ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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二次創作の為にP5Rを最初からやっててやっぱり面白いゲームだと実感したので、初投稿です。




プロローグ②

ごく普通の人生を歩み、社会の荒波に揉まれながら自分の仕事に遣り甲斐を見出し始めた頃、病でこの世を去った。

それが俺の前世。

 

特別な苦難や失敗も世界中から称賛を受ける様な成功もなく、早死にしたことを除けば、ごく普通の人生だった筈だ。

俺個人には特別なことなど何もない筈なのに、病院のベッドの上で瞼を閉じたと思った次の瞬間には、頭が割れるように痛み、地べたでのたうち回っていた。

これが今世の俺の一番古い記憶。

 

余りの痛みに意識を失い、次に目覚めた時にはまたしてもベッドの上。

しかもどこぞの名探偵のように身体が縮んでいたのだからさあ大変。

 

肉体に引っ張られるように、感情が容易く俺の制御を離れて涙腺が緩み、前世の親戚の集まりで見た子供たちのようにギャン泣きするまでそう時間はかからなかった。

 

俺のギャン泣きの声を聴いてすっ飛んできた若い男女と白衣の医者がなにやら真剣な表情で話しているのを盗み聞く限りでは、どうやら俺は公園で一人で遊んでいたら突然10メートル近く身体を宙に浮かせ、そのまま地面に墜落し、頭を打って意識を失ったとのことだった。

 

俺の両親を名乗る20代後半の男女の話はどう考えても与太話の類で、普通に考えれば医者も信じない筈なのに、ベテランといった風格のある老年の医者も両親を名乗る男女も段々と険しい表情になり、終いには未だに続く痛みに頭を抱えている俺を抱きかかえて、病院の屋上にあるヘリポートに留められていたヘリに有無を言わさず乗り込んでどこぞに向かって飛び始める始末だ。

 

そして、暫くローター音が喧しい空の旅を強制されて辿り着いた大きな武家屋敷で、俺は漸く自分が置かれた状況を把握したのだ。

 

 

『お菓子ちょーだい』『ヒホー!』『ねね、しんでくれる?』『おお、この童、我等の事が見えておるぞ』

 

妖精:ピクシー

妖精:ジャックフロスト

魔人:アリス

妖鬼:シキオウジ

 

当時の俺の顔は笑い話に出来る位に盛大に引き攣り、蒼褪めていたことだろう。

それも当然だ。

なにしろ、社会人になる前に散々遊んだゲームのキャラクターがそのまま現実に存在していて動き回っていたのだから。

 

縮んだ身体、前世のゲームのキャラクター、自分の死、夢ではない、輪廻転生

 

頭の中に次々と浮かんだ単語が一つの事実に収束していく。

つまり、転生したのだ。

考えうる限りでは凡そ最悪と言える部類の『女神転生』の世界に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、実際はデビルサマナーとペルソナが悪魔合体した世界だったわけだが」

 

久しぶりに体感する平日の山手線の混雑具合に辟易しながら、愛刀の『赤口葛葉』を隠したバットケースを抱えながら当時のことを思い出す。

 

あの衝撃的な悪魔の集いで発覚した悪魔の姿を見ることが出来る俺の素質と、今世の生家『雨宮家』がデビルサマナーシリーズをプレイしていれば一度は名前を聞く筈の『十四代目葛葉ライドウ』の血筋だったというのが原因で、俺は葛葉家で住み込みの修行を行うことになった。

 

正直、意識的には赤の他人である俺が、前世を思い出す前の雨宮少年(7歳)をその両親の前で再現するのは不可能だと思っていたので、渡りに船と言わんばかりに住み込みでの修行の話に飛び付いてしまったが、今にして思えば間違いなく大失敗の選択だった。

 

何故なら、葛葉家で修行をするようになり、暫くの間は霊能者としての基礎的な修行をしていたのだが、俺の知らない内に何故か次期ライドウ筆頭候補として名前を挙げられてしまい、あれよあれよという間に地獄と表現しても生温い人間の限界を超えるための訓練を義務付けられ、何度か三途の川を渡り掛ける羽目になったからだ。

 

(どの道、力に目覚めてしまった以上、どうあがいても悪魔と関わりあいになるのは確定しているから、力を付ける必要があるとはいえ、限度ってものがあるだろうに)

 

デビルサマナー、悪魔召喚師。

呼び方は様々あるが、どうやら今世の俺は悪魔と関わる為の素質がとても高く、サマナーとしての適性も高いらしい。

具体的には、俺にとって有利な条件で悪魔と契約できるという転生特典とかチートとかと呼ぶにはささやかではあるが、悪魔側からするとそうしてもいいと思える雰囲気みたいなものがあるというのが、一番最初に契約した悪魔の言だ。

 

そうして、京都の葛葉家宗家に所属し、ヤタガラスのデビルサマナーになってからの人生は、文字通りの意味で生き急ぐような人生だった。

なまじ社会人をしていた前世の記憶があるせいで一桁年齢の子供とは思えないような立ち回りと受け答えをしてしまったことも、色々な事件に放り込まれることになってしまった原因だろう。

 

頻繁に発生する悪魔やダークサマナーの起こす事件を解決したり、

影時間に気付いてしまったせいで当時12歳でペルソナ3の事件に巻き込まれることになったり、

14歳の頃にはペルソナ4の事件に自分から首を突っ込むことになり、

メシア教の人類総天使化計画とかガイア教の破天闘争だとか

メガテン3の魔人がどこからともなく湧いて出てきて終末のラッパを吹こうとしていた魔人をぶちのめしたりと、

 

この10年間は前世の知識をフル活用する事で、人間社会が崩壊するような様々な事件を大きな被害を被ることもなく、概ねハッピーエンドに持っていくことが出来た。

 

そんな忙しい生活をしていたせいので余り考察できていないのだが、僅かな余暇の時間で葛葉宗家の資料を漁って調べてみたところ、この世界のベースは『デビルサマナー』で間違いないらしい。

大昔から悪魔や神と呼ばれる超常のモノが存在し、それらと闘う霊能者、サマナーが大正時代まで割と活発に活動していたのは資料から判明してる事実だ。

 

しかし、大正時代以降、正確にはデビルサマナーシリーズの二作品で主人公であった十四代目葛葉ライドウがとある事件(資料を読んだ限りでは、ゲームの『ライドウVSアバドン王』事件みたいだ)を解決して以降は、緩やかにではあるが悪魔の出現率は低下していき、平成になる頃には悪魔は殆ど出現しなくなり、それに合わせるように特殊な力に目覚める者も数を減らしていっていたようだ。

 

だが、20世紀最後の前の年にとある事件が起きた。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()悪魔の大量発生。

そして、ムーンライトブリッジでの大事故とそれに付随する地球全土で発生する『影時間』、そして悪魔とは異なる敵性存在『シャドウ』の顕現だ。

 

 

 

この世界のベースがデビルサマナーである以上、悪魔が発生するのは迷惑ではあるがそう珍しい話ではないし、納得は出来る。

しかし、ペルソナ3の厄介事の直接的な原因でもあるムーンライトブリッジでの事故が発生して、影時間が出来上がってしまっていたのはおかしな話なのだ。

 

まあ、俺が知らないだけで実際は色んな世界観がごちゃ混ぜになっていて、実はそう遠くないうちに南極大陸にシュバルツバースが発生したり、悪魔召喚にGUMPやCOMPを使うようになったり、頭メシアンな連中が東京にICBMを打ち込んだりする世界なのかもしれないが。

有難いことに、今のところはそんな兆候はないので、取り敢えず置いておくとして。

 

ペルソナ3の事件が突発的に発生して、それでペルソナ関連の事件が収まるのであれば、まだ問題ではなかった。

しかしその後すぐに八十稲羽での事件(ペルソナ4)が発生し、その後もペルソナ関連と思われる認知世界とシャドウによる事件は小規模ではあるが頻発している。

 

これらの点を踏まえると、この世界はペルソナ関連の事件も発生するデビルサマナー世界だと考えるのが妥当だろう。

 

そうなってくると問題になってくるのはペルソナはシリーズもののゲームだったってことだ。

ペルソナ3にはペルソナ2の登場人物らしき人の情報やペルソナ4の主要人物の過去の姿が出てくるし、それはペルソナ4でも同様だ。

つまり、ペルソナシリーズの事件は同じ世界で起きた出来事であり、俺が経験している中でも、既に人類の存亡の危機がペルソナ関連で2回は発生しているということだ。

 

そうなってくると問題になってくるのが、『ペルソナ5』の存在だ。

 

病気で倒れる寸前に開発スタートが発表されていたペルソナ5ではあるが、俺自身はストーリーを全く知らない。

前世では病気で寝たきりになってしまったせいで実際にプレイ出来ていないし、治療やリハビリに多くの時間を割いていた事もあり、ゲームとしての情報を殆ど知らないのだ。

 

ペルソナ3はタルタロス、ペルソナ4はマヨナカテレビという形で大型の認知異界が発生していたことを考えれば、今回の東京都全体を中心とした認知異界は『ペルソナ5』の主要舞台であり、攻略するべき異界であると考えて間違いないだろう。

 

これまではなんだかんだいいながらも、ゲームとしての知識があり、物語の主役となる主要人物も把握できていたから、度肝を抜くようなイレギュラーやゲームでは有り得なかった異常事態(主に悪魔関連)が発生しても犠牲者無しで闘い抜くことが出来ていた。

 

しかし、今回はそれらの事前知識が全く存在していない。

それでも放置するという選択肢を取ることだけは絶対に出来ない以上、今まで培ってきた知識と技術、人脈を駆使してどうにかするしかないだろう。

 

(せめて、ワイルドに目覚める主人公が誰なのか分かればいいんだがな)

 

月光館学園の騒動では『汐見 琴音』、八十稲羽では『鳴上 悠』が複数のペルソナを行使できるワイルド能力に目覚めていた。

前世の記憶の中でも曖昧な部類ではあるが、確か汐見 琴音はペルソナ3の舞台劇の女主人公の名前だったはずで、この世界の彼女はベルベットルームに出入りしていたようだし、テオドアに巌戸台の案内をしていたのも目撃している。

鳴上 悠も同様にベルベットルームに出入りしていたし、マーガレットとマリーが彼の旅路を補佐していたというのも本人達から聞き及んでいる。

 

つまり、ペルソナ5の主人公もワイルドに目覚め、ベルベットルームに出入りできるペルソナ能力者と考えるのが自然だ。

 

(決めつけはよくないが、な)

 

とはいえ、もしも俺の考えが当たっていたとして、その能力者をこの広い東京でどうやって見つけるのか、というのが目下最大の問題なのだが。

 

『次は渋谷~、渋谷です』

 

電車が停まると共に、人の流れに身を任せて電車を降りて改札を通り抜ける。

今までは車での送り迎えや徒歩、大型悪魔での移動が基本だったから、今世では山手線に乗ったのも渋谷駅に降り立つのも初めてなのだが、どうやら前世の時と構造は殆ど違いは無いようで、不意にサラリーマンだったころを思い出してしまう。

 

忙しなく動く人影と喧騒に懐かしさを感じながら、目的地までのルート検索の為に立ち止まってスマホを触っていると、ふと、自分の周囲が静寂に包まれていることに気付く。

 

「なん、だ」

 

あれだけ騒がしかった人々の話し声も街道のスピーカーから流れるテレビ番組の声も一切が消えてしまっている。

それに加えて、建物の壁面に貼り付けられた大型モニターの動画も、忙しなく動いていた人々もまるで時間が止まってしまったかのように完全に停止している。

 

明らかに異常事態だ。

 

「これが、今回の認知異界で起きる現象か?」

 

有り得ざる1時間、運命の人が映るテレビ、そして今度は時間停止、ということなのだろうか?

警戒心を最大に引き上げ、懐に忍ばせている対悪魔用の小刀と腰に提げた大き目のポーチに入れている拳銃に手を伸ばす。

 

すると、渋谷駅の目の前にあるスクランブル交差点のど真ん中に、突如として赤と黒が混ざった炎の塊が出現する。

どこからどう見ても怪現象だが、あれがこの時間停止の元凶なのだろうか。

 

その炎は瞬く間に3mほどの大きさに膨張し、何となくではあるが、シルクハットの様な物を被った人の形を取っているようにも見える。

その人型に蒼い炎で釣り上がった目と皮肉気に口角を上げた口が作られたかと思うと、その炎の塊は景色に溶けるように、まるで最初から存在しなかったかのように消えてしまう。

 

それと同時に街に喧騒が戻り、何事もなかったかのように人々は思い思いの行動を続け、大型モニターの中の芸能人も明るい声で商品の宣伝をしている。

 

暫くの間警戒していたが、どうやらもうこれ以上の異常事態は起きないようなので、懐の小刀に触れていた右手を戻し、グリップを握っていた拳銃もポーチの中に戻す。

 

さっきの現象がこの認知異界の主からの敵対的な警告なのか、それとも別の存在からの何らかのアプローチなのかは分からない。だが、

 

「今回も、一筋縄では行かなさそうだな」

 

溜め息と共にスマホに視線を落とす。

なにはともあれ、手早く用事を済ませる為に、開きっぱなしの地図アプリに目的地を入力して経路を確認する。

 

「四軒茶屋まで行って、そこからは歩きか」

 

今回の任務は長期間に渡る可能性が高いので、下宿先をヤタガラスが見繕ってくれている。

任務中の身分に関しては、昼間に自由に活動できなくなるというデメリットはあるが、去年起きた面倒ごとのせいで捨てる羽目になった『高校生・雨宮蓮』という身分を活用することになっている。

 

実を言うと、数年前にライドウの名前を継いだことで、俺は雨宮家から葛葉家に養子に出ていることになっており、戸籍上の名も雨宮蓮から葛葉ライドウとして改名されている。

とはいえ、葛葉ライドウの名前はデビルサマナーとしては色んな意味でビッグネームであり、普段の生活で何も考えずに名乗っていると色々と問題が発生してしまう。

と言う訳で普段は表向きの名前として雨宮蓮を名乗っていたのだ。

 

しかし、去年の春頃、夜道で女性に絡んでいた()()()()()()()()()()()()()()の顔面を、その時召喚していた俺の仲魔が殴ってしまい、鼻と前歯をへし折って全治三カ月の重傷を負わせてしまったのだ。

当然、悪魔の姿は常人には見えないこともあり、状況的に俺が暴行事件の犯人になったことで、結果的に雨宮蓮という少年は前科者になってしまったのだ。

 

まあ、葛葉家とヤタガラスの権力があれば事件自体を揉み消すのも容易ではあったのだが、丁度その時はメシア教の過激派との戦いが激化していた時で、昼間にサマナーとして活動できない時間があるのが煩わしかったので、入学したばかりの高校を自主退学して、表の身分を抹消して、空いた時間をそのままメシアンやガイア教との戦いに充てていたのだ。

 

そういう訳で、今回の任務にあたり、前科者の『雨宮蓮』を受け入れてくれる高校が都内には一つしかなかったので、その高校に編入して普段の隠れ蓑にしろ、ということだそうだ。

正直、前世の分を合わせれば精神的には40過ぎのおっさんなので、今更高校生をするというのには抵抗があるが、高校生という確かな表向きの身分は何かと便利ではあるしな。

 

下宿先に関しても、今世の実の両親の知り合いが経営する喫茶店らしく、俺が女性を助けるために、その女性に迫っていた男に怪我を負わせて前科者になったと聞いた途端に、保護司として名乗りを上げたそうだ。

事前調査で悪魔やダークサマナーとの関係が無いことが分かっていて、人格面でも問題なしとのことらしいが、保護司を引き受けたのは、単なる同情からか、はたまた何らかの思惑があってかは分からないが、他に当てがない以上この喫茶店で世話になるしかないだろう。

 

「なにはともあれ、下宿先の喫茶・ルブランに向かいますか」

 

 

 

 




シャアの声が鳴る坊主頭は顔面に拳を食らって、10mぐらい水平にぶっ飛んでます。
シャアの声が鳴る坊主頭が殴られた理由は女性に無理矢理迫っていた以外の理由があります。

プロローグそろそろ終わるので『他のキャラクター視点から見た主人公』はみたいですか?

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