モチベが多少復活してきたので投稿再開します。
堕天使アザゼル
それは、様々な文学や聖典にて語られる強大な存在の名だ。
その存在が何者なのかという話には様々な説がある。強大な力を持ち預言者を導く存在として描かれたり、はたまた神の命に背いて人間と子供を作った堕天使とされたりもする。
この辺の話は宗教学だの教義だのの範疇になるので、割愛しよう。
大事なのは、アザゼルと言う存在は前世で遊んでいた『デビルサマナー ソウルハッカーズ』という作品内で起きていた事件の黒幕の一人であり、この世界においても異能絡みの事件を引き起こそうとした実績があるという点だ。
前世で遊んだゲーム内でのアザゼルの目的は簡単に言えば、人間の魂を回収して自分の手元に置き、人間の進化を管理することだった。
まあ、協力者であった門倉や利用していたマニトゥの暴走でアザゼルの目的は作品中では叶わなず、この世界においてもヤタガラスの横槍が入った事で大きな事件には発展しなかった訳だが。
そんなアザゼルは作中では西と言う名の人間に擬態し、陰謀論とかによく出てきそうな世界を裏側から支配する系の組織である『ファントムソサエティ』に所属していた。
この世界にもファントムソサエティという組織は存在しているが、ヤタガラスがダークサマナーを目の敵にして積極的に狩り立てているせいで日本国内での活動は著しく制限されている状態だ。
それに加えて、メシア教にガイア教団、その他大小様々な霊能組織がこの世界には存在しているせいで、ゲーム内で表現されていたような世界を裏で操っているレベルの強大な組織力はファントムソサエティには無い。
「つまり、ざっくり言うとファントムソサエティっていうのはダークサマナーが集まった悪の組織という認識でいいってことか?」
「その認識で大体合ってる。一般人を生贄にしたり、政治に介入する為の殺し専門サマナーを囲ってたりしてるからな」
喜多川と斑目、そして西という事務次官に擬態したアザゼルと遭遇した後、俺達は通常通り登校し、昼休みであるこの時間にいつものメンバーを屋上に集めて情報共有をしている。
昼食の菓子パンを齧りながら竜司の身も蓋もない言い方に同意する。
「アザゼルはファントムソサエティの幹部であり、ガイア教団の重鎮でもあるカオス勢力の大御所だ。ヤタガラスが作っている排除対象リストの中でもトップクラスの厄介者だ」
本物の西という人間は既にこの世に存在していない。
良からぬ企みの為に人間社会で立ち回る用の隠れ蓑を必要としていた当時のアザゼルによって殺害されているからだ。
そして数年前に天海市という場所で何やらロクでもない事を企んでいたアザゼルも、厄介事の臭いを嗅ぎ付けた俺を含めたヤタガラスの幹部が囲んでタコ殴りにして事件を起こす前に魔界に送り返している。
その時点で西次官という身分も破棄される筈だったが、政治の都合で病気療養というていで凍結されていたのだ。
「少し前に病気療養の為に一線から身を引いていた西が事務次官に復帰するというリークがあったが、この短期間でアザゼルは人間界に再度出現できるとはな」
高位の悪魔ほど物質世界である人間に現れるのが難しくなる。
何かを企むにしても、以前ほど強権的に事を進める力はない。
「でも、放置はしないんだね?」
「ああ。弱体化していても一般人からしてみれば圧倒的な脅威だ。見逃す理由はない」
志帆からの質問に力強く頷く。
もう一度囲んで殴り殺して魔界に再送還して、今度こそ西次官とかいう既に存在しない人間の痕跡を消し去らなければならない。
「でも、表面上は政府のお偉いさんなんだよね? 護衛みたいな人達が四六時中引っ付いてたら戦えないんじゃない?」
「アン殿の言う通りだぜ、ライドウ。悪魔を見過ごす理由は無いが、ただ職務を全うしている人間を巻き込むのは怪盗団的にはナンセンスだ。美学に欠ける」
ドヤ顔で美学を語るモルガナの言葉に苦笑いが零れる。
ヤタガラスほど美学という言葉から遠い組織もそうはないんだがな。
ここ十年程で大分改善されたが、今代のゲイリンが頭領になる前は、ヤタガラスという組織は
嘗てのヤタガラスを知る連中の中には今のヤタガラスはぬるいと揶揄する者もいるが、それは時代の変遷による価値観の変化という奴だろう。
ともあれ、怪盗団のメンタル面も考慮して護衛ごとまとめてメギドラオンで焼き払うのは最終手段だ。ある程度は穏便に事を済ませる方法を考えないと。
「西次官を担ぎ上げている派閥は、ヤタガラスと繋がりのある現越水政権と敵対してるから政治的な圧力は効果が薄い。どうにかして奴の目的を聞き出すチャンスが欲しいが……」
俺の言葉に全員が腕を組んで悩み始める。
しかし、常識的に考えて一介の高校生が政府の高官のスケジュールを知れる訳がない。
「あ」
怪盗団の面子がうんうん唸っていると、不意に志帆が声をあげる。
「あの画家のお爺さんなら伝手、あるんじゃない? 知り合いみたいだったし」
「あ。あー。あいつか!」
志帆の発言に竜司が得心いった風に声を上げる。
班目か。確かに、斑目は西に化けたアザゼルと何らかの交流がある様子だった。いくら有名な画家とはいえ、完全に畑違いの政治家と同じ車に乗って移動するくらい交流関係があるというのも妙な話だ。
「班目、ね」
絵画に限らず芸術作品というのは資産になりうる。
ネットで確認したところ画廊で売りに出されている班目の絵画はそれなり以上の金額で取引されていて、一点売却するだけでもかなりの稼ぎになる。表社会で活動している普通の画廊ですらこの値段となれば裏で流してマネロンーーマネーロンダリングーーの材料にするのも容易い。
ファントムソサエティが日本での活動を停止している以上、アザゼルは何かを企むための活動資金を自力で得る必要がある。
班目はそう言う意味でアザゼルに目を付けられている可能性が高い。アザゼルに脅されているのか、それとも自発的に協力しているのかは分からないがアザゼルと接触する手掛かりにはなるだろう。
「じゃあ、あれか。あのヤベー奴に連絡するのか?」
「うん?」
「だから、あの画家のジイさんに今すぐ直接会うのは難しーだろ?」
「ああ」
「じゃあ、顔つなげそうな知り合いってアイツだけじゃん?」
「あー」
当然だが、有名な画家で個展も開いている班目も一般人が簡単に会える訳がない。
普通ならば。
「え、嘘でしょ?」
「残念ながら他に手はなさそうだ」
心底嫌そうな表情の杏に、真面目な顔をして宣言する。
「喜多川の絵のモデルになりに行くぞ」
数年前、アザゼルは天海市でのマニトゥを利用した計画をヤタガラスに潰されています。
そこから西という存在しない人物が抹消されてなかったは、異能を我欲の為に使用したい当時の政治家が圧力をかけてきたからです。
なので、越水ハヤオがヤタガラスの後押しで総理大臣になり、政府に潜り込んでいる悪魔やダークサマナーの支援者を牽制、排除して今の政権に落ち着いた状態です。