった、雨宮……助けてくれて、ありがとう……」

 

 意識を取り戻した鴨志田は以前とは別人の様だった。

 以前までの高慢な態度は鳴りを潜め、彼はただひたすらに自分の行いによって被害を受けた者達に対して謝罪と感謝の言葉を繰り返すばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歪んだ欲望が消え、自分の行いを省みる様になった結果、良心の呵責に耐えきれなくなって自首をする、か。ぺ天使共やダークサマナーもそうだったらどんだけ楽できるんだろうな」

 

 鴨志田の劇的と言ってもいい自首騒動は、例の配信騒動のせいで浮足立っていた学園に更なる混乱を招くことになった。

 警察に連行される鴨志田に動画の事を聞こうとする生徒もいれば、鴨志田の自白でショックを受けてその場にへたり込む生徒もいた。

 

 そして、鴨志田の功名心の為に廃部にされた陸上部に所属していた者たちが、怒りを露わにして鴨志田に掴み掛かろうとした事で騒ぎは更に大きくなった。

 

「まあ、気持ちは分からなくもないがな」

 

 青春を掛けて打ち込んでいた部活動を一教師の欲望のせいで台無しにされた元陸上部の怒りは凄まじく、あわや暴動にまで発展しかかった為、学園側も苦肉の策として授業の中止と強制的な完全下校によって事態を収拾を図る事となった。

 校長を筆頭に秀尽の教師陣は今頃頭を抱えている事だろう。

 

「鴨志田の事、普通の警察に任せて大丈夫なの?」

 

 完全下校にかこつけて、ヤタガラスのセーフハウスに集まった志帆を含めた怪盗団達と軽く軽食を摘まんでいると、杏から疑問が投げ掛けられる。

 

「問題ない。鴨志田に目覚めた異能はアエーシュマとの合一が前提条件になってしまっている。様々な条件が揃わないと合一出来ないのに、精神を立て直したばかりのアイツにそれを成す余裕はない。それに、万が一に備えて監視も付いてる」

 

 鴨志田が目覚めてからは悪魔と合体していた影響の確認に、ヤタガラスでの事情聴取に、異能を使用した犯罪に関与したかの調査にと中々に忙しい日々だった。

 悪魔と合体するという特大のオカルト体験をした事で何らかの異能に目覚めるかと思われた鴨志田だったが、逆に強大な悪魔と合体した影響で本人の資質がアエーシュマに完全に塗りつぶされてしまったらしく、アエーシュマと合一しないと霊視も出来ないという、異能に目覚めているのに使用は不可というアンバランスな状態であることが判明した。

 

 つまり、裏側で内々に処断するのではなく表側の警察や裁判所に任せても問題ないという事だ。

 

「もっとも、本人はもう二度と合一なんかしないって言ってたがな」

 

「だろうな。あれで懲りてなきゃ、もう手の施しようがねーよ」

 

「どーだかな。モナの言う通りだと良いが。俺はまだ信じ切れてねー」

 

 鴨志田は、パレスでの出来事を筆頭に異能絡みの情報を一切口外しないという契約をヤタガラスと結んだ事でその身柄は解放される事となった。

 鴨志田自身はアエーシュマに良い様に利用されていて、自身では制御出来ない精神体が暴走した状態だった。異能を持たない者では制御できない要素が原因だった以上、霊能犯罪の責は問えない。

 精々が呪術的な契約を結び、再発を防止する程度だ。

 

 だが、表側で裁ける罪は再発防止で留める訳にはいかない。

 以前の鴨志田を知っている俺達は此処で鴨志田が責任逃れや罪の否認をし始めると思っていたのだが、驚いた事に鴨志田本人が自分から自首を言い出し、被害に遭った生徒達の前で自分の罪を告白し、警察に捕まる事を俺達に宣言した。

 正直、実際に今日の全校生徒の前で謝罪を始めるまで、言い逃れの為の方便だと思っていたのだが。

 

「鴨志田の罪は暴いた。奴に巣食っていたガブリエルとアエーシュマも始末した。パレスも完全に消えたし、最終的には死者はゼロ。結末としては最良といっていいだろう」

 

 色々と気になる事はあるし、例の動画という厄ネタは残ったものの事件自体は一区切り付いた。ここらで事件解決を祝して打ち上げでもやってもいいかもな。

 散々働いてくれた仲魔達にも対価を支払わないといけないしな。

 




欲望が歪んで王冠の姿になっているなら、それが変化したメダルは歪みがない状態、もしくは歪みが正された姿だと思うんですよね。初心に戻るというか、歪む前に戻るというか。
そして、欲望を正しい形に戻して本人に返してやれば、より義賊っぽいのになーって思ってたので、カモシダパレスはこういう形でケリを付ける事にしました。
勿論、独自設定です。すみません。

罪人の物とはいえ、心の一部であるオタカラをさらっと売り払うのは、正直どうなんだって思ってたので。
つーかパレスやメメントスでシャドウから無限にカツアゲできるシステムなんだから、ちょっと周回すればビュッフェ代くらいPON☆とだせるだろ主人公。

あ、江戸川先生の下りも独自設定です。具体的には娘がダークサマナーに捕まってバフォメットが主催するサバトで贄にされそうな所をライドウが救った感じです
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