ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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もう年末だとぅ!?
う、嘘だ。2024年はまだ中盤くらいの筈…


幕間の物語 File.2

《愚者》

 

「それじゃ、細かい話は抜きにして今日は盛大に騒いでくれ! 乾杯!!」

 

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

 カモシダパレスの崩壊時に発生した面倒事の後始末を筆頭としたアレコレにケリがついた後。

 今回の件は表側の世界にも影響があったため、大勢のヤタガラスの人員が後始末に動員された。書類作成やら小規模異界に放り込まれた一般人を救出したりと、その後始末の作業量は久方振りのデスマーチをする事になるレベルのものであったため、パレス攻略に尽力した人員も含めて慰労会をする事になった。

 

 ワイワイ。がやがや。

 根願寺地下にある大異界。護国組織であるヤタガラスの総本部が置かれているその場所は、普段とはまた違う賑やかさで湧いていた。

 様々な施設が設置されている総本部には大きな庭園もあり、慰労会はそこで実施されていた。

 

「慰労会とはいえ、こんな大規模にやってる余裕あるのか?」

 

「関係者の慰労会と契約悪魔への対価の支払いも含んだ宴会だからな。むしろ大規模で大騒ぎする方が都合がいいのさ」

 

 あちこちでグラスやジョッキ、果ては大きな酒樽同士がぶつかり合っている乱痴気騒ぎを胡乱な眼で見ている竜司の懸念も理解できる。

 カモシダパレスは片付いたものの、メメントスは未だに健在で事件の黒幕も倒せていないとなれば、宴会なんてせずに一刻も早く事件解決を目指して行動した方がいいという考えなのだろう。

 

「ここ最近は全員働きづめで、いい加減過労でぶっ倒れそうな面子もいるからな。いい休暇になるだろ」

 

 ペルソナ使いとして覚醒し、生き物としての格が上がった竜司は気付いていないんだろう。

 覚醒者は魔法や霊薬で無理矢理回復させて馬車馬のように働かせることが出来るが、構成員の大半がそういう無茶が出来ない非覚醒者である事後処理班や隠蔽工作、世間への情報操作をしてるチームはそろそろキャパオーバーしかねない。

 あの動画はそれくらい色んな所に飛び火してしまっていて、ネット知識が豊富な双葉や修羅場に慣れているジプスの局員達が死んだ眼をしながら掲示板やSNSの監視をして火消ししてるくらいだ。

 

「今日くらいは全部忘れて飲み食いさせてやれ」

 

 徹夜明けのハイテンションでバカ騒ぎをするヤタガラスの非覚醒者達に混じって、用意して貰った高級スイーツや糖度の高い果物に溺れながらそれらを余すことなく食べているピクシーや、真っ昼間から酒をかっ喰らっている金時と義経、黄龍を放置して怪盗団の為に用意させた席に移動する。

 移動した先では、肉と魚とスイーツが山盛りになったテーブルに座ってモルガナと杏、そして志帆が会話もそこそこに自分の目の前にある料理に夢中になっていた。

 

「おっと、俺も肉を食わねぇと」

 

 モルガナは魚。竜司は肉。杏はスイーツ、志帆は色んな種類をバランスよくといった具合で大分性格が出ている盛り付けをされたそれぞれの皿を見ながら、適当にとってきた料理食べつつ段々と酔っ払ってきた連中がバカ騒ぎを始めたのを眺めながら口火を切る。

 

「そういえば例の件だが、詳しい調査の結果、俺が持っている青いイセカイナビでパレスに侵入したメンバーの身バレは起きていなかった。先ずは一安心ってとこかな」

 

 意図していないライブ配信のせいで不特定多数の人間に戦う姿を晒す事になってしまった俺達だが、パレス攻略完了からそれなりの日数が経った今でもマスゴミに囲まれたり、見ず知らずの人間に付き纏われたりするという事態には陥っていない。これはつまり、俺達の身元は結局バレていないという事だ。

 

 どうにもイゴール謹製の青いイセカイナビには使用者の正体を隠す権能染みた力が備わっているようで、強力な認識阻害の術を弾けるレベルの実力者以外はあの動画を見ても人相や体格が正確に記憶できなくなる仕組みになっている事がジプスの調査で判明した。

 その結果、アエーシュマとの戦いに参加していたメンバーである直斗さんやりせさんの様な有名人も表側での生活を平穏に過ごすことが出来ているのだが、残念ながら全部が全部丸く収まった訳ではない。

 

「だが、他の方法でパレスに引き込まれた者は対象外だったらしい」

 

 実はあの時、イセカイナビでパレス内での様子を配信されていたのは俺達だけではなかった。

 一般人達をパレスに引き摺り込んだのはアエーシュマの権能なのか、それとも赤いイセカイナビの力なのかは調査中だが、あの時点でパレスに居た人間全員の様子がイセカイナビを通して一部始終を配信されてしまっていた。

 幸いにも初期の段階で仲魔達が彼らを救出したことで再起不能になる様な大怪我を彼らが負う事はなかったが、配信で盛大に顔バレしていた彼らの身元はあっという間に特定されてしまっている。

 放って置けば、特ダネの気配を嗅ぎ付けた連中が集まって来て面倒ごとに発展するのは想像に難くない。

 

「え、じゃあ、カモシダと戦った場所にいた志帆達の身元もバレちゃった、ってこと!?」

 

「いや、あの場にいた志帆達は大丈夫だったみたいだ。どういう基準なのかは分からないが、俺達の姿を映していた画角にちょっとだけ映り込んでいたくらいだったらしいからな」

 

 俺も確認したが、パレス内に放り込まれた他の一般生徒は個人個人の様子が配信されていたのにも関わらず、あの決戦の場にいた志帆達の姿は殆ど映ってはいなかった。

 何らかの目的があってそうしているのか、あるいは他の理由があったのか。

 

「ま、とりあえずは問題ないだろう。巻き込まれた生徒達の認識もヤタガラスの異能者が何とか辻褄を合わせてくれたからな」

 

 パレス攻略にあたり、想定外の事態に対応する為に現場近くで待機していたヤタガラスの異能者達によって、パレスから救出された一般人達は全員強度の高い混乱魔法やら忘却魔法で記憶を上手い事書き換えられている。

 当人たちの霊能の資質次第だが、今後異能絡みの事件に巻き込まれたりしなければ、彼等があの夜の事を思い出すことはない。

 そして、事実を語れる者が居なくなれば全てはただの与太話で片が付く。そうなればこの混乱も一旦は収束に向かうだろう。

 

「一般生徒達の事も気になるが、それよりも俺達の今後についてだ」

 

「今後?」

 

「そう。まだ怪盗団を続けるかどうか、だ」

 

 直近の問題だったカモシダパレスは片付いたが、本命にして今回の事件の大本であるメメントスのほうは完全に手付かずのままだ。

 ヤタガラスに所属している俺を含めたペルソナ使いは大体があのメメントスを片付ける任務に就くことになるだろうが、俺以外の怪盗団のメンバーは違う。

 

「ヤタガラスに正式に所属するか否か、よく考えて欲しい」

 

 実のところ、メメントスに攻め込むための戦力という意味では既に足りている。

 SEESに特捜隊。海外出張中の皆月やラビリス、それでも足りなければヤタガラスの権力を使って服役中の足立を引っ張って来ることも可能だからだ。

 

 それこそ、先日のアエーシュマレベルの敵が出て来ない限り戦力過多もいい所だろう。

 

「なんなら今からでも霊能を封じて元の生活に戻る事だって……」

 

「蓮」

 

 声のした方を向くと、黙って俺の話を聞いていた竜司が呆れを含んだ表情で俺を見ていた。

 

「今更だぜ。俺達は鴨志田をブチのめすまでの修行で悪魔やらダークサマナーとやらの悪行をこの目で見てるんだ。今更、全部忘れて悪事から目を背けて逃げる気はねぇよ」

 

「とーぜん。私も怪盗団続けるから。鴨志田みたいな奴は片っ端からとっちめておかないと、安心して生活できないしね!」

 

「私も、直接は戦えないけど、後方支援のイロハをヤタガラスの人達から教えて貰ってるから、今後はもっと役に立てるよ!」

 

 そこらの雑魚シャドウとの戦いとは違って、アエーシュマとの戦いは命懸けのものだった。そこそこ経験を積んだ異能者でも心がポッキリと折れかねない程の。

 あの経験をしても尚、ペルソナ使いとして戦う事を選べる辺り、相当肝が座っている。

 

「ワガハイは、言うまでもないよな?」

 

「ハッ……じゃあ、改めて。コンゴトモヨロシク」

 

 俺が掲げたグラスに、各々が手に持ったグラスをぶつけ合い、中身を一気に飲み干す。

 それと同時に何度か経験した耳鳴りが起き、聞き覚えのあるフレーズが脳裏を過ぎる。

 

『我は汝、汝は我。汝、ここに新たなる契りを得たり』

『契りは即ち、真なる目覚めの輝きなり』

『我、「愚者」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり』

『反逆の翼を束ね、大いなる始まりへと至らん』

 

 ?

 なんだか、今まで聞いてきたセリフと違う気がするが、まあいいか。

 折角の祝いの場なんだから精々楽しむとしよう。

 

 

《合一神と大魔王》

 

 ルブランの屋根裏部屋で、小さなスタンドライトに照らされた手元の資料を眺める。

 ヤタガラスから回されてきた報告書に記載されている内容はどれも頭が痛くなるような情報だった。

 

「鴨志田の記憶転写結果、か」

 

 どうやら鴨志田はアエーシュマと合一していた時にアエーシュマの記憶を一部共有していたらしく、事件が片付き鴨志田が目を覚ましてから自首をするまでの間に、その記憶を引き出すことが出来たのは僥倖だった。

 鴨志田が共有したというアエーシュマの記憶はどれも断片的で時系列もバラバラだったせいで情報の整理に手間取ったものの、合一という手法を編み出したルシファーがその方法を伝授した悪魔の数と名前が判明したのは大きな収穫だ。

 

「この世界で合一を成す為の方法をルシファーから授けられた悪魔は全部で五体」

 

 アザゼル、バエル、マモン、レビアタン、サマエル。

 手元の資料に羅列されている名前はどれもが強力な悪魔のもので、一線級の異能者でなければ戦いの場に立つことすらままならないレベルの大悪魔ばかりだ。

 

「鴨志田の件からして七つの大罪を背負う悪魔が出てくるのは予想していたが、堕天使までいるとはな」

 

 アエーシュマの言葉が正しければ、何らかの神が力を奪われて貶められた姿が、悪魔の本当の姿なのだろう。

 そして、彼らの力を奪い貶めたのは、メガテン世界でちょいちょい諸悪の根源的に表現される聖四文字。メシアンが崇める存在だというのも容易に想像がつく。

 であれば、力を奪われ名誉を貶められた神々が人間ごときの認知異界に居座ってでも、合一をして元の姿を取り戻そうとするのは納得できる。

 

「とはいえ、人間と合一するだけであれだけの力が発揮されるのはなぁ。合一するには複数の条件をクリアしないといけなさそうだとはいえ、あのレベルの存在が何体も現れたら対処しきれんぞ」

 

 アエーシュマは今まで戦ってきた悪魔と比べて、明らかに力の格が違った。あの時はまだ合一が完全に成されていなかったにもかかわらず、こっちが終始劣勢だった。

 もしもあのまま完全に合一していれば、アエーシュマはニュクスにも並ぶ強大な存在になっていただろう。

 

「合一という現象に関してもまだまだ疑問が残るが、それよりも問題なのは」

 

 アエーシュマが俺の事をナホビノと呼んでいた事も問題だ。

 あの時は戦う為の思考にリソースを割いていたから気付かなかったが、後からアエーシュマの台詞を思い返してみるとナホビノという存在は、人間と悪魔が合一する事で生まれる存在のはず。

 では、俺がそう呼ばれた理由は?

 

「俺がナホビノ、ねぇ。可能性としては()()()()()()()()ことか?」

 

「流石。素晴らしい推理だ」

 

 聞き覚えのない声と物理的な圧力すら感じる重苦しいマガツヒに反応した身体が、反射的に近くに置いてあった拳銃を掴んで銃口を声がした方に向ける。

 モルガナは夜遊びに出かけていて今日は居ないし、ルブランも今日は閉店していて惣治郎さんがここに来るはずもない。

 では、一体誰が。

 

「お前、は」

 

 銃口を向けた先に居たのは、現在の住処であるルブランの屋根裏部屋に似つかわしくない、西洋の貴族が着ていそうな真っ白な儀礼服に身を包んだ絶世の美青年だった。

 頭部に生えている捻じれた角、瞳孔が縦に割れている金色の瞳、青白くすらある肌の色。それら全ての特徴は彼が並みの存在ではない事を克明に表している。

 

「こうして直接会うのは、初めてかな?」

 

 ……確かに、直接会うのは初めてだ。

 だが、目の前のこの存在が放つ力の波動、咽返る様な濃度のマガツヒを肌で感じて正体を察せない訳がない。

 

「……人修羅のとこに行けよ」

 

「ははは。彼には別世界のわたしが常についている。片時も目を離したりしていないだろうさ」

 

 にべもない俺の言葉に、青年が愉快気に口角を上げてクツクツと上品に笑う。

 ちらりと自分の腰に提げている封魔管を見るも、待機している仲魔達は目の前の存在に何の反応もしていない。

 

 いや、違う。

 封魔管が僅かに震えているから、飛び出してこようとしている仲魔達を召喚術式に干渉して無理矢理抑えているのか。厄介な。

 

「此処に来たのは、悪魔側にばかり肩入れするのもナンセンスだと思ったからだ。少しばかり私と話をしようじゃないか。ナホビノ」

 

 椅子に座っている俺の目を覗き込みながらそう言った青年の有無を言わせない圧力に屈したわけではないが、此処で誘いを断って殺し合いに発展させたくはない。

 見た限りでは敵意はかなり薄いようだし、情報を抜き出せるか試してみるのも手か。

 

「とりあえず、下に行こう。珈琲なら入れられるぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ブルーマウンテンのブラックを。後、カレーも」

 

「図々し過ぎんだろ……」

 

 珈琲は入れると言ったが、カレーまで注文してくるんじゃねーよ。

 とはいえ、この大魔王は珈琲豆をぶつけた程度では追い出すことは出来ない。渋々ながらルブランカレーを温めて提供し、注文通りの珈琲を淹れて手前に置いてやる。

 

「ふむ。悪くない」

 

 どうやらルブランカレーと惣次郎さん直伝の珈琲の淹れ方は魔界の大王の気分を害さない代物だったらしい。

 真っ白な服に染み一つ作らずにカレーと珈琲を堪能した青年…推定・ルシファーがカップを傾けながら口を開く。

 

「では、本題に入るとしよう」

 

 中身のなくなったカップをソーサーに置いたルシファーが神妙な表情で俺を見る。

 その視線は俺の顔や表情を見ていない。もっと別の俺の内側にある物を見ようとしているみたいだ。

 

「ふむ。やはり見えないな」

 

「なにがだ」

 

「私が観測すら出来ない、お前の()()()()()()()の事だ」

 

 ルシファーの台詞に戦慄する。

 こいつ、俺が別の世界からやってきた存在だと感づいている。

 

「その魂の出処が何処だろうと興味はない。だが、お前と同じ次元から落ちてきた他の魂は既に汚泥に沈んでいるのに、お前は未だにこの世界で足掻き続けている。実に素晴らしい事だ」

 

「なに?」

 

 まさか、俺と同じような転生者が他にも居るってことか?

 そんな心境が表情に出ていたのか、俺の表情を見たルシファーがニヤリと笑う。

 

「世界衝突の余波を受けて産まれた器と高次元から零れ落ちてきた魂が偶然合体してナホビノに至り、私をここまで楽しませてくれるとは思ってもみなかった」

 

 つまるところ、俺がこの世界の人間として転生したからナホビノになったってことか?

 悪魔と人間という関係性を、俺の魂とこの世界の肉体が再現したから、この世界に何人かいる英雄の生まれ変わりや悪魔の転生体とは違って俺はナホビノとやらになったとでも言いたいのか。

 

「悪魔には合一の方法を与えた。バランスを取る為に、人間にはそうだな……別世界のSTEVENから接収した悪魔召喚プログラ」

 

「それはいらん」

 

 悪魔召喚プログラムとかいう更なる厄ネタを放り込もうとするな。

 というか別世界の、と前置きするという事は、やはりこの世界にはSTEVENは居ないのだろうか。トールマンとゴトウがいるから他の厄ネタ存在もいると思っていたのだが。

 

「ふむ。では、合一が可能になるパレスの数と()()()()の所在地をくれてやろう」

 

「は?」

 

 パレスの数はいい。成り立ちからしてパレスがカモシダパレス一つしか存在しないなんて楽観視はしていなかったから。

 だが、ジェイルってなんだ。

 

「まさか」

 

「パレスは残り七つ。そしてジェイルは東京、仙台、札幌、沖縄、京都、大阪。人の世を守るというのなら、よくよく探すことだ」

 

「パレス以外にも認知異界が存在しているのか!?」

 

 俺の驚愕を他所にルシファーは立ち上がり、ルブランの扉に手を掛けて外に出て行く。

 勝手に出ていこうとするルシファーを止めようと肩を掴むが、伸ばした手は霞を掴むように素通りしてしまう。

 

「待て、ルシファー!」

 

「その名はみだりに使わないで貰いたいな……そうだな。この体の時は『ルイ・グイアベルン』と呼んでくれ。……では、また何処かで会おう。ライドウ」

 

 夜の帳が下りた道でも見失う筈のない全身真っ白な青年の姿が、瞬きの間に夜闇に紛れて掻き消える。

 周囲を押し潰すようなマガツヒの波動も完全に無くなっている。どうやらルシファーは本当にこの場所から居なくなったらしい。

 

 あっさりと暴露された更なる厄ネタの存在に大きな溜め息を吐きながら、スマホを取り出してゲイリンに連絡を入れる。

 ルシファーと遭遇した事。パレスが他にも存在していて、その総数が判明した事。そして、パレスとは別口の認知異界が存在している可能性がある事を。

 

「クソ。面倒な事になりそうだ」

 

 

《Crow Song》

 

「もう一度、よく聞こえるように言ってくれ、ライドウ」

 

 先日のルイ・グイアベルン(ルシファー)からもたらされた情報をヤタガラスの上層部に上げた所、蜂の巣をつついた様な騒ぎになったのでわざわざ総本部に出頭して事情を説明した後、俺は任務から帰って来ていた葛葉キョウジと共にヤタガラス本部にある戦闘訓練場に居た。

 丁度いい機会だったので隠し通してはおけないとある情報をキョウジに伝えると、キョウジの額に青筋が浮かび、見開かれた眼が瞬く間に血走って怒りを露わにする。

 

「獅童正義が、メシアンとガイアーズ、そしてお前が取り逃がしたシド・デイビスを自分の派閥に取り込んだ。この情報に関しては裏取りも既に取れている……全て事実だ」

 

「クソが!!」

 

 封魔管を保管している総チタン合金製の頑丈なアタッシュケースのハンドルがキョウジの握力に負けて見るも無残な姿にひしゃげ、高位の異能者特有の超人的な身体能力で投げ飛ばされたアタッシュケースが打ちっぱなしのコンクリート壁に凄まじい速度で着弾し、コンクリート壁に大穴を空ける。

 

 怒りに震えるキョウジが自身の武器でもある封魔管を放置して激情を隠そうともせずに足早に訓練所の外へ出ようとするのを、キョウジの目の前に立って強引に制止する。

 

「何処に行くつもりだ」

 

「異能を利用して悪事を働く人類の敵を排除しに行くだけだ」

 

 ……やっぱりこうなったか。

 分かっていた事とはいえ、これからの事を思うと気が重いな。

 

「今は、駄目だ」

 

「ふざけるな! 奴の悪行の数々をお前も知っている筈だ! 何故見逃す!? 殺す以外に選択肢があるとでもいうのか!!」

 

 獅童正義という議員は俺に冤罪をおっ被せた辺りからしっかりと調査がされていて、ダークサマナーと繋がりがあると判明していた。

 調査が開始された当時は、政敵に嫌がらせをする為にダークサマナーを雇っている程度だとされていたのだが、更なる調査で子飼いの下部組織や秘書を利用して色々と宜しくない研究をしていた事が最近になって判明した。

 そこから越水総理が色々と探りを入れてヤタガラスが本格的に裏取り調査をして、獅童がシド達と繋がりがあるという事実に辿り着いたのだが、既に奴はダークサマナーを大勢懐に抱え込んでいた。

 

「獅童は国内外を問わず大勢のダークサマナーをこの国に集めている。今事を起こせば全面戦争になる……奴らは劣勢になったら一般人も平然と盾にするぞ」

 

「一般人を多少犠牲にしてでも奴は潰すべきだ! 奴を放置すればより多くの、それこそ国を丸ごと悪魔に捧げかねないのは分かっているはずだ!」

 

 キョウジの言い分にも一理ある。

 というかヤタガラスの組織力を持ってすれば事前に戦いの場所を整えて、一般人に被害が出ないようにして戦いを仕掛けるという事も可能だ。

 実際、他に何も問題を抱えていなければダークサマナーを一人ずつ闇討ちして獅童を締め上げるなり、頭数を揃えて全面戦争をする事も視野に入れていただろう。

 

 だが、今はパレスという厄介事を抱えている。

 人々の認知次第で如何様にも姿を変える世界で、今後も死闘を繰り広げることになるのは明白だ。

 出来る限り不安要素を抱えたくはない。

 

「まずは獅童が何をしているかを調べてからだ。それに、ここ最近の()()()()()()が未解決のままだし、パレスという厄介事もある。これだけ事件を抱えながら全面戦争をしている余裕は流石にない」

 

 ヤタガラスとしての見解は概ねこんな感じだが、キョウジは到底納得しないだろう。

 悪魔や天使を憎み、ダークサマナーを恨み、()()()()()()()()()に復讐をする為に生きていると豪語するこの男がこの程度の理由で止まる筈がない。

 

「今回ばかりは納得できるか! 押し通らせて貰うぞ、ライドウ!!」

 

 ヤタガラスは別に獅童を見逃すわけではない。

 パレスを片付けてダークサマナー共を殲滅出来る体制を整えてから仕掛ける想定なのだ。ここで暴走される方が後々のリスクがデカい。

 

 その辺の事を言って聞かせる為にも、ボコボコにして一旦落ち着かせるしかない。

 

「来い! ロキィィィィィイィイ!!」

 

「行くぞ、アルセーヌ!!」

 




・この世界では偽イゴールとのコミュが築けないので3、4と同じ様にチームメンバーとの間に唯一取引ではない愚者コミュが成立となります。
・この世界のルイの姿はメタファー:リファンタジオの『ルイ・グイアベルン』の姿です。実は欧州あたりで色々と暗躍してたり、裏社会で『力 is power』理論を展開してたりしてなかったり。かなりのエンジョイ勢。
・この世界のカラス(Crow)は、黒なのか白なのか。

まあ、ほら。世界観がごちゃ混ぜになるなんていう異常事態ですから、バタフライエフェクトどころじゃない変化が起きるのは当然ですよね?
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