ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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異能の才能がある連中は記憶処理系の魔法への抵抗力が高く、割とすぐに効果が切れます。
ゲームでは数ターンで異常状態が解除される事へのこの小説なりの理由付けです。

ちな、一般人は悪魔やダークサマナーに殺されかける位に強烈な体験をしないと解除できません。
まあ、解除出来ても次の瞬間には死んでるでしょうが。


幕間の物語 File.3

《新島真の疑念》

 

 ほとんどの光源が消された薄暗い部屋の中で、唯一の光源であるスマートフォンから眩い光が放たれる。

 ベッドに潜り込んでスマートフォンで再生されている動画を、一フレームたりとも見逃さないと言わんばかりに見つめているのは、この部屋の主である新島真だ。

 

「みんな強いけど、やっぱりジョーカーは別格みたいね」

 

 片腕を失って全身に傷を負い、致死の攻撃が目の前に迫ろうとも一切動揺する事無く敵対している悪魔に攻撃を仕掛けるジョーカーの姿は、他の者達と比べて明らかに異彩を放っている。

 シャドウと呼ばれていた怪物や、恐ろしい化け物に変貌したカモシダと戦っている姿は真自身の目で見ていたから知っているものの、アエーシュマと呼ばれていた悪魔との戦いは初見の状態だ。

 

 なにせ、つい最近まで自分の目で見て命の危機すら確かに感じていたあの戦いの事を、完全に忘れていたのだから。

 

「記憶を操作、いえ、封印している感じなのかしら」

 

 金髪の偉丈夫に抱えられ金色の龍の背に乗ってあの異常な空間から抜け出した後、混乱した状態で警察に連絡しようとした真を取り押さえ、何らかの力で真の記憶を封印した存在が居る事を彼女は把握していた。

 そしてつい最近唐突に、あの場には真以外の秀尽の生徒や教師が居た事を思い出したのだが、彼等の内の大半は何事も無かったように日常を過ごしている。

 

 真が探りを入れた限りでは、同じ学年の奥村春は記憶が戻っていると証言していたのだが、他の人達はその傾向が全く見られない。

 

 記憶の封印は何らかの条件で解けるのか、それとも意図せずに解けてしまったのかは真には判別がつかない。

 だが、彼女自身の心がどう行動するべきなのかを、明確に示している。

 

「アルセーヌ、ゾロ、キャプテン・キッド、カルメン……見事に一致しているわね」

 

 スマートフォンに映っている映像の中で必死に戦っている仮面の人物達の素顔をこの目で見た筈なのに、彼等の顔を思い出そうとすると靄がかかったようになってしまい、ハッキリと思い出すことが出来ない。

 だが、彼等のやり取りとペルソナと呼ばれていた存在の事はハッキリ思い出すことが出来る。

 

「怪盗を名乗っているのに詰めが甘いわね、ジョーカー。いえ、雨宮蓮くん」

 

 以前、真が図書館で雨宮蓮を見つけた時、彼は怪盗団が操る怪人達が登場する書籍を手元に揃えていた。

 ただの偶然という可能性もあるだろうが、怪物になった鴨志田と因縁がある彼が、あの脈絡もないラインナップの書籍を借りていたことは無関係ではない筈だ。

 そして、転校してきて直ぐに良くない噂が流れていた彼がああも容易く坂本竜司や高巻杏、鴨志田から直接的な被害を受けたという鈴井志帆とああも親交を深めているのには何らかの理由があると考えて然るべきだと、真は直感的に理解していた。

 

「雨宮蓮、ジョーカー、そしてライドウ。色々な名前を持っているのね」

 

 映像の中でジョーカーと呼ばれていた推定怪盗団のリーダーは、ジョーカーとライドウという二つの名前で呼ばれていた。

 そして、真が気にしているのはライドウという名前の方だ。

 

 真が幼い頃にこの世を去った、尊敬する父親が手帳に残していた写真。

 裏面に父親の直筆で記載された『カラス』と『ライドウ』の文字。漸く見つけ出した真実ヘの手掛かりを、みすみす見逃すほど真は間抜けではない。

 

「必ず、真実を暴いてみせるわ」

 

 

 

 

 

《奥村春の憂鬱》

 

「はぁ」

 

 どんよりとした生憎の曇り空の下、着慣れた着物を身に纏った奥村春が、豪奢な造りの料亭の外を眺めながら憂鬱気な溜め息を吐く。

 こういう場所で開かれる会食に参加するのはままある事なのだが、春の心をここまで憂鬱にしているのは会食相手が原因だ。

 あまり好きになれない類の婚約者との会食だというのに加えて、相手側の寝坊でこうして待ちぼうけをくらっている状態だというのも気分を落ち込ませるのに拍車をかけている。

 

「ああいう方がいずれこの国を背負う一員になるのだと思うと、ゾッとしますね」

 

 春の婚約者は有り体に言って親の七光りを自分の力だと思っている類の人間であり、春が苦手とするタイプの人間であった。

 大きくなった会社があるからこそ何不自由ない生活を送れている為、会社の役に立つのならばと親が決めた婚約者と一緒になる事に納得はしているものの、会社の更なる躍進の為にあんな男に身売り同然で婚約を結ばされたことに思うところがあるのは事実だった。

 

「それに比べて……」

 

 瞼を閉じれば独りでに浮かび上がってくる黒い外套を纏った背中。

 

 力なき者を庇い、助けながらあの恐ろしい怪物と堂々と戦ってみせた彼等の姿は、何ものよりも尊い存在の様に感じられた。

 彼らの正確な顔を思い出すことは出来ないが、それ以外の事を正確に思い出していた春は、あの出来事が実際に自分の身に起きた事だと理解していた。

 

「……うん。やっぱり、新島さんに相談してみよう」

 

 鴨志田と怪盗団が対峙していたあの場に居た人達の中で、同じ学年の新島真は春と同じ様に記憶を思い出している事を確認済みだ。

 

 ジョーカーと呼ばれていた彼が率いる怪盗団の事を調べる事に、言いようのない恐怖心があるのは事実だ。

 だが、あの出来事が嘘ではないというのなら、確かめるべきだと己の心は叫んでいるのだ。

 

「春、彼が来た。失礼の無いようにな」

 

「…はい。お父様」

 

 もしかすれば、あの時の出来事が現実に起きた事だったのかを確かめようとしているのは、己に不自由を強いる現実に眼を背けたいからなのかもしれない。

 真の様に真実を知りたいという強い気持ちも、崇高な志があるわけでも無い。心の片隅に未知に対する好奇心がある事を否定するは出来ない。

 

 真実を知る事で、後悔する事になるかもしれない。

 だけど、それでも。

 

「彼らの姿こそが、本物だと思ったから」

 

 

 

 

 

 

《三島由輝の憧憬》

 

「スゲェ。スゲェよ。やっぱり、あの時の記憶は嘘じゃなかったんだ!」

 

 三島由輝の学生生活には常に影が付き纏っていた。

 

 特段イジメを受けている訳ではないが、特定の誰かと特別に仲が良いわけでも無い。

 同じクラスの高巻杏や、あの色んな意味で目立ちまくってる転校生の様な特別な存在ではない。

 

 高校入学を機に自分を変えようと思って一念発起し、入部したバレー部でも顧問の鴨志田に良い様にされてまともな練習すらさせてもらえない。

 特別な所は何もない、灰色の学生生活を送るのだと思っていた矢先だ。

 

 平凡な自分の身に、悪い意味で特別な事が起きた。

 

 普段から鴨志田から指導という名の暴力を振るわれてきたそれとは決定的に方向性の違う暴力。

 そして、そんな行為を心底楽しそうに、さも生き甲斐であるかのように行っていた悪魔という存在は確かに恐ろしい。

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と認識している三島はイマイチ危機感を抱けていなかった。

 

「今でも思い出すだけで震えちゃうけど、それでも」

 

 望んでいた特別と非日常が三島由輝の生活に訪れた事を、三島は心の底から喜んでしまっている。

 霊能の資質が覚醒に至らない程度だった為、記憶の操作と封印が中途半端な形になってしまい、自分が死に掛けていたということを正確に自覚出来なかった三島が警戒心や恐怖心のハードルを下げてしまったのは無理からぬ事だった。

 

「先ずは、掲示板みたいなチャンネル作る所からかな…名前は、そうだな。怪盗団のチャンネルだから、『怪チャン』とかがいいかもな!」

 

 三島由輝の学生生活には常に影が付き纏っていた。

 だが、これからは違う。少年漫画やライトノベルの主人公の様に自分で戦う事は出来ないが、怪盗団の活動を裏から支えるブレーン的な存在として、特別な存在になれるのだから。

 

「よーし。やるぞー!」

 

 

―――は? なんだこの掲示板。雑なコードだな。レイアウト以外は全部ペケ。ナンセンスだ。

―――ほーん。最低限のコード書けて、アイツらの事知ってるのね。じゃあ……一緒にデスマーチ塗れになろうか。

 

 

 尚、あっという間にヤタガラスに捕捉されてネット対策チームに放り込まれる模様。

 

 

 

 

 

 

《川上貞代の夢想》

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ー。……ちかれた」

 

 川上貞代。XX歳。

 髪の色 ダークブラウン。瞳の色 ブラウン。

 職業、高校教師。兼 家事代行。

 

「ホント、勘弁してよね。マスコミの対応なんか教師の仕事じゃないっての」

 

 鴨志田卓の自首に関連して、怪盗団を名乗る存在がバラ撒いた予告状が何処からか外部に漏れたせいで、秀尽学園には現在特ダネの臭いを嗅ぎつけてきたマスコミがうじゃうじゃと集まってきていた。

 元五輪選手のセクハラ行為に生徒達への体罰が発覚したとなれば、それはもうワイドショーやゴシップ誌で好き勝手いじり倒すには申し分無いネタなのだろう。

 

「皺寄せがこっちに来てるんですけどー」

 

 今回の事態に対して記者会見を開いて正式に謝罪するつもりは校長にはないようで、知らぬ存ぜぬを通す腹積もりであるようだ。

 何なら、全ては鴨志田本人が独断で行った事として責任から逃れようと必死な状態で、教職に就く者としては落第ものの対応だ。

 

「ま、何となく察してて放置してた私たちも同罪なんだけど、ね」

 

 実際、鴨志田の蛮行を去年辺りから察していた教師はそれなりに居た。

 あれだけ派手にバレー部員達が怪我しているのに、察せない奴は相当に勘が鈍いか、事なかれ主義に倣って見て見ぬふりをしていたかだ。

 

 狭い自室に置かれたベッドに私服のまま魂が抜けた様に寝転がって、そのままゆっくりと眼を閉じる。

 幸いにして明日は久し振りの休暇だ。ゆっくりと惰眠を貪ろうと考える川上の脳裏に、とある光景が過ぎる。

 

「あれ、きっと夢よね」

 

 朧気に思い出す、非日常的な光景の数々。

 自分のスマホにいつの間にかインストールされていた、イセカイナビなる奇妙なアプリで見ることが出来るハリウッド映画顔負けのアクションが披露させている動画。

 

 ネットの噂では実際に起きている出来事だとか、フェイク動画に決まっているだとか、喧々諤々の論争が繰り広げられているらしい。

 

「問題なのは、その現場に居た記憶がある事なのよねぇ」

 

 川上もハッキリと思い出せないが、動画に映っている場所に自身がいた記憶が朧気ながらに存在している。

 他にも誰かが居た筈だが、顔を思い出そうとすると記憶に霞が掛かったようになってしまい、どうしても思い出せないのだが。

 

「はぁ。どーしたもんかなー」

 

 学校の事、生徒達の事、自分の教師という職業への思い。

 色々とやるべき事とならないといけない事が多くてキャパオーバーになってしまいそうだが、とりあえずは直近の問題を片付けなければならない。

 

 ピピピ。

 

 眠りに落ち始めていた川上のスマートフォンが鳴る。

 誰から掛かって来たか一発で分かる様にワザと簡素な着信音に変更しているその音を聞いた途端、寝ぼけていた川上の頭が覚醒し、素早い動きで着信に応答する。

 

「もしもし!」

 

『やぁ。先生。今大丈夫ですか?』

 

()()()……今日は、どうしたの?」

 

 スマートフォンから、年若い少年の声が漏れ出ると同時に川上の表情があからさまに緩み、瞳から正気が消え失せる。

 

『申し訳ないんですが、また叔父さん達が僕の入院費の件で騒いでまして……』

 

「そうよね。本当にごめんなさい。直ぐに用意するわ!」

 

『いえ、ゆっくりとで大丈夫ですよ。きっとその方が味わい深くなりますから』

 

 電話口から漏れ出ている声は、年若い少年ものだ。

 だが、どことなく超然とした態度は少年の声とは不釣り合いであり、老成した雰囲気を醸し出している。

 

 そんなあからさまな異常に気付く事無く、電話が切れると同時に、さっきまでのぼんやりした表情が嘘のように正気を取り戻した川上は慌ててハンガーに掛けていたメイド服を鞄に押し込む。

 片手でスマートフォンを操作して副業先に連絡を入れ、シフトを入れてもらい、疲弊した身体を引き摺る様にして川上は慌てて自室から駆け出していく。

 

「眠ってる場合じゃないわ。お金を、お金を稼がないと」

 

 川上は気付いていない。

 そもそも、彼女が持っているスマートフォンに鷹瀬という少年から着信は来ていない事に。

 そして、鷹瀬という嘗ての川上の教え子は、()()()()()()()()という事にも。

 

 

 

 

 

 

《芳澤かすみの核心/芳澤すみれの確信》

 

「うーん。やっぱり、この人だと思うんだけどなー」

 

 赤茶けた髪をポニーテールにした少女、芳澤かすみがよく通る声でスマートフォンに映っている映像を眺めながら呟く。

 スマートフォンに映し出されているのは、カモシダパレスの戦闘でジョーカーが召喚したペルソナ、アルセーヌの姿だ。

 

 先の戦闘ではペルソナが育っていなかった事もあり、ジョーカーは陽動や牽制の為にペルソナを召喚していたので殆ど映像に映っていないのだが、かすみは執念深く映像を洗って目的の存在を見つけ出していた。

 

「ね。そう思うでしょ、すみれ」

 

 かすみの視線の先に居たのは、長い紅の髪で表情を隠している少女だ。

 すみれと呼ばれた彼女も、手元のスマートフォンで何かの映像を真剣な表情で見つめているのだが、姉の言葉に無反応だった事を不思議に思ったかすみが、すみれの顔を覗き込む。

 

「わ。顔真っ赤」

 

「ひゃわ!? お、おねぇちゃん!?」

 

 直ぐ近くで呼び掛けられた事に驚いたのか、それとも熱心に映像を眺めていた姿を見られた事が恥ずかしかったのか、すみれはスマートフォンを投げ出して椅子からひっくり返る。

 そして、すみれの手からすっぽ抜けて飛んできたスマートフォンを見事にキャッチしたかすみが、その画面を見て表情をニヤケさせる。

 

「ほほー。すみれはこういう感じの顔が好みかー。やっぱり姉妹だねぇ」

 

 戦いの最中の一場面を静止状態にして映し出されているのは、ペルソナを召喚したことで仮面がなくなって素顔を晒しているジョーカーの姿だった。

 敵を睨み付ける鋭い眼光を湛えた整った顔立ちは、確かに年若い少女の心を掴むに足る説得力があった。

 

「ち、ちが、この人が事故から助けてくれたのかーって思ってただけで!」

 

「はいはい。そう言う事にしておきます」

 

 投げ返されたスマートフォンを慌てて掴んだすみれは、若干名残惜しそうにしながらアプリを落とす。

 ニヤケ面のかすみを睨みながら、一連の騒ぎでズレた眼鏡の位置を直しながら咳ばらいをして口を開く。

 

「他の人は彼の顔が認識出来ていないらしいけど、私たちはちゃんと見えています」

 

「そうだね。なんなら、正体が転校先の悪い意味で有名な先輩で驚いたし、更にはりせちーとか初代探偵王子が仲間だったことも驚き」

 

 二人はイゴールが拵えた青いイセカイナビに常備されている認識阻害の術式を自力で跳ね除けていた。

 専門の知識や訓練もなしに、これ程の素養を示した二人は間違いなく異能者として屈指の才能を持っているだろう。

 

「じゃあ、タイミングを見計らって雨宮先輩に話しかけてみるってことで」

 

「でも、危なく無いかな…」

 

「悪い噂もあるみたいだけど、命懸けで誰かを助けている人が悪事を働いたりしないと、私は思う」

 

「…うん。分かった」

 

 すみれの返事に気を良くしたかすみが、ジョーカーとの不自然ではない接触方法を提案し、荒唐無稽な案には苦笑いしながらダメだししていくすみれ。

 悲劇の運命から人知れず助け出された二人は、自分達の運命を選ぶことになる。

 

 灰かぶりの姉妹が、幸せを掴みとれるのかは、彼女達の選択次第だ。

 




コミュを築ける人物は覚醒まではいかないけど、一般人よりも異能の才があるので記憶処理の掛かりが甘いです。

そして芳澤姉妹がジョーカーの顔を正確に把握できているのは、青いイセカイナビの認識阻害を看破出来るくらいに二人の異能の才がずば抜けているからです。三学期加入でヤバオ倒した後のジョーカー達に付いていける理由付けだと思って頂ければ。
才能SSRな姉妹。

実際、ゲーム的な都合を加味しないのであれば、三学期加入のヴァイオレットの初期レベルがクソ高いのは才能の暴力と理由付けした方が納得出来る気がします。
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