ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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ライドウ復活!
ライドウ復活!!
してェ。RAIDOUしてェ〜

まさか令和の世にライドウが復活するとは。読めなかった。このリハクの目をもってしても!

あ、久しぶりの更新です。安心して下さい。この小説に(失踪要素は)ないです。


第三十一話

『メメントス内の掃討は恙なく終わったが、他のパレスは発見できず、()が言う所のジェイルという認知異界も発見できてない。悔しいが完全に手詰まりだ』

 

 渋谷駅最寄りにある()()()()()()()()()()()()()()()の店舗の壁に寄りかかりながら、ワイヤレスインカムから聞こえてくる声に耳を傾ける。

 電話の相手はヤマトだが、その声には僅かに疲労が滲んでいる。

 

 カモシダパレスが崩壊し、ヤタガラスの総力を挙げてメメントス内に巣食い始めていた悪魔の大部分を討伐した事で、一時期跳ね上がっていたGP(ゲートパワー)は平常時程度に戻ってきている。

 勿論、予断を許さない状況ではあるが、組織の運営にある程度の余裕が出て来る程度には落ち着いていた。

 

 だからこそ、手の空いている人員でルシファー…いや、ルイ・グイアベルンが言っていたジェイルという認知異界の捜索に乗り出していたのだが。

 

「やっぱり、そう上手くはいかないか」

 

 捜索は当然の様に難航していた。

 認知異界というのは通常の異界と違って、普通の異能者には感知しづらい代物だ。

 去年あたりにヤタガラスがメメントスを発見できたのも、優れた探知能力を持つペルソナ使いである風花さんとりせさんが偶々僅かな違和感を感じ取り、そこから調査を重ねてようやく発見に至った経緯がある。

 絶対数の少ないペルソナ使いの中でも更に数が少ない探知特化型のペルソナ使い。捜索すべき都市が分かっていても、たった二人では全ての範囲をカバーすることは出来ないし、彼女達の能力の希少さと有用性から安全を確保で来ていない場所にホイホイと連れていくことも出来ない。

 となれば結局人海戦術で探すしかないわけだが、下が動くには上が色々と都合を付けて現地の協力を要請する必要があり、幹部クラスの仕事量は『超人』に至っているヤマトでも疲れが出るレベルで増している。

 

『……調査は継続するが、成果はあまり期待しないでくれ。先のメメントス掃討でガイアは動きが鈍ったが、今度はメシアン共が活発に動き始めていてな。予知能力者達が欧州辺りに暗い未来が見えると口を揃えて言い放つ始末だ。ヤタガラスとしてはこっちの調査もせねばならん』

 

「それはまた、穏やかじゃないな」

 

 ヤタガラスには様々な異能者が所属しているが、その中には未来視を筆頭とした予知能力者もいる。

 この手の未来予知は原則確定した未来を見ることが出来る能力なのだが、強力な異能と高位の魂の格を持っていればその予知を覆すのも不可能ではない。

 大半の予知能力者が暗い未来を観たというなら、それを覆す為にそれ相応の実力者が欧州に派遣されるだろう。ヤマトの口ぶりからして、相当に悪い未来のようだしな。

 

『状況を鑑みて、欧州には私を含めたジプスメンバーが赴き、手早く事態を収拾することになった。ゲイリン殿やヤタガラスのお歴々はこの件に相当肝を冷やしている様だからな』

 

「へえ。珍しいな」

 

 峰津院家はヤタガラス内でも古参かつ常に幹部を輩出している由緒正しく実力もある家系だ。

 基本的に国内の最終防衛線としての役割を持っている現当主を国外に出すのは、ヤタガラス的に絶対に渋る筈なのだが。

 

『下らん政治的な兼ね合いという奴だが、疎かにする訳にもいかん。今回は悪魔による被害が拡大している欧州をメシア教ではなくヤタガラスが救った、という実績が欲しいのだろうさ』

 

 この手の任務は海外でメシア相手に大暴れしていた経歴のあるゲイリンが適任だろうが、彼も古希を迎えているし、何よりも今やヤタガラスの頭領だ。

 ホイホイと現場に出向くことは出来ないのだろう。

 

「そうか。じゃあ、手早く片付けて来てくれ。こっちもこっちで、厄ネタ塗れだからな」

 

『フッ。分かっているさ。では、気を付けろよ、ライドウ』

 

「そっちもな」

 

 何となく機嫌の良くなったヤマトとの通話を切り、インカムを外してワイルドダックバーガーの店内に入る。

 平日の夕方という事もあり、店内は凄まじく混雑している。これだけ騒がしければ会話を聴かれる可能性はほぼない。悪魔が絡む話をしても然したる問題にはならないだろうと、先に店へ入って席を確保してくれていた志帆の正面に座わる。

 四人掛けの席には秀尽学園の指定鞄が四つ並んでいて、どうやら竜司と杏は注文に行っているようだった。

 傍から見ると志帆が一人残されたように見えていただろうが、机の上に置いていた俺の鞄に潜んでいるモルガナと談笑していたようで、正面に座った俺に気付いて軽く手を振るが話を中断する気はないらしい。

 

 漏れ聞こえる内容的に、先日のメメントス掃討作戦(ドキ☆ドキ☆ メメントス浄化ピクニック)の事を話しているようだ。

 

「そんなに一杯いた悪魔を全滅させたの? 雨宮くんが強いのは知ってたけど、汐見さんや鳴上さんも凄く強いのね」

 

「まあ、ジョーカーもそうだが、あの二人も色々と()()だからな」

 

 認知異界の生みの親であるニュクスと色んな意味で関係が深い琴音さん。人々が思い描く国生みの神をその身に宿し、死を齎す女神を始め幾つもの強敵を下した悠さん。

 認知異界の中であれば、という前提があるものの、あの二人とチームを組んで戦っていたのだ。徒党を組んですらいない普通の悪魔に遅れを取ることは無い。

 

「そういえば、志帆は大丈夫か?」

 

「私?」

 

「ああ。鴨志田の事を聞き出そうとしてくる奴らが全然減ってないだろ。色々と大丈夫かなって」

 

 鴨志田の逮捕からまだそう時間が経っていない事もあり、奴の話題は今日もテレビや動画サイトで面白おかしく取り上げられ続けている。

 それに伴って、マスコミや記者を名乗る人物が秀尽学園の近辺でたびたび目撃されるようになり、鴨志田から直接被害を受けていた生徒達に無遠慮にも接触しようとする事例が多発していた。

 その状況を知った学園側が、被害に遭った生徒達に当時の事を根掘り葉掘り聞き出すなど余りにも常識に欠けると抗議すれば、今度は事件に関係ない生徒から情報を得ようとする始末だ。

 

 更に面倒なのは杏と志帆が鴨志田から特に目を付けられていた、と無関係だった秀尽の学生がポロリと喋ってしまったせいで、今の二人はマスコミ連中にとって注目の的になってしまっている。

 

「私は大丈夫。バレー部も暫くは活動出来ないから、最近は杏と一緒に下校してるし。それに、万一に備えてヤタガラスで使い方を勉強した霊符もあるし」

 

「……ならいいんだが」

 

「それに、どっちかと言うと私よりも、杏の方が心配なの」

 

「杏が、か?」

 

 注文カウンターで四人分のバーガーセットとモナ用のチキンを頼んでいる竜司と、その横でメニュー表と睨めっこしている杏の方を見る。

 そう言えばここ最近は、悪魔絡みの事件に巻き込まれていそうな武見女医と岩井さんの身辺調査に掛かり切りだったから、あの二人としっかりと話せていなかったな。

 

「うん。なんか、妙な視線を感じる時がある、って言ってて」

 

「視線?」

 

「ヤタガラスで貰った護符は反応してないから、悪魔とかではないと思うって言ってたんだけど」

 

 ペルソナ使いは他の異能者と違って、現実世界では能力的に一般人とそう大差はない。

 自身の精神の強度が異能の力として反映されるペルソナ使いは、他の異能と比べて圧倒的な成長速度を誇るが、そのデメリットとして現実世界での自分の肉体にその成長を反映出来ない。当然、身体能力の大幅な向上も異界内限定になってしまう。

 キョウジや俺の様に他の異能を持った上でペルソナに目覚めるのならばその限りではないが、生憎とSEESや特捜隊、そして怪盗団のメンバー達は異能の才覚がペルソナ能力に極振りされている。

 なんなら護符や霊符の補助ありきとはいえ、簡単な魔法を現実でも行使出来る志帆の方が、現実世界では悪魔に対抗出来るだろう。

 

 勿論、ペルソナ使いも非覚醒者と比べれば現実世界での能力は高くなっているが、その差も一般人とトップアスリートくらいの差だ。悪魔やダークサマナーと対峙するには心許ない。

 

「杏殿を付け狙うなど、断じて許せん!」

 

「ただのストーカーなら捕まえて記憶処理で片付くんだがな……」

 

 ストーカーが現れたというのなら、あのカモシダパレスでの様子を写した動画が原因だろう。

 異能の素養があったり、既に覚醒している人間は例の動画を見ることが出来る。自前で異能を行使できる程の素養がないヤタガラスの事務員や外部協力者、そして志帆もあの動画を見ることが出来ている所からして、それは事実だ。

 

 それはつまり、一般人だけでなくダークサマナーもあの動画を見ることが出来るという事だ。

 あの動画には強力な認知阻害の術式が施されているから怪盗団の身元を特定する事は出来ないが、他に映っていた人間が秀尽の学生だという事はバレてしまっている。

 となれば学園に網を張り、高いマガツヒを纏っている人間に的を絞れば、怪盗団のメンバーを特定するのも不可能ではない。

 

「現実世界では対抗手段が心許ないからなぁ」

 

 ただでさえ認知異界とかいう厄介事に巻き込まれているのに、現実世界でも厄介な奴に付け狙われているとなれば大問題だ。

 護符が反応してないらしいし、杏からマガツヒの残滓は感じ取れないから現時点では悪魔やダークサマナーが直接関わっている訳ではないだろう。最悪の場合に備えて、障壁の護符も何枚か持たせてはいるが、のほほんと放置する訳にもいかない。

 

「今は護衛を置く程の人的リソースが割けないからな……。そうだ、下手人に呪いを掛けるのが一番手っ取り早いか」

 

「う、うーん。流石に初手で呪いは……」

 

「命に関わる様なヤツじゃないさ。杏に近付くと猛烈な腹痛や頭痛に襲われるとか、妙に転び易くなるとか、絶妙に不幸になる感じの呪いだ」

 

 呪詛をくらって不気味に思って手を退くならそれで良し。尚もちょっかいを掛けてくるなら、本格的にオハナシをすればいい。

 認知異界への対応でクソ忙しいのに、一般人のストーカーにまで丁寧な対応はしてられない。ヤタガラスのリソースも有限なのだ。

 

「なんか物騒な話してる」

 

「まあ、メシ時にする話ではないわな」

 

 四人前のバーガーセットとモナ用のチキンを持って戻ってきた二人を話の輪に加えて、呪詛云々の話になった経緯を共有する。

 竜司はあっさりといいんじゃね、と流し、杏も最初は渋っていたが、やはり登下校時に視線を感じ続けるのは気分が良くないという事で謎の視線の主には呪いが掛けられる事となる。

 

 これでストーカーらしき輩が諦めてくれればいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ヤタガラスで呪詛を得意としている異能者に、杏に強い感情を持って近づく人間に呪詛が発動する『女難の相』という術式を掛けてもらったその翌日の事である。

 

「なんか、視線を感じるんだけど」

 

 万一を考えて俺や竜司、志帆と合流してから登校するという事になったのだが、今までは下校時に視線を感じていた視線を登校中の今感じると杏が呟く。

 さり気なく壁になる様に俺が杏と志帆の前に出て、竜司が二人の後ろに付く。

 鞄の中のモルガナも毛を逆立てて警戒している。

 

 何か起きてもすぐに対処出来るよう警戒しつつ、杏に掛けられた術式から発せられるマガツヒの流れを目で追う。

 

「う、ううう……」

 

 術式に紐づいたマガツヒの流れの先では、俺達の背後にいた白い上着と黒いスラックスという出で立ちの少年が頭と腹を抑えて蹲っていた。

 

 本来呪詛を仕掛けるときは呪詛返しや逆探知を警戒してマガツヒの流れを断つのだが、今回は下手人を把握しておきたかったから、術式を掛けて貰う時に呪う対象へのマガツヒの流れが分かるようにして貰って正解だったな。

 

 

「見たところ、同い年くらいか」

 

 呪いの内容と強度的に、体調不良を感じても決して退かず杏に接近してないとあそこまで悪化しない。

 あそこまで症状が酷くなっているという事は、彼が下手人という事で間違いないだろう。

 どんな理由でストーカー行為に走ったのかは知らんが、学生がストーカー行為とは世も末だな。

 

「あいつか?」

 

「恐らくは」

 

 身に纏うマガツヒの量は常人よりもちょっと多いが、異能者程ではない。

 何処にでもいる普通の少年だ。

 大した危険も無さそうだから、竜司が少年に近付くのをそのまま見守る。

 

「う、うう」

 

「おい、体調悪そうな所悪いが、ちょーっと話聞けるか?」

 

 大勢が通勤や通学で使用する道である為、道路で蹲っているその少年は明らかに浮いていて悪目立ちしている少年が竜司の声に反応して顔を上げる。

 顔を上げた少年の目鼻立ちはかなり整っていて、物憂げな表情をしていればさぞ女性にモテるだろう。

 

 

 

「う、美しい」

 

 

 

「うお!? なんだお前!」

 

「杏殿に近付くな!」

 

 呪いのせいで激しい頭痛と腹痛に襲われている筈なのだが、現実世界でもそれなりに動ける竜司が反応出来ないレベルの機敏な動きで少年が立ち上がり、竜司を追い越して俺達に接近してくる。

 俺の鞄に潜んでいたモルガナが咄嗟に少年に飛び掛かるが、それすらも容易く躱し、なおも俺達に接近してくる。

 万が一に備えて懐に入れている封魔管を手に握って杏たちを庇う様に前に出ると、その少年は俺の目の前で流れる様な綺麗な動作で五体投地の姿勢をとる。

 

「どうか、今生の頼みだ! 絵のモデルになっては頂けないだろうか!!!」

 

「……はぁ?」

 

 見惚れる程の完璧な五体投地を行った少年は願いを聞き入れて貰えるまでテコでも動かないと言わんばかりにそう言い放ったのだった。

 




鋭い審美眼を持つ人間の目には、超人を超えた覚醒者がどう映るかっていう。
良い目を持っていて、創作の才がある人間は大体こんな反応をする。
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